ウインタブではほぼ毎週レノボのセール情報を掲載していて、一通り製品価格を確認しているのですが、その際にいつもこんなことを考えてしまいます。「ThinkPadは最新モデルでなければすごくお買い得なのに…」と。
たぶんに「ネタ」だとは思いますけど、SNSなどで古いCPU(あるいはSoC)を揶揄する論調、低スペックなCPUを小馬鹿にする論調を見かけることがあります。もともとウインタブは「低スペック機擁護派」なので、このような論調を少々残念に思ったりもします。
…ちょっと考えてみましょう。
個人利用PCでは多くの場合、用途は仕事や勉強のためのOfficeソフト、Webブラウジング、動画視聴などでしょう。これらの作業に本当に最新ハイエンドCPUが必要でしょうか?
この記事では、「型番マウント」「世代マウント」に惑わされず、仕事・学習・娯楽といった実際の用途に合わせた、賢いPC選びについて考えてみたいと思います。
目次
1.型落ちThinkPadは本当にお得?

ThinkPad X1 Carbon Gen 11
冒頭の「ThinkPadは最新モデルでなければすごくお買い得なのに…」ということの例です。ThinkPad X1 Carbonは4月30日現在、Gen 11、Gen 12、Gen 13 Aura Editionと、3世代のモデルが併売されていますので、主要スペックと価格を比較してみましょう。
ThinkPad X1 Carbon | CPU | RAM/SSD | ディスプレイ | 価格 |
Gen 13 | Core Ultra 5 226V | 16GB/256GB | IPS(1920 x 1200)タッチ, 100%sRGB | 268,906円 |
Gen 12 | Core Ultra 5 125U | 16GB/256GB | IPS(1920 x 1200) 100%sRGB | 192,258円 |
Gen 11 | Core i5-1335U | 16GB/512GB | IPS(2240 x 1400)100%sRGB | 198,000円 |
※Gen 11のみOSはWindows 11 Pro、他はWindows 11 Home
Gen 11の搭載CPU、Core i5-1335Uは第13世代(Raptor Lake)の型番でNPUは搭載していません。Gen 12のCore Ultra 5 125UはCore Ultraシリーズ1(Meteor Lake)でNPUを内蔵していますが、NPU性能は低めでCopilot+ PCの性能要件を満たしません。そしてGen 13のCore Ultra 5 226VはCore Ultraシリーズ2(Lunar Lake)で最大40TOPSのNPUを内蔵するCopilot+ PCです。
CPU/RAM/SSD/ディスプレイの仕様から見た価格はやはりGen 11が非常に安いと思います。ただし筐体は(見た目はみんな同じですけど)それぞれ異なり、Gen 13は1キロ切り(986 g)を実現していますし、装備面でも相違点があり、概ね「新しい型番のほうが充実」している、ということは言えます。また、型番が古くなるとカスタマイズ余地が小さくなり、Gen 11は注文時のカスタマイズができません。
結局どれが割安かは人によりますが、ウインタブとしては「CPU型番にこだわらなければGen 11」と考えます。
2.仕事・学習・娯楽に必要なPC性能とは?
プライベートでPCを使う場面を改めて考えてみます。多くの人の用途は次のようなものではないでしょうか。
・Officeソフト(Word、Excel、PowerPointなど)での書類作成やレポート作成
・インターネットでの調べ物、ネットショッピング
・YouTubeやNetflixなどの動画視聴
・オンラインミーティング(Zoom、Teamsなど)
これらの作業はそれほど高いCPU性能を要求しません。低スペック機擁護派のウインタブとしては「この程度ならIntel N100とかでも大丈夫」だと思っていますが、より一般的に言うと…
数世代前のCore i5やRyzen 5であれば、ブラウザのタブを複数開きながらOfficeソフトを操作しても、ほとんどストレスを感じることなく快適に使えます(第13世代のCore i5なんて「上等」もいいところです)。さらに、最近のCPUは内蔵GPUの性能も向上しているため、動画再生や軽い画像編集も十分にこなせます。
つまり、「最新型番でなければもう使いものにならない」というのは、実用上の視点から見れば大げさな話です。
3.第13世代CoreやRyzen 7030はまだまだ「新品」として通用
次に「これから新品のPCを買う」前提で考えてみます。
最新型番のCPUはクロック周波数が若干向上したり、NPU(AI専用プロセッサ)が搭載されたりしています。しかし、これらの進化は現時点では体感しにくいケースが多く、日常的な作業においては第13世代CoreやRyzen 7030シリーズでも十分に満足できる性能を持っています。
特に第13世代Core(Raptor Lake)では、前世代よりもマルチコア性能が向上しており、ビジネス用途から学習、一般的な娯楽利用まで幅広くカバーできます。Ryzen 7000シリーズも、内蔵GPUが強化され、ライトな画像編集や動画再生なら外部GPUなしでもこなせる実力を持っています。
実際に、例えばレノボのThinkPadシリーズでは、第13世代Core搭載モデルが型落ち扱いになり、価格が下がっています。これらのモデルは性能と価格のバランスが非常に良く、プライベート用途における「賢い選択肢」と言えるでしょう。
なお、ここで「Ryzen 7000シリーズ」とせずに「Ryzen 7030シリーズ」としたのには理由があります。Ryzenには7020シリーズというのもありまして、これはアーキテクチャがZen 2と古く、性能も低めです。一方で、7030シリーズ以上になるとZen 3世代(以降)となり、第12世代以降のIntel Coreと比較しても実用面で遜色のない性能となっています。7020シリーズを否定するつもりはありませんが、Intel CPUとの対比上、ここでは「Ryzen 7030シリーズ」としました。
4.高負荷用途でも「必要十分」を見極めよう
ここまで、主に「軽作業中心」のPC利用を前提にして話を進めてきましたが、用途がゲームや動画編集などの高負荷作業に変わったとしても、本質は変わりません。
たとえば「ゲームにはGeForce RTX 50シリーズが必須」と考えがちですが、それも一概には言えません。中位クラスのGPUや、内蔵GPUが強化されたRyzenやCoreでも十分に満足できるケースは多くあります。
結局のところ、重要なのは「自分がどんな作業をどれくらいの頻度で行うか」をしっかり把握することだと思います。
この記事ではレノボのThinkPadシリーズを例に取りましたが「第13世代Core搭載モデルが『型落ち』として安く購入できるケースは他にもありますよね。これらのモデルは性能的にもコスパ的にも非常にバランスがいいと思っています。こうしたモデルを割安で購入し、浮いたお金でRAMやSSDを強化したり、長期保証を追加したりするほうが賢いと言えるかもしれません。
5.まとめ
PC選びで最も大切なのは、「最新型番であるかどうか」ではなく、「自分にとって本当に必要な性能を見極めること」です。型番マウントやスペック信仰に振り回されることなく、自分の用途に合った性能と予算のバランスを取る、というのが重要です。
お金の使い所はPCやスマホといったデジタルガジェットだけではないので、「賢くPCを選んで、浮いたお金で旅行をしたり、美味しいものを食べる」というのも良いんじゃないでしょうか。
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