こんにちは、ゆないとです。今回は、過去に2回に渡ってスペック紹介をした「Khadas Tone 2 Pro」の実機レビューをお届けします。
Tone 2 Proは”ポータブルDAC”です。USBで接続するので”USB DAC”とも呼ぶことが出来るでしょう。最近では非常に小さなUSB DACも販売されていますが、大きめのスマホくらいのサイズや、据え置き型と呼ばれる大きめの箱が一般的です。Khadas Tone 2 Proはそれらに比べると複数の出力端子を備えながらも、クレジットカードなどに近いコンパクトさが特徴になります。
今回はHiFiGO様より実機を提供して頂きました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。
1.DAC(USB DAC)とは
DACについて興味がある方はこの章をご覧ください。DACとは何か、まとめてみました。既にご存じの方は「2.スペック」以降から続きをどうぞ!
【DACって何?】
DACとは「Digital Analog Converter(/デジタルアナログ変換器)」の略称です。デジタル信号をアナログ信号に変換するもので、DACチップを指すときもあれば、据え置き型など製品そのものを指すこともあります。
通常私達がスマホやPCで音楽を聴く際、ストリーミングだったり、本体に保存された音源はデジタルデータです。デジタルデータのままでは出力できませんので、イヤホンやスピーカーから出力できるように変換をする必要があります。その変換の役割を果たすのが「DAC」です。
【何故外付けなどのDACがあるのか】
私自身オーディオ好きであり、再生機器の違いやDACの違いなどで印象はだいぶ変わると実感しています。この点は意見の分かれるので深く言及はしませんが、どのようにノイズを減らし、または混ざらないようにするのか、そもそもそのメーカーの掲げる音作りをどのように達成するのか、といった点でDACを含む回路設計が大きく関わると言われています。
どの製品にもDACの役割を果たすものは搭載されているものの、上記の内容を達成するにはコストや回路設計の手間などから、オーディオ特化のものが搭載されることは少ないです。スマホやPCなどではある程度パッケージ化されたものに組み込まれたD/A変換機能を使うことがほとんどでしょう。そのため、その性能、あるいは音作りなどは半導体を生産しているメーカー次第となってしまいます。何故”音作り”と言ったのか、それはDACの性能が音質に影響するからです。この点は長くなるので、興味があれば調べてみてください。
さて、上記に説明したように、何も無い場合だと音作りは半導体メーカー次第です。ハイレゾ音源対応の製品が増えたとは言っても、多くの製品がCDクオリティである”16bit/44.1kHz”の再生までに対応することがほとんどです。既にハイレゾ音源という言葉が多くの人に知られ、ストリーミングでも例えば日本ではAmazon Music HDやmora qualitasなどがハイレゾ音源のストリーミングに対応していますね。ハイレゾ音源は”24bit/96kHz”というCDクオリティよりも高いビットレート/サンプリングレートのデータなので、再生ができない機器もあります。
そんな時に外付けなどの製品を使うことで、ハイレゾ音源に対応したりDAC製品独自の回路を通すことで音質を上げたり、何よりもオーディオメーカーが顧客に聞いてもらいたいと思った理想とする音作りを楽しんでもらうことができるからです。
2.レビュー時の使用環境
今回のレビューでは、以下の2つの方法で使用しました。
■Zephyrus G14(2020)→Tone 2 Pro→イヤホン(TAGO Studio T3-02)
■Xperia 1 II →Tone 2 Pro→イヤホン(TAGO Studio T3-02)
両端がUSB Type-Cのケーブルで繋げています。PCの場合はドライバの手動インストールが必要ですが、スマホの場合は接続するだけで大丈夫です。
3.スペック
詳細なスペックについては、過去に紹介記事を掲載済みです。今回は必要な部分のみ抜き出しています。より詳細なスペックは、以下の記事をご覧ください。
Khadas Tone 2 Pro - カードサイズにESS製ES9038Q2Mチップを搭載するUSB DAC!これがあればPCやスマホでも高音質が楽しめます。
Khadas Tone 2 Pro - ついに発売!詳細なスペックも判明しました。カードサイズのUSB DAC
■DACチップ:ESS ES9038Q2M
■オペアンプ:OPA1612 ×4
■USBプロセッサ:XMOS XU216
■対応OS:Windows 7, 8, 10 / MacOS / Linux / Android /iPad OS & iOS
■出力:3.5mmシングルエンド、4.4mmバランス、RCAバランスラインアウト
■サイズ:17.0 x 88.0 x 61.5mm/68.0mm(RCA端子含む)
■重量:100g
DACチップにはESS製の「ES9038Q2M」を搭載しています。ハイエンド製品にも搭載される”ES9038PRO”のバリエーションモデルです。最近では14万円の据え置き型DACや、4万円台のオーディオプレーヤー「Cayin N6ii」の交換用オーディオマザーボードに採用されています。価格だけに注目するのであれば、それなりに高額な製品に搭載されるようなDACチップです。
対応OSは、Windows、Mac、Android、iOSなどです。私は所持していませんが、Nintendo SwitchもUSB Type-C経由でオーディオ出力ができたと記憶していますので、この製品でクオリティアップさせることができるでしょう。
RCA端子含めても縦横10cm未満、厚さも1.7cmなので非常にコンパクトなボディです。複数の出力端子やボリュームキーを備えたUSB DACとして考えると、そのサイズや100gという軽量さは特筆するべき点です。
4.外観
付属品です。ガイド類が2種類と、両端がType-CのUSBケーブルが同梱されています。
カラーは「赤・黒・青」の3種類あり実機は赤でした。アルミニウムのボディで、メタリックレッドが映えるかっこいいデザインです。アクセントカラーはゴールドと黒の組み合わせで、アイアンマンっぽいところが最高です。
背面です。左から3つがRCA端子です。USBは左がラインアウト用のもので、右は通常のものです。PCやスマホを繋げるときはこの一番右のType-Cポートを利用します。
ボリュームや各種操作ができるようなホイールです。側面はグリップ感の高い加工が施されています。
右側面には、3.5mmの端子と、大きめの4.4mmの端子があります。
本当にカードとほぼ同じサイズです。重ねるとほとんどが隠れてしまいます。
5.使用感
操作
この製品はボタンなどは無く、操作系というと回転式のボリュームホイールしかありません。しかし、ホイール自体を横方向へ押す、”プッシュ操作”があることで、いくつかの設定を変更することが可能です。
プッシュ操作は、1回・2回・3回押し、長押しの4種類あります。
1回押し:再生/停止
2回押し:モード切り替え(ボリューム操作/ゲイン/入力切替/DACフィルター)
3回押し:ロック/ロック解除
長押し(約4秒):ミュートON/OFF
モードが切り替えられたかどうかはホイール裏にあるLEDの色で判断します。2回押しでモードを切り替えて、回転操作でそのモードの設定値を変更するという手順です。例えば、ゲインの調整であれば、2回押しでゲイン変更モードにして、回転操作でLowかHighを選択します。
気になった点は、LEDがホイール裏にあるため、どのカラーになっているのか、持ち上げて本体を傾けて確認する必要があることです。本体をずらさずに見えると使いやすいと感じました。
また、モード切り替えの時は単色ではなく複数の色が並ぶのですが、色と色の境界はやや滲んだように見えます。取扱説明書に記載された点灯の見本と、実際に点灯したLEDは大まかに一致しているという程度なので、どの設定値なのかは使って慣れる必要があります。ただし、よく使うものといえば、ボリューム変更とゲイン変更くらいだと思うので、あまり気にしなくても良いかなと思います。
剛性という観点で、ホイールの感触はしっかりとしています。折れてしまったり外れてしまったりということは、今のところ発生しなそうなくらいの感触があります。ホイールの回転もカチッという音と振動があり、操作のフィードバックは良好です。
音量段階は、スマホやPCのデバイスよりも細かく調整ができています。PCやスマホでは段階が決まっているため、利用者によっては1つ下げれば小さく、1つ上げれば大き過ぎるというようなことになる場合もあります。このDACを通せば、より細かい調節が可能だと思います。
音質
今回は、Tone 2 Proを間に入れたときと入れないときで、どのように聴こえるかを比較して、音質のレビューにしたいと思います。
【PCに直挿し】
よく耳を澄ますとサーっというようなノイズ、雑音が聞こえます。それがベールとなって音と自分の間に存在しているような印象です。低域は強いというよりはボヤッとした締りのない音ですが、音圧はしっかりと感じられます。高域は強く、きらびやかなサウンドで耳に残ります。またそれぞれの音が中央の方でまとまったように聴こえます。
【PC+Tone 2 Pro】
聴き始めてすぐに、気になっていたノイズがしなくなったこと。ベールが取れてクリアなサウンドであることがわかります。ボーカルにフォーカスはあるものの、強めの高域は落ち着き、締まりがあり深く沈み込むように低域は輪郭がハッキリとしました。低~高域までボーカル含めて見通しが良くなったと感じます。それぞれの音も横に広がったように適度の分離感を感じます。
【スマホに直挿し】
今回は”Xperia 1 II”を使用しました。低域は太く、輪郭がややぼやけた印象です。各楽器が目立ち、ボーカルがやや引っ込んだように聴こえます。少し解像度は良いですが、空間は広くなく頭の中、中央にまとまった印象を受けます。サウンドはあまり伸びず、スッとすぐ消えるようなスピード感がある余韻を感じます。
【スマホ+Tone 2 Pro】
ボーカルがグッと前に出てきます。低音は引き締まり輪郭がハッキリとしました。おかげで他の音を邪魔せず楽器など見通しが良いです。空間が横まで広がり、音が遠くまで伸びてすーっと消えてくような響き方をし、心地よい余韻を感じます。
【まとめ】
スマホはパワフルで温かみのある音でした。PCはノイズが気になり、高域が強い耳に残るような音に感じました。Tone 2 proを入れるとパワフルさも落ち着き、低域から高域まで引っ込んでいたり負けていると感じなくなりました。フラットな傾向に近づいたと言えるでしょうか。ややクールな印象のサウンドになり、解像度や音の響き方は明らかに変わり見通しが良くなりました。
6.価格など
「Khadas Tone 2 Pro」は、HiFiGOにて199.90ドル(約20,743円)で発売中です。選択できるカラーは黒・青・赤の3種類です。HiFiGOは日本への発送にも対応しており、DHLやFedexなどによる比較的速い配送方法、5~10日で届く配送方法、郵便の3つから選べます。
正直なところ、こうしたDAC製品というのはこだわりが無い限り注目はされないでしょう。DACを購入するよりも前にまずは好みの音を鳴らすイヤホンを選択することが多いと思います。しかしながら、手持ちの機材を変えずにサウンドのクオリティを上げるという点において、DAC製品は高い能力を発揮してくれると思います。Tone 2 ProはたいていのUSB DACに比べれば非常にコンパクトで軽量です。
取り回しの良さや持ち運ぶことがメインの人には、”Type-C to 3.5mmオーディオジャック変換ケーブル”形状の小型のDACも選択肢としてありますが、ホイール操作による細かい設定も使えて、3種類の出力端子による拡張性もあるので、Tone 2 Proは使いやすいなと思います。
今回のレビューで、Tone 2 Proを入れることによる音質の変化は十分に感じられました。解像度の高い空間表現力がある製品ですので、オーディオ環境をステップアップする1つの選択肢としておすすめしたいです。