ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー - ダイナミックレンジの表現力が素晴らしく最高の没入感を約束するノイズキャンセリングヘッドホン(実機レビュー:natsuki)

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
こんにちは、natsukiです。今回は、ちょっと本格的なノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」のレビューをさせていただきます。この製品は、クラウドファンディングMakuakeのプロジェクトで開発されたものです。今回のレビュー品は、GenHigh社より提供していただいたものになります。この場を借りて、お礼申し上げます。

スポンサーリンク

すでにAmazonでも一般販売がはじまっていて、価格帯としては、2万円台後半。勝手な感覚ですが、「専門的な知識を得るつもりはないけれど、それなりにしっかりと音楽を聴きたい」という場合の上限ではないでしょうか。このクラスを越えると、もう、青天井の世界になっていく感じがします。

結論を先に言いますと、「とりあえずコレを持っておけばよし!」な、一つの区切りとなる製品です。

1.スペック

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
まずは、スペックを見ておきましょう。こちらがざっとの機能の特徴になります。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー

クリックで拡大します

一応、説明書に載っている数値の部分も示しておきます。あんまり、数値をいじくっても仕方ないと思うので、参考程度に。実際どうかというのは後ほど詳しく見るので、ここではどんな機能があるかを列挙するにとどめておきます。

ノイズキャンセリングなど

一番ウリの部分です。

「ANC(ハイブリッドアクティブノイズキャンセリング)」によって、雑音を低減します。逆に、外を歩いているときなどに危険でないように外の音を積極的に取り込む「トランスペアレンシーモード」もあります。また、ヘッドホンを耳から浮かすと、自動で再生をストップし、耳に付けると再生を開始する「オートポーズ&再生」機能、左のイヤーカップに手を当てると、一時的に音楽の音量を下げて外部の音を取り込むようになる「スマートタッチ&トーク」機能もついています。

接続

接続は、ワイヤレスのみ、Bluetooth5.0です。別にBluetoothの下位バージョンでも問題なく使えます。Bluetooth4.0以上であれば、音質、機能面で問題はないでしょう。5.0の方が、離したり通信環境が悪いときに通信が安定しやすい程度のことのはずです。

コーデックは、SBCのほか、AAC、Apt-X、Apt-X LLに対応。Apt-X HDには対応していません。遅延に圧倒的に強いはずのApt-X LLは、まだまだ普及途上の規格ですね。残念ながら私は対応機器を持っていないので、検証はできませんでした。今後、この規格を採用する機器が増えてくれば、活躍を見込めます。

磁気ワイヤレス充電スタンド

専用の充電スタンド付きです。また本体にケーブル(USB Type-C)をつないで、直接充電することも可能です。なので、出先でモバイルバッテリーから充電というのも可能です。ご安心ください。

アプリ連携

イコライザーなどが付いた、専用アプリがあります。また、アプリを使って、「聴覚最適化」なる謎のイコライゼーションが可能です。ちょっと残念なのが、アプリはAndroidとiPhoneのみで、WindowsやMac用のものはありません。家で落ち着いて聴きたいときにもこのヘッドホンは大活躍なので、ここはパソコン用のアプリも用意して欲しいところです。

2.同梱品と筐体

さて、開封。同梱品と、筐体から見ていきましょう。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
開けてみました。スマートに収まっていて、開けた瞬間から高級感を感じ嬉しくなります。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
同梱品一覧です。えーっと説明書は……、そう、「巻いてある」。左上の恵方巻きみたいなのがそれです。かなりぎっちり巻いてあって、伸ばすの大変なんですけど。5カ国語表記で、ちゃんと日本語もあり、翻訳精度もほぼ完璧です。ケーブルは、microUSBのものが充電スタンド用、USB Type-Cのものが本体直接充電用。なお、アダプターは付いていませんが、必要電力は5V/1Aでいいので、適当なものを使えばよいでしょう。それから、保護用の袋。ビロード地で心地よい手触り。ただし、このヘッドホンの用途を考えると、この保護袋では保護性能は心許ない。あとで、適当なケースを見つくろうことにします。

スタンド

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
スタンドです。ヘッドホンを「上から」かけるのではなく、「下から」マグネットでくっつけます。くっつく部分には充電用端子がしっかりあるので、これをもって「ワイヤレス充電」と称するのはイマイチ釈然としない感はありますが、まあどうでもいいか。なお、ヘッドホンへケーブルを使っての直接充電も可能です。出先で充電するときは、その方法で。

で、このスタンド、ご覧のようにとってもカッコいい。が、デザイン優先で、機能的にはちょい惜しい。というのは、横から見ると「Z」の形をしているため、ヘッドホンをかけるときに、ヘッドホンと支柱がクロスして引っかかるんですね。片手で取り外すのはコツが要ります。また、端子がリバーシブルでないもの、微妙に使いにくい。全体の機能からすれば些細な部分ですが、日常的に使うものなので、一応指摘しておきます。

スタンドへの給電は、microUSBポートで。ケーブルは付いていますが、アダプターは付属していません。上にも書きましたが、5V-1Aなので、適当なアダプターを使えばよいでしょう。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
充電中はこのようにランプが付き、終わると消えます。やや派手ですが、これは分かりやすくてよし。

ヘッドホン本体

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
ヘッドホン本体です。可動域は案外狭く、お猿のシンバルみたいにイヤーパッドどうしをピッタリ合わせたり、イヤーパッドを内側に折り込んだりはできません。もちろん、フィット感を得るのに十分な範囲は動きますが、サイズが小さくならないので、後述のようにケースを買うときはそれなりに大きなものが必要になります。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
頭頂部はクッション素材になっていて、ほどよい付け心地があり、また、すべりません。左右の記号はここに書いてあります。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
左イヤーパッドです。ANCと書いてあるのがノイズキャンセリングモードボタン。電源を入れたときはノイズキャンセリングモードになっていて、このボタンを押すたびに、ノイズキャンセリングモード、トランスペアレンシーモード、OFF、が切り替わります。モード切り替わり時はボタンに付いているライトの光り方とヘッドホンに流れるアナウンスで、どのモードか判別が付きます。

電源ボタンはそのまんまなので、特に解説は要りませんね。なお、写真では分かりづらいですが、ANCボタンは出っ張っていて電源ボタンは平たいので、ヘッドホンを使用中でも、触覚で容易にボタンの判別が付きます。ANCボタンは使いながら切り替えることが多いので、こういう配慮は大切ですね。

ヘッドホンへの直接充電用のUSB Type-Cポートも、こちら側にあります。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
右イヤーパッドです。真ん中のボタンは、音楽再生時は「一時停止/再生」、通話時は「応答/通話終了」、ダブルクリックでSiriもしくはGoogle Assistantを呼び出します。

上下のボタンは、短押しで音量、長押しで「曲送り/戻し」です。これは定番。どっちが+かの表記や、どっちか触覚で判別のつくでっぱりはあってもよかったかな? ただ、イヤホン・ヘッドホン系でボタンがついている場合は、普通この操作なので、戸惑うことはないと思います。

ボタンの総数は、必要最小限といったところで、操作も直感的です。高機能な機器ほど、操作を覚えるのがめんどくさいのですが、このくらいシンプルならすぐ使えますね。

3.各種機能とアプリの使用感

ではでは、早速使ってみましょう。クライマックスの音質評価は後でまとめてやるとして、それ以外の使い勝手を先に見ておきます。

ペアリング

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
ペアリングは、特にクセなく問題なし。画像はAndroidスマホですが、ヘッドホンの電源を入れておくと、スマホ側で認識するので、選択するだけ。別の機器に接続する場合は、すでに接続した機器のBluetoothを切っておくか、接続済み機器が近くになければ、問題なく新しい機器に認識されます。上の画像からは、Apt-Xで接続されているのが分かりますね。また、Bluetooth4.0以上なら、ごらんのようにバッテリー残量も表示されるはずです。

遅延は、高画質・高音質動画もApt-X接続で感じず

Apt-X LL対応機器は持っていないので、それは試せませんでしたが、Apt-X接続で気になるような遅れは感じませんでした。音ゲーレベルになると分かりませんが、一般的な動画視聴、高音質・高画質寄りの動画視聴でも、試した限りでは問題ありませんでした。廉価でそれなりの音質のワイヤレスイヤホン「Mepow T3」では顕著な音ズレが生じていた、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団公式YOUTUBEチャンネルの動画も、気になるほどの遅延は発生せず。よいぞよいぞ。

感動のノイズキャンセリング

いやー、面白いですね、ノイズキャンセリング。「完璧」とはいきませんが、明確な効果を体感できます。

夜に使っていると、家の外の車やバイクの音、冷蔵庫の音などは、ほぼ完全に無音化できます。深夜にもかかわらず、ヘッドホンを外すと、「ああ、世の中ってこんなにうるさかったんだ」て思いますから。

一方、日中外に持ち出すと、周りの音が「まったく聞こえない」というほどではありません。人が話したりしていればある程度聞こえます。ただし、もちろん相応に低減されますし、音の距離感もつかめなくなるし、そして何より、音質が良いので、注意力を音楽の方に持って行かれます。やはり、ノイズキャンセリングを付けたまま歩くのは非常に危険です。絶対やめましょう。使うのは、電車内とか、安全を確保した場所で。

なお、低音の低減に特に強いようで、面白かったのは、雨上がりの道ばたで試していたところ、車のエンジン音や地鳴りなどはしっかり低減されるのに、濡れた路面を走る「シャーッ」って音だけ突き抜けてくるんですよ(笑) 一般的に、クラクションや踏切その他の「警戒音」は自然音より高めで鳴らすので、これは正しい調整だと思います。

想像以上に便利な「オートポーズ&再生」「スマートタッチ&トーク」機能

スペックを見ていたときは「ふーん」で終わっていたのが、実際に使ってみて、凄く便利なのが、「オートポーズ&再生」機能と、「スマートタッチ&トーク」機能です。いずれも、聴いているときに何らかの理由で中断したいときに活躍します。

まず「オートポーズ&再生」機能。そのまんま、ヘッドホンを外すと再生が停止し、もう一度かけると再生がはじまります。まれに再生がはじまってくれないこともありましたが、実用面では問題ないレベルです。これは、便利すぎる。ただし、Windowsでは機能してくれませんでした。

もうちょっと簡易的なのが、「スマートタッチ&トーク」機能。これは左側のイヤーパッドに手を当てると、音量が非常に小さくなり(公称2%)外の音を取り込むようになるというものです。「オートポーズ&再生」機能にくらべ、とっさのときに便利です。

いやー、これは本当に快適。素晴らしい機能です。ということで是非、Windows対応を……

音漏れ

密閉型ヘッドホンなので、常識的なレベルの音量であれば音漏れはほとんどしません。ただし、もちろんは限度はあります。大音量でも聴けてしまう音作りと、ノイズキャンセリング機能による没入感がすごいので、ついつい音量が大きくなってしまいがちだということは自覚して気をつけておいた方がいいでしょう。

アプリ

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
専用アプリを見てみましょう。私はiPhoneを持っていないので、Google PlayからダウンロードするAndroid版です。ということで、残念ながら、Windows版、Mac版はありません。くどいようですが、パソコン用のを是非とも……

機能は今のところシンプルです。まだリリースされたばかりなので、今後のアップデートで、より高度な機能も搭載されるかもしれません。期待したいところです。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
はじめの画面は、ノイズキャンセリングとトランスペアレンシーモードの切り替え。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
そしてイコライゼーション。それぞれのモードの感想をざっと述べておきます。「ロック」は、私があんまりロックを聴かないんで正しく評価できませんが、ちょっと削っちゃいけない部分まで削ってしまって、私には理解できないイコライゼーションでした。「ジャズ」は、これも個人的にあまり聴かないジャンルなので正しく評価できませんが、管楽器の輪郭は捉えやすくなりますね。弦楽器は不安定な感じがするので、そういう曲には向きません。明らかに、ビッグバンドではなく小編成なジャズバンド向けのイコライゼーションです。「ポピュラー」は、単純に低音とヴォーカルを強化した感じ。このヘッドホンの音質なら、無理にブーストする必要はない気がしますが、お好みで。

「Hi-Fi」が、非常に面白い。簡単に言うと、残響を全部取っ払っちゃったみたいな音になります。なので、ホールの音響込みのクラシックには基本的に向きません。バイオリンソロとか、みんなギドン・クレーメルになる。……分かる人にしか分からないたとえで失礼。ともかく、音の解像度は上がりますが、ちょっと極端かも。ギターの弾き語りみたいなかすかなタッチや、歌手の息づかいまで感じたいような曲には向いています。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
さらに、「カスタマイズ」を選ぶと、自分で調整できるのですが、このとき右上の「リスニングテスト」をクリックすると、「聴覚試験」がはじまります。健康診断でやる、いろんな高さの音がヘッドホンから聞こえてくるので、聞こえたときに、左右どちらか聞こえた方のボタンを押すというアレです。繰り返し行った方が精度が高まるというので、上の画像は、5セット繰り返した後、アプリが私向けに作ったイコライゼーションです。聴覚試験を1セット行うとスコアが出るんですが、私の場合、90点代後半から100点満点ばかりだったので、おとなしいイコライゼーションになっています。幸い、全音域まんべんなくちゃんと聞こえているようです。よかったよかった。

このイコライゼーションも、プリセットがあるといいですね。例えば、さっきの「Hi-Fi」なんかは、面白いんですがちょっとやり過ぎ感があるので、もうちょっとソフトに自分で調整できると嬉しい。今後のアップデートに期待です。

スポンサーリンク

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
設定画面はこの通り。基本的なところです。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
実際に使うときは、新しいバージョンのAndroidでは、こうやって画面分割機能を使うと便利です。ちょっと表示が崩れてしまいますが、使用には問題ありません。

以上、アプリはご覧のように、直感的に操作できるようになっていて、イコライゼーションは効果が分かりやすく現れます。ただ、シンプルすぎるきらいはあるので、もう少し細かくいじれるようなアップデートに期待したいところです。

電池保ち

あんまりきちんと計っていませんが、常識的に使用していればまず気にすることはないと思います。筐体のところで見たように、USB Type-Cにてヘッドホンに直接充電することも可能なので、旅行に持っていってもモバイルバッテリーから充電できるので安心です。正直、実用面では別にスタンドはなくても……ってのは言わない約束か。カッコ良さも大切ですからね!

4.音質評価

さて、いよいよ本題。約2週間、いろいろ聴いてみました。CDからの取り込み音源が最も多く、次いでYOUTUBE、Spotifyのフリーバージョン。ジャンルは、クラシック音楽とポピュラーがメインです。

オーディオの世界が怖い世界だということはよく知っているので、先にお断りを。まず、上記の比較的ライトな使用で評価しているのは、世はハイレゾ音源の時代だというのは分かっていますが、あんまり私がデータを持っていないのと、正直なところ、私自身の能力からするとそのくらいが身の丈に合っているという理由からです。オーディオ機器のプロではないので、ご容赦ください。また、基本的な考え方として、私は生演奏至上主義です。幸いにして都市部在住のため、特にオーケストラの演奏会はアマチュアから海外有名オケまで、それなりに聴いています。なので、ほかの機器との比較ではなく、実際の演奏と比較したときの再現度はどうか、というのが評価の基本的なスタンスとなります。あとは、ぶっちゃけ、印象。偏ったこと言っていることも多々あると思いますが、じっくり真剣には評価したつもりですので、どうぞお付き合いください。

音質の評価

まず、イコライゼーションをかけないノーマルな音質は、空間を感じさせる「音源との距離のある響き」です。低音から高音まで、ホールで聴くような響きを作ってくれる。オールマイティに活躍できますが、方向性としては、フルオーケストラのクラシック音楽や映画鑑賞といったあたりが、最も得意とする分野でしょう。

後述のように、ノイズキャンセリング機能とも相まって、音量の幅の表現こそ、この製品の非常に優れた部分です。ささやくような小音量はきっちり捉え、大音量は質量のある迫力を提供してくれます。また、程度問題ですが、かなり大きな音量でも耳をつんざくようなことにはなりにくいです。空間を感じさせる音作りの面目躍如ですね。

逆に言うと、「耳元で鳴らす」ような方向性ではありません。つまり、徹底して音の解像度を追求する好みには、向かないかもしれません。そこを補ってくれるのは、イコライゼーションの「Hi-Fi」設定です。こちらは、一気に音源との距離が縮まります。ポピュラーなどなら、歌手の呼吸まできっちり聴こえてくる。さだまさしや中島みゆきなど、息漏れまでもが音楽になるような歌手は、この設定で聴くと、あらためてその力量の高さと魅力を再認識させられます。

惜しむらくは、すでに述べたように、「Hi-Fi」設定のイコライゼーションが、ちょい「やり過ぎ」なこと。あまりに残響を殺しすぎなのと、バランス面でも、ヴォーカルやギターなどの「鋭い音」が際立つ傾向があります。あと、YOUTUBEなんかで音質に難がある場合、ホワイトノイズが強まって聞こえたり女性ヴォーカルがザラついたりといった現象が出てしまうこともあります。まあ、これはちゃんとしたのを聴けっていえばそれまでなんですが、ライトにも使いたいですからね。こういったことは、その「程度」をもう少し抑えれば解決する話なので、アプリによるイコライゼーションのコントロールが、さらに細かくいじれるようになることを望みます。

低音についても触れておきましょう。生演奏と電子機器での再生で、分かりやすく差が出てしまうことのひとつが「低音」の表現です。だからこそ、オーディオ系機器の多くが、ウリとして低音性能を押し出しています。オーケストラやジャズの演奏を生で聴いたことがあれば一聴瞭然なんですが、例えばコントラバス(ダブルベース)の音って、生ではすごく「飛んで」くるものなんですよね。しかしこれをオーディオ機器で再現するのは、べらぼうに難しい。で、電子的に無理にブーストをかけることになるんですが、これまたなかなか難しく、特にオーケストラ音源では下手なブーストはすぐにボロがでます。個人的に、比較的顕著に出やすいと思っているのはティンパニで、「コッーン」と鋭く響くはずの叩きが、まるでバスドラみたいにボワンボワンするのはよく聴く現象です。で、このMu6ですが、ノーマル状態では、本物みたいとはいわないまでも不自然なブースト感はなく、それなりに音の輪郭を潰さずに聴かせてくれます。ノイズキャンセリング機能があるということは、ごまかしが効かないということでもあるので、その中でよく丁寧に音作りをしていると思います。えーっと、すごくハードルの高い話をしているので控えめな表現になっていますが、かなり褒めてるつもりです。

なお、「ポピュラー」のイコライゼーションをかけると、無理矢理膨らませたブースト感は出ちゃいます。低音が強調された分、音の輪郭がかすんじゃう。曲との相性はもちろんあるんですが、個人的には「ポピュラー」のイコライゼーションは、せっかくのMu6の表現力を殺すようで好かんです。別に聴けなくはないんですが、「よくあるそこそこの響き」に近くなってしまって、もったいない。ただ、このイコライゼーションがあるから、素の状態での低音表現力の高さが浮き彫りになりますね。

ノイズキャンセリングと合わせた評価

ノイズキャンセリング込みで評価すると、期待通りというか、それ以上というか、没入感はスゴいです。先述のように、歩きながらはダメ、絶対。周りの音が聞こえないとか、距離感が狂うというのはもちろんなんですが、意識を完全に音楽の方に持っていかれてしまって、他に注意が行かなくなる。私は、ただでさえ「ながら音楽」はできない人なので、なおさら。音楽聴いていると、そっちに全神経が行こうとしちゃう。

で、その没入感は、もちろんあらゆる音楽で効果ありなんですが、ここは、あえて声を大にして言いたい。クラシック音楽でこそ、このノイズキャンセリング機能を味わって欲しいと!

理由は簡単で、クラシック音楽って、「音量の幅」が非常に大きいんです。通常の、イヤホンやヘッドホン、スピーカーで聴いている場合、やむなく曲の途中で音量調整をしなくてはいけない場合は、よくあります。例えば、シューベルトの「未完成交響曲」第1楽章冒頭、そして再現部の地の底からのうねりから悲劇的な頂点へ。例えば、グリーグの劇音楽「ペール=ギュント」より山の魔王の宮殿にて、トロルたちのざわめきから殺意ほとばしる絶叫へ。いずれも、ながーいクレッシェンドを味わう部分なのに、はじまりのところを聴き取れるくらいに音量を上げると、後半で音量がデカすぎてギャーッてなって、音量を下げざるを得なくなる。だ・い・な・し・! または、チャイコフスキー交響曲第六番「悲愴」第1楽章半ば、第2主題の甘い旋律がクラリネットからファゴットに受け継がれて「pppppp」まで音量を下げていくところ(バスクラで代奏するかの議論は確実に荒れる)、聴き取ろうとして音量を上げたとたんに展開部の「ff」の一撃を喰らって、のたうち回った経験は誰しもあるんじゃあなかろうか?

これが、かすかな音量からクライマックスの大音量まで、ちゃんと続けて聴けるんですよ!!!! しかも出先で!!!!!

長いクレッシェンドといえば、これに触れないわけにはいかない。ええ、電車内で聴いてしまいましたとも、ベートーヴェン交響曲第九番「歓喜の歌」(さすがに、一気に聴いたわけではありません)。第1楽章冒頭の星の瞬きから雷鳴へのコントラストを、出先の環境で聴けることにもう感動なわけですが、何といっても、第4楽章にて、それまでの楽想をすべて否定した先に提示される歓喜の主題ですよ。大地がささやくかのように低弦が歌いはじめ、もうここで予感に震えが来る。唱和するビオラにファゴットが応じて溢れる歓びを踊り、やがて差し入れられるバイオリンの響きは雲間より下るヤコブの梯子か、今や弦楽器のオブリガートが天上の光を満たし、最後のきざはしを駆け上って、高らかに告げる至高のトゥッティへと、おお……、おお!! Freude!!!!!

――――――(こっちの世界に戻ってくるまで少々お待ちください)――――――

……えーっと、失礼。

このヘッドホンのノイズキャンセリング、なにが一番危険かって、電車の中とか人混みで陶酔の世界に入ってしまうことですね。

ということで、ノイズキャンセリングと十分な音質により、まず、音楽表現の細部まで聴き取ることが可能になります。そして、音量のダイナミックレンジの表現力がともかく素晴らしい。音量が大きくなっても耳に鋭く刺さるような音にはならないので、その変化を存分に堪能することができます。

こういったことから、ポピュラーも歌手の細部の表現などを十分に楽しめますが、基本的な音作りの方向性もあって、ダイナミックスの幅の大きいクラシック音楽や映画鑑賞でこそ、ノイズキャンセリングのないヘッドホン・イヤホンとは一線を画した感動を得られるでしょう。

5.Mu6で聴きたい、お勧め楽曲

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
せっかくなので、いろいろ聴いてみた中で、このMu6で聴くことで楽曲の表現力が最大限に発揮される、つまりノイズキャンセリングがない状態で聴くのと差が激しいと感じた作曲家(歌手)を2名と、そのお勧め曲をあげておきます。いずれも、「ちょいマイナー」どころで、聴く人は聴くけど、知らない人はそのままで終わってしまいそうな楽曲。もちろん、私自身の音楽の趣味が多分に入っているわけですが、もしこのMu6を手にしたなら、是非一度は聴いて欲しい。Mu6で聴くことで、誰しもその表現の苛烈さを十分に理解できることと思います。また、これらの楽曲を知っていれば、Mu6ならその魅力を十分に引き出せるということで、Mu6の方向性を理解する助けになると思います。

シェーンベルク

まずは、クラシックから。とはいっても、「現代音楽」に入ります。いわゆる「無調音楽」を切り拓き、見ようによってはクラシック音楽をわけの分からないものにしてしまった。でもでも、この作曲家にとって、無調とは表現のために必然であったことを否応なく思い知らされます。

「ワルシャワの生き残り」― 推奨音源:アバド指揮、ウィーンフィル

ナチスドイツのユダヤ人強制収容所を表現した1曲。曲中の朗読や歌詞で英語、ドイツ語、ヘブライ語が使われるが、もう、聞き取って意味を理解するとかそういうレベルの話ではない。文字通り、言語に絶する体験を、音楽の力で表現する凄絶な楽曲。聴いたことがない人はぜひ前情報なしで聴いて欲しいので、具体的な解説はしませんが、ダイナミックレンジを活かしきれる視聴環境でこそ、このまさに世界が崩壊するような衝撃は十分に伝わるでしょう。もちろん、朗読と歌詞の意味は分かっておいた方がいいのだけれど、推奨音源にはちゃんと日本語との歌詞の対訳もついているのでご安心を。ダウンロードでなく、物理的なCDを買おう。

「月に憑かれたピエロ」― 推奨音源:アサートン指揮、ロンドンシンフォニエッタ

シュプレッヒシュティンメという、歌と朗読の合わさったような奇妙な歌唱と、最大5名の小編成のアンサンブルによって、「月に憑かれたピエロ」による狂気(ヨーロッパ圏では月は狂気の象徴)と幻想が展開される。マジ狂気。言語と既存の調性音楽の枠組みからはみ出しまくる狂気が、縦横無尽の音響を紡ぎ出す。歌詞はドイツ語ですが、これも推奨音源には日本語対訳が付いています。

鬼束ちひろ

こちらは、ポピュラー(?)から。仲間由紀恵の出世作となったテレビドラマシリーズ「TRICK」の、エンディングテーマを一貫して歌っていたのが有名でしょうか。身体の極限まで振り絞って絶唱するスタイルなので、かすれや息切れまで余すところなく聴こえるMu6でこそ、その鬼気迫る迫力が突き刺さります。どの曲もいいんだけど、性格の違う2曲をあげておきます。

私とワルツを

「トリック」第3シリーズエンディングテーマ。鬼束ちひろの楽曲の中でも、比較的有名な1曲。魂を絞り出すようなサビの歌唱は、息の乱れまで聴こえてこそ届くものがある。そしてラスト「どうか、私とワルツを」の諦観の深さもまた。

Tiger in my Love

鬼束ちひろにしては珍しい、分かりやすくロックンロールした雰囲気の楽曲。捩りあげ、轢き伸ばし、揺らめき、一瞬醒め、叩きつける、肉体の檻を揺さぶるほどに躍動する「呼吸」を聴いて欲しい。

6.キャリングケースをどうするか

さて、一気に話題はクールダウンします。このMu6、せっかくのノイズキャンセリング機能なので、持ち出すのが前提となるんですが、すでに見たように、付属の袋はちょっと貧弱です。従って、キャリングケースを別に購入したい。

ところがMu6は、もともとのサイズがゴツい上に、あんまり柔軟じゃないんですね。筐体のところで触れたように、おサルのシンバルのように左右のヘッドホンをピッタリ合わせたり、内側に折りたたむことは不可能です。通常状態での最小サイズは、実測で、約縦19cm×横17cm×厚さ9cmです。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
ただし、90°横に回転させて平たくすることはできます。この状態での最小サイズは、実測で、約縦19cm×横19cm×厚さ7cmです。先ほどより平たくなって厚さが減った分、幅は増えています。

このサイズに合ったキャリーケースを探さないといけない。で、Amazonをざっと見てみると分かるんですけど、なかなか余裕を持って入りそうなケースが少ない。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
悩んだすえに買ったのはこれです。「LUNGEAR ヘッドホン ケース sony WH-1000XM3 WH-1000XM2B」。安価なのと、取っ手が付いているところも気に入りました。

ノイズキャンセリングヘッドホン「Mu6」レビュー
よーし、入った。贅沢を言えば、幅はもう少し小さくてもよかったも。とりあえず、このケースなら十分使えます。

7.まとめ

以上、色々書きたくなって終わらない悪い癖が出ましたが、まとめるとこうなります。

音響について
・ダイナミックレンジの表現力が、素晴らしい。
・大音量でも、耳をつんざくような響きにはなりにくい。
・低音はしっかり聴こえ、音の輪郭も失われない。
・方向性としては、音楽ホールのような響きを大切にする空間を感じさせる音作り。
・ノイズキャンセリングの実力は十分。全集中力を音楽に向けられる。

その他の機能面について
・「オートポーズ&再生」「スマートタッチ&トーク」機能は、ものすごく便利。
・動画鑑賞レベルでは気になる遅延はまず無い。
・アプリは操作性と機能の種類はよし。ただ、もっと細かくいじれるようにして欲しいのと、パソコン版が欲しい。
・キャリングケースは自前で用意する必要がある。サイズが大きめなので注意。

記事中でも言及しているように、ノイズキャンセリング機能って、オーディオ機器側からすれば「ごまかしが効かない」んですよ。すごく細部の表現まで聴こえてしまうし、ノイズキャンセリングによって再生音楽がゆがむようなことがあればもってのほかだし。そういうシビアな状況で、弱点のない、とても丁寧な音作りをしています。

唯一の不満点は、アプリについてです。イコライゼーションをもうちょっと細かくいじれるようにして欲しいのと、パソコン版が無いことでした。まあ、専用アプリじゃなくても、パソコン側の機能やサードパーティー製のイコライゼーションソフトでどうにでもなると言えばその通りなんですが、そこはせっかくなんだから、ねぇ。

うん、これ、ファイナルアンサーでいいと思いますよ。この製品は、冒頭に書いたようにクラウドファンディングMakuakeのプロジェクトで開発されたものですが、すでにプロジェクトは終わって製品化されているため、購入はAmazonからになります。記事執筆現在、価格は27,960円で、チェックを入れるだけの12%OFFクーポンが発行されているので、24,604円になります。さらにメーカーさんから特別にクーポンも頂いてまして、「RCDBMA3P」を入力するとさらに15%OFFです。12%クーポンと併用できますので、20,214円で購入が可能です。

はじめにも書いたとおり、これ以上のものを求めると、金額が青天井になっていきます。また、再生する側の機器やデータにもそれ相応のスペックが求められ、ヘッドホンのみならず様々なことを考えて総合的に音響環境を作り上げる必要が出てきます。難しいことを考えずに、これひとつ買えばとりあえずOK、というランクのものとしては、ここが頂点なんじゃないでしょうか。繰り返しになりますが、手軽にこれだけのダイナミックレンジの差を体感できるのは、文句なしに素晴らしい!!

8.関連リンク

Mu6 高音質 ワイヤレス ノイズキャンセリングヘッドホン:Amazon

スポンサーリンク

 スポンサーリンク