法令遵守でなんとかドローンを楽しみたい!(その3) ― FPVカメラの運用に必要なアマチュア無線免許を取得しよう

法令遵守でなんとかドローンを楽しみたい!(その3)
こんにちは、natsukiです。連載3回目の今回は、いよいよ本丸攻め、電波法という強大な壁に立ち向かっていきます。ドローンを楽しむために電波法でクリアしなくてはいけない部分は、操縦機とカメラです。操縦については、前回の「屋内で楽しめるFPV(ドローン視点)操縦のドローンを作ろう」に書いたように、ベース機に技適を通っているものを選ぶか、技適の通った操縦機を別に買うか、ということでクリアできます。これは、対象の製品を買うだけなので、話は簡単。問題は、FPVに使う、遅延の少ない5.8GHz帯電波を発信するカメラの規制クリアです。

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カメラの規制には、大きく分けて2種類のものがあります。ひとつは、電波発信を行う使用者に免許が必要なこと、もうひとつは、カメラの発信器と周波数が法律に適合していることです。今回の記事では、操縦者の免許取得をとりあげます。カメラの発信器については、次回で。

1.必要な免許と利用できる周波数

必要な免許は「第4級アマチュア無線技士」

ドローンのカメラ発信器が発する電波は、5.8GHz帯のものです。この電波を扱うのに必要な免許は、「第4級アマチュア無線技士」以上になります。

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この表は、日本アマチュア無線連盟(JARL)の無線従事者資格一覧表から。この表中の「2 空中線電力20W以下の無線設備で30メガヘルツを超える周波数の電波を使用するもの」に該当します。

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より正確には、この同ページの表中の赤線を引いた部分です。慣例として「5.8GHz帯」と呼んでいますが、このように、制度上は「5600MHz帯」と称されるようです。以下、面倒なので5.8GHz帯で勘弁してください。この周波数帯だと扱える出力は2Wまでとのことですが、ドローンのカメラ通信に使用する電波の出力は、ほとんどが25mWから200mWで、強力なものでもせいぜい400mWなので余裕です。

なお、もし海上無線通信士・航空無線通信士・陸上無線技術士・総合無線通信士のいずれかの免許を持っているなら、等級に関わらずそれでもかまいません。今回の記事では、おそらく最も取得が容易であろう第4級アマチュア無線技士のみを扱います。まあ、私が持っているのがそれだけってことですが。

使用できる周波数

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実は、免許を持っていれば5.8GHz帯の電波を使い放題というわけではなく、さらに利用できる周波数は以下の7種類に限定されています。

5705MHz、5740MHz、5745MHz、5780MHz、5785MHz、5790MHz、5800MHz

理屈はややこしいので省略。ともかく、実際にドローンを飛ばす際は、この周波数に設定してやる必要があります。参考までに、5.8GHz帯利用カメラ「Eachine TX06」のレビュー記事の動画で、ちゃんと5705MHz(5.705GHz表記)を利用していることをご確認ください。

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これは、Eachine TX06の利用可能周波数一覧表です。一般的なFPV用カメラであれば、これらの周波数は利用可能ですのでご安心ください。正確には、一般的なFPVカメラに設定されている周波数のうち、日本の法律に適合するのがこの7つということなんですけどね。また、7つといっても、あまり近い周波数は混線してしまうので、実際に複数人で遊ぶ場合は、3つくらいしかとれないでしょう。

屋内で飛ばすときは、念のため出力25mWで

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一応、電波干渉の話もしておきましょう。画像は、総務省の電波利用ホームページ「ドローン等に用いられる無線設備について」から。ご覧のように、5705MHzあたりの電波は、無線LANの5GHz帯とギリかぶります。他の周波数も、将来的にはかぶるようです。なので、あんまり強力に電波を出すと干渉の危険がなきにしもあらずです。まあ、2.4Ghz帯なんかグッチャグチャに飛び交っているのはご承知のとおりなんですが。で、もともと波長が短い分2.4GHz帯よりも減衰が激しいので、屋内で飛ばすときには出力25mWにしておけば、お隣さんのWi-Fiに迷惑をかけるようなことはまず無いでしょう。ちなみに、愛用のEachine TX06は出力25mW固定です。

2.取得方法

では、いよいよ取得方法です。アマチュア無線技師免許取得の手続きは、「試験合格による申請資格獲得」と、「申請による免許取得」の2段階に分かれています。試験に受かれば即OKというわけじゃないんですね。まずここからして、分かりにくくめんどくさい。

試験か、講習か

免許申請の資格を得るためには、自分で勉強しておいて「試験のみを受ける方法」と、「講習を受ける方法」があります。講習を受ける方も、最後には試験を行うのですが、当然、確実性は高くなります。もちろん、お金も多くかかります。私の場合は、少しでも安くと、試験を受けて取得しました。ただ、講習なら色々面倒な手続きも手取り足取りやってくれるので、そういったことを調べて行う手間と労力を考えると、必ずしも講習が割高とは言えないかもしれません。

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講習の場合は、QCQや、日本アマチュア無線振興協会(JARD)日本アマチュア無線機器工業会(JAIA)などが開催していて、だいたい、2日間で費用はコミコミ2万数千円が相場です。ええ、2万数千円です。たいていのFPVドローン本体より高いです。もっとも、未成年の場合はかなり大幅な割引があります。小中学生くらいで免許を取得したい場合は、なんやかんやの手続きの手間とかも考えると、講習のほうがよさそうかも。

試験日と会場を調べる

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自分で試験を受ける場合、日本無線協会(JRI)の主催する試験を受験することとなります。それにしても、似たような名称の関連団体の多いこと多いこと。この辺は、突っ込み出すと余計なことを口走らずにはいられなくなりそうなので、深入りしません。

さて、試験の実施形態は3つあります。ひとつは、予約して受けるもので、地方の場合はこれしかありません。JRIのホームページから申し込み日程と実施場所・日程を確認して申し込み、受験してください。ひとつは、東京都中央区晴海にあるJRIの本部で受けるもので、これは当日の申し込みで、おおむね毎月実施しています。この場合、試験結果は試験終了の約1時間後に発表され、必要書類が整っていれば、その場で免許申請手続きも可能です。最後のひとつは、毎年夏に幕張メッセで行われるハムフェアで行われる試験で、これも当日申し込みが可能で、試験結果も試験終了の約1時間後に発表されます。ところが、なぜかハムフェアでの試験の場合は、合格が決定してもその場での免許申請はできません。後日に申請することになります。ちなみに、私は幕張メッセでの試験で合格し、後日に申請して免許を取得しました。

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受験勉強をする

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さて、受験勉強。とはいっても、なんと、アマチュア無線技師免許の問題は、必ず過去問から出題されるという慣例があります。計算が必要な問題なんかだと、数値もそのまま…… それでいいのか? まあ、過去問の蓄積もそれなりに数があるので、全部丸覚えするよりは理屈で理解した方が基本的には早いと思います。その上で、理解がめんどくさそうなものは丸暗記しちゃいましょう。Amazonあたりで、アマチュア無線技士試験過去問で検索すれば過去問全部載ってる本が千数百円で売っていますので。あるいは、過去問出題サイトもあります。管見の限り、一覧になっているサイトはなく、一問一答形式で出題するサイトばかりですが、自分なりに整理してまとめればそれだけでもいけるでしょう。実際、私の場合は、過去問サイトを1週間ほどメモ取りながら解いて、受験勉強しました。本買った方が楽なのは確実ですけどね。

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内容は、法規と、技術に関する無線工学に大別されます。法規は、覚えるしかない。無線工学は、基礎的なものだと電流電圧抵抗、右ネジの法則やフレミング左手の法則のような、中高理科で習った内容もあり、また、電波の波長・波形と特性、アンテナの形状と特性、送信機や受信機の構造などなど。基本的に、法規も技術も、すべて「音声通信」を前提としたものです。ドローン運用に関わるものは、一切といっていいほどありません。アンテナの形状と指向性の関係くらいかな。

FPVドローンの運用は、確かに、いろいろと注意しなければ他人を危険にさらすことにもなりかねないものです。したがって、使用者が危険性の性質と責任を自覚できるように、なんらかの免許制度をが必要にという話のスジは通っていると思います。でも、この内容だと、FPVドローン運用のリスクと責任について認識することは全く不可能ですよね!

受験と免許申請に必要なものを用意する

受験、および免許申請のために準備するものを列挙します。いちおう、終身使える(延長申請は要りますが)国家資格だけあって、書類がけっこう面倒です。金額については、消費税増税後の段階で調べましたが、多少変わっているものはあるかもしれません。

受験のために必要なものは次の通り。

・申し込み用紙代と手数料:約5,000円(受験方法によって微妙に金額が違う)
・証明写真:縦3.0cm、横2.4cm
   (普通紙に印刷したものなどは不可、免許申請にも要るので、計2枚)

手数料は、当日申し込みの場合は現金。事前申し込みの場合は、郵便申請かインターネット申請かによって違ってくるので、ホームページを参照してください。

合格したとして、免許申請に必要なものは次の通り。

・無線従事者免許申請書(試験会場で申請できる場合は170円で販売、
   自分で申請する場合は総務省ホームページからダウンロード)
・証明写真:縦3.0cm、横2.4cm
・氏名および生年月日を証明する書類(住民票の写しなど)、もしくは住民票コード
・手数料(収入印紙1,750円、試験会場で申請する場合は現金2,100円)
・切手を貼付した返信用封筒

合格後、すぐに申請を行う場合は、まとめて用意しておきましょう。収入印紙が半端な数だったり、住民票が必要なのがくせ者ですね。住民票は、最近はマイナンバーカードを持っているとコンビニで発行できる場合も多いようですが……暗証番号を間違えてロックされ、ロック解除のために本人確認書類を持って結局役所に行くという本末転倒なことになったのは私です。

試験を受ける

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試験を受けます。先述のように、私は幕張メッセで当日申し込みをして受験しました。必要なものは、上記のとおり。案内の筆記具に「ボールペンなど」の表記があったのでボールペン持っていったら、マークシートなので鉛筆じゃないとダメと言われて、会場で買う羽目になりました。注意。

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一時間ほど待てば、結果が掲示されます。無事、一発合格。

免許を申請する

免許を申請します。私の場合は、合格が分かったあと、後日に申請しました。

なお、総務省の電子申請システムは、免許取得後のカメラの開局申請には使えますが、免許取得には使えません。

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1ヶ月弱で、無事、免許が届きました。これで、とりあえず一段落。

免許取得のフローチャート

以上の、免許取得までの道のりをフローチャートにまとめると、次のようになります。

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3.免許取得に必要な合計金額

講習を受けずに試験を受けて取得するとして、免許取得までの合計金額は次のとおり。

・参考書:千数百円程度~
・試験手数料、試験申込用紙、受験票郵送料など:約5,000円
・証明写真:コンビニで数百円~
・試験会場までの交通費
・住民票発行手数料:300円
・収入印紙:1,750円
・返信用切手:84円

以上、参考書代と交通費を除いて、アバウト8,000円

でも安心するのは早い。ここから、カメラの規制クリアにまだまだかかりますよ。

4.まとめ

以上、じつに空しい作業でした。何が空しいかって、なんといっても、試験内容がドローン、というかカメラの運用に何ら資することがないということ。これが、実際の運用に役立つなら、納得しますよ。しかし、繰り返しますが、この免許は完全に音声通信をすることのみを想定したもので、カメラについては、実際の運用どころか、ドローンなどを自作するための知識にもなんの関係もありません。免許というものは、知識の乏しいものが運用するとなんらかの社会的問題が発生しうるものに対して、その問題発生を未然に防ぐために設ける制度だと思うんですが、これでは、免許を取ることの意味がそもそも無い。

そして、さらに空しくなるのが、「音声通信を行う」目的であるならば、この免許はそれなりに実際的に作られているということ。この免許が技術的に適当なものかどうかを判断する能力は、私にはありません。しかし、もしも、まだ携帯電話が普及していない時代、私が音声通信を趣味として行いたいと思ったら、この免許のための学習はとてもワクワクするものだったと思います。どのような部品を用意して、どういうふうに組み立てればよいか。うまくつながらなかったり雑音がひどい場合には、どう対処すればいいか。いざ、通信がつながったら、どういう符号でやりとりをすればいいか。よく、アマチュア無線の趣味としての広がりが、日本のものづくりを支える一助となったというような話を聞きます。それが実際のところどこまで影響があったのかは分かりませんが、少なくとも、音声通信の技術に対する興味をかき立て、受験者に学習の喜びを感じさせる内容にはなっていると思います。何が言いたいかというと、かつては、こんなふうに日常を越えた技術に人を向かわせるような、制度設計と運用ができていたし、それは不可能ではないって事ですよ。

私は、規制や免許制度が悪いとは思っていません。それは必要なことです。しかし、制度設計の方向性として、やっていいことと悪いことを「お上」に決めてもらって下々は思考停止では、禁止事項をどんどん増やして監視社会化を進めるだけ。それよりも、その規制に関わったり免許を取る人に、必要な知識と経験を習得させ、なにより使用者各自の責任を自覚させるように導くのが、理念的にもそうあるべきだし、経済的にも結果的にリーズナブルで、利益すら生み出すと思います。そんなもの理想に過ぎないとニヒリズムに陥るのは勝手ですが、少なくともこのアマチュア無線免許は、「音声通信のための」免許としてはそれなりによくできていると思いますよ?

あとは、改革への原動力となるはやはりカネの力ですね。電波規制絡みでやたら関連団体が多いのは気になるところですが、今のところ、そういった関連団体に関わる人たちが、こじつけでもFPVドローンの合法利用への道を拓いてくれているのも事実。一部の人は気づいていますよね、これ、うまくやればビジネスになるって。この連載で繰り返し主張しているように、もっと娯楽としてのドローンが普及してくれば、制度も変わってくるチャンスはあるはずです。

ということでみなさん、いくら無駄に思えても、バンバン免許を取得しましょう。「規制内容に対して何の意味もなさない免許」を保持する人が増えることも、制度改革への圧力になりますからね!

5.関連リンク

法令遵守でなんとかドローンを楽しみたい!(その1)- まずはじめに日本の規制を一通りチェック
法令遵守でなんとかドローンを楽しみたい!(その2)- 屋内で楽しめるFPV(ドローン視点)操縦のドローンを作ろう

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コメント

  1. 破魔左右衛門 より:

    デジタル信号通信は第三級陸上特殊無線技士が必要かと

    • natsuki より:

      そこはよく議論になるところですよね。

      陸特にしろ、アマ無線にしろ、本来的にドローンに利用することを想定した制度ではないので、制度の規定から明確な解答を導き出すのは不可能なのがめんどくさいところです。法律にどう書いてあるかよりも、実際に運用を行っている総務省の解釈次第なわけで、最終的には総務省に聞いてみるしか答えは出ません。現段階で、私が知りうる限りのところは、以下の通りです。

      5.8GHz帯で、以下の条件を満たしている場合は、アマチュア4級で事足ります。
      ・アマチュアとして、つまり収益を目的とせずに利用する。
      ・出力2W以下。
      これは、JDRIあたりが総務省と掛け合ってOKを出したことなので、ここまでは確実です。実際、記事中で触れたような実際に免許に関わる業務を行っている責任ある団体の多くが、「これでドローンのFPVの合法運用ができますよ」ということを説明しています。それが間違っているなら、当然、総務省からの指導が入って修正がなされるはずです。

      問題となるのは、次のような場合ですね。
      ・収益目的で運用する場合。
      ・遠距離操縦のために大出力を出す場合。
      ・記事中に触れた7種以外の周波数を利用する場合。
      産業用ドローンなどだと、あてはまる場合が多くなると思います。

      ただ、今回の記事は、あくまで個人の娯楽として楽しむことを目的としています。なので、収益目的の場合は度外視させていただきました。
      また、遠距離操縦のための大出力は、そもそも、それだけの出力を出すにはゆうに200gを越える航空法対象内のドローンが必要で、その場合は目視飛行が義務づけられており、もし目視外飛行を行うなら許可が必要なため、アマチュアでの運用はまず考えにくいと思います。また、周波数の種類についても、これ以外の周波数が必要なのは産業ドローンで、これもアマチュアで運用するものではありません。

      というわけで、第三級陸上特殊無線技士はスルーさせていただきました。

      現実的な問題として、収益目的や業務としての利用の場合は、陸特を取る必要があるようですね。

  2. 匿名 より:

    もう少ししたら法律変わる

    • natsuki より:

      関連法の細かい改正は数カ月単位で行われていますしね。ぜひとも、監視社会化を進めるのではなく、健全な知識と技術が普及して、新技術への啓蒙が進むような制度に向かっていってほしいと思います。

  3. 石川直明 より:

    気になりましたのでコメントさせていただきます。

    小生アマチュア無線基地局を運用しているのですが、素朴に思ったことをお聞きしたくく。
    アマチュア無線の目的と合致しているかなどは別の方の投稿で回答して頂いておりますが、4アマで利用する周波数変調や無線機の技術適合証明書などが必要になるかと思われます。
    そのあたりは後日書かれることになるのでしょうか。

    批判的にお伝えしているわけではないのですが、アマチュア無線で安易に運用できるという想定は難しいのではと思っているところです。

    • 石川直明 より:

      大変失礼いたしました、最初の記事に技適の話には触れられていますね。

      • natsuki より:

        はい、次回は、技適&開局についての予定であります。書き方がなかなか難しく、思案しているところですが、ここが最大の山場なので、気合入れて執筆いたします。
        ドローン入門1年程度のにわかで、お楽しみに、と言えるほどのクォリティは難しいですが、少しでも仲間が増えていけばと思っています。温かく見守りください。