こんにちは、natsukiです。今回より、ちょっと挑戦的なことをさせていただきます。「法律遵守でなんとかドローンを楽しみたい」という、不定期連載記事を書かせていただきたいと思います。宙を思いのままに飛び回り、さらにカメラで鳥や虫のような視点を体験できるドローンは、非常に魅力的なガジェットです。しかし、ドローンが安価に手に入るようになってきた一方で、安全面から、あるいは前時代的な規則から、日本ではその使用にとっても非常にものすごく厳しく面倒でときに理不尽な制限がかかっています。そんな状況の中で、ドローンを趣味として「楽しむ」にはどうすればいいのか? というか、今の日本でそんなことが可能なのか? 実際に、ずぶの素人の段階から、規制をクリアしたドローンの入手・製作・使用などをやってみて、確かめてみよう。というのが連載の趣旨です。こういった視点は、ドローンでこそ顕著ですが、普段ウインタブで扱う様々なガジェエットにも、ある程度共通する部分のあることだとも思います。
初回となる今回は、まずはじめに、大前提となる日本のドローン規制を概観しておきます。
なお、ひとくちに「ドローン」といってもすさまじく様々な種類と特性があり、そこに日本の規制をどうクリアするかという要素が加わるので、どうしても、個人的な趣味と見解の強い連載にならざるを得ません。また一方で、個別の製品を詳しくレビューするのではなく、ドローンを楽しむための「ロードマップ」のような記事になると思います。その点、生暖かい目でお手柔らかにご覧いただくようよろしくお願い申し上げます。
え? 私が楽しんでるかって? そりゃあ、もちろん、「手段のためには目的を選ばない」人間ですので(笑)
目次
1.この連載記事の、日本のドローン規制に対するスタンスと問題提起
デリケートな問題だけに、基本的なスタンスをはじめに表明しておきます。めんどくさいですが我慢してお付き合いください。
まず、連載にあたって一番はじめに強調しておくことがあります。それは、「法令の目的には無条件で賛同する」ということです。日本で生活する以上法令を遵守しなくてはならないということはもちろんながら、個人的にも、ドローンをはじめとした電子機器に関する諸法令の、制定される「目的」については納得しています。その「目的」とは、いうまでもなく、「安全を確保して物理的な事故を防ぐ」「電波干渉による安全・健康・インフラ等への障害を防ぐ」「プライバシー侵害・騒音等の他者への権利侵害を防ぐ」といったものです。
ただし、です。その「目的」を達成するための「やり方」には大いに疑義があります。例えば、電波に関する規制をクリアするためには、非常に面倒で手間と時間とお金がかかります。しかし、そのうち詳しくみたいと思いますが、この規制があまりにも実態とかけ離れている。そんなものが、上のような法令の「目的」を達成するために適切、いや、そもそも有効であろうか。このようなことは、ドローン規制に限らず広く考えるきっかけにしていただければ幸いです。
そんなこと言ったってどうしようもない? そうかもしれません。しかし、規制強化の一方で、レースの開催など、娯楽としてのドローンはじわじわと社会に浸透しつつありますし、また、現在、曲がりなりにも電波規制への「抜け道」が存在しているのも、先人の苦労の結果です。まだまだ状況は流動的なため、こういった場で意見を表明しておくことは、100%ムダとは言い切れないと考えております。
ということで、繰り返しになりますが、比較的オピニオン性の強い記事になることはあらかじめご了承ください。
2.日本でドローン規制 その1 ―「飛ばせる場所」について
それでは、現状の日本における、ドローンの飛行についての基本的な規制を確認しておきます。ドローンに関する規制は、リアルタイムでどんどん変更されており、例えば、今年に入ってからだけでも、5月、9月に関係法の改正が行われています。以下にまとめた要件は、あくまで記事執筆現在のものです。国土交通省「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」などから、常に最新情報を確認してください。もちろん、何らかの業務として必要な場合、以下の規制は所定の申請によって特別に許可される場合もありますが、今回は娯楽としてのドローンを考えるため、それは考慮に入れません。
「航空法」による全国的規制
まず、航空法による規制があります。航空法においては、規制の対象となるのは原則として、200g以上のドローンとなります。
・空港付近での飛行禁止。
・人口密集地での飛行禁止。この「人口密集地」は定められたもので、都市部のほとんどの地域が該当します。空港周辺の飛行禁止エリアともども、「SORAPASS」での確認が便利です。
・第3者の30m未満に接近する飛行禁止。「第3者」には、人間だけでなく、車や建物、橋梁、高架、電柱、電線、信号機、街灯など、およそすべての建造物が含まれます。
・高度150m以上での飛行禁止。
・目視外飛行禁止。カメラを通した画像を見てのいわゆるFPVによる飛行は、目視外飛行となります。
・夜間飛行の禁止。
・ドローンからものを落下させることの禁止。
・イベント会場での飛行の禁止。
・危険物輸送の禁止。
・飲酒操縦の禁止。
・危険飛行の禁止。
・事前準備、確認の義務化。
・飛行時の衝突予防行為の義務化。
はじめの3つの規制だけで、もう、日本で飛ばせるエリアは非常に限られてきます。カメラ映像のみによる飛行も、200g以上のドローンでは完全禁止です。ということで、200gオーバーのドローンを「娯楽」として楽しむのは、あまりにもハードルが高くなっています。じゃあ、200g越えなければいいじゃん? いやいや、それはその通りでも、はたから見た場合、普通の人はまずこの200gという規制ラインを知らないですし、見た目で200g以上か以下かを判別するのも困難ですから。
その他の法令による規制
また、航空法以外でも、例えば以下のような規制があります。これらは重量に依らないため、あらゆるドローンにあてはまります。
・地方自治体による飛行禁止エリアの設定。都道府県、もしくは市町村レベルで、公園などでの飛行禁止条例が次々と制定されています。
・私有地上空での飛行は、土地の所有権は上空にも及ぶため、不法侵入などの罪に問われる可能性がある。
・道路上空での飛行は、道路交通法違反の可能性が高い。
・防衛関係施設、オリンピックなどの国際イベント関係施設近辺での飛行禁止に関する法令も次々と制定されています。
・この他、河川、海上、港湾など、エリアや施設による個別の飛行禁止規制もあります。
特に、地方自治体の条例レベルの規制は厳しく、なかでも東京都は、オリンピックのこともあって神経をとがらせています。上の画像は東京都のポスターで、先日、家族旅行で東京都の僻地に行った際、「こんなところでドローン飛ばせば気持ちいいだろうな」と思ったら、しっかりこのポスターが貼ってありました。各飛行禁止エリアを定めた「小型無人機等飛行禁止法」については、警視庁のホームページにも解説がありますが、なにしろそのページの分類が「平穏を脅かす脅威」です。鬼の首を取ったように、ドローンの危険性を訴えるような報道も相まって、東京都をはじめ、「ともかくドローンを見たら110番」な気配が広がっている感があります。不用意なドローンの使用は、最終的に罪に問われなくても、なんらかのトラブルに発展しやすい情勢であると言っていいでしょう。
また、規制ではありませんが、高圧線、変電所、電波塔及び無線施設等の施設の付近などでは、電波障害が起こる危険があります。その他、米軍基地周辺での飛行禁止も呼びかけられています。米軍は超法規的存在ですからねぇ……
マナーとして
以上の規制に引っかからなくとも、もちろん大前提として、マナーとしての問題があります。たとえ法令遵守で飛行しても、何らかの事故を起こして他者や他者の財産を傷つければ当然のことながら罪に問われるわけで、そのような危険性を感じさせる飛行はマナーとして避けるべきです。
たとえ200g以下でも、野球のボールだって約150g。レーシングドローンなんかだと、そのくらいの重量で時速100Km/hくらい出るのもザラなので、プロ野球選手がチェーンソーを投げているようなもんです。だからまあ、ボール遊びすら禁止の公園が増えている昨今のご時世では、ましてやドローンなんかはバリバリに規制が必要というのも、当然と言えるでしょう。個人的にも、屋外飛行に対する以上のような規制は、大筋において狭い日本ではやむを得ないと思っています。ただ、何でもダメと「規制」を先行させるよりも、道交法に準じるような立法で「責任の重さ」を明確化する方が重要だろうという気はしますけどね。
3.日本でドローン規制 その2 ―「電波」について
あたりまえながら、ドローンの運用には、電波の送受信が必要です。そして、ここにも規制がかかかります。ドローンの運用に関係する電波は、通常は上記の3種類でしょう。特殊な個別の機能は、それぞれ判断してください。まず、電波に関する法規制の前提として、日本の法律では、電波を「受信」すること事態についての規制はありません(もちろん、盗聴など受信によって行う内容は罪になり得る)。従って、人工衛星を利用したGPS機能については、こちらから電波を発信しているわけではないので、気にする必要はありません。問題は、その他の2種類、つまり、操縦のために操縦機から発する電波と、カメラを積んでいる場合に手元に映像を送る電波です。
「技適」による規制
これは、ウインタブ読者の皆さんには今さら説明するまでもないでしょう。日本国内で電波を発信する機器は、「技適認証」を受けている必要があります。
で、受信に規制はないので、具体的には、コントロールを行う操縦機(プロポ)と、もしカメラが付いていればカメラの電波発信装置(VTX)の2カ所に技適が必要です。
海外通販で購入するドローンや部品には、基本的に技適は付いていません。ただし、例外もあるので、そのあたりは必要に応じて触れたいと思います。Amazonや楽天など、国内通販で販売しているものは、技適のあるものと無いものがあります。なにしろ、使用者には罰則が科せられるのに、販売者はおとがめなし(よっぽど悪質な場合は、制度上は販売停止くらいはできるらしい)というフザけた制度ですから、購入の際は、買う側の責任で商品情報をしっかりチェックしてください。
「電波法」による規制
これは、カメラからの電波に限定した話です。カメラからの電波には、2.4Ghz帯か5.8Ghz帯の2種類があります。2.4Ghz帯の場合は、技適さえ認証されていれば問題ありません。ところが、2.4Ghz帯の電波では、映像に遅延が生じる可能性が高く、一瞬の判断が必要とされるドローンの操縦には適しません。なお、空撮向けドローンの多くは2.4Ghz帯のカメラを搭載していますが、ガチな空撮ドローンはジンバルという物理的なブレ防止機構を積む都合上、ほとんどの機種は200gを越えます。そして、通信画像を通じての操縦は法律上「目視」とは認められていないので、従って先述の航空法により、この画像を頼りに飛行を行うことは、違法です。これらの理由から、2.4Ghz帯を使っているカメラは、あくまで空撮の構図を確認するためのみのものと考えるべきです。
一方、5.8Ghz帯の電波を使えばほぼ遅延なく画像を送受信することが可能で、「ドローン視点の画像(FPV)」による操縦には、この5.8Ghz帯の利用が必須です。ところが、日本ではこの5.8Ghz帯の電波を発信するためには、「無線従事者免許」が必要で、なおかつ、発信器を「無線局」として、その開設の許可を受けなくてはなりません。ドローンを複数持っていれば、その発信器の部品ひとつひとつに認可が要るということです
この一連の手続きは、すさまじくめんどくさくお金もかかる上に、何よりも、それらの中で学んだり確認したりすることが、実際のドローンの運用に何一つ資することがないという、ほんとうに、ただただ日本の制度の前時代性を思い知らされるだけという、とても空しい作業です。免許取得のために学ぶことが、ドローンの操縦や作成・修理や安全な運用に関わるものなら、納得いきますよ。でも、すべて「無線による音声通信」に関わるものだけで、ドローンとは何の関係もないことばかりですからね!
もちろん、この記事を書いているくらいなんで、私は免許を持って、関係機器を申請して合法運用を行っています。この、あまりにも実体と乖離した手続きについては、それでも越えなくてはならないハードルなので、稿をあらためてご紹介したいと思います。
4.日本国内で「娯楽」としてドローンを楽しむなら、屋内しかない?
以上のようなことから、狭い日本では、屋外でドローンを楽しむのは非常な困難がともなうということが分かります。もちろん、住んでいる場所によって大きく条件が異なるわけですが、私のように都市部在住の場合はそうとうに厳しい。少なくとも、安全面からいっても、規制のクリアという面からいっても、これからはじめてドローンに触ります、というような人は屋外で飛行するのは避けた方がいいでしょう。
じゃあ、どうすんの? ……家の中しかないですね。えー、家の中で飛ばしたって面白いわけないじゃん? ところが、これが案外に楽しめるんです。
手のひらサイズのマイクロドローンなら、屋内でも楽しめる
このような手のひらサイズのドローンなら、屋内でもそれなりに楽しめます。このあたりは、前に記事記事にしたこともあるので、ご参照ください。ただし前の記事では、既製品についてしか触れませんでした。
本当に面白いのは、5.8GHzカメラ付きの自作ドローンです。はい、5.8GHzのカメラなんで、先述のようにそのまま使うと違法です。しかし、これまた先述のように、手間とお金と折れない心があれば、この規制は個人でクリアできます。ともあれ、これの何が面白いか、百聞は一見に如かず、動画をご覧ください。
要するに、ドローン視点での、自分が虫になった感覚での飛行ができます。部屋の中を飛ぶと色々見えてしまうんで、動画は廊下だけですが、これでさらに部屋を行ったり来たり、さらに障害物なんかを作れば、屋内でも十分に楽しめるというのが伝わりますでしょうか。操縦はそれなりに難しいので、練習するたびにうまくなっていくスポーツ的な醍醐味もあります。
え、なんで自作かって? 既製品はないのかって? 要は、やっぱり電波規制がらみです。既製品といえども、5.8GHzの電波を使うものは、当然ながら技適の有無に関係無く規制の対象になるわけですが、既製品だと使われている部品が不明なために、規制のクリアが難しい場合が多いんです。それと、操縦機が技適を通っていない場合には、これはどうしようもありません。自作の場合は、技適の通っている操縦系統と、自力で規制をクリアしたカメラを組み合わせることができるというわけです。
5.まとめ
今回は、ここまでとさせていただきます。次回以降、カメラ付きドローンの作成方法や電波規制のクリア方法など、少しずつ書き足していきたいと思います。ともかく、労力は多いものの、ドローンを「楽しむ」ことは不可能ではありません。そして、少しでも多くの人にこの楽しみを知ってもらいたいとともに、そのことが結果的に、適切なドローンの規制や、安全にドローンを楽しむビジネスの展開への下地になってくれればと願っています。
6.関連リンク
※ドローンに必要な資格や免許について知りたい人はこちら
今こそドローンをはじめよう! 日本でドローンを楽しむための資格は?免許は?
※ドローンの知識をじっくり学びたい人はこちら
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コメント
戯言
自作ドローンの記事楽しみです。
興味はあるんですけどねー。
私は以前に安価なドローンを買いましたが
室内でちょっと遊んだだけで
外に持ち出せるかもよく分からず
そのままほったらかしちゃってますね…
ありがとうございます。ご期待ください。
外だと……、お住まいの場所にもよりますが、なかなか飛ばす場所はありませんよねぇ。うちにも、買ったはいいけどほとんど飛ばしていないやつはあります。あらゆる事について、実際手にしてみないと分からないことの多いジャンルなので、今後の記事が少しでも参考になればと思います。