ドーモ、natsukiです。これを紹介するなら、鬱々とした日々が続く今しかないでしょう! 難しいことを考えずにサクッと読んで、シンプルなカタルシスが得られる、読後爽快な娯楽に特化したサイバーパンクアクション小説「ニンジャスレイヤー」です。知っている人にとっては今さらですが、聞いたことはあるけれどという人や、ネットで見かける謎の言い回しだけ知っていたり、あるいはまったく知らない人も、こんな暗い世相だからこそ、この機会に是非読み始めてみてください。Wasshoi!
目次
1.「ニンジャスレイヤー」とは?
「ニンジャスレイヤー」とは、とりあえず頭カラッポで読み始められる、それでいて奥深い、B級アクション映画のエッセンスを抽出した娯楽小説です。Twitterで連載されていて、基本的なコンテンツは無料で読めるのも、大きな特徴です。
どんな話?
「Wasshoi!」赤黒いニンジャ装束を纏った謎のニンジャが、天井から突如出現し、空気を切り裂くような3連続回転と共に着地した。そして一瞬の隙も無いオジギを決める。「ドーモ、ロブスター=サン。ニンジャスレイヤーです」「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ロブスターです」 19
— ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer (@NJSLYR) October 13, 2011
どんな話か? と聞かれれば、近未来を舞台に、悪のニンジャ組織に妻子を殺され復讐に狂った主人公ニンジャスレイヤーが、「ニンジャ殺すべし」と悪いニンジャを次々と殺す話です。ニンジャと言っても、舞台が近未来なので、ロボのニンジャ、バイオなニンジャ、ゾンビのニンジャあたりはもちろんのこと、女子高生のニンジャ、寿司職人のニンジャ、野球選手のニンジャ、カブトムシのニンジャ、ピンク色したイルカのニンジャなど、何でもありです。歴史上の偉人も、その多くは実はニンジャだったことになっています。
「グワーッ!」コッカトリスは床をのたうちまわった。ニンジャスレイヤーは苦しむコッカトリスの頭に踵を振り上げた。「イヤーッ!」そして、無慈悲に振り下ろした。「サヨナラ!」頭部を破壊されたコッカトリスは、断末魔とともに爆発四散した。
— ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer (@NJSLYR) August 3, 2010
悪いニンジャは暴虐の限りを尽くしますが、主人公も復讐に狂っているので、その悪を無慈悲に打ち砕きます。「最終的に全員殺せばよいのだ!」サツバツ!
世界全土を電子ネットワークが覆いつくし、サイバネティック技術が普遍化した未来。宇宙殖民など稚気じみた夢。人々は灰色のメガロシティに棲み、夜な夜なサイバースペースへ逃避する。政府よりも力を持つメガコーポ群が、国家を背後から操作する。ここはネオサイタマ。鎖国体制を敷く日本の中心地だ。
— ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer (@NJSLYR) November 12, 2010
一週間前から重金属酸性雨は止み、灰色の雪へと変わっていた。マルノウチ・スゴイタカイ・ビルの最上階展望エリアでは、カチグミたちがトクリを傾けあっている。ビル街には「コケシコタツ」「魅力的な」「少し高いが」などとショドーされた垂れ幕が下がり、街路を行き交う人々の購買意欲を煽っていた。
— ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer (@NJSLYR) December 25, 2019
舞台となる近未来の世界は「外国から見た間違った日本観」に基づいています。「ニンジャ」の存在からしてそうなのですが、固有名詞や言い回しにいたるまで、どこかおかしい日本文化が一貫徹底されています。
固有名詞で言えば、例えば悪のニンジャ組織の名は「ソウカイヤ」「ザイバツ」「アマクダリ」、主人公の乗るバイクの名は「アイアンオトメ」といった感じ。セリフ回しも、絶望するときは「ブッダ!」、最上級の驚嘆は「アナヤ!」、悪役が口汚く罵って威圧するときは「スッゾオラー!」「ズガタッキェー!」などなど、コワイ!。さらに、爆発音は「カブーム!」、悲鳴は「アイエエエエ!」のようにアメコミ表現を採り入れ、英語と日本語が奇妙に混じった「アビ・インフェルノ(阿鼻叫喚)」「ジリー・プアー(ジリ貧)」「ウシミツ・アワー(丑三つ時)」「チャメシ・インシデント(日常茶飯事)」といった語句も多用されて、読者を独自の世界に誘います。その濃度が、ともかく濃い。
このような世界観と文体は、日本文化に偏って詳しいアメリカ人のブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズによって原作が英語で書かれ、これを日本の翻訳チームがまたひねった翻訳することによって生まれます。……という製作背景そのものも、物語を楽しむ重要な要素なので、疑ってはいけません。いいね?
Twitter連載による文章のリズム感
「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」 56
— ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer (@NJSLYR) February 11, 2013
ニンジャスレイヤーの重要な特徴のひとつが、Twitterで連載されているということです。Twitterは、もちろん1ツイート140字が上限のため、必然的に、ニンジャスレイヤーの文章は、100~140字程度でひとまとまりという制限がかかり、これがサクサクと読んでいけるリズム感を生み出しています。
また、後述しますが、連載中の文章をリアルタイムで追いかける楽しみもあります。
1話ごとのシンプルさと、全体の複雑さを両立させたストーリー展開
ニンジャスレイヤーは、物語全体は大きく第1部から第4部の全4部構成になっていて、そこからさらに個別の独立した話に分けて連載されています。各話は、多くが「ニンジャが出て殺す」、起・承・忍・殺の構成になっていて、基本的にはそれだけでとりあえず完結するものになっています。そのことを象徴するように、第3部までは、連載も時系列順ではなく、あえてバラバラで連載されました。とりあえずは何も考えず、バラエティ豊かでそれでいてどこかで見たことあるようなお約束の悪の限りを尽くす悪いニンジャが現れるので、それがインガオホーに殺されて爆発四散するのを楽しめばいいのです。
もちろん、長期にわたる連載なので、細かく見るとストーリーは複雑に絡み合い、登場人物も多く、伏線の張られた話も無数にあって、じっくり読めば読み返すたびに発見のある「のめり込みがいのある」ものにもなっています。ただし、第3部までは、たとえ細かいストーリーやキャラクターを理解しなくても、要は、仲間と力を合わせて悪の親玉を倒すという部分はブレないため、極論、各部の最終話だけ読んでも十分楽しめるようになっています。
現在連載中の第4部のみは、色々と今までと違ったテイストになっています。そもそも、主人公のニンジャスレイヤーが世代交代しています(前作の主人公も登場します)。連載の方法も、時系列順に連載され、何より、ストーリーの目的が、当初はシンプルに「恋人の敵を討つために悪いニンジャを殺す!」だったのが、物語が進むにつれて展開が複雑なものとなっています。現在は、織田信長の腕を奪って4本腕になった明智光秀が支配して黒帯を締めてカラテを振るう獣が徘徊する地へと生態系が改変されたカナダとアメリカ合衆国崩壊後に成立した企業連合軍との戦争が続く中で明智光秀の子が国立公園に存在する超自然的力を持つ遺跡である銀閣で何かを企む一方宿敵との戦いでいったん弱体化したニンジャスレイヤーも力を取り戻すべく銀閣へたどり着く、というところ。超展開過ぎて何言っているか分からない?これで平常運転です。
2.三つの楽しみ方
ニンジャスレイヤーを楽しむ方法は、大きく分けて3つあります。
Twitter連載を追え!
ニンジャスレイヤーは、Twitterで現在も連載が続いている小説です。まずはTwitterの公式アカウントをフォローしましょう。
Twitterをやっていない人でも、ブラウザから見ることができますので、ご安心を。
それから、ハッシュタグ「#njslyr」にて、リアルタイムでみんなワイワイと感想や考察を書き込んでいきます。自分が書き込まなくても、リアルタイムでリスナー(?)の反応を見ながら連載を読むというライブ感こそ、ニンジャスレイヤーの他にはない特徴です。
過去の連載を読む
過去の連載は、無料でいくらでも読めます。その方法は、いくつかあります。
まず、Twitter連載なので、過去の連載は「Twilog」か「Togetterまとめ」にまとめられています。ただ、このアーカイブをそのまま参照するのは、実際に読むのには不便です。
そこで、パソコンなどのブラウザから読むなら、有志による「ニンジャスレイヤー Wiki」を利用するのが便利です。
ニンジャスレイヤーはマルチメディア展開しているので、ひとつのエピソードにも、元の連載の他に、漫画版など様々なバージョンがある場合があります。とりあえず読む場合は、そのエピソードの「◆Togetterまとめ◆」を見るとよいでしょう。
スマホからなら、有志によるニンジャスレイヤー過去ログ参照専用アプリの「NJRecalls」を使うと便利です。
NJRecalls(Android版)
NJRecalls(iPhone版)
なお、公式は、ここ数年来、noteの「ダイハードテイルズ」アカウントを使ってコンテンツをまとめたり発信したりをしています。が、まずnoteって何? っていう人もいると思いますし、とりあえず過去の連載を読むなら、上記の方法でよいでしょう。
マルチメディア展開を楽しめ
ニンジャスレイヤーは、無料でのTwitter連載の他にも、様々なマルチメディア展開を行っています。好みに応じて、ニンジャスレイヤーの世界の広がりを楽しみましょう。以下、代表的なものをあげておきます。
「note」の「ダイハードテイルズ」アカウントでは、ニンジャスレイヤーをはじめとする様々なコンテンツを提供しています。特に、有料マガジン「ニンジャスレイヤープラス」は、無料のTwitter連載エピソードの他にも、外伝的なエピソードや世界観の資料など、ニンジャスレイヤーの世界をより深く楽しむための記事が盛りだくさんとなっています。
ニンジャスレイヤープラス:note
Twitter連載分を、140字の枠に縛られない形で加筆修正し、追加エピソードも加えたのが物理書籍版です(Kindle版もあります)。Twitter連載の分量は膨大で、その全てが収録されているわけではありませんが、逆に物理書籍版は、公式に「これだけは読んで欲しい決定版」とも言えるものとなっています。最近発刊された「スズメバチの黄色」みたいな、スピンオフ書籍もあります。
ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1):Amazon
スズメバチの黄色:Amazon
漫画版もあります。3種類あり、比較的原作イメージに忠実な余湖裕輝氏による「ニンジャスレイヤー(コミカライズ版)」、少女漫画タッチでグッドルッキングな忍者の顔が近い!さおとめあげは氏による「ニンジャスレイヤー グラマラスキラーズ(連載終了)」、キャラ造形を若めに少年漫画テイスト重点でメカギミックも見所の関根光太郎氏による「ニンジャスレイヤー殺(キルズ)(連載終了)」。いずれも、かなりの部分がTwitterで連載されていて、その分は無料で読むことができます。
ニンジャスレイヤー(コミカライズ版):ニンジャスレイヤー Wiki
ニンジャスレイヤー (1) ~マシン・オブ・ヴェンジェンス~ (カドカワコミックス・エース):Amazon
ニンジャスレイヤー グラマラス・キラーズ:ニンジャスレイヤー Wiki
ニンジャスレイヤー グラマラス・キラーズ 1 (B’s-LOG COMICS):Amazon
ニンジャスレイヤー殺(キルズ):ニンジャスレイヤー Wiki
ニンジャスレイヤー殺(1) (シリウスKC) :Amazon
アニメやゲームもアルヨ?
ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン
AREA 4643:Steam
特に、コミカライズ版は親しみやすくて、かなりの部分が無料公開もされていますので、初めての人にもお勧めです。
3.膨大すぎるんだけど、どこから読み始めればいいの?
ここが、これから読みはじめようとする人にとって、まず迷うところだと思います。現在、「ニンジャスレイヤー」の世界は、Twitter連載エピソードだけでも約200話にのぼり、いったいどこから読みはじめればいいのか分かりません。現在の連載を読むにも、途中から読んで分かるのか、という不安があります。この点について、どうニンジャスレイヤーの世界に入っていけばいいかは、ニンジャスレイヤー Wikiにも案内記事がありますし、ネットで検索をかけると、先人のさまざまな知恵がヒットすると思います。以下は、私の個人的な意見として、参考にしてください。
まずは現行のTwitter連載を読もう
【ニンジャとは】
・平安時代をカラテで支配した半神的存在
・ニンジャのソウルが時を超えてキンカク・テンプルから降臨し、定命の人間に憑依融合する
・邪悪なニンジャは悪意のままにふるまい、人々を虐げる
・ニンジャスレイヤーはニンジャを殺す存在だ!
— ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer (@NJSLYR) April 18, 2020
やはり、まずは現在の連載を楽しみましょう。最近のエピソードは、先ほどちょっと触れたように、今までになく入り組んだ展開となってきてはいるのですが、はじめに予備知識の案内Tweetがあるので、ご安心です。
過去エピソードは、連載順に第1部完結まで読むのがお勧め
膨大にある過去エピソードですが、これはどこから読めばいいかというと、とりあえず「公開順」で、第1部の完結編「ネオサイタマ・イン・フレイム」までを読み進めるといいかと思います。ここまでなら、30話弱、非常に短い話もあり、1日2~3話で2週間もあれば読破できる分量です。これで話としては一段落つきますので、まず読むのにはちょうどよいでしょう。
時系列をバラしてはあるものの、第1部はストーリー展開が特にシンプルで、時系列が前後することによる混乱は少ないと思います。また、連載スタート時期ということもあって、ニンジャスレイヤーの世界観がよく分かる読みやすいキャッチーなエピソードがそろっています。
ここまで読めば、それから先どう読み進めていこうか、というのもなんとなく見えるとも思います。後から掲載された第1部のエピソードを読むもよし、公開順にさらに読み進めていくのもよし、物理書籍で読み進めるもよし、メディアミックス作品を楽しむもよし。それぞれのお好みでどうぞ。
エピソード一覧/公開順:ニンジャスレイヤー Wiki
現行の第4部は、時系列と掲載順が同じなので、過去エピソードを公開順にそのまま読もう
現在連載中のなのは、第4部です。先述のように、第4部のみは、ストーリーが複雑になっていますが、その分、時系列と連載公開順が一致しています。ということで、第4部のストーリーは、現行の連載を読みながら、同時に過去エピソードも、公開順で読み進めていけばよいと思います。
エピソード一覧/第4部:ニンジャスレイヤー Wiki
4.まとめ
彼のニューロンにはまだ、ヤクザ天狗の衝撃が深く刻み付けられている。天狗とは日本に古来から存在するフェアリーの一種で、赤く長い鼻を持ち、空を飛ぶという。しかしあの男は天狗ではなく、ヤクザでもなく、ヤクザ天狗であった。あの男を思い出すたびに、ヤマヒロは頭がどうにかなりそうだった。 2
— ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer (@NJSLYR) January 11, 2012
他にも、推しキャラクターとかお勧めエピソードとかリアリティあふれる日本企業文化とかオモチを口に咥えると見えるピンクの光とか、色々と語りたいことはあるんですが、語りだすと無限に続くので、この辺で切り上げます。
もはや、ネット文化の重要な発信源のひとつともなっている「ニンジャスレイヤー」。今まで触れてこなかった人も、どうしてもテンションが下がってしまうこの状況だからこそ、是非、読みはじめて欲しい。単純でスカッと爽快、それでいて実は風刺も効いた娯楽小説で、気分転換しましょう!
5.関連リンク
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer:公式Twitterアカウント
ニンジャスレイヤー Wiki
NJRecalls(Android版)
NJRecalls(iPhone版)
コメント
何か吸ったのかな?
アー、イイ……遥かに良い……アッ、アバッ……
ナムサン!ニンジャアトモスフィアの過剰摂取は、実際危険!睡眠不足、ニンジャ陰謀論妄想、やがては急性ニンジャリアリティショックに至る!◆セルフ管理メント重点な◆
という文章がすらすら出てきてしまうくらいには重篤です。
山口雅也の日本殺人事件みたいなもんかな?
基本的な発想は同じだと思います。日本について偏った知識を持つアメリカ人が原作者というギミックとかも。
公式には、むしろ、ブレードランナーあたりを元祖として、サイバーパンクの正統進化を意識しているようですが。攻殻機動隊にしろカウボーイビバップにしろ、サイバーパンクにはアジア的カオスの要素が少なからずあるので、そこを徹底して強調した作品とみてもいいかもしれません。その辺が好きな人は、是非。
「なぜ記事初っぱなにロブスター=サンの出てくるツイートを?もう少しマシな話から選んだらどうだ」
「それが……担当者がラリっていたとしか……」
……アッ、2匹のサイバーイルカが……
『それがロブスター=サンかを精確に定義するのは難しいね』『彼が自分がロブスターと言っても、彼自身にはそれは証明できないんだ』
つまりこうだ……