こんにちは、natsukiです。先日、いろいろな意味で面白すぎるCrelanderブランドのデュアルスクリーンノートパソコンを紹介しましたが、Aliexpressには、他にも非常にチャレンジ精神にあふれる、中には実験的とすら言っていい構成のノートパソコンが多く出品されています。それらのほとんどは、率直に言って、製品としての信頼性はまったくの未知数で、決して他人に購入を勧められるものではありません。しかし、だからこその、日本では決してお目にかかれない、独特の魅力を放っているのも確かです。実際に買うかどうかは別問題として、それらの中でも、特に面白そうなものを紹介してみたいと思います。
目次
1.注意事項
紹介に先立ち、念のためにあらためて注意喚起しておきます。今回の記事で紹介するノートパソコンは、いずれもOEM製品と思われ、非常に零細なブランドや、複数のブランドで販売されていたりするものです。先日のCrelanderのパソコンは、一応、ブランドの独自サイトがありましたが、今回の記事でとりあげる製品は、そういったものすらありません。つまり、ブランドとしての信頼性は、率直に言ってありません。あらゆる面で、実際の品質はまったくの未知数です。また、挑戦的な構成ということは、それだけシステム面での問題を惹起するリスクが大きいということでもあります。さらに、このような由来の製品の場合、Windowsのライセンスに問題がある場合も、まま見られます。
今回の記事の趣旨は、世の中には、こういうトンデモ製品もあるという紹介であり、繰り返しますが、決して購入を勧めるものではありません。というか、よっぽど色々と「分かっている」人以外は、買ってはいけません。ハード、ソフト、ライセンスその他、あるいは購入そのものについてのトラブルが発生することを覚悟し、それらに十分に対処できる自信と能力のある猛者の方々であれば、楽しいオモチャになってくれるかもしれませんね。そういう性質の製品たちです。
2.H16 ― 安価でありながら、キーボードがメカニカルなノートパソコン
まずは、キーボードがロープロファイルのメカニカルキーボードとなっているノートパソコン「H16」です。日本国内販売のノートパソコンでも、メカニカルキーボードを備えるものはいくつかありますが、私の知る限りでは、いずれも高価格帯のゲーミングノートです。それを、このH16は、50,000円前後の低価格帯で実現しています。
CPUにはIntel Celeron N5105を搭載。私は、Celeron N5095搭載のミニPCを実機レビューさせていただいたことがあり、Celeronながら、その性能の進化に驚いたものです。Celeron N5105は、Celeron N5095とおおむね同等のランクのCPUで、やや高性能くらいのはずです。すると、エントリークラスとはいえ、オフィスソフトやWEBブラウジング、動画再生などは余裕。イラスト作成も、線画やベタ塗りブラシであれば十分に可能なくらいの実力はあります。ディスプレイサイズは16インチで、2,560×1,440ピクセルと高解像度。メモリは16GBと十分、ストレージは128GB~1TBのワイドバリエーションです。OSは、基本はWindows10で、Windows11が欲しい場合は購入時に連絡するそうです。
もっとも、製品紹介ページにはこんな宣伝がありますが、これはいくらなんでも無理でしょう。どう考えても原神でFPS50は荷が重すぎます。徹底的に画像設定を落として、できるだけ負荷の少ないエリアであればできないとは言いませんが、一般的な画像設定では到底不可能でしょう。参考までに、私の持っているLenovo Yoga770は、CPUに比較的高性能な統合GPUのRadeon 680Mを備えるAMD Ryzen 7 6800Uを搭載していますが、それですら、解像度がFHDよりも高い場合は、グラフィック設定「低(FPS上限のみ60に設定)」で、よっぽど負荷の少ないエリアならなんとかFPS50を達成できるくらいです。こういうハッタリが、製品の信頼性のほどを示しているとも言えますね……。
さて、注目のメカニカルキーボードは「緑軸」とのこと。「赤」や「青」ではなく、「緑」というマニアックな色設定が怪しさを煽ります(笑)。「緑軸」というのは、Cherry MXとRazerで全く違うんですが、Cherry MX準拠でいいのかなぁ?キーストロークは明記されていないものの、さすがにロープロファイルかと思われます。
面白い仕掛けとしては、WEBカメラが着脱可能(笑)。使わない場合は、取り外して本体に収納します。これ、日本ではあまりお目にかからないですが、Aliexpressの無名ブランドノートパソコンでは、わりとよくあるギミックです。
筐体全体の画像はこの通り。メカニカルキーボード搭載だけあって、なかなかいかつい感じ。底面にハッチがあるところを見ると、ストレージや、もしかするとメモリも換装可能かと期待しちゃいますが、この辺は情報無し。
ポート構成です。向かって右側面と背面に集中し、向かって左側面には何もないというめずらしい配置になっています。USB Type-Cの性能なんか、もちろん分かりません(充電に使えないことだけは明記)。HDMIも、注記は「mini」ですが、画像からはフルサイズに見えますね。
価格は、ストレージがかなりワイドバリエーションなため、そこで幅があります。だいたい5~6万円といったところ。もし、製品コンセプトを十全に発揮できたならば、製品ページで打ち出されているゲーミングパソコンは無理にしても、(タイプ音を度外視するならば)オフィスワーク向けパソコンとして非常に魅力的な構成になりうるかもしれません。うーむ、どうでしょう?
その他のスペックをまとめると、下記の通りです。
H16 |
|
OS |
Windows 10 / Windows 11 |
CPU |
Intel Celeron N5105 |
外部GPU |
なし |
RAM |
16GB |
ストレージ |
128GB~1TB M.2-2280 SSD |
光学ドライブ |
なし |
ディスプレイ |
16インチIPS(2,560×1,440ピクセル) |
ネットワーク |
802.11 b/g/n(2.4G/5G)、 Bluetooth 4.0?4.2? |
入出力 |
USB Type-C(充電不可)、USB 3.0×2、 (mini?)HDMI、3.5mmオーディオジャック、 microSDカードスロット、DC-IN |
カメラ |
取り外し式Webカメラ(2MP,30fps) |
バッテリー |
7.6V/5,000mAh 稼働時間 約4~5時間 |
サイズ |
359×284×21.4mm |
重量 |
1.91kg |
その他 |
メカニカルキーボード(緑軸)、指紋認証 |
3.HL140S ― 見覚えのある、独特な折りたたみ機構を備えた2in1コンバーチブルノートパソコン
こちらは、見たことある外見ですね。一部の高級2in1コンバーチブルノートパソコンに見られたギミックを、廉価で実現した「HL140S」です。
CPUには、これもIntel Celeron N5105を搭載。メモリは16GB、ストレージは128GB~1TB。ディスプレイサイズは14インチでFHD解像度で、解像度は1,920×1,080ピクセルと1,920×1,200ピクセルの両方の表記があります……。縦横比16:10との表記もあるので、1,920×1,200かな? この構成なので、価格は5~6万円程度に抑えられています。重量は1.45Kgと、14インチモバイルノートとしては軽いわけではありませんが、コンバーチブルパソコンとしてはこんなものでしょう。もっともこれも、スペック通りだったとすればの話ですが。OSは、基本はWindows 10。Windows 11にしてほしい場合は、購入時に連絡を入れてということです。
当然、ペン入力に対応。……なんですが、ペンに関する情報は、この画像の「Optional Capacitive pen」表記のみ。形式、筆圧レベルはどこにもありません。
これが、付属品一覧の画像。ちなみに、先の「H16」とOEM元が同じらしく、まったく同じものです。つまり、ペンが付いてくるとはどこにも書いていない。まあ「Optional」って書いてあるもんね。それで、形式も筆圧段階も分からないペンを、どう調達しろと? しれっと付いてきたらラッキーくらいでしょう。
筐体の詳細です。要は、5万円台でこのギミックの2in1コンバーチブルノートパソコンが手に入るというのがウリですね。キーボードは、見た感じは素直な英字配列。右下にはみ出ているキーはバックライトコントロールのようで、この製品、なんとRGBバックライトを搭載しています。
細かい点ですが、「足つき」です。これは面白いギミック。
ポート構成はご覧の通り。例によって、USB Type-Cの詳細はよく分かりません。
ペン入力については期待薄ですが、高価格帯に限定されてきたこの構造を、よくぞ5万円で実現した、というところでしょう。その他のスペックは下記の通りです。
HL140S |
|
OS |
Windows 10 / Windows 11 |
CPU |
Intel Celeron N5105 |
外部GPU |
なし |
RAM |
16GB |
ストレージ |
128GB~1TB M.2-2280 SSD |
光学ドライブ |
なし |
ディスプレイ |
14インチIPS(1,920×1,200ピクセル?) |
ネットワーク |
802.11 b/g/n(2.4G/5G)、 Bluetooth 4.0?4.2? |
入出力 |
USB Type-C(スペック不明)、USB 3.0×2、 mini HDMI、3.5mmオーディオジャック、 microSDカードスロット、DC-IN |
カメラ |
Webカメラ(2MP,30fps) |
バッテリー |
7.6V/4,500mAh 稼働時間 約4~5時間 |
サイズ |
縦横不明、厚さ17mm |
重量 |
1.45kg |
その他 |
折りたたみ足つき、指紋認証、RGBバックライト |
4.HL156D ― 斬新なデザインのデュアルスクリーンノートパソコン
またまた来ました!、デュアルスクリーンノートパソコン「HL156D」です。なんだ?デュアルスクリーンは流行りなのか? 今回紹介する中では、最も野心的な構成のパソコンです。メインの15.6インチFHDスクリーン(16.1インチとの記述も混在)に加え、キーボード面に7インチのサブスクリーンを備えます。
にしても、そこに設置するのかよ!これは斬新。サブスクリーンへの入力について、製品画像では、「Handwriting screen」と称して文字を書いたりなんかしちゃってますが、筆圧検知や専用ペンなどの記載はないので、おそらく単なるタッチパネルでしょう。タッチ操作はできても、本格的に文字を書くような繊細な入力は難しいのではないかと思われます。なお、解像度は、1,920×800ピクセルと1,200×1,080ピクセルの表記があり、よく分かりません。しかも、製品画像の縦横比からは、どちらの解像度にしても合わないので、ここはあまり信用できなさそうです。
CPUは、やはりというかIntel Celeron N5105。上述のように、エントリークラスとしては申し分ない性能です。メモリは16GB。ストレージは128GB~2TB。……2TB!?。このCPUなので、価格も5~6万円程度に抑えられています。デュアルスクリーンということを考えると、非常に安いと言えるでしょう。スペックをざっと見たところで他に気になるのは、バッテリー稼働時間が「3時間以上」とかなり少ないこと。やっぱり、デュアルスクリーンというのはバッテリーを喰うんでしょうか。
筐体です。前に紹介したCrelanderのデュアルスクリーンノートパソコンは、見た目はASUSのパチモンながら、よくよく見ると各所に独自の(独自すぎる)仕様が見られる製品でした。一方の、この「HL156D」は、サブスクリーンの位置こそ突飛なものの、その他は比較的オーソドックスな構成のようです。あ、WEBカメラが着脱式ですね。先述のように、これはAliexpressではさほど珍しくありません。
キーボードは、ちゃんと縦6列のようです。ただし、右側はやや変態配列かも。はっきりとした画像がないのですが、どうも、右上が電源、以下、「BackSpace」「Delete」「Enter」「Shift」と続くっぽい。つまり、「Delete」の位置が変。もっとも、このあたりは実機だと変わっていることもよくあるので、何とも言えません。
ポート構成です。USBについて、両方3.0とするものと、片方は2.0との表記が混在しています。USB Type-Cの性能は、やっぱり不明です。またHDMIも、表記は「mini」ですが、画像ではフルサイズに見えますね。
上記の機種に比べ、このHL156Dは、輪にかけて細部のスペックに曖昧な部分が多いです。細かいところだと、通信まわりは「802.11 b/g/n+BT 4.0 or 802.11 ac/a/b/g/n+BT 4.2」なんて書いてあります。「or」ってなんだよ「or」って!そこはカスタマイズする部分じゃないだろ(笑)。肝心のサブディスプレイも、解像度が怪しかったり、そもそもシステム的にうまく使いこなせているのかなど不安は尽きません。でも、それでも、この野心的な構成で5~6万円というのは、き、危険な価格だ……。
その他の、公開されているスペックは下記の通りです。
HL156D |
|
OS |
Windows 10 / Windows 11 |
CPU |
Intel Celeron N5105 |
外部GPU |
なし |
RAM |
16GB |
ストレージ |
128GB~2TB M.2-2280 SSD |
光学ドライブ |
なし |
ディスプレイ |
15.6インチIPS(1,920×1,080ピクセル) 7インチIPS(1,920×800 or 1,200×1,080ピクセル???) |
ネットワーク |
802.11 b/g/n(2.4Ghz/5.0Ghz)+Bluetooth 4.0 or 802.11 ac/a/b/g/n(2.4Ghz/5.0Ghz)+Bluetooth 4.2 |
入出力 |
USB Type-C(スペック不明)、USB 3.0×2(3.0×1、2.0×1?)、 (mini?)HDMI?、3.5mmオーディオジャック、 microSDカードスロット、DC-IN |
カメラ |
取り外し式Webカメラ(2MP,30fps) |
バッテリー |
7.4V/5,000mAh 稼働時間 3時間以上 |
サイズ |
356×241×21mm |
重量 |
1.65kg |
その他 |
指紋認証、7色バックライト |
5.販路など
販路は、はじめの紹介通りAliexpress。いずれも、Aliexpressのカオスな面を象徴するようなパソコンですね。そして、これらの製品を扱っている出品者は、管見の限りいずれも零細な出品者で、一定の信用がある「トップブランドマーク付き」の出品者は見当たりません。このことからも、おいそれと手を出していい製品ではないことが分かると思います。まず購入時から、Windowsのバージョン指定のために出品者と連絡を取る必要があり、この段階でAliexpress初心者お断りとも言えるでしょう。ざっとみたところ、「NWNLAP Store」という出品者が、このようなマニアックなパソコンを多く扱っていて、この記事で紹介した3台とも販売しています。そのため、下記には、いちおうここをリンクしておきます。ただし、2014年出店のかなり老舗な出品者ながら、出店9年目にしてフォロワー数が千強という、失礼ながら相当な零細です。ここ以外にも、複数の出品者がいますので、気になる方はそれっぽいキーワードで検索してみてください。なお、いくつかの製品画像には「DEEQ」の製品ブランド名が見えます。ただ、検索してみても、このブランドについてはよく分かりません。Aliexpress内でも、このブランド名を冠したパソコンは、かなり前には販売されていたようなのですが、現在は見当たりません。おそらくOEM専門にシフトしたメーカーなのでしょう。
恐ろしいのは、こんなキワモノが、5万円くらいで買えてしまうところ。一方で、こういった試行錯誤の中から、今をときめく(?)UMPCたちが生まれてきたのも、皆様ご承知の通り。あるいは、今も昔もまったくメジャーではありませんが、かの「PIPO X15」は、今なお我が家でバリバリの現役です。こういう、ともかくなんでも作ってやろうという、「チャレンジ精神は」買いですね。
6.関連リンク
下記の出品者は一例です。
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コメント
最後のやつ,ThinkBook Plus Gen 3 のモロパクリですね…
情報ありがとうございます。それですね。
Lenovoトップクラスの製品を、見た目だけなら5万円で作ってしまう、中華無名メーカー驚異のメカニズム……