こんにちは、natsukiです。今回の記事は、「分かっている人向け」の話になります。SSDをはじめ、USBメモリやらSDカードやら、ストーレージ界隈は詐欺製品が横行しやすく、購入に常に注意が必要なジャンルの1つです。日本国内ですら、Amazonなどの通販サイトや、あるいはオークションサイトをはじめとして、明らかな詐欺製品をよく見かけます。その一方、最近では国際的には無名な中華メーカーでも、(保証などの制度はさておき)確かな実力を持つ製品をリリースするようになってきました。昨年は、「蝉族」なんてのが注目を集めましたね。
では、カオスの本場Aliexpressではどうなのか? どの程度の製品をどのくらいの価格で買うことができるのか? 実際の購入も踏まえ、紹介します。前提として、決して購入することをお勧めするものではなく、自分の目利きを信じてスリルを楽しむ(笑)、買い物体験の読み物記事と考えいただければと思います。その点、あらかじめご注意ください。
目次
1.注意事項
SSDの信頼性への議論はいろいろありますが、どこに注目するかは人それぞれで、そこをどうこう言うつもりはありません。当然ながら、もしAliexpressでSSDを買う場合は、SSDの信頼性についての技術的・制度的な知識を持ち、あるいはチップの流通や生産動向などの情報までもを十分に理解した上で、リスクを押し量ることが求められます。そういったSSDそのものについての解説は、この記事ではしません。判断に自信が無ければ、「Aliexpressで買ってはいけません」。
ちなみに、私は何に使っているかというと、さしあたり、データの多重バックアップと、持ち運び用のリムーバブルストレージとしてです。あとは、修理用やサブマシンの改造あたりも視野に入れていますが、いずれにしても、「消えても大丈夫」なことを前提とした運用です。ついでに言えば、私はPCの自作は今のところしませんし、SSDの詳細なベンチマークを取る環境もありません。従って、購入したSSDの基本的なチェックはしますが、より立ち入った詳細な性能評価をする記事ではありません。そこもご了承ください。
2.「目利き」のポイント
Aliexpressでの、目利きのポイントです。部分的には、日本のAmazon等でも通じるでしょう。こういった点を総合して、さらに知識と経験による嗅覚で判断しましょう。
出品者
Aliexpressで買い物をするときに、まず確認するのが出品者です。
記憶ストレージのような危険なジャンルでは、メーカーサイトから直リンクがあるなどの明白な信頼性の根拠がある場合を除き、原則的に、出店1年以内の新規業者は、手を出してはいけません。詐欺業者の多くが、短期間だけ販売してから消えるからです。もちろん、長期出品している出品者でも、詐欺商品の可能性が極めて高い商品を扱っている出品者もいるので、そこは、下記のようにさらに絞り込みます。
なお、前まで、メーカー直売か公式販売代理店であることを示す「トップブランドマーク」というのがあったんですが、記事執筆現在はこの辺が曖昧になっていて、ゴールドマークだったりシルバーマークだったりがあり、しかもその基準が不明なので、マーク類は確実な信用ではなく、あった方がマシ程度の認識でよいと思います。
ブランド
ノーブランド品は、買ってはいけません。特に、外見だけSamsung製品やSandisk製品などの大手メーカー製品に似せてあるノーブランド品は、ほぼ間違いなく詐欺商品と見てよいです。
では、大手ブランドならOKかというと、これも危険。有名ブランドほど、偽造品が出回っているからです。例えば私も、SSDではありませんが、元アメリカで現在は中国に買収された国際大手ブランド「Lexar」の、容量偽装microSDカードを買ってしまったことがあります。また、XIAOMI(MI)やLenovoなど、ストレージ製品は作ってないよね?というブランドのものもあるので要注意、当然、ダメです。もっとも、「蝉族」の語原となったHIKSEMIなんかは、元々の主力商品は防犯カメラで、ストレージは比較的最近になって積極的に販路を広げてきたので、このあたりの判断にはSSDのブランドに対する一定の予備知識が必要です。国際大手ブランドのSSDは、そもそもAliexpressで買うメリットが乏しいとは思いますが、もし買うなら、出品者の慎重な吟味が必要です。
狙い目は、ブランドサイトもある、マイナー中華ブランドのSSDです。Goldenfir、Kingspec、Reletech、FanXiang、Netac、MOVESPEED、Xraydisk、KingBank、WALRAMなどなど。この辺は、信頼性や品質はさておき、真面目に作って売っているブランドです。元々信頼性の薄いブランドのニセモノを作ることも考えにくいでしょう。もっとも、出品者を見極める必要はあります。
微妙なのが、ブランドサイトすら無い、マイナー中華ブランド。Kingchuxing、SomnAmbulist、PUSKILL、Gudga、GOOGAOKE、Bliksem、AOLUSKAなどなど。個人的経験からは、単なる巡り合わせかもしれませんが、KingchuxingとSomnAmbulistで、使えはするんだけれど不安になるトラブルに遭遇しているので、やはり詐欺製品ではないものの、信頼性には疑問を感じます。まあ、くじ引きだと思って。
ちなみに、Aliexpressでも日本のAmazonでもよく見られるのが、OEM製品を、零細出品者が、その出品者のオリジナルブランドとして出品しているもの。パソコン周辺機器では、比較的よく見られる販売方法で、一般的にはノーブランド品と思って買いましょう、というだけです。しかし、ストレージについては、これは危険です。Amazonにおいても、このような聞いたことのないブランド名で販売されているストレージ製品には、非常に危険な臭いのするものがまぎれているので要注意です。もちろん、(繰り返しになりますが信頼性はさておき)まっとうな製品もあるので、これらの判別は、嗅覚ですね(笑)。
容量
さすがにAliexpressで買い物しようという人で、「16TB」とか書いてあるものに手を出す人はいないと思いますが、一応。明らかに異常な容量や、容量を変えてもほとんど価格が変わらないなどの商品は、もちろんアウトです。
商品価格
SSDには、そのときの「相場」というものがあります。正直、日本のAmazonとAliexpressの表示価格では、相場はほぼ変わりません。つまり、日本のAmazonと比べて、相場を大きく下回る商品は危険です。
じゃあ、Aliexpressで買うメリットは無いじゃん、と思うかもしれません。そこは、割引制度の違いです。Aliexpressは、非常に複雑怪奇な割引制度が複数あり、それらはまるで麻雀の役に様に重ねて適用可能な場合があります。つまり、素の価格ではAmazonと変わらないものが、割引をうまく適用することで激安になる場合があるというわけです。
レビューをチェック
レビューのチェックは必須です。このとき、ポイントは以下の通り。
まず、十分なレビューの数があるか。必然的に、販売数があるか。レビューの少ない商品は、最低限の信頼のあるブランド直売店を除き、手を出すのは危険です。
それから、画像で絞り込みをかけ「H2testw」によるチェック結果を探します。「H2testw」は、ストレージの容量偽装を見抜くために、おそらく世界で最も使われているソフトです。詳しくは、下記記事をどうぞ。「H2testw」のチェックをクリアしているレビューが複数あるなら、詐欺製品ではないと言えるでしょう。もっとも、USBメモリやSDカードなどでは「低容量は問題無いが、高容量で容量偽装がある」という場合もよくあるので、チェック対象の容量も確認しておきましょう(レビュー情報に表示されています)。
「H2testw」で容量偽装をチェック!あなたの使っているUSBメモリやSDカードは大丈夫?
そして、「★1」で絞り込みをかけます。そもそも、レビュー全体に「★1」の割合が高い場合は、言うまでもなく危険です。また、上の「H2testw」によるチェック結果を提出して容量偽装を暴いたレビューがあれば、その商品は詐欺商品確定です。一方で、届かなかった、破損していたなどの配送トラブルは、海外通販である以上、一定数は存在します。ここは、レビュー全体数から見てどの程度かというところ。判断が難しいのが、スペックのデータ通信速度が出ないというレビュー。商品が低品質なのか、先方の環境や計測方法に問題があるのか、ここは、数なども含めて、やはり嗅覚で判断するしかありません。
3.購入の具体例
では、どのくらいの製品を、どのくらいの価格で購入することが可能なのか、いずれも、昨年12月に購入した、2つのSSDを例にとってみてみましょう。ちなみに、ちょっと買うタイミングを外してしまったので、11月のセールや、SSD全般が値崩れしまくっていた昨年前半期であれば、もうひとまわり安く買えたかもしれません。
また、先ほど触れたように、SSDのAliexpressにおける価格優位性は、ほぼ、割引制度をどこまで活用できるかにかかっています。誰しもがこの価格で購入できるわけでは無い、ということにはご注意ください。
Reletech P600 M.2 SSD NVMe PCIe 3.0×4 2280
容量2TBを、7,883円にて購入。世代は最新の「PCIe 4.0」ではなく「PCIe 3.0」です。それでも、バックアップ用としては十分。年末年始のセール対象品になっていて、表示価格が11,000円弱まで下がったところに、約3,000円分の割引を載せて、この価格に。同時期のAmazonでPCIe 3.0で2TBなら、安くても12,000円位だったはずです。
Reletechは、上述のように、いちおう、ちゃんとしたサイトもあるブランドで、この製品についても紹介がされています。
Reletech P600 M.2 SSD NVMe PCIe 3.0×4 2280:ブランド公式サイト
各種チェックは下記の通り。
データ転送速度のベンチマークについては、先述のように、私は自作PC環境が無いため、データ転送速度は、Aliexpressで安く買ったノーブランドの10Gbpsの外付けSSDケースで測定します。そのため、ケースの方がボトルネックになります。
実際に大容量(約300GB)のデータをコピーしてみます。
前半のデータ転送速度が振るわないのは、ソフトなどの微細に分割されたデータのコピーをしているためですね。途中から、画像や動画などのデータのコピーになると、最後まで速度は安定しています。
ご覧のように、特に問題は見られません。約2ヶ月、外付けストレージとして使用していますが、トラブルも無し。自作ユーザーの方々ならPCIe 4.0を買うんでしょうが、データバックアップなどの目的なら、値崩れしたチャンスを狙ってPCIe 3.0もアリかなと思います。
まったくの余談ですが、話題になった蝉族は、昨年前半期にPCIe 4.0ながら2TBでAmazonで1万円切りましたからねぇ。今さらながら、使うあてがなくても買っておけばよかったかと思ってしまいます(笑)。
Kingchuxing M.2 SATA
容量512GBを2,949円で購入。形式はSATAです。セール対象で表示価格が3,000円台半ばまで下がったところに、割引を適用してこの価格に。同時期のAmazonだと約5,000円くらいのはず。……昨年前半期には、Amazonでも3,000円台前半で買えましたけどね。Kingchuxingは、Aliexpressでは比較的よくお目にかかるブランドながら、ブランドサイトなどは無し。
この製品の優位性は、ご覧の通り、チップが2242サイズの部分にしか実装されておらず、ユーザーが折ることで、2280、2260、2242いずれのサイズでも運用できるところ。もっとも、私が買った出品者は、この2242サイズ実装と2280サイズ全面実装(つまり分割できない)は「Shipped randamly」とのことだったので、当たりを引いたんですが。
こちらも、各種チェックやノーブランド5Gbpsの外付けSSDケースでのベンチマークは以下の通り。
ご覧の通り、一見、問題なし。が、しばらく使っていて気づいてしまいました。これ、温度センサーが機能してないな……。所詮SATAなので、ベンチマークを取っているときに指で触っても(笑)、そこまですさまじく熱くなるわけではないので、実用上は使えるんですけれど、やはり気持ち悪いですね。
実際に、約150GBのデータをコピーしてみます。
前半で振るわないのは、先ほどと同じく、ソフトなどの微細に分割されたデータのためです。ご覧のように、100GBをちょっと越えたあたりで、大きく速度が落ちます。キャッシュが切れたためと思われます。うーん、温度センサーの件といい、純粋にSSDとしては、コスパから見ても残念ですね。これなら、AmazonでSUNEASTやHanyeなどを買った方が、総合的に見て良いでしょう。
もっとも、こいつの優位性は2242サイズにできること。
切り込みをカッターナイフで削って深くしてから慎重に折り、2242サイズのケースに入れて、USBメモリのように運用中です。ちなみに、このケースもAliexpressで購入したもので、USB Type-AとUSB Type-Cの両方のコネクタがあって使いやすい反面、データ通信速度がやや落ちます。シーケンシャルアクセスで最大でも400GB/sくらが精一杯。まあ、それだけあれば実用上は特に不便はしませんが。
4.まとめ
はっきり言って、SSDは、Aliexpressでの買い物の中でもかなり危険なジャンルです。繰り返し強調しているように、もしも購入するなら、もろもろのリスクを十分に考慮した上で慎重な検討が求められます。ありていに言えば、トラブルが起こってもそれを楽しむくらいの気概が必要でしょう。その上で、セール時などの条件があてはまれば、ご覧のようにAmaoznなどよりも格安で購入することが可能です。購入時、また運用のリスク管理をきちんと行えるという前提であれば、こういう製品も、選択肢に上がってくるかもしれません。
5.関連リンク
SSDの基本的なチェックツール
h2testw:容量偽装のチェック
CrystalDiskInfo:S.M.A.R.T.など基本情報のチェック
CrystalDiskMark:データ通信速度のチェック
SSD-Z:CrystalDiskInfoで読み取れない情報が、こちらなら読み取れる場合がある。