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ネットブックCPUに新顔登場、パフォーマンスが大きく底上げされそうです(読者投稿:渋谷Hさん)

ネットブック用CPUにニューモデル
ウインタブはもともとBay Trail以降のAtom系CPUを搭載したWindowsタブレットやネットブックを中心としたサイトでした。その市場は一時期縮小していましたが、最近はコロナ禍のリモート授業増加もあって「教育向けの簡易PC」というジャンルとして再び盛り上がりを見せており、3万円前後からの下位のネットブックからSurface Goを始めとする6万円以上の製品まで揃い、WindowsだけでなくChromebookなども参入してきています。

タブレット・ネットブック市場では、省電力で安価なAtom系列のCPUやミドル帯以下のARM系CPUが使われてきましたが、常に「非力」「使いにくい」という批判があり、高性能化するため型落ちのCore CPUを使うケースも増えていました。

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しかし今年、ネットブック向けとしては画期的なCPUをIntelとAMDが相次いで投入します。IntelはPentium Gold 8505/8500を発売し、加えてAtom系のEコアを従来の倍の8つ搭載したAlder lake-N (ADL-N)が企画されているという噂があります。対するAMDもCOMPUTEX 2022(動画へのリンクです)でコードネーム”Mendocino”という製品を発表しました。

これらの製品は「非力」という批判に応えるためか、総じて性能の底上げがされています。各世代のネットブックCPUをそれぞれの4年前のエントリークラスのCPUと比較すると、Cherry trail(Atom x5-Z8350, x7-Z8700等)はその7割程度、Gemini lake(Celeron N4100, Pentium S N5000等)で互角程度でしたが、今回の世代はそれを大きく上回り、3年前の第10世代Ice lakeのi5/i7と同等程度の性能で、ネットブック向けとしては過去の製品とは一線を画するものと予想されます。

ネットブック用CPUの比較

※「4年前のエントリー向け」はモバイルCore i3、デスクトップPentiumとし、Passmarkのシングル・マルチのスコアのそれぞれについて現世代ネットブック/4年前でパーセンテージを取り、それを平均して算出しました。

Pentium Gold 8505/8500

モバイル版Pentium GoldはSurface Goシリーズの下位モデルで4415Y(初代)→4425Y(Go2)→6500Y(Go3)と一貫して採用されているシリーズで、「上位ネットブック向け」と位置付けてよいでしょう。第12世代のPentium Gold 8505/8500もGo4に採用されると予想しています。

Pentium Gold 8505/8500はCPU・iGPUともAlder lake-Uダイのちょうど半分が無効化された選別落ちです。とはいえPコアのIPC上昇とEコアのスレッド数増加のおかげもあって、前世代Surface Go3(10100Y・6500Y)の2倍の速度になることが見込まれています。第10世代のCore i7と同程度以上という意味であり、十分に実用レベルでしょう。

8505 (15W)と8500 (9W)の違いについては、過去のUP3/UP4の例を見る限り、実質的には筐体の放熱能力が実質的なTDPを決めることが多いという印象です。ファン付きのノートPC型である限り8505でも8500でも前段で説明したような速度になると思いますが、Surface Goのように小型ファンレスで本当に放熱できない場合、、消費電力は半分となり性能は0.7倍になる、と見込んでおくとよいでしょう(それでもGo3→Go4で1.5倍以上にはなると思います)。

性能面では期待できますが、供給面では不安があります。前世代のPentium Gold 7505からして「ちょっと珍しい?」とされるほど供給が少ない状況ですが、さらに中国のロックダウンにロシアの戦争と供給が不安定化する中、ADL-U自体がやや出るのが遅く、こちらも潤沢には出回らないかもしれません。

Mendocino (Athlon Silver 5050e?)

AMD at Computex 2022

先日のCOMPUTEX 2022でAMDが発表したコードネーム”Mendocino”は、CPU側はZen2アーキテクチャの4コア8スレッド、GPU側はRDNA2アーキテクチャの2 CU搭載の製品で、TSMC 6nmで製造され、今年10~12月以降に出荷されるとアナウンスされています。

CPU本体だけ見れば1年前のエントリー向けRyzen 3 5300Uと同等で、足掛け2年分の世代更新に伴ってメモリ帯域等を削ったうえで格下げされ、Pentium Silverに対抗するAthlon Silverとして販売されることになりそうです(Athlon SilverにはすでにZen+が2コアの”Dali”ことAMD 3000シリーズがあり、Gemini lakeと同程度の性能となっています)。Pentium Gold8505と比べると、マルチ性能はこちらが上、シングル性能はあちらが上で、体感的には似た性能になるでしょう。

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iGPUのRDNA2に期待する向きもあるかもしれませんが、いかんせんCU数が少ないため、Intel第10世代の”G1″や旧UHD Graphicsと同程度に落ち着くでしょう。Steam Deck用Ryzenは4コアZen2+RDNA2で似ており、ここからゲーム機向けと想像した方が多くいたようですが、グラフィック性能はその1/4程度で、用途はかなり異なります。

AMDの発表では、当初は主に$399~$699(5~9万円)の、Surface Goを代表とする上位ネットブックの製品と位置付けられています。早速、昨年ゲーミングUMPCを発売したAYANEOがこのCPUを搭載する製品 “AYANEO AIR Plus”を予告(動画へのリンクです)しており、こちらは289米ドル(36,000円)と予告されているので、構成によってはこの程度の価格になるようです(この製品は6インチモニタに重量は約420gで、GDP Win 2の更新版に近いスペックとなっています)。

Alder lake-N (Celeron N6100?)

しばらく前、Atom系列のCPUはハイブリッドアーキテクチャに吸収され単独では出なくなるとアナウンスされていましたが、前世代Jasper lakeがChromebook用として出たうえ、さらに今世代でも同じようなCPU、通称Alder lake-N (ADL-N)が出るという噂があります。2019年ころのChromebookは、Celeron N4100が速いほうだった(同価格帯のARM系CPUが遅かった)こともあり、当時は消費者の評判も決して悪いものではありませんでした。ADL-Nの噂が本当であれば、後継CPUが計画されたのはGoogle側の要請ではないかと思います。

噂の出元のブログCoelacanth’s Dreamによれば、Eコアが前世代に比べ倍増の8つとなり、iGPUは32EU据え置きとなるようです。これはデスクトップ版Alder lakeからPコアを全部取り除いてメモリやPCIeを減らしたのとほぼ同じと考えてよく、コストを決めるダイサイズは80~90 mm²と過去のAtom系CPUと同程度になると思われます。

性能は不明な点が多いですが、参考として12900KでEコア8つのみの計測を行ったPC Watchの記事があるほか、私の手元のCore i5-12500Hでも間接的ですがPコア・Eコアの周波数固定やEコア無効化による差分取得・外挿補完を行って推定しました。そのどちらでもCinebench R23でシングル800~900(3.3 GHzと仮定)、マルチは15 Wで4200前後、9 Wで3300前後、6 Wで2400前後と予想されます。これはGemini lake(Celeron N4100等)のシングル420前後・マルチ1200前後に比べると倍増以上になり、Mendocinoに近いRyzen 3 5300Uと比べると15 W時で8割程度の性能になるでしょう。コア数半分の廉価版(Celeron N5500?)でもシングル700、マルチ1700 (6W)~2200 (9W)前後のスコアが期待できます。

ただし、これはあくまで噂レベルの存在です。Intel7の製造ラインは、今でさえAlder lake-Uがなかなか出ず、この先Raptor lake、Sapphire Rapids、Meteor lakeのSoCタイルなど続々使われることを考えると、出たとしてもかなり後回しにされるのではないかと思います。

性能予想:軽い使い方なら不満ない性能へ

今回は予想を多く含み具体的なベンチマークの数字を出しようがないので、おおまかな目安となる「最近のPCと比べた快適さ」を表す独自指標で予想性能を示します。具体的には、(予想値含む)Cinebench R23のシングル、マルチ、および3DMark Fire Strike Graphicsのそれぞれについて、前世代のCore i7-1165G7に対するパーセンテージを求め、そのパーセンテージを平均したものを性能指標とします(最近のウインタブでバッテリー駆動時間テスト中に行っているような作業時の速度を想定しています)。

ネットブック用CPUの比較

※8505の予想性能はマルチ・GPUについてCore i7-1255Uの半分とし、MendocinoはCPUは5300Uと同じ、GPUは6CUの6600HSの1/3としました。ADL-Nは本文の通りです。これらの予想はある程度の誤差を含むとお考え下さい。既存製品はNotebookcheckのデータベースから取っています。TDPのうち15 Wはファン付きノート、9 Wは10インチファンレス2in1、6 Wは8インチ以下のタブレットの放熱能力と想定しています。

図の通り、新型のネットブック向けCPUのうち、製品単価5万円以上の上位向けは、しばらく前に多用されたGemini lake(N5000やN4100)の倍以上、第10世代のCore i7やi5に匹敵する性能になると予想されます。第10世代は3年前に発表され2020年頃製品が販売されたCPUですので、まだまだ現役として使っている人も多いでしょう。型落ち製品が安売りされる限界が6万円前後で、ちょうどそのあたりが性能・価格とも交差する範囲になるでしょう。個人消費者は型落ち品を選んでも良いのですが、大量安定供給が保証できないため、教育機関への納品などではこれらネットブック向けCPUが活用されると思われます。

製品単価3万円前後の下位ネットブック・タブレット製品は、Jasper lakeのCeleron N4500の前例から見て、コア数の半減した廉価版となる可能性が高いでしょう。それでも、前世代の上位と同コア数まで底上げされ、不満はかなり和らぐのではないかと思います。

最近のCPUの進歩はマルチスレッド性能の増加が目立ち、映像編集など重量級の用途もこなせるようになりましたが、閲覧用途やビジネス用途ではコア数が多すぎても持て余します。モバイルCPU全体での性能の底上げは、ハイエンドではノートPCの用途を拡大させる一方、「ネット閲覧とオフィス編集が使えればいい」という用途ではエントリークラスとハイエンドの実質的・体感的な性能差を縮めるのではないか、というのが私の予想です。

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コメント

  1. 通りすがりの匿名希望 より:

     こんにちは!
    事実上のネットブック/タブレットPC向けCPUを刷新、ですね。
    久々の自分的核心情報に、ニヤニヤが止まりません(笑)。
    収集・まとめて下さって嬉しいです。

     正直、このカテゴリ5,6年分の進歩は牛歩に感じていたので‥。
    (それだけARMの急進ぶりが顕著)
    続報・確定情報に期待‥いや、待ってますよ。

    • 渋谷H より:

      コメントありがとうございます。ハイエンドスマホ用のSnapdragon 8 gen1が10WでADL-Nとほぼ同性能程度のはずです。

      続報としては、MendocinoはRyzen3/Athlon Gold/Athlon Silverのラインナップでスタートするようです。

  2. 匿名 より:

    わくわく!(アーニャ風)