Teclastのタブレット「T50 Plus」の実機レビューです。Teclastの「Tシリーズ」は同社の上位モデルを意味し、このT50 Plusに関してはSoCにUNISOC T620という聞き慣れない(新しい)型番が搭載されており、ディスプレイのリフレッシュレートも90Hzと高めなのが特徴です。
ここがおすすめ
・Teclastの最上位「Tシリーズ」なので、筐体の仕上げ品質が高い
・SoCにUNISOC T620を搭載、従来のT606/T616よりも性能がアップ
・11インチのディスプレイはリフレッシュレート90Hz、発色品質も高い
・Widevine L1でNetflixを含む動画サブスクでHD画質視聴が可能
・Android 14を搭載、プレーンながら大画面デバイス向けUIを採用
ここはイマイチ
・カメラの撮影品質は価格なりで、それほど高品質ではない
販売サイトはこちら
TECLAST T50Plus Android 14 タブレット:Amazon
※8月10日までは19,900円
1.スペック表
Teclast T50 Plus | |
OS | Android 14 |
SoC | UNISOC T620 |
RAM | 6GB(拡張機能により最大16GB) |
ストレージ | 256GB |
ディスプレイ | 11インチIPS(1,920 × 1,200)90Hz |
LTEバンド | FDD-LTE:B1/3/5/7/8/20 TD-LTE: B34/38/39/40/41 |
SIM | nano SIM × 2(SIM2はmicroSDと排他) |
ネットワーク | 802.11 a/b/g/n/ac、Bluetooth5.2 |
入出力 | USB Type-C 、microSDカードリーダー、オーディオジャック |
カメラ | イン8MP/アウト13MP+補助カメラ |
バッテリー | 8,000 mAh |
サイズ | 257.1 × 169.2 × 7.9 mm |
重量 | 520 g |
2.外観
箱です。特にどうということもありませんが、端っこの方に「匠心」と漢字で書かれていますよね?ウインタブが知る限りTeclastのTシリーズの箱にはすべてこの文言が入っています。これはTシリーズが他のTeclast製品よりもこだわった仕上げになっている、ということを意味します。最近は見かけませんけど、以前のTシリーズにはメーカーの製品ページに「MASTER」という文言も使われていました。
同梱物です。取扱説明書は日本語を含む多言語で記載されており、内容はAndroid OSの基本操作に関するものに終始していますので、ウインタブ読者にはそれほど役に立たないと思います。
ACアダプターは日本のコンセントで使えるプラグ形状で、出力は10Wです。あとはSIM/microSDのイジェクトピンとUSB Type-C – USB Type-Aのケーブル(主に充電用)。
本体の説明に入る前に一点ご説明を。T50 Plusを開封すると前面・背面に保護シートが貼られています。前面の保護シートを剥がすとその下に液晶保護フィルムが貼られており、背面の保護シートはカメラバンプ部分を除き全面を覆っています。前面の保護シートは「剥がさないとまともに使えない」ですが、背面の保護シートについては「貼ったまま使うほうが安心」ですね。このレビューでは剥がしてご説明しますけど。
中国タブレットの場合、Amazonからの発送であっても箱に多少の凹みはあります。上の箱の画像をよく見ていただくと右上が少し凹んでいるのがわかると思います。この程度の凹みも許容できない方もおられると思いますが、そのような方は中国タブレットは購入しないほうがいいでしょう(万一本体に凹みとか傷がある場合は返品交換の対象になるはずです)。…ただ、しかるべきお値段の大手メーカー製タブレットでも箱が一切凹んでいないということのほうが珍しいとは思いますけどね…。
Teclast製品に関しては保護シートが貼られていることも含め、梱包は十分に丁寧だと思います(箱の凹みは海外からの輸送の際につくものと思います)。
前面です。ベゼル幅はこの価格帯のタブレットとしては「気持ち細め、まあ普通くらい」ですかね。Webカメラは横持ち時の上部中央とオーソドックスな配置です。
背面です。T50 Plusの筐体は金属製のユニボディ(継ぎ目のない一体成型)と開示されています。筐体色は濃いグレーで表面にはサンドブラスト加工が施されています。経験上Teclast製品は剛性がやや低めです(華奢で怖い、というわけでもありません)が、T50 Plusは比較的しっかりした筐体になっており、軽くねじった程度ではミシミシと言わないですw。
最近のTeclast製品はカメラバンブ部分のデザインが一新されました。これ「Oura-Ring」という名称で、個人的にはカッコいいと思います。
カメラバンプ部分の張り出しは小さめです。小さめですが張り出しているのは間違いないので、背面を下にして引きずってしまうとタブレット本体やテーブル、デスクなどを傷つけてしまう可能性があります。Amazonで専用ケースが1,500円で販売されていますので、筐体保護のため本体と一緒に購入されることをおすすめします。
上下側面です。上側面には電源ボタンと音量ボタン、下側面にはマイク穴がある以外は何もありません。
T50 Plusに限らず、最近のTeclast Tシリーズはボタンの配置が変わり、この画像のように右手で電源ボタンと音量ボタンを操作することになります。これ「普通と逆」です。ほとんどの中国タブレットは左手で電源ボタンと音量ボタンを操作する配置になっています。…まあ、慣れればそんなに問題はないですけど。
右側面には中央にUSB Type-Cポート、その左にスピーカー、右端にSIM/microSDスロットがあります。それと、ちょっとわかりにくいんですけど、角にイヤホンジャックがあります。最近のタブレットやスマホはイヤホンジャックが「あったりなかったり」しますが、Teclast製品はほぼ全てイヤホンジャックを装備しています。
SIM/microSDスロットは「nano SIM × 2もしくはnano SIM + microSD」という、よくある構造です。
左側面です。こちらにはスピーカーがあるのみ。
3.システム
ホーム画面とプリインストールアプリ一覧です。ほぼ「素のAndroid」という感じですが、Android 13から採用された「大画面向けのUI」がしっかり適用されており、例えばこの画像の下にある「タスクバー(電話やYouTubeのアイコン、右にオフセットされたナビゲーションボタン」、また設定メニューや一部アプリでの2列表示が可能です。つまり、素のAndroidだがUIはスマホと違っていて新鮮、と感じられるんじゃないかと思います。
画像右がメモリ拡張機能の設定画面です。T50 Plusは標準で6GB、拡張機能により10GBを増やせますので、最大で16GBとして使えます。ただし、拡張分は「ストレージの空き容量をRAMとして転用」するというもので、物理RAMのように高速な動作はしませんし、個人的には恩恵を感じません。初期状態で10GB拡張済みでしたが、速攻で4GB拡張に変更しました。
中国メーカーの各社で採用されているRAM拡張機能ですが、「ストレージの空き表示」への反映は各社まちまちです。T50 Plusの場合は拡張分のRAMはストレージの使用領域に「影響なし」と判定されてしまい、初期状態でのストレージ使用量は「10GB」でした。RAM拡張で10GBを使っていたんですけどね…。一方で以前レビューしたAvidPad S80では拡張分のRAMはストレージの使用量に反映され、拡張しない場合のほうがストレージ使用量は減ります。…まあ、あくまで表示上の問題なんですけどね…。
リフレッシュレートは自動・60Hz・90Hzから選択可能です。90Hzにするほうが画面のスクロールが滑らかになりますが、バッテリー消費も大きくなりますので、個人的には「自動」にしておけばいいと思います
それと、ここまででお気づきの方も多いと思いますけど、T50 PlusはAndroid OSの標準的項目に関してはしっかり日本語化されるものの、メーカー独自の設定項目は日本語化されていません。なので、設定メニューで日本語と英語が混ざっています。特に難しい英語は使われていませんが、英語が苦手な方だと使い初めのうち少し戸惑うかもしれないですね。
ちょっと朗報と言えるのがFMラジオです。中国タブレットや中国スマホにはFMラジオアプリがついていることが多いですが、ほとんどの場合日本の周波数に合わず使い物になりません。しかし、T50 Plusのラジオアプリは「最も低い周波数が76MHz」なので、日本でも普通に使えます。このアプリはインターネットラジオではなく、普通のラジオなので、Wi-FiやLTE接続がないところでも使えます。アウトドアとか非常時には頼りになると思います(ただし、FMラジオアプリでは有線イヤホンのケーブルをアンテナとして使いますので、有線イヤホンの接続が必須です)。
4.カメラ
カメラアプリです。まず、設定メニューが日本語化されていません。また、解像度の設定もできず縦横比は4:3と1:1の2種類です。「Picture Quality」という項目があり「Super fine/Fine/Normal」の三段階の画質設定ができますが、、縦横比4:3の場合だとすべて解像度は4,192 × 3,120ピクセル(13MP)になり、ファイルサイズが異なります。室内で同じアングルで試し撮りしたところ、Super fineだと2.94MB、Fineだと0.97MB、Normalだと0.75MBになりました(ただし、ファイルサイズは撮影場所や撮影するものによって大きく変わります)。また、ズームは最大10倍まで可能です。
ProモードやAIシーン判定といった機能は比較的豊富ではあるのですが、解像度や縦横比の設定がまともにできない、という時点で「お粗末」と言わざるを得ません。
以下に作例を掲載します。すべて原寸サイズは4,192 × 3,120、画質はSuper fineで撮影しています。
撮影日は晴天でした。日向で撮影する場合、1枚目の写真にある通り、多少白飛びが発生します。日陰で撮影した際には「そこそこキレイかな」と感じました。また、4枚目の牛丼の写真は少しピントが甘くなっています。これ、「そうなるのがわかっていた」んですけど、T50 Plusにはマクロ撮影機能はなく、ピントが合う距離まで被写体(牛丼)から離れる必要があり、「吉野家でおもむろに立ち上がって撮影しなくてはならない」状況になったため、気恥ずかしくて立ち上がれず、その結果ピントが合わせられなかったんです。要するに「画質云々以前の問題として、飯テロ写真の撮影には支障がある」ということです。
読者の皆さんはすでにスペックのいいスマホをお使いのことと思います。また、スマホは基本的に常に持ち歩いているでしょうし、写真撮影に適した筐体サイズです。一方で11インチのタブレットは常に持ち歩くような使い方にはならないと思いますし、上の牛丼の例で書いた通り写真撮影すると結構目立ってしまいますので、私の場合はプライベートでタブレットのアウトカメラを使うことはまずありません。
…という前提で言えば、T50 Plusのカメラは「こんなもんでいいんじゃない?」とは思います。
5.性能テスト
T50 Plusの搭載SoC、UNISOC T620はウインタブではまだAntutuスコアを測定したことがなく、どのくらいのスコアが出るのか非常に楽しみでした。しかし、残念ながら測定ができませんでした。テストの途中でアプリが終了してしまい、完走できませんでした(数回試しましたが、すべて同じところでアプリが落ちました)。そのため、今回はウインタブでは普段測定していないGeekBench 6を使ってテストしました。
直近の他機種のデータがないため、改めて他の3機種でも測定しました。
ALLDOCUBE iPlay 60 Pad Pro(Helio G99):726、1,963、1,286
Teclast M50S(UNISOC T606):378、1,369、450
Teclast M50 Mini(UNISOC T606):380、1,361、測定せず
UNISOC T606との比較ではシングルコアで30%程度、マルチコアでは9%程度、GPU(OPEN CL)では30%程度の性能アップです。また、予想通りHelio G99とは大きな差があります。非常にざっくりとしたことを書かせていただくとUNISOC T606から20%くらい性能が上がり、Antutuスコアが測定できたとしたら30万点に届くか届かないか、というくらいかと思います。
Helio G99とのスコア差がかなり大きいことを考慮すれば、ゲームなど負荷の高い操作に使うのなら最初からHelio G99搭載機(もしくはそれ以上に高性能な機種)を購入すべきだと思います。また、私が試用していた期間、UNISOC T606搭載機よりも顕著に挙動が軽快、という感じはありませんでしたが、ベンチマークテストのスコア差を考慮すれば、普段使いで性能差を実感できる場面が出てくる可能性はありますね。
6.使用感
ディスプレイ
T50 Plusはディスプレイのリフレッシュレートが最大90Hzになっていますが、ということはつまり、以前レビューしたTeclast T50HDからパネルが変更された、ということです。この液晶パネルはリフレッシュレートだけでなく発色品質も上がっていると思われます。
Teclastのタブレットのディスプレイはデフォルトではやや寒色が強い(青っぽい)と感じられたのですが、T50 Plusのディスプレイにその印象はありません。
これも他のTeclast製品と同様ですが、設定に「Colors & Contrast」という項目があり、コントラストを「Automatic」「Increased」「Standard」の3種類から選択でき、カラーに関してはマニュアルでの調整も可能です。私はコントラストを「Increased」にし、カラーは無調整で使いましたが、原色も鮮やかですし、とても美しいと感じました。
それと、T50 PlusはWidevine L1です。このレビューではNetflixでもL1判定、最大解像度が「FullHD(1080p)」と表示されたのを確認しています。動画サブスクリプションサービスの全てを試すことはできませんが、おそらくほとんどの動画サブスクリプションサービスでHD以上の画質で視聴ができると思います。
スピーカー
少々安っぽい音(低音が弱く、少しこもり気味)ですが、このクラスのタブレットとしては納得できる水準です。スピーカーの配置もいいので横持ちで動画や音楽を視聴する際にはしっかりステレオ感も出ます。T50 Plusよりもワンランク上の価格帯だとBlackview Tab 18が「無双」とも言える音質を誇っており、私としてはその体験が非常に強烈なので、つい物足りなく感じてしまいますが、T50 Plusで動画視聴をしていて、音質に強い不満を感じるというほどではないと思いますし、競合する価格帯のタブレットと比較しても「普通くらい」の音質ではあります。
UI・操作性
上でもご説明したとおり、T50 PlusのUIは素のAndroidに近いのですが、大画面デバイス向けのUIがしっかり使えるのでスマホとは違った新鮮味があります。余計なカスタマイズをされるよりもこちらのほうがずっと使いやすい、と考える人も多いでしょう。ただし、それほど多くない独自機能で日本語化が不十分、というのはよろしくありませんね。まあ、Androidスマホやタブレットの利用経験のある方ならそんなに問題ないとは思いますけど。
7.レビューまとめ
Teclast T50 PlusはAmazonで販売中で、通常価格22,865円のところ、8月10日までは製品ページのクーポンを使って19,900円で購入できます。
T50 Plusは以前ウインタブでレビューをしたT50HDの後継機です(T50HDのレビュー記事にリンクしたAmazonの製品ページはT50 Plusに置き換わっています)。T50HDとは同一筐体と思われ、カメラ品質やスピーカー品質もほぼ同じですが、SoCとディスプレイが異なります。
SoCについては上でご説明した通り、「ざっくり20%程度の性能アップ」と評価できますが、もともとT50HD(UNISOC T606)でもAntutuスコアは約28万点と高めのスコアをマークしていましたし、ゲーム以外の普段使いでもたつきを感じる場面はほとんどなかったので「性能アップはうれしいが、そこまで大きな実感はない」です。
それよりもディスプレイです。ウインタブでは発色品質を測定できる機材はなく、体感的な評価になってしまいますが、明らかにT50HDのディスプレイよりも発色品質は高いと感じました。なので、リフレッシュレートが60Hzから90Hzに上がったことを歓迎しつつも、むしろ「色がキレイになった」という点を高く評価したいですね。
ゲームを主目的に購入するのはおすすめしませんが、動画視聴やSNS、たまにパズル系の軽いゲームなんかをキレイな画面で楽しむのに向く製品と言え、2万円以下で購入できるのなら「買い」でいいと思います。
8.動画レビュー
YouTubeにてこの製品のレビュー動画を公開しました。こちらもぜひご覧下さい!チャンネル登録もよろしくお願いします!
9.関連リンク
TECLAST T50Plus Android 14 タブレット:Amazon
ウインタブ
2014年、低価格な8インチWindowsタブレットに触発されサイト開設。企業でユーザー側代表としてシステム開発や管理に携わっていました。「普通の人」の目線で難しい表現を使わず、様々なガジェットを誰にでもわかりやすく紹介・レビューします。