Androidでは標準でVPN接続を設定できます。Google自身も、残念ながら2024年6月20日に提供が終了することが発表されてしまいましたが、「Google One VPN」を展開しています(Pixel 7シリーズ以降のモデルでは、Google One VPN終了後も引き続きGoogleが提供するVPN接続サービスの利用が可能です)。
Androidだけでなく、WindowsやmacOSといったPC向けOS、iOS・iPad OSでもVPN接続を行えますが、「VPN?なにそれ?」とか「設定画面に項目があるのは知っていたけど、どんなメリットがあるのかわからない」という方もおられるのではないでしょうか。この記事では個人ユーザーがVPN接続を設定するメリットや注意点についてご説明します。
1.VPNとは
VPNとは「仮想プライベートネットワーク(Virtual Private Network)」の略称で、公衆Wi-Fiやモバイルネットワークを利用したテザリング接続など(場合によっては)安全ではない環境でも外部に公開されているVPNサーバーを経由することによって安全にネットワークに接続できる仕組みです。
VPN接続時は送受信しているデータの暗号化も行っているので、公衆Wi-Fi環境でも不正にやりとりしている内容を盗み取られてしまうリスクを減らすことができます。VPNサーバーを会社が提供している場合は自宅や外出先から社内ネットワークにあるファイルやイントラネット上のサイトにアクセスすることも可能です。
接続先に通知されるIPアドレスもユーザーが利用しているプロバイダー・携帯キャリアではなく、VPNサーバーのものに変更されるので、「どこからアクセスしているのか」特定することが難しくなります。
VPN接続を提供しているサービスによっては広告ブロッカーや悪意のあるサイトのアクセスをブロックする機能も利用できます。
2.個人ユーザーでVPN接続を利用するメリット
ここ数年で個人ユーザー向けに無料〜安価な価格でVPN接続を提供しているサービスが登場し、前述の「Google One VPN」やAppleが自社デバイス向けに提供している「iCloud Private Relay」のサービスも開始されたので、個人ユーザーでもVPN接続を気軽に利用できるようになりました。
個人的には「わざわざIPアドレスを変更してインターネット接続にする必要性は全くないし、VPNサーバーを経由することで場合によっては通信速度が低下することもあるので、個人ユーザーがVPN接続を有効化する必要はない」と思っていますが、海外にあるVPNサーバーを経由することで、日本では提供されていないサービスを利用できる場合があります(ただし、サービスによってはVPN経由でのアクセスを禁止している場合もあるので、利用する前に規約などを確認することをお勧めします)。
ガジェット関係で言えば「海外VPNサーバーからアクセスすることで日本では利用できない機能を有効化できる」のもメリットになるのではないでしょうか(ただし、法的に問題がないかを事前に確認しておく必要はあります)。
例えばGoogleが販売しているPixel Watch・Pixel Watch 2だと、日本国内では無効化されているEGCセンサーによる心電図測定機能を、VPN経由でサービスを提供している国からのアクセスすることで簡単に機能を有効化できます(一度有効化すればVPN接続を無効化した状態でも心電図測定機能が利用できます)。ただし、日本では医療機器としての認可を受けていないと思われるので、「心電図のようなものを自己責任で使う」ことになります。
3.実際に設定するには
AndroidでVPN接続を行う場合、「設定→VPN→VPNを追加」からVPNサーバーを提供しているサービスのWEBサイトやメールなどに記載されているサーバーのアドレス、ユーザー名、パスワードなどを入力します。
Androidアプリとして提供されている場合もあります。この場合はアプリ上で有効化するだけでVPN接続を行えるようになります。サーバーアドレスやIPSec IDの入力なども不要なので、初心者の方であればアプリ経由から有効化した方が簡単です。
いずれの場合も正常に設定されていれば、ステータスバーに鍵のアイコン、あるいは「VPN」アイコンが表示されます。
4.まとめ
接続元のIPアドレスを秘匿でき、送受信データの暗号化といったセキュリティの強化だけでなく、「海外でしか利用できないサイトにアクセスできるようになる」「日本では利用できない機能を有効化できるようになる」というメリットもあるため、個人ユーザーでもVPN接続を利用するメリットはあります。
特にカフェなどで提供されているオープンなWi-Fiスポットでは通信内容が悪意のあるユーザーによって傍受されてしまうリスクもあるため、このような環境ではむしろVPN接続を有効化した方が安全です。
ただし、VPN接続を有効化しても100%悪意のあるユーザーによる追跡が行えなくなるわけではありませんし、前述の通り通信速度が低下することもあります。
信頼できないVPN接続サービスを利用した場合、接続アプリにマルウェアが仕込まれている場合や、逆に通信内容が筒抜けになるといったリスクもあるので、大手が提供しているサービスを利用した方が安心です。VPN接続サービスとしては最大手となる「NordVPN」や「ログを一切保存しない」ことを謳い、機能制限はあるものの無料プランも用意されている「Proton VPN」などが有名です。
また、暗号化は行っていますが、決して「何をやっても安全」というわけではありません。個人的には自宅など信頼できるネットワークを利用しているのであればあえてVPN接続を有効化する必要はないと思っています。