記事にアフィリエイト広告を含みます

FPVドローンをはじめよう!2022年版 - その魅力と、現在の性能や規制についてもまとめます

fpv drone_2022こんにちは、natsukiです。個人的に、最高の娯楽の1つだと思っている「FPVドローン」について、これからはじめていくための紹介とともに、2022年はじめ現在の状況をざっくりまとめてお伝えします。FPVドローンの魅力、日本のドローン規制の現在、購入ルートやおすすめ製品、今後の技術的な展望、と話を進めていきます。かなりボリューム満載なので、適宜、興味のある部分だけ読んでいただいてもよいと思います。

スポンサーリンク

size
ドローンというと、空撮機のイメージや規制についてのニュースから、屋外の高高度を飛行するものというイメージがあるかもしれません。しかし、ここで紹介する「FPVドローン」は、ドローン視点で操縦し、そのサイズは多くが手のひらサイズで、練習次第で超精密操作も可能なため、「屋内でも十分に楽しめる」ものです。このコロナ禍の中の状況にも合った娯楽と言えます。そしてまた、現在進行形で技術の発展が著しく、次々と新たな機能を備えた新製品が投入されるジャンルでもあります。「今までできなかったことができるようになる」というのを体感するのは、非常にエキサイティングですよね。

超精密操作、とは言ったものの、FPVドローンはスポーツのようなもので、決して「いきなり自由自在な飛行ができる」ものではありません。練習しながらだんだんと操縦技能を上達させていくのが楽しいんです。一方で、技術の進歩と、少しずつですが日本社会にもFPVドローン普及してきたこともあって、その入り口のハードルは大きく下がってきました。特に、必要なものが全部そろったオールインワンのセットで、面倒な設定無しの「箱出し」で飛行可能かつ、自律ホバリングが可能な「BETAFPV Cetus FPV」シリーズが、日本国内で使用可能になったことはとても大きい。この製品については、前も紹介したことがあるのですが、あらためて詳しく取りあげます。

規制についても触れます。先にはっきりさせておくと、規制の存在自体が悪いといっているわけではありません。何事にも一定のルールは必要です。問題なのは、ドローンに関する規制が、現実の技術水準や運用実態とかみあっていないことです。そもそもが、最も大切なのは、スマホと同様に、新しい技術を多くの人が理解し、規制に頼らずとも問題が起こらないような社会的マナーを模索していくことでしょう。

細部については、今までにテーマごとの記事を書いてきましたので、そちらも適宜ご覧ください。

ウインタブ「法令遵守でドローン」カテゴリーの記事
ウインタブ「ドローン」カテゴリーの記事

なお、ドローン初心者向けのつもりで書いておりますので、一部の用語や、制度の細部について厳密でない部分があったり、特に、業務用途での運用は完全に度外視して話をしています。その点はご理解ください。

目次

1.FPVドローンとは?

「FPV(ドローン視点)」で自由に飛び回れる世界へようこそ


「FPV」とは「First Person View」の略で、「FPVドローン」とは、ドローンの視点を見ながら、まさに自分自身が飛び回っているように、自由に飛行して操縦するドローンをいいます。それはもう、空中からの視点というだけでワクワクしますが、それだけでなく、FPVドローンは基本的に小型のため、狭い場所をすり抜けたりといったスリリングな飛行ができるのも楽しさの1つです。まるで、ミニチュアの世界に入ったような、虫か小鳥になった気分が味わえるわけです。

なお、Amazonなどで数千円程度で売っている、いわゆるトイドローンで、カメラを積んで「FPV」を称するものがありますが、これらは、実際にはカメラ映像を「見て楽しむ」程度のもので、遅延、視野角、安定性といった面から、その映像で操縦までするのは不可能です。FPVドローンには、専用のカメラが必要であり、これが、そのままでは日本の規制に抵触するため、利用のために後述のような手続きが必要になります。

「学習」と「練習」が必要な、「深い趣味」

acro mode
FPVドローンは、空中を立体的に自由自在に飛び回れることが魅力で、熟達さえすれば宙返りはもちろん、ひねり込みを加えた「スプリットS」など、曲芸飛行も思いのままです。ただし、3次元に動き回るわけなので、その操縦は簡単ではありません。でもでも、この習熟もまた、FPVドローンの大きな楽しみです。はじめは一カ所にホバリングするだけでも大変なのが、練習すればするほど、精密な操作ができるようになって、狭いところをくぐり抜けたり、アクロバティックな動きができるようになったり、「新しいことができるようになった」という上達を分かりやすく実感できる。それって、娯楽の最高の部分じゃないですか?

さらに、ソフト、ハード面の知識や技術が深まれば、ソフト面の調整で操縦技術を支えることもできるし、機体構成を工夫して、撮影などプラスアルファのこともどんどんとできるようになっていきます。自然と、カメラや電子工作についての知識や技能も身についていくことでしょう。めんどくさくて非合理的な規制のクリアも、えーっと、その、なんだ、まあ、よくあるゲームの実績解放みたいなそういうミッションだと思って……。ともかく、「飛ぶこと」以外にもさまざまにやりがいが広がる、まさに一生の趣味にふさわしいものです。

屋外だけでなく、屋内でも十分に楽しめる

indoor flight
ドローンというと、飛行についての規制がやかましく議論されています。しかしそれはあくまで屋外での飛行の話。え?屋内でドローン飛ばしてもつまらないでしょって?いえいえ、決してそんなことはありません。むしろ狭い屋内で障害物をよけながらヒュンヒュン飛び回るところに、FPVドローンの醍醐味があるくらいです。特に都市部在住の人は、まずは、屋内で楽しむことを前提にはじめていくのもよいでしょう。

具体的には、3LDKもあれば、練習に十分なコースが組めます。もし2階建て以上の戸建てや、集合住宅でもテラスハウスやメゾネットであれば、なんならロフトがあるだけでも、立体的でそうとうやりがいのあるコースが可能です。そして、ちょっと広めの会議室くらいの広さがあればレースも可能なので、こういった特性は、学校や地域のサークル活動としても適したものです。実際に都市部を中心に、少しずつですが、FPVドローン用の屋内ドローンスペースも増えてきました。学んだ知識をすぐ実践できるFPVドローンは、理系教育との親和性が極めて高いので、実は中高大学の部活動ととして最適だと思うのですが、あまり見かけないのは、それこそ情報不足のせいでしょう。

2.ドローン規制の現在

規制には、「飛行」に関するものと「電波」に関するものがある

drone_rule
ここで、よく取り沙汰される、ドローンの運用に関する規制をまとめておきます。FPVドローンについては、ドローン全般に関係する「飛行」に関する規制と、FPV特有の「電波」に関する規制の2種類があり、おおざっぱに整理すると、上の図のようになります。

飛行に関する規制 その1 ― 屋内ならOK

「飛行」に関する規制については、繰り返し強調していますが、「屋内」で飛ばす分には、まったく問題ありません。屋内でも十分に楽しめるのが、FPVドローンの魅力です。

飛行に関する規制 その2 ― 屋外はまず「100g未満」の機体であること

moblite6_weight
屋外での飛行に関しては、法改正により、機体重量が「100g以上」のドローンは非常に厳しい規制の対象となります。機体の登録や飛行の認可などが必要な上、FPVは法律上では「目視外飛行」となるため操縦者以外に目視を行う監視員が必要であったり、飛行のハードルが極めて高くなっています。従って、娯楽として手軽に運用するなら、機体が「100g未満」であることが重要です。ご安心ください、FPVドローンは「100g未満」でも十分な運動性能を持つものがいくらでもあります。画像は、最軽量級FPVドローンでレビューもした「Happymodel Moblite6」です(レビュー時から、キャノピーを換装しています)。このように、初心者がまず運用する「1Sバッテリー」のFPVドローンなら、多くの場合50gを越えることすらありません。

mobula6 hd_weight
「撮影」については、例えば、こちらもレビュー済みの「Happymodel Mobula6 HD」で、ご覧のとおり、余裕の100g以下。機体名はHDですが、1920×1080ピクセルのFHD画質での撮影が可能です。ただし、ブレ補正がないのはネック。

firefly x lite_weight
なお、「100g」には、バッテリーなど飛行に不可欠な部分は含みますが、「飛行に関係無く簡単に取り外しが可能な部品」は含まれません。具体的には、例えば操縦用のカメラとは別に「撮影用のアクションカメラ」を取り付ける場合があてはまるでしょう。上の画像の機体は、実際に私がビルドして運用している機体です。撮影用に、軽量アクションカメラ「Hawkeye Firefly X Lite」搭載を前提とした機体で、ご覧の通り、「Hawkeye Firefly X Lite」を搭載した状態では100gを越えますが、外した状態では下回るのでOKです。これならば、かなり本格的な撮影も可能です。参考までに、諸元は以下の通りです。

FC:Jhemcu SH50A F4
VTX:Eachine UZ65 のものを流用
レシーバー:RadioMaster R81
FPVカメラ:Runcam Nano2
モーター:Hapoymodel EX1103S 12000KV(3Sバッテリー運用時は8000KVに換装)
プロペラ:Gemfan Hulkie 2036 4枚羽根
フレーム:BETAFPV Beta85X frame
撮影用アクションカメラ:Hawkeye Firefly X Lite
バッテリー:2S(モーター換装で3Sの方が運動性能は上がる)

というように、「飛行」「運動性能」に関しては「100g未満」でも十分。また、それ以上の機能も、ある程度の知識があればかなりのことができます。

飛行に関する規制 その3 ― 屋外で100g未満のドローンを飛ばせる場所は?

具体的な飛ばす場所については、さすがにいろいろと気にする必要があります。まずは、制度での規制どうこう以前に、常識的な判断こそもっとも大切です。例えば「ボール遊び」「凧あげ」をしても迷惑にならない場所か、というようなことを想像してみるとよいでしょう。

制度上の問題に関しては、関係するかもしれない規制を羅列するとキリがないので、「飛ばしたい場所」から規制の対象となるかを調べるのが現実的です。空港や基地、原子力発電所などの物理的な施設に関する規制は当然ながら、要チェックなのは、自治体による規制です。これは自治体の方針によって千差万別で、特に規制のない自治体もあれば、例えば東京都はどこであっても無認可での飛行が原則できません。都道府県レベルと市町村レベル両方を確認しておく必要があります。

電波に関する規制 ― 操縦者が「無線従事者免許」を取得し、ドローンの映像発信器(VTX)を「開局」する必要がある

電波関係の規制をクリアするには、二つの認可が必要です。こちらの規制は、はっきり言って、現在の技術水準や運用実態とはかけ離れたものです。でもあえて、これからの建設的な変化のために、ぜひともこういう理不尽な旧態依然の制度を、より多くの人に実際に体感して欲しいと思っています。いずれも、手続きの詳細は非常に煩雑になるので、過去の連載記事の該当箇所をご覧ください。必要書類の種類や記入例なども、そちらに適宜示しています。ここでは、制度の概要を述べておきます。

license card
まず、操縦者(もしくは監督者)は、「無線従事者免許」の取得が必要になります。娯楽で楽しむなら、「第4級アマチュア無線技士」以上となります(業務として行うなら「第3級陸上特殊無線技士」以上ですが、業務の場合は他にも色々とあるでしょうから業務内容によって対応してください)。非常に不合理なのは、この免許は、取得のためにMHz帯の音声のみによる長距離通信を対象とした知識を要求されるもので、ありていに言えば、「無線で音声通信をすることがまだロマンだった50年以上前の技術水準」しか想定されていないということです。しかも、取得試験の問題は、計算問題の数値まで一緒の同じ問題を使い回しで出し続けているんですわ。合格には、極論、内容を理解していなくても、計算問題ですら過去問丸暗記で解けます。要するに、ドローンはさておいても、誰もがスマホで無線通信する現在の技術水準で、または過去問使い回しのその出題のしかたから、この資格試験を突破することで得られる知識技能が現実的に何の役に立つのかさっぱり分からない。まあ、電波法の知識や中学レベルの理科の知識くらいは知っておいてもいいとして、実践的には、GHz帯の電波に関するあれこれで「無線技士」と名乗るにふさわしい知識がいくらでもあると思うのですが。せめて、高い受験料とるんだから試験問題くらいは真面目に作れよと思ってしまいます。

kaikyoku_license
さらに、ドローンに付いている映像発信器(VTX)を「開局」する必要があります。現状、FPVドローンの使用に耐えうる映像を発信する機器で、日本での発信が許可されているいわゆる「技適」を通っているものはほとんどありません。例外に、DJIの製品があるのですが、これは別の問題もあるのでここでは省きます。また、そもそもFPVに使用する5GHz帯の電波を許可なく屋外で使用することが、日本では認められていません。そこで、特別な認可が必要になります。このことを、電波発信器を「無線局」として「開局」するといいます。この制度は、手続きの煩雑さや費用の高さに不満はあるものの、ちゃんと手続きさえ済ませれば、責任の所在を明らかにすることによって個人で技適のない発信器の使用許可が得られるわけなので、コンセプト自体はむしろ歓迎できるものです。

問題は、手続きの中で必要になる、発信器の仕組みと性能を示す「系統図」の扱いです。個人で認可をとるわけなので、これが必要というのは当然。しかし不合理なのは、先達がすでに認可をとっているものや、それどころか同一人物が同じ発信器を追加で「開局」するときにすら、あらためて「系統図」の提出が求められることです。この制度の趣旨は、「発信器のスペックが日本の規制に適合しているかどうか」の確認と、なによりその機器と使用者個人を結びつけて「責任の所在を明らかにする」ことにあるはずなので、「すでにスペックの明らかである発信器」に、繰り返しその「系統図」の提出を求めるのは、理解に苦しみます。でも、現状はそういうことになってしまっています。

なお、電波を「受信」することについては規制はありません。従って、映像電波を受信するのみの「FPVゴーグル」については、規制は一切ありません。FPVドローンで使うことはまれですが、GPS機能も、「受信」するだけなので問題ありません。また操縦機(プロポ)については、幸いにして「技適」つきのものが多く販売されているので、それを買えばOKです。この他、映像発信器以外に電波を発信する機能を持つものもときどきありますが、その場合は日本国内では切っておく必要があります。これは、そのくらいのある程度高度な機種を扱う頃には、いろいろ詳しくなっているので対応できるでしょう。

3.購入するのはどこで?

まずは国内ドローン専門店がお勧め

FPVドローンをどこで購入すべきかということですが、記事執筆現在の状況では、まず、国内のドローンショップでの購入を検討すべきでしょう。この数年で、国内のドローンショップも、ずいぶんと充実してきました。また、FPVドローンは、運用のために先述の「系統図」が必要ですが、国内ドローンショップであれば、多くの場合これを付けてくれます。念のため購入前に確認しましょう。さらに、面倒な認可のためのサポートやアドバイスを行ってくれるところも多くあります。ということで、特にドローン本体は、国内ショップで買うメリットが大きいです。

もちろん、価格は国内ショップの方が海外通販より高くなる傾向がありますが、コロナ禍以降、海外通販のドローン関係製品価格が高騰していることもあって、その差は前より縮まっています。サービス品質や信頼性を考えれば、十分納得の範囲です。現在の国内ショップの弱点は、価格よりむしろ、比較的品揃えが希薄なことでしょう。なお、逆に国内ショップの方が充実しているものとして、3Dプリンターによるユーザーの希望に応じた造形部品があります。先ほどあげた、私の「Hawkeye Firefly X Lite」搭載機のカメラマウントなんかはその例です。

海外通販は品揃えが豊富

海外通販を利用するメリットは、もちろん価格もありますが、最大のものはむしろ豊富な品揃えです。以下、ドローン関係で私がよく使ってきた海外通販サイトをあげておきます。

Banggood
ウインタブで紹介することの多い海外通販ですが、自前ブランドに、ドローン界隈では超有名なEachineを抱え、FPVドローン全般に強い価格競争力を持ちます。特に、セールや割引クーポンは要チェックです。ウインタブはドローンがメインコンテンツではないので個別の紹介はしていませんが、ウインタブに発行してもらっているBnaggoodクーポンの中にも、けっこうおいしい価格のものが入っていることが多々あります。なにより品揃えが圧倒的なので、価格を比較する際にも、とりあえずBanggoodの価格を参照して基準にするとよいと思います。
Makerfire
Makerfireブランドの直営ショップであり、他ブランドの製品も広く扱っている、ラジコン主体の海外通販です。Makerfireブランド製品をはじめ、Banggoodで扱っていない製品を扱っていることもあります。
BETAFPV
BETAFPVブランドの直営ショップで、BETAFPVブランド製品のみを扱います。かつては、BETAFPVブランドの製品は、他の販売ルートではラインナップが限られていたんですが、現在は、販路が拡大した分、あまりここを使う必要性は減ってしまいました。しかし、サイト内で、製品のマニュアルや、一部製品についてはVTXの「系統図」まで公開しているので、その点は極めて良心的です。
Aliexpress
圧倒的な品揃えの海外通販サイトです。安いし、マニアックな部品も手に入ります。ただし、Aliexpressは、楽天市場のような出品者が集う「場」にすぎないため、出品者や製品情報の信頼性を各自で判断する「目利き」が問われます。

海外通販のデメリットは、もちろん、海外通販一般にいえる、配送期間の長さとサービス品質の問題があります。特にAliexpressについて、個人的経験からのアドバイスになりますが、出品者が「ドローンを専門的に扱っている業者か」は見ておいた方がいいでしょう。それと、重要な点として、FPVドローン本体や映像発信器を購入しても、BETAFPVとMakerfireの一部の製品を除き「系統図」はまず付きません。自前で入手する必要があります。

国内のドローンショップで完結すれば、それにこしたことはないんですが、品揃えの問題で、修理のためや自分でビルドする際の部品などは国内のショップでは手に入らないものも多く、現時点でFPVドローンを十分に楽しむには、ある程度、海外通販に頼らざるを得ない部分もあるのが現状でしょう。どこで何を買うかは、もろもろ総合的に判断して決めればよいと思います。

4.初めてのFPVドローンは、まずこれ「BETAFPV Cetus FPV」シリーズ

cetus pro kit
2022年はじめの現在、FPVドローン初心者は何を買えばいいか、という話に入っていきます。ここでまずお勧めしたいのは、「BETAFPV Cetus FPV」シリーズです。それなりのFPV飛行ができる性能を持つ製品の中では、初心者へのハードルが頭抜けて低い、唯一無二の機体です。この製品については、過去に個別の紹介記事も書いていますので、適宜ご参照ください。なお、過去記事以降の変化として、後述のように、メーカーから、日本語のマニュアルと、なんと「系統図」まで公表されました!

BETAFPV Cetus FPV Kit 発売!- こんな製品を待っていた!最新技術を詰め込んだ、初心者向けFPVドローンの決定版が登場!:ウインタブ紹介記事

ブラシモーターの「BETAFPV Cetus FPV」とブラシレスモーターの「BETAFPV Cetus Pro FPV」

Cetus_Family
「BETAFPV Cetus FPV」シリーズには、ブラシモーターの「BETAFPV Cetus FPV」とブラシレスモーターの「BETAFPV Cetus Pro FPV」の2種類がラインナップされています。違いは、要するにパワーです。ブラシレスモーターの方が、パワーが段違いに高いです。例えば、両者は、機能面での「できること」の差はほとんどないんですが、数少ない違いとして、「Pro」は、ひっくり返っても自力で起き上がる「タートルモード」機能を備えます。ブラシレスモーターのパワーがあってこそ、可能なわけです。

一方でパワーがあるというのは、操縦がより難しいということでもあります。操縦技術や各種設定など、様々なことを習熟していけば、最終的には、姿勢制御時にとっさに出力を上げやすいブラシレスモーターの方がむしろ精密操作はやりやすくなるんですが、そこまでに至る道のりは長いですから。なお、きちんと手入れをしてあげれば、モーターとしての寿命もブラシレスモーターの方が長いです。理想は、ブラシモーターで操作に習熟してからブラシレスモーターに移行するのがベストなんですが、両方買うと高いので、これは悩ましいですね……。

「操縦機」「ゴーグル」付きのオールインワンで、設定要らず

cetus pro_bundled items
「BETAFPV Cetus FPV」シリーズは、操縦機とFPVゴーグルもついたセット販売が基本となります。この、専用の「操縦機」と「ゴーグル」がついてくるというのは、初心者にとっては非常にありがたいことです。なぜなら、通常は、FPVドローンは「箱出し」で飛行することはできず、FPVドローン本体のファームウェア(Betaflightというものが多く使われます)設定と、操縦機の設定を行う必要があり、これがなかなかに学ぶことが多く難しいからです。「BETAFPV Cetus FPV」シリーズであれば、こういった難しい設定をすっとばして、すぐに飛行が可能です。これは、初心者にとって大きなメリットです。なお、ブラシレスモーターの「BETAFPV Cetus Pro FPV」は、「BETAFPV Cetus FPV」からのステップアップのニーズに応えるために、本体のみのバラ売りもしています。

LiteRadio 2 SE Radio Transmitter
もちろん、設定要らずということは、その分、機能面での制限があるということなので、その点について見ておきます。まず、操縦機の「BETAFPV Literaio2 SE Transmitter」を見てみると、スティックなど、ハード部分の操縦性能は、初心者向けなら十分に合格点レベルです。また、操縦のための電波形式であるプロトコルは、現在最も広く使われている「Frsky」を採用しているため、他のFrsky対応ドローンを操縦することもでき、ある程度の汎用性もあります。任意の感度調整などの細かい設定が困難なのはデメリットですが、それも、はじめから3段階の感度(スピード)調整機能があります。このように、とりあえず使っていくには十分な性能があります。なお、「モード1」「モード2」という選択肢がありますが、これはスティックの操縦系統の違いで、日本で伝統的に使われてきた操縦系統が「モード1」、国際的に一般的なのが「モード2」です。現在、FPVドローン操縦機は海外製の「モード2」のものの品揃えが圧倒的なので、先の発展性を考えると、新しくはじめるなら、「モード2」がよいでしょう。

VR02 FPV Goggles
ゴーグルは「BETAFPV VR02 Goggles」です。こちらも、「FPVゴーグルとしての」画質は、初心者向けには十分なものです。ただ、同クラスのゴーグルである「Eachine VR004」と比べると、録画機能がない、モニターのみ取り外すことができない、という、便利な追加機能がない点で劣ります。「Eachine VR004」は、Banggoodでのセール時に3,000円から4,000円くらいまで値下がりすることもあるので、セールのタイミングが合えば買い足してもよいかも知れません。

bt2_1s_battery
あと細かい点を言えば、BETAFPVブランドのドローンは、バッテリーコネクタが独自規格で、他社のドローンと互換性がありません。ただ、バッテリーコネクタの交換は、はんだごてさえ使えれば比較的容易にできるので、ある程度慣れてから、他社ドローンを買ってもコネクタを換装してバッテリーはBETAFPVで統一するのか、BETAFPV製ドローンと他社製ドローンでバッテリーは使い回さないようにするか、考えればいいでしょう。

スポンサーリンク

バッテリーの数について、「BETAFPV Cetus FPV」シリーズのセットにはデフォルトで2本のバッテリーが付属します。ただ、FPVドローンは飛行時間が3分~5分程度と短く、またバッテリーは消耗品でもあるので、これははじめから買い足しておくことをお勧めします。また、セットに付いてくる充電器は、同時に2本のバッテリーの充電が可能なものですが、これも、6本同時充電可能な充電器が別売であります。バッテリーを買い足すなら、お好みで。

FPVドローンとしては希少な「高度維持機能」「オプティカルフロー機能」付き

betafpv_cetus_flight mode
「BETAFPV Cetus FPV」シリーズの、性能面での最大のメリットにして、現行販売中のFPVドローンで唯一といってよい特徴は、「高度維持機能」と「オプティカルフロー機能」を備えていることです。このシリーズには、ワンタッチで切り替え可能な「Normal Mode」「Sports Mode」「Manual Mode」の3つの飛行モードが備えられています。このうち、「Sports Mode」はいわゆる「Angle Mode」、「Manual Mode」はいわゆる「Acro Mode」に相当し、この2つは一般的なFPVドローンの操縦モードであるとともに、センサー類による操縦のサポートが少ないため、運動の自由度が高い分、ある程度の習熟が必要なものです。最終的には、この2つのモードを使いこなせてこそ、FPVドローンの世界が開けます。とはいっても、まったくの初心者にとっては、まず飛ばすことから苦労します。私も、「Angle Mode」の「Eachine E010/E011改造機」で、何度もフレームを破損しながら練習したものです。

betafpv_cetus_altitude hold
ところが、BETAFPV Cetusの「Normal Mode」には、「高度維持機能」「オプティカルフロー機能」が付いているために、何も操縦しなくても、ドローンが空中で止まって「ホバリング」してくれます。このうち、「高度維持機能」は、FPV飛行を行わないトイドローンにはよくある機能ですが、「オプティカルフロー」は、光学カメラを使って位置制御を行うもので、一般的には「DJI Mavic」シリーズなどの、もっと大型の本格的な空撮ドローンに搭載されている機能です。それが、手のひらサイズのFPVドローンに搭載されているのには、ただただ驚愕。もちろん、性能は大型空撮機には劣りますが、それでも、これなら初心者から手軽に飛ばせます。

1つだけ注意ですが、特に「高度維持機能」は、操縦が楽ながら、運動性能を著しく落とします。屋外を「Normal Mode」で飛ばす場合は、風に非常に弱いということを分かって飛ばしましょう。

「系統図」「日本語マニュアル」をメーカーが公開している!

先に少し触れたように、なんとなんと、BETAFPVは電波規制クリアに必須な「系統図」を公開してくれています。これは感涙!FPVドローンで、メーカーがここまでしてくれるのは、私が知る限りBETAFPVとMakerfireだけです。ありがたく使わせていただきましょう。マニュアルも、英語だけでなく日本語のものもあります。

ユーザーマニュアルはこちら。

Manual for Cetus FPV Kit:BETAFPV
Manual for Cetus Pro FPV Kit:BETAFPV

系統図はこちら。

Block Diagram for VTX:BETAFPV
「Cetus Series VTX Block Diagram.pdf」というファイルです。

価格

価格ですが、「BETAFPV Cetus FPV」シリーズは、記事執筆現在、国内販売価格と海外通販の相場がほとんど変わりません。もちろん、割引制度などを駆使すれば、やっぱり海外通販の方が安くなる場合が多いですが、そのあたりはそれぞれのご判断で。相場は、おおむね以下の通りです。また、国内ショップは非常に数が多いため、各製品のリンクは、いちおう、メーカー直販サイトに貼っておきます。

BETAFPV Cetus FPV Kit(オールインワンセット):2万円台前半
BETAFPV Cetus Pro FPV Kit(オールインワンセット):約30,000円
BETAFPV Cetus Pro FPV(ドローン本体のみ):約16,000円

以下は、あった方がよいものです。

BT2.0 300mAh 1S 30C Battery (8PCS)(Cetus FPV用追加バッテリー8本セット):4,000円台半ば
BT2.0 450mAh 1S 30C Battery (4PCS)(Cetus Pro FPV用追加バッテリー4本セット):3,000円台前半
6 Ports 1S Battery Charger & Adapter(バッテリー6本同時充電可能な充電器):3,000円弱

5.バラ買いコース

「BETAFPV Cetus FPV」シリーズではなく、FPVドローンと必要な周辺機器をバラ買いする場合の、あるいは、「BETAFPV Cetus FPV」シリーズからステップアップしていく際の、おすすめ製品を紹介します。比較的扱いやすいFPVドローン製品は、Banggoodの自前ブランドEachineや、製造元が同じHappymodelやURUAVブランドに多いため、製品リンクはとりあえず品揃えの充実しているBanggoodのものを貼っておきます。

ドローン本体はまず「1S」バッテリーで、プロトコルが「Frsky」のもの

ある程度、FPVドローンについて知識と技術が蓄積するまでは、バッテリーが「1S」のドローンで鍛えましょう。バッテリーが「2S」以上になると、パワーが出て機能的にもできることの幅が増えますが、充電をはじめバッテリーの管理が格段に難しくなっていきます。

また、操縦電波の形式である「プロトコル」については、2022年現在、もっとも普及しているのが「Frsky」というもののため、これを選択しておくのが無難です。厳密に言えば「Frsky」の中にもいくつか種類があるのですが、「FrSky ACCESS」以外は互換性があり、「FrSky ACCESS」が選択できるドローンは、初心者向けのものはまずないのでとりあえずおいておきます。この他、最近出てきた「ELRS(ExpressLRS)」というのもあり、これについては後述します。

mobula6
「1S」の軽量ドローンは、様々な種類がありますが、定番と言える製品は以下のあたりでしょうか。これらの機体は、基本的な性能は「BETAFPV Cetus Pro FPV」とさほど変わりません。大きな違いは、ドローンを制御するファームウェアに、汎用的な「Betaflight」を採用していることです。もし「BETAFPV Cetus Pro FPV」を持っているなら、機能的な目新しさはないので、下記の、ちょっとタイプの違う方へステップアップしてもいいでしょう。

Happymodel Mobula6 65mm 1S Whoop:Banggood
(最新版の、プロトコルが「ELRS」の「Mobula6 ELRS」も別にあるので注意)
Happymodel Moblite7 75mm 1S Whoop:Banggood

mobula6 hd
手軽に撮影をしてみたいなら、これ。「Happymodel Mobula6 HD」です。先述のように、実機レビューもしています。「1S」バッテリーで、FHD画質での撮影が可能なFPVドローンです。なお、ほぼ同性能でBETAFPVブランドの「BETAFPV Meteor65 HD」という機種もあり、こちらは同じブランドの「BETAFPV Cetus FPV」とバッテリーの使い回しが可能ですが(「BETAFPV Cetus Pro FPV」の方は、コネクタは合うがサイズが合わない)、すでに終売です。販路によっては、まだ在庫が残っているところもあるようですので、興味があれば探してみてください。似た名称の機種が多いので、混同しないように注意。

Happymodel Mobula6 HD 65mm 1S Whoop:Banggood

URUAV UZ80
これは、都市部の人は運用が難しいものになりますが、いわゆる「Toothpick」と呼ばれるタイプです。ここまで、ドローン本体の形状については、当たり前のように「360°のプロペラガード」がついたタイプを前提として話を進めてきました。言うまでもなく、安全性が高く、屋内での飛行に適しているからです。しかし、プロペラガードを外した方が、より軽量になりプロペラサイズの自由度も上がるため、運動性能が向上するのは当然のことです。広大な大空を爽快にカッ飛ばせる一方で、安全面から、屋内はもちろん狭いところや人のいるところでの飛行には向きません。飛ばす場所にあてがあれば、どうぞ。同様のタイプの機種をいくつかあげておきます。

URUAV UZ80:Banggood
EMAX Nanohawk X:Banggood
iFlight 1S Baby Nazgul Nano:Banggood

操縦機(プロポ)は、技適の付いた「ホールセンサージンバル」「マルチプロトコル」のもの

現在、技適が確認できている、もしくは取得が予定されている代表的な操縦機(プロポ)を紹介します。これらの操縦機の多くは、スティックが「ホールセンサージンバル」という仕組みで、繊細で精密な操作性を持ちます。いずれもファームウェアに「Open-TX」というものを採用しており、高度で自由度の高い設定が可能なうえ、その設定方法には一定の互換性がある一方で、まず設定ができるようになるまでにそれなりの習熟も必要です。また、電源には、「リチウムイオン電池」(18650サイズが多い)などが必要で、この電池についての基本的な知識も求められます。例えば、規格上は同じサイズなのに、安全装置の形状で微妙サイズが違うタイプが存在していて、どっちが合うかは、各製品のレビュー記事などを見ないと分からないなどですね。

jumper t8sg v2
ちなみに、少し前までは、まず買うなら「Jumper T8SG V2 PLUS」で決まりでした。こいつは乾電池でも駆動するし、ファームウェアも「Deviation」という、Open-TXより自由度は低い分扱いやすいものだったんですが(これは人によるかも)、終売となって久しいです。最近の機種の方が、間違いなく性能は上がっているものの、その分、スタートのハードルは高くなった気がします。
jumper t-pro
さて、1万円強という比較的安価な価格で、十分な機能を持ち、いま一番注目の操縦機が、こちら「Jumper T-Pro」です。Frskyをはじめとした主要な複数のプロトコルに対応した「マルチプロトコル(JP4IN1)」バージョンがあり、モジュールによる拡張性も備えてと、「ホールセンサージンバル」の操縦機としては最安値帯の価格ながら、機能面では文句なしの性能を誇ります。一方、スイッチが伝統的な切り替え式のものがなくボタンばっかりなので、その辺の設定でクセがあるため、Open-TXに十分習熟している必要があるようです。この製品は、Banggoodで購入するなら89.99ドル(ほぼ1万円ポッキリ)となる割引クーポン「BG3ed6b5」を発行してもらっています。ご利用ください。なお、「ERLS外付けモジュール」セットや、「ERLSモジュール内蔵」版もありますが、これらは「ERLS」のなんたるかをよく分かった上での選択となります。少なくとも記事執筆現在では、これらのモジュールやバージョンは技適がないので日本では使えません。

JumperRC T-Pro:Banggood
2/14まで割引クーポン「BG3ed6b5」適用で89.99ドル

RadioMaster TX12
同様に、1万円強で買える安価な機種に、この「RadioMaster TX12」があります。ただ、スティックが「ポテンションメータージンバル」である点、「マルチプロトコル」をうたっていながら実際は利用できるプロトコルがかなり限られる点で、性能的にはほぼ同価格である「Jumper T-Pro」の下位互換になってしまいました。

RadioMaster TX12:Banggood

radiomaster zorro
こちらは、Jumper T-Proの競合機種。やはり、1万円強の価格の「Radiomaster Zorro」です。この製品は、記事執筆現在、まだ技適が取得されておらず、またそのいきさつについて混乱もあるようです。それでもとりあえず、メーカーによる技適取得の話は進んでいるらしいので、今後の続報に期待したい機種です。性能的には、スティックは「ホールセンサージンバル」で、「マルチプロトコル(JP4IN1)」バージョンありと、Jumper T-Proとほぼ同等。スイッチに伝統的な切り替えタイプも備え、液晶画面が大きい分、扱いやすいかもしれません。この辺は実際に使ってみないと分かりませんが。対応通信プロトコルに、かなりバージョンの幅があるので、購入の際はよく見てください。

RadioMaster Zorro:Banggood

RadioMaster TX16S
ワンランク高級なものだと、「Eachine TX16S」「RadioMaster TX16S」「Jumper T18 Pro」などが、ほぼ同等の機能を持ちます。このクラスの製品であれば、長く使ってもまず不満は出ないでしょう。価格は2万円台クラスで、例によって、Eachineブランドの「Eachine TX16S」はBanggoodで買うことでひとまわり安く、割引クーポン「BGJP16scj」適用だと161.99ドル(ほぼ19,000円)となります。このクラスの製品はけっこう前から相場が高騰していて、その中で2万円切りはかなりおいしいかと。「RadioMaster TX16S」については多くのバリエーションがあり、マルチプロトコルをオミットしてスティックもポテンションメータージンバルにした廉価版「SE」や、細かい点でアップグレードされて見栄えもする「Multi-color」、上位グレードの「MAX Edition」などがあります。購入の際は、よく確認してください。

Eachine TX16S:Banggood
2/14まで割引クーポン「BGJP16scj」適用で161.99ドル
RadioMaster TX16S:Banggood
RadioMaster TX16S Multi-color:Banggood
RadioMaster TX16S MAX Edition:Banggood

海外通販のラインナップを見ると他にもいろいろありますが、技適の通っていない操縦機は日本国内では使えないのでご注意ください。幸いにして、上記のように十分な製品があるので、危ない橋を渡る必要はないでしょう。

FPVゴーグルは、「Eachine VR004」

eachine vr004
FPV飛行に必ず必要なゴーグルですが、まず買うなら「Eachine VR004」一択です。十分な解像度、迫力の大画面、録画機能付き、電池など必要な部品はすべて内蔵ですぐ使える、簡単で直感的な操作性、なによりディスプレイのみ取り外せるので、整備時などにも使いやすいという神ギミック。ただし、「純粋なゴーグル」としての性能は「BETAFPV Cetus FPV」シリーズ付属のゴーグルと変わらないので、そっちを持っているなら、もっと上位のゴーグルを検討してもよいでしょう。ちなみに、ウインタブがもらっているBanggoodの割引クーポン「BGJP6d08」を適用すると、これが3,000円ポッキリという、何かのミスではないかというような値段になるんですが、記事執筆現在、残念ならがら売り切れです。そりゃそうだ。クーポン自体の有効期間は2/14までとなっているので、もしそれまでに在庫が復活したらラッキー。この価格なら、BETAFPVのゴーグルを持っていたとしても、整備用に追加で確保しておいてもいいくらいだと思います。このゴーグルは実機レビューもしていますので、興味のある方はどうぞ。

Eachine VR004の実機レビュー - 安くて扱いやすくて多機能な、初心者向けFPVゴーグルの決定版:ウインタブ実機レビュー記事

eachine ev300o
なお、上位のゴーグルは、このような2眼のメガネタイプのものが多くなります。確かに、このタイプはかさばらなくていいんですが、多くの場合、買っただけでは使えません。どういうことかというと、まず、基本的に電源が別売です。さらに、録画モジュールや、電波受信モジュールすら別売のものもあります。例えば、上の画像は私がメインで使っている「Eachine EV300O」ですが、電源は別売で、18650リチウムイオンバッテリー用のケースだったり、対応リポバッテリーだったり、必要に応じて自分に合った電源モジュールを用意する必要があります。録画機能は付いていて、電波受信モジュールもデフォルトでかなりいいのが付いてきますが、追加や換装も可能です。アンテナもデフォルトのものから換装しています。つまり、ユーザーが好みに合わせて必要な部品をバラ買いして組み合わせて使うのが前提となる、「それだけでは動作しない」ものが多いということです。もちろんこれは、ユーザーの多様なニーズに応えるためにそうなっているわけですが、購入の際は要注意です。実際にFPVドローンを扱っていけば、自然と詳しくなってくるので、その段階で自分に合ったものを買えばいいでしょう。

6.今年の技術的展望

どんどんと新しい技術が投入されて、その成果を分かりやすく体感できるのがFPVの世界です。現在進行形で普及しつつある、新しい技術をいくつかご紹介します。

操縦プロトコルは「ELRS」の時代へ

betafpv ELRS Nano TX Module
現在、急速に普及が進んでいるのがこれ。「ExpressLRS」あるいは略して「ELRS」という操縦電波のプロトコルです。従来のプロトコルより、安定した、かつ長距離でのコントロールが望めます。すでにある似たような特性のプロトコルに「TBS Crossfire」というのがあるんですが、こちらは使用周波数が、日本の電波法ではどうやっても違法になってしまうので日本では使えません。一方の「ELRS」は、利用可能な周波数がいくつかあり、その中には日本でも使用可能な2.4GHz帯もあるので、一躍注目を集めているわけです。

記事執筆現在、技適を取っているELRS発信器は、BETAFPV製の追加モジュールのみです。現時点で、ELRSを利用するなら、この追加モジュールを既存の操縦機に増設するしかなく、増設に関する知識や、先述の周波数の選択、ドローン側のファームウェア、ドローン側の受信機が発信してしまう電波を日本の電波法に合わせて止める必要がある(一方向通信はOKなのに双方向通信はダメというのも実にナンセンス!)など、それなりの知識と技術が要ります。しかし、利用可能ではあるわけです。すでに、発売済みの名機Happymodel Mobula6最新モデルや、発売予定のHappymodel Mobula7ニューバージョンなどは、このELRSを採用しており、今後の普及が予想されます。Jumper T-ProやRadiomaster ZorroのELRS版の技適取得も期待したいところです。

ELRS Nano TX Module:BETAFPV
BETAFPV ELRS 2.4GHz Nano Long Range Micro TX Module:Banggood

小型FPVドローンのカメラ映像も、デジタル化が進むが……

noise
FPVドローンの映像は、遅延をできるだけ少なくするために、アナログ信号が使われています。その結果、どうしてもノイズが入ることは避けられません。

Beta75X HD digital
この状況下で、遅延の極小なデジタルFPVシステムを開発して世界の度肝を抜いたのがDJIでした。空撮ドローンの録画のような、ノイズのないクリアな映像でリアルタイムFPV操縦ができるのは、衝撃的です。また、小型化も進み、このシステムを搭載した製品も次々発売されています。ただそれでも、100gに収まるかどうかギリギリくらいのサイズにはなりますが。しかし、このシステムを日本で使うには、やはり電波法の壁が立ちはだかりました。結論を言えば、業務利用でしか利用できず、手間はもちろん相当な金もかかります。娯楽として手軽に使うことは、できません。

mobula7 hdzero
んなことやっている間に、きましたよ。DJIとはまた別のデジタルFPVシステムが! HD ZEROが開発したシステムで、DJIより画質は落ち、多少のノイズは入るものの、驚くべきはその軽量化と省電力。なんと、1Sバッテリーで動作可能。従来のデジタルFPVカメラとは扱いやすさが段違いです。メーカーサイトで、カメラ部分が45~50ドル、VTXが49.99~69.99ドル。これで、夢の1Sバッテリー超軽量デジタルFPVドローンが! 実際YOUTUBEには、海外ユーザーがHD ZEROカメラを1Sバッテリー機に搭載したレビュー動画が、すでにいくつか上がっています。完成品の製品としては、2Sバッテリー機「Happymodel Mobula7 HDZero」が180ドルで販売開始です(ちなみに、プロトコルは「ELRS」)。で、例によって電波法ですよ。日本で使えるのかって話ですね。なんとかクリアしようという動きもあるにはあるようですが、うーん、どうなるかはまったく未知数です。

HD Zero:HD ZEROメーカーページ

7.FPVドローンを楽しむ最短コース

色々と話が広がりましたが、何もないところから、最短でFPVドローンを飛ばせるコースは、以下の手順になります。

・第4級アマチュア無線技士免許を取得。
・「BETAFPV Cetus FPV」シリーズのセットを購入。
(電池や充電器も一緒に買うのがお勧め。)
・「BETAFPV Cetus FPV」を無線局として開局。

1つめと3つめが面倒なわけですが、一度クリアしてしまうだけですから。正しくは、開局については、新しいドローンもしくは映像発信器を購入するたびに追加手続きが必要ですが、いったん開局してしまえば、手続きの手順は分かっているので淡々とやるだけです。

8.まとめ

ということで、2022年はじめの現在における、FPVドローンの入門情報をまとめてみました。FPVドローンは、単純な体験としての飛ばす楽しさに止まらず、学べば学ほど、練習すれば練習するほど、できることが増えていく、しかも技術の進歩で次々と新機能を持つ製品が投入されてくるという、どこまでもやりがいのある娯楽です。

例えば、先にも触れましたが、会議室程度の広さでとりあえず十分楽しめる、飛ばすために必要なハード面ソフト面の知識技能と理系教育との親和性が高い、広報的なインパクトがある、といった特性から、学校のサークル活動としてFPVドローンはもっと注目されていいと思っています。面倒な免許取得や開局も、ノウハウを共有できるし、書類のかなりの部分や「系統図」の使い回しもできますからね。

この記事をきっかけに、より多くの人が新しい技術の集大成であるFPVドローンに興味を持ち、またこの世界に飛び込んでくれたらと思います。

9.関連リンク

ウインタブ「法令遵守でドローン」カテゴリーの記事
ウインタブ「ドローン」カテゴリーの記事

スポンサーリンク