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法令遵守でなんとかドローンを楽しみたい(その4)- カメラの送信機の保証と開局申請を行って「無線局免許」を取得しよう、これでやっとFPVドローンを合法で飛ばせます

法令遵守でなんとかドローンを楽しみたい(その4)
こんにちは、natsukiです。ついにやってきました、連載最大のクライマックス。ドローンのカメラからゴーグルへの映像を送る送信機の、法規制クリアです。技適のない送信機を、ちゃんと日本の技術基準に適合していることを「保証」してもらい、その送信機を「無線局」として「開局」し、「無線局免許」の発行を受けます。つまり、ドローンのFPV運用には、前の記事で解説した「無線従事者免許」と、今回の記事で解説する「無線局免許」の2つの免許が揃わなくてはいけません。これで、ようやく、やっと、晴れて合法でFPVドローンを運用できます。

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この手続きは、ドローンごとに、正確にはドローンに積んでいる送信機ごとに必要です。複数の送信機の手続きをまとめて行ってしまうことは可能ですが、ドローンを後から買い足したりした場合は、原則的に追加で手続きを行わなくてはなりません(抜け道はあります。後述します)。また、書類の準備や手続きが非常に煩雑かつ時間がかかるのに加え、1回の手続きにかかる費用も約1万円から2万円と高額なため、おそらくここが、現在の日本の制度でFPVドローンを運用する最大のハードルになると思います。それでは、ドローンの合法運用へむけて、最後の難関を乗り越えていきましょう。

※ドローンに必要な資格や免許について知りたい人はこちらをご覧ください
今こそドローンをはじめよう! 日本でドローンを楽しむための資格は?免許は?

1.「保証」と「開局」とは?

今回、解説する手続きには、2つの段取りがあります。

第一に、「保証」。これは、日本の技適認証がされていない電波発信機器を、専門の保証機関にチェックしてもらって、日本の技術基準に適合していることを保証してもらう、という手続きです。これで日本国内で運用できるようになります。保証機関としては、「TSS」と、「JARD」があります。どちらに保証してもらってもかまいませんが、料金体系が異なるので、保証する発信器の条件によって判断するといいと思います。

第二に、「開局」。電波を発信する機器が日本の技術適合基準を満たしていても、ドローンのFPVに利用する5.8GHz帯(制度的には5600MHz帯と呼びますが、慣例表現でいきます)を運用するためには、運用する者が「無線従事者免許」を持っていて、かつ、電波を発信する機器を「無線局」として「開局」し、「無線局免許」の発行を受ける必要があります。こちらは総務省(とその下部組織)の管轄になります。

手続きのワークフローを示すと、次のようになります。

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大前提として、送信機の構造を示す「系統図」が手に入らなくてはダメです。系統図の無いものは、どうやっても日本国内での利用はできないので、送信機を買う際には十分に注意しなくてはいけません。国内のドローンショップなどで買う際には、系統図が付いているものを買いましょう。Banggoodなどで購入する際は、あらかじめ後述のJDRIや、戸澤洋二技術士事務所の解析済み系統図リストをチェックしたり、あるいはこの両者に直接問い合わせて、系統図を入手できるかどうか確認しておく必要があります。記事の後半に、実際に私が開局して運用している、確実に系統図の手に入るお勧めの送信機を紹介しておきますので、参考にしてください。

2.電子申請か、書類申請か、それが問題だ

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さて、「保証」「開局」の申請を行うにあたっては、インターネットで行う「電子申請」と、書類を郵送して行う「書類申請」の2通りの方法があります。

そんなん、「電子申請」のほうが手軽に決まってるじゃん、と思いますよね? 確かに、電子申請の方が、手数料も安くて済みます。ところが、実は電子申請の手続きは非常に難しく、めんどくさい。私自身も、はじめは、多少大変でも、少しでも安くと考えて電子申請にチャレンジしました。が、結論から言えば、挫折しました。

というわけで、まずはじめは「書類申請」で行うことをお勧めします。したがって今回の記事では、書類申請を主に解説していきます。

もちろん、この記事やいろいろ調べた情報であえて電子申請にチャレンジしてみるというのも、いい勉強になるとは思いますが…… 以下、申請方法をざっと比較しておきます。申請の手順を知りたい人は、とばして「3.「書類申請」の手順」にお進みください。

楽だけどお金がかかる「まるなげ」

書類で申請するにしても、いくつかやり方があります。最も簡単なのは、書類の入手・作成から、お金がらみのやりとりから、すべて専門機関に丸投げで任せてしまうこと。JDRIか(保証機関の「JARD」と名称がややこしい……)、もしくは戸澤洋二技術士事務所などに依頼することになります。

ちょっと話題がそれますが、この連載中でも時々名前の出ている戸澤洋二氏は、日本でのFPVドローンの電波利用に筋道をつけてくれた方で、JDRIの会長を務める一方、個人としても戸澤洋二技術士事務所を開き、ドローン普及のための活動を行っています。JDRIなどの「機関」だと、その活動が明確な分、融通が効かない部分がありますが、一方、個人としての戸澤事務所に依頼する場合は、なにかと柔軟に対応してくださいます。これは、制度が実態と乖離してしまっている過渡期の現状では、非常にありがたいことです。そもそもが、業務として行っているというよりは(それならJDRIが行えばよい)、多分に善意によって、JDRIでは対応できない部分を補っている活動のようです。こういった方に頼って、なんとか運用できるのが、FPVドローンの現状だということは、ご承知おきください。

ともあれ、JDRIなり戸澤事務所なりに丸投げしてしまう場合は、先方に送信機の種類や住所、無線免許番号などの情報を伝えれば、すべての手続きを済ませて、完成した申請書類一式を用意してくれます。こちらの作業は、書類を投函するだけ。もっとも、その分、お金はかかります。だいたい2万数千円くらい。記事執筆現在、JDRIなら税込み22,000円です。

ただ、今回の手続きは、原則的にドローンを買い足すたびに行わなくてはなりません。すると、毎回これだけの出費は痛すぎるので、できるだけのことは自分でやりたいところです。

まずはこれがお勧め「書類申請」

はじめての場合にお勧めするのは、必要書類の準備までは戸澤事務所に代書きを依頼して、その他の作業は自分で行った上で、「書類申請」を行うことです。もちろん、必要書類は自前で作成した方が安いですが、かなり専門的なので、私はチャレンジしたものの結局は諦めて戸澤事務所に依頼しました。この場合、いったん作ってもらえば、あとは、追加で申請を行う際にも、必要部分を修正するだけで使い回しできます。

また、書類申請と電子申請では、こちらで行う手続きの手間も、書類申請の方が簡単です。書類申請なら、「保証」が行われた後、保証機関がその書類をそのまま「開局」手続きに回してくれるので、「保証」と「開局」がまとめて一回の申請で済みます。ところが電子申請の場合は、保証機関は「保証書」を発行してくれるだけです。それを使って、さらにあらためて自分で「開局」申請手続きを行わなくてはなりません。手間も時間も余計にかかるわけです。

一番安いが、いろいろハードルが高い「電子申請」

上述のように、電子申請の場合は申請を「保証」と「開局」の2回に分けて行わなくてはいけませんが、他にも煩雑なことがあります。

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まず、電子申請を行うために、登録をしなくてはいけません。総務省の「電子申請・届出システムLite」を通じて登録を行うのですが……

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どういうわけだか、IDとパスワードの発行は郵送。1週間ほどかかります。え?なんで電子申請なのにメールを使わないの? この待ち時間と、前時代的な仕組みに、かなり心を折られます。

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そして、この電子申請のページ、推奨ブラウザは「IE」「Edge」「Firefox」となっていて、「推奨」ってだけじゃなく、実際にChromeやSafariだと、プルダウンが機能しなくて使えない場合があった。……は!? さすがは、電子マネーやマイナンバー普及をかかげて各種手続きの電子化を推進する総務省のウェブサイトですね!! まことに畏れ入りましたよ!!! さすがに現在は、これらの不具合は一通り修正された模様です(Safari利用時の不具合は、昨秋までひっぱったようですが)。もうね、手続きの面倒くささとか、そういうこと以前の問題です。

また、なまじ電子的に行うだけに、内容以前に書式に対する縛りが厳しく、関係書類をこの不安定な総務省のサイト上で作成しなくてはなりません。このため、他者に書類作成を依頼することができず、関係書類を自前で作成する必要もあります。

とにもかくにも何かと上級者向けなので、はじめてにはとてもお勧めできません。記事執筆現在、電子申請を行う方が、費用の面では1,400円安くなります。しかし私の場合、上の写真に示しているように電子申請の登録まではしたものの、以上の、手間、時間、制約などを考えて、結局のところ、追加の申請も書類で行っています。

一応、電子申請の手順については保証機関のTSSが、1ページにまとめたファイルを作ってくれていますので、チャレンジする方はご参照ください。TSSのトップページトップページから「電子申請・届出システムLiteを利用した保証」をダウンロードしてください。

3.「書類申請」の手順

では、「書類申請」の具体的な手順を解説していきますね。ワークフローは、次の通りになります。

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カメラ(送信機)の購入

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まず、もちろんカメラとそれに使う送信機の購入。先ほども触れたように、系統図の手に入るものを購入するよう、気をつけてください。戸澤洋二氏のサイトには、解析済みの系統図一覧表がありますので、ここに載っているものであれば、確実に戸澤氏から購入できます。また、日々、あらたな送信機の系統図も解析されているようですので、気になる送信機があれば、直接戸澤氏に問い合わせてみるといいでしょう。私も、このリストにない送信機をご相談したところ、すでに解析済みとのことで、購入したことがあります。

後で、初心者向けの、個人的なお勧め送信機も紹介しますので、参考にしてください。

「系統図」の入手

系統図を手に入れます。国内のドローンショップなどでは、送信機にセットで売っている場合とそうでない場合があります。購入の際はよく確認してください。ごくまれに、メーカーが系統図を公開しているものもあるようですが、日本の法律で求められる情報が完備されているかは疑問なので、そのままでは使えない可能性が高いと思った方がいいでしょう。ネット上のブログなどで系統図を掲載しているものもありますが、もちろん信頼できるかどうかは分かりません。従って、Banggoodなどの海外通販での購入品は、基本的に先述の戸澤事務所から購入するしかないと思います。戸澤事務所の場合、記事執筆現在、1種類につき1,000円(税抜)となっています。

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なお、海外で販売されている送信機のほとんどは、日本国内ではどうやっても違法になってしまう周波数も発信することが可能です。そのため、系統図には、日本国内で合法の周波数しか発信しないむねを書き込み、送信機の名称にも「改」「改造」などを付けておきます。上の図は実際の送信機ではなく、JARDによる例示です。戸澤事務所で購入した場合には、あらかじめ書き込んでくれると思います。もっとも、最近の送信機の多くには、スマートオーディオ機能という無線で周波数を変更できる機能が付いているので、そういう送信機についてはスイッチの封鎖などの物理的な改造は根本的解決にならないんですけどね、まぁ、「出していい周波数は分かっていますよ」ということの意思表明と考えておけばいいでしょう。

ところで、この周波数限定の改造について、ネット上での申請に関する記事を見ていると、ちゃんと周波数変更ボタンを封印したことを示す写真を添付する、との記述を見かけるのですが、私はしたことありません。すべて書類のみで、保証、開局、ともに通っております。昔は必要だったのかな? 私が経験している限りでは、写真は不要です。とは言っても、ちゃんと手元に送信機がなくちゃいけませんよ。例えば、Banggoodで送信機を購入したとして、手元に届くまでには2週間以上かかると思いますが、送信機が到着するまでの間に手続きを進めちゃえ、というのはダメです。

さて、でも、戸澤事務所から系統図を購入するなら、ちょっと待ってください。はじめて「保証」「開局」申請を行うなら、系統図のみを購入するよりも、複雑なその他の書類もまとめてお願いしてしまうと楽です。

関係書類の作成

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系統図を含む、「保証」「開局」申請に必要な関係書類は、次の通りになります。前半3つが「保証」に関わるもの、後半3つが「開局」に関わるものです。

・アマチュア局の無線設備の保証願書
・無線局事項書及び工事設計書
・送信機の系統図(周波数限定について記入が必要)

・無線局免許申請書
・電波利用料前納申出書(総務省では別紙、TSSでは免許申請書に合併、JARDでは省略)
・無線局免許証返送用の封筒(一般的なサイズでOK、自分宛の宛名を書き、切手を貼る)

けっこうありますね。入手元としては、総務省TSSJARDがあり、微妙に書式が異なったり、ファイル形式も、TSSはエクセル、JARDはWordだったりと、差があります。自分で準備する場合は、利用する保証機関からダウンロードしましょう。

このうち、難物が「無線局事項書及び工事設計書」です。例えば、TSSが上記の書類ダウンロードページで公開している記入の注意を見てみますね。

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アバーッ! 爆発四散! こんなん素人が書けるわけないだろ! 私もまずは、ネットで色々調べながら頑張ってみましたが、結局は挫折して戸澤事務所に依頼した次第です。捺印など、指示のあるところに少し書き込むだけで完成する状態にまでもっていってくれます。しかも、エクセルファイルで作成してくれるので、系統図に関する情報を書き換えれば、以後の申請にも使い回せます。費用は、系統図3種類までOKで、税込み8,000円でした。この費用には、系統図も含まれています。したがって、系統図が1,000円+税なので、3種類なら、書類作成部分は実質5,000円弱ということになります。これは、作成に必要な知識と手間、さらに後々、送信機を追加したときの申請にも使い回せることを考えると、十分以上にその価値があると思います。なお、この3種類までOKというのは、あくまで私が依頼したときの過去の話なので、現在どうなっているかは、依頼するときに確認してください。

自前で書類を作る場合は、どちらの保証機関に申請するかでも違いがあり、また、量も膨大になりますので、この記事中で詳しくは解説しません。上記のTSSとJARDのページにそれぞれ詳しい解説が載っていますので、参照してください。最近は、記入例をブログなどで公開しているのも見かけるので、それらを参考にすればなんとかいけるかもしれませんね。

「保証料」と「開局手数料」の支払い

関係費用を支払うのですが、保証機関への「保証料」と、総務省への「無線局開局の免許申請手数料」を、それぞれに払う必要があります。

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まずは、保証機関への「保証料」。これは、銀行や郵便局への振り込みです。料金は以下の通り。消費税増税後のものですが、振込先などは、TSS「アマチュア局保証業務のご案内」と、JARD「基本保証(開設・変更・増設・取替)」で最新の情報をご確認ください。

TSS:送信機の台数によらず1回4,800円
JARD:送信機1台目4,100円、以後、1台ごとに1,000円

したがって、送信機を2台以上申請する場合はTSSがお得になっています。いずれの場合も、振り込みを行ったことを証明する書類を、先述の「アマチュア局の無線設備の保証願書」に添付します。ネットでの銀行振り込みなら、振り込み状況の控えを印刷すればOKです。

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もう一つの、総務省への「無線局開局の免許申請手数料」は、収入印紙となります。ところで、政府も電子マネー普及を目指すなら、まずこの収入印紙ってシステムもなんとかして欲しいとつくづく思います。ともかく、書類申請の場合は4,300円です。先述の「無線局免許申請書」に、4,300円分の収入印紙を貼りつけます。

なお、電子申請の場合は、電子納付手続で、手数料は2,900円と、1,400円安くなります。その場合は、総務省の操作手順書(ご利用の手引き)のダウンロードから、「STEP3 手数料納付」をご覧ください。

保証機関への書類送付

これで書類がすべて整いました。以上のものを、保証機関へと送付します。これだけの量があるので、当然、定形外。重量も、最小の50gに収まるか微妙。ちゃんと郵便局で出さないとですね。

「無線局免許状」の受け取り

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書類申請であれば、書類を保証機関の方でチェックして、そのまま開局申請に回してくれるので、あとは、待つだけ。書類に問題がなければ、約1ヶ月で「無線局免許状」が届きます。ほんとうに長かった。私の場合、自力でやろうとして挫折したりもあって、これを手にしたときは、なんか、感無量でした。

やったー、終わったーーーー!!……とは行かないんだな、まだ。

「電波利用料」の支払い

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無線免許状が届いてからしばらくして、さらに「電波利用料納付のお願い」なるものが届きます。1年300円。5年分のまとめ納入が可能で、その場合は、1,500円。これを振り込んで、ようやく手続き完了です。お疲れ様でした。マジで。

4.申請方法による手順と費用の比較

ここまで説明してきたように、開局までの道のりは、いくつかの選択肢があり、それによってかかる費用も違ってきます。以下に、プラン別に必要な手続きと費用をまとめてみました。

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もちろん、この図も一例で、例えば、はじめから国内のショップで系統図付きの送信機を買ったり、保証機関でどっちを選ぶかなどによっても、金額は変わってきます。それでも、大体のイメージはつかめるのではないでしょうか。

個人的なお勧めは、すでに述べたように、はじめは「プランC」、2回目以降は、その書類を修正して使い回して、「プランB」です。私はそうしています。

5.申請回数を減らすために、カメラ送信機(VTX)を複数のドローンで使い回す

以上のように、この無線局免許取得のための手続きは、非常に手間とお金と時間がかかります。そして忘れてはならないのは、この無線局免許は「開局申請を行った送信機」に対して発行されるため、新しいドローンを買ったなら、送信機が追加されたことを反映する無線局の「変更」手続きが必要になるということです。ドローンの例ではないですが、この手続きを忘れると「こうなる」みたいです。この変更手続きは、多少は安くなるものの、基本的には開局と同じ手続きを踏みます。冗談じゃない! やってられっか! と思いますよね。

ところで、この無線局免許は、「送信機」に対して発行されるもので、「ドローン全体」にではありません。そこで「複数のドローンで送信機のみを使い回す」ことにより、手続きの回数を最小限に抑えることができます。

どのみち、FPVドローンの運用は部品レベルでの改造や修理が必須になってくるので、使い慣れて特製を知っている送信機を使い回すのは、整備性の向上という意味ではそれなりにメリットもあります。

このとき気をつけなくてはいけないのは、無線局免許の対象は、「個別に保証を受けた特定の送信機」であるということです。つまり、同じ製品であっても、複数台運用するならば個別に「開局」申請しておく必要がありますし、新しいものを運用したいならば、種類にかかわらずあらためて保証してもらって、無線局の「変更」手続きが必要になります。例えば、私の場合だと、扱いやすいカメラとの一体型送信機「Eachine TX06」は、3台開局してあります。

6.開局にお勧めの送信機(VTX)3選

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さて、繰り返し述べているように、ドローンのカメラ送信機(VTX)を開局して無線局免許の対象とするには、系統図が手に入らないといけません。そして、上記のように、開局を行った送信機は、出来るだけ使い回したいものです。そこで、私が実際に運用している中から、安くて、扱いやすく、汎用性があり、戸澤事務所で系統図が手に入る、お勧めの送信機を3つ紹介しておきます。当面、この3種類があれば、まず不自由しないでしょう。

Eachine TX06

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まずはこれ「Eachine TX06」。先ほどもちょっと触れた、カメラと送信機(VTX)が一体になっているタイプです。個別にレビュー記事も書いています。必要な機能が揃っていて、難しい設定がいらず、拡張性もあり、ともかく安い。そこそこの性能で、手軽かつ、万能に使えます。価格はBanggoodでだいたい千円台前半。

最安値帯ながら、映像端子も付いていて、ドローンの状態を表示するOSDや、無線で周波数を変更するスマートオーディオなど、高度な機能にも対応しているので、より高度なカメラや送信機を使うようになっても、それらが不調のときの予備として十分に使えるでしょう。また、アンテナの形状がシンプルでしかも真ん中に付いていることから、物理的にドローンに搭載しやすいのも利点です。同様のカメラ付き送信機は、他にもいくつか運用していますが、汎用性という面で、このEachine TX06は圧倒的にお勧めです。

カメラと一体型なので、ドローンだけでなく、ラジコンカーなどにも手軽に取り付けても遊べます。複数台開局して、ストックしておくと、なにかと便利です。

Eachine VTX03S

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これは、送信機のみです。カメラは別に用意しなくてはいけません。「S」の付いている「Eachine VTX03S」と付いていない「Eachine VTX03」がありますが、これは、無線で周波数を変えるスマートオーディオ機能が付いているかどうかの違いです。一人で飛ばす分には、まず使うことはない機能だと思いますが、適宜ご判断ください。これも、価格はBanggoodでだいたい千円台前半。Eachineは、Banggoodの自社ブランドなので、ともかく安い。

ドローンの扱いに慣れてくると、もっと画質のいいカメラを付けたくなったり、録画のできるカメラを付けたくなったりと、欲が出てきます。あるいは、一定レベル以上のドローンは、カメラと送信機が分離している場合が多いです。そういったときに取り替えて使える、扱いやすい送信機です。同様の送信機は多数ありますが、このEachine VTX03Sの利点は、ディスプレイ付きで状態の確認がしやすいのと、ベストセラーなので、何か困ればネット上に多くの情報があるということです。それと、私は、ちゃんと戸澤事務所で系統図を購入しましたが、こいつの系統図はネット上にもかなり転がっていますね。もちろん、そういうのの利用は自己責任で。

欠点でも利点でもあるのは、形状からネジによる固定ができず、固定に工夫が必要なところです。逆に、うまいことすれば適当な隙間に潜り込ませられます。もっとサイズが小さい、「Eachine NANO VTX」などもあり、私はこれも開局して運用していますが、こちらは小さい分、インジケーターが省略されていて状態や操作が分かりにくく、発熱がすさまじい、要求電圧が5Vで、十分な電力を供給しないと動作が不安定になるときがある(個体差かも)など、やや挙動にクセのある玄人向けの送信機になります。

Whoop VTX

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これも送信機のみです。一定以上のランクのドローンに、デフォルトで搭載されている場合が多い、ベストセラー送信機です。ネジ止めで固定しやすい形状と、接続用のコネクターが付いているので、取り外しが簡単にできるのが特徴です。これは、使い回す上では大きな利点です。その分、カメラによっては配線に工夫が必要になる場合もありますけどね。価格はBanggoodでだいたい千円台半ばから後半です。

Banggoodでは、デフォルトでこれを積んでいるドローンのスペアパーツとして、「Happymodel Mobula7 Part Upgrade Whoop_VTX」「Eachine TRASHCAN 75mm Spare Part VTX」「Eachine Novice-II Spare Part VTX」などの商品名で売られていますが、同じもののはずです。

Eachine VTX03Sと機能はほぼ同じですが、これが搭載されているドローンを見ても分かるように、基本的にはバッテリー2つ以上の、ちょっと高度なドローン向け。ただ経験上、バッテリー1つでも、出力25mWにして、構成を考えてやればちゃんと動作します。また、Eachine VTX03Sとは、形状の他、配線も異なります。したがって、この2種類の送信機は、搭載するドローンのスペックや形状、カメラの種類、配線の都合によって使い分けることになります。この2種類のどちらかで、当面はほとんどのFPVドローンに対応できると思います。

7.今後、複数人での運用について、大幅な規制緩和が行われる?

さて、実際に運用してみて、問題になるのが、複数人での運用です。例えば、親子や友人同士で遊びたいとき、ドローンの所有者が無線従事者免許と無線局免許を持っていることは当然ですが、一緒に運用したい人はどうなのか? これは、現行制度では、運用する人はすべて無線従事者免許を持ち、かつ、たとえ運用する機器が共通であっても、人が違えば、それぞれ個別に開局を行って無線局免許も持っている必要があります。

ただし、この件については、大幅な緩和が予定されています。

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先日の北海道新聞の報道によれば、総務省は複数人でのドローンのFPV運用について、今後、無線従事者免許を取得している監督者の監督のもとであれば、ひとりひとりの免許は不要とする方向で検討していくとのことです。想定されるものとしては、親が免許を持っていれば子供などの家族は免許を持っていなくてもOK、学校の部活動や地域の同好会などで指導者が免許を持っていればその他の参加者は免許を持っていなくてもOK、といったケースがあるでしょう。

一方、今回の記事で扱った「無線局免許」について、今後どうするつもりなのかは、私が知る限り、今のところアナウンスがありません。ただ、ここも変えておかないと上述の制度変更とかみ合わないので、まとめてなんらかの変更があるんじゃないかと思います。

これは、かなり思い切った進展です。だって、無線従事者免許と無線局免許を持った人が一人、監督者として立ち会えば、その他の人はもう免許が必要なくなるってことですから。無線免許を持った人が、その場で運用するすべての送信機を「開局」している必要性はありますけどね。早急に実現してほしいものです。

8.まとめ

これにて、FPVドローンの合法運用にたどり着きました。連載にあたっては、はじめから前回と今回の2種類の免許取得の記事こそ、中心となるものとして構想していましたが、情報量が多すぎてどうまとめようか、推敲を重ねてやっと投稿にこぎ着けました。情報提供として、読み物として、ちゃんと成立しているかはなはだ不安ながら、とりあえず肩の荷が下りた思いです。今後も、ドローンの間口を広げるネタは色々ありますので、まだまだ連載は続けていくつもりでおります。

さて、一連の手続きを終えてみて、やはり感じるのは、現行の制度があまりに旧態依然としているということです。あらゆる面で、基本的に、「手軽には持ち運びにくい設備を使った(せいぜい、車に積んでや、背中にずっしり背負っての移動)」「長距離無線通信」を前提として、制度設計がなされている。連載中に、さんざん繰り返していますが、私は規制が悪いと言っているわけではありません。規制を行うからには、その目的、この場合は「電波を発信することによる他者の権利侵害への可能性」がきちんと評価され、運用者にそれを防ぐような技術と知識を与えて、適正な運用が行われるように導く、そういう制度になっていなければ意味がないと考えているだけです。

実際、注意深く関連ニュースに目配りしていれば、長距離通信に関しては、現行の制度に基づく違反への取り締まりはきちんと行われているようです。つまり、通信インフラの保護や国防といった目的についてなら、現行の制度はそれなりに機能しているようです。

一方、ここまでの「無線従事者免許取得」「保証」「開局」というハードルを乗り越えることによって、ドローンのFPV運用や5.8GHz帯の短距離通信についての、どう行っていけばよいかを考える知識や経験が得られたか、あるいは、この制度がそれらの不適切な利用を防ぐのに役立つか、を考えれば、それは明らかに「NO」と言わざるを得ません。

ただ、ドローンを日本の技術・経済発展のカンフル剤のひとつに、という考えは、だんだんと政治的な力も持ち始めているようで、上述のように制度の変更は動きはじめています。もちろん、規制緩和が進むからといって手放しで喜べばいいってものではなく、電波全体の話をするなら、例えば経済優先で健康被害などへの評価がきちんとなされないまま、制度改革が進むのも問題です。制度が流動的だからこそ、運用する各自が、適正な運用について考えながら知識と経験を得ていくことは、ますます重要でしょう。要は、関心を持つ人が増えればそれだけ、娯楽としてもビジネスとしても発達できる、より合理的な制度ができていくだろうということです。

そのためには、まずは一人でも多く、きちんと合法運用を行う人が増えていくことが大切です。今後の制度変化に希望が見えていますので、面倒でも、清く正しい運用を行うことで、適切に扱えばドローン(ひいては新しい様々な技術)は社会に定着できるんだということを示していきましょう。

9.関連リンク

※ドローンに必要な資格や免許について知りたい人はこちら
今こそドローンをはじめよう! 日本でドローンを楽しむための資格は?免許は?

※ドローンの知識をじっくり学びたい人はこちら
「法令遵守でドローン」記事一覧

系統図の購入、書類作成などの依頼

戸澤洋二氏のウェブサイト
5.8GHzFPV用送信機のアマチュア無線局申請書類作成支援:JDRI

保証機関

TSS保証事業部:TSS
アマチュア局保証:JARD

開局の電子申請

電子申請・届出システムLite:総務省

関係書類のダウンロードや参考資料

ユーザーサポート:TSS
ドローン(FPV)の免許・増設に係る手続参考資料:JARD
各種書類のダウンロード(アマチュア無線局用):総務省

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