かつて、富士通がF-07CというガラケーとWindows 7 PCが合体した機種を販売していました。当時の低電圧版Atom Z600を搭載した4インチの小型PCで、携帯用にSymbian OS、PC用として32bit版Windows 7 Home Premiumがデュアルブートする究極の小型PCでした。
これ以前もUMPC(Ultra Mobile PC)というカテゴリ扱いでOQO Model 01/02やVAIO Type U、WILLCOM D4 WS016SHといった小型PCは存在しており、どれもほしかったのですが、この当時の小型モバイルPCは8万円以上するものばかりで、手を出すのを躊躇していました。
F-07Cも当時は携帯契約が必須だったうえにやはり8万円程度で販売されていたこともあり、ずっとあこがれの存在のままだったのですが、2年前にようやく本体のみ2万円で販売されていた個体を入手…したのですが…
この当時のIntel Atomプロセッサは当時ネットブックで主流だったN番台のものでもWindows Vista以降のOSを動かすには多少荷が重い部分があったうえ、そのAtomの低電圧版をさらに600MhzにダウンクロックしていたF-07Cは、確かにWindows 7搭載PCとしては世界最小でしたがWindowsの軽量化作業を行っても動作パフォーマンスが快適とは程遠く、さらに発熱とわずか1400mAhしか搭載されていなかった標準バッテリーもあって実働時間は30分程度。
標準で搭載されているInternet ExplorerでWEBブラウズするにもモサモサしており、さらに運用していたタイミング的にAndroid版Word/Excel/PowerPoint Mobileがスマートフォンに正式に対応した時期に重なってしまったこともあって「F-07Cならでは」の個人的な利点を失ってしまい、結局手放してしまいました。
ちなみにその直前に前述したWILLCOM D4も購入したのですが、やはりこちらも同じ理由(低電圧版Atom + Windows Vista搭載からくるパワー不足感)から手放してしまっていたりします。こちらもF-07Cよりは大きめとはいえ、ポケットに入るサイズでしたし、いい機種ではあったのですが…。
とはいえやはり小型モバイルPCは昔から好きで、富士通が5.54インチでスマートフォンサイズのWindows 8.1搭載PCを開発中!というニュースが出たときはものすごく興奮したものですが、それ以降、製品として登場したという情報もなく、どうやら開発自体が中止になってしまったようです。
「BayTrail世代のAtom以降なら小型でバッテリーの持ちもよくて十分実用的な手のひらサイズのPCができるのに…スマートフォンが高性能になった今、もうそういう製品は出ないのかな…」
そんなことすら考えていた矢先に登場したのがGOLE 1(PIPO x3)です。5インチの小型サイズにフルUSBポートを3つ搭載、LANポートも搭載でCPUはCherryTrail世代のAtom z8300!!もちろん搭載OSはWindows 10 Mobileではなく64bit版Windows 10 Home!!
もう出た時点からこれに飛びつかない理由なんてありませんでした。
実際の使用感
Windows 10側はまさに小型PCそのもの!本格的な3Dゲーム以外なら何でもこなせる!Android OS側は“おまけ”程度
GOLE1はウィンタブさんの紹介記事や先行レビューにもあるとおり、クラウドファンディングサイト「Indigogo」から生み出された…というよりは、PIPOが販売しようとしていた「PIPO x3」をGOLEブランドで正式販売した機種で、CPUに中華Windowsタブレットで主流になりつつあるCherryTrail世代のIntel Atom z8300プロセッサを搭載した超小型Windows 10搭載PCです。
2GB RAM/32GB eMMCモデルと4GB RAM/64GB eMMCモデルが存在しますが、より本格的に小型Windows 10 PCとして利用するのであれば4GB/64GB eMMCモデルを選択したほうが幸せになれると思います。
かつてのF-07Cが4インチだったのに対し、GOLE1は5インチと一回り程度大きくはなっていますが、それでも十分小型で、余裕のあるジーンズのポケットならスマートフォン2台+モバイルバッテリーと一緒に入れてもすっぽり入ってしまうコンパクトさ(ウインタブ注:いやそれ無理だろ、いくらなんでも)。これですこれ!これを待ってたんです!
F-07CではUSB機器の接続に別売りのクレードルが必須でしたが、TVBOXの一つという扱いのGOLE1ならフルサイズのUSBポートが3つ(うち一つはUSB 3.0対応!!)に同じくフルサイズのHDMIポート、さらに100Base-Tに対応したLANポートまで搭載と、モバイルPCとしてはもちろんのこと、キーボードとマウス、ディスプレイをつないでそのまま小型PCとしても十分運用できる拡張性の高さを実現しています。おかげで購入直後のCloneZillaでのバックアップ作業や公式イメージからのリカバリ作業は非常に楽でした。
性能的にもCherryTrail世代のAtom搭載だけあって十分なパフォーマンスを誇っており、最新のGPUが必須になる3Dゲームを動かすという無茶な要求をしなければ、4GBという十分すぎるメインRAMの容量も相まってWEBブラウズから2Dのノベルゲームの実行、ストアアプリにあるAsphalt 8 Airborn For Windows 10の実行程度なら余裕でこなせてしまいます。WILLCOM D4やF-07CではWindowsを動かすだけでもいっぱいいっぱいだったため、ようやく実用的な小型モバイルPCが出てきてくれた…と非常に感動しています。これはやばすぎる!!
バッテリー容量は2600mAh。「フルバージョンのWindows 10を動かすにはちょっと足りなくないか?」と思える容量ですが、実際のところはそんなこともなくWEBブラウズや文章作成程度なら4時間程度は十分持ちます。充電自体も付属するDCジャック経由+ACアダプタ経由だけではなく、microUSBポートからも可能なため、モバイルバッテリーを持ち合わせていれば充電できなくなって困るということもないかと思われます。
一方で本機は悪い意味で「中華タブレット」らしい部分も残ってしまっており、microSDカードスロットは一応公式には64GBまでの増設に対応しているのですが、高速転送規格であるUHSには対応していないようで、実際にUHS対応のmicroSDHCカード(容量32GB)をGOLE1に挿入してみたのですが、一枚は途中で認識しなくなり、もう一枚は最初は安定しているものの途中でやはり認識不可になるなどかなり不安定な挙動を見せていました。
本来Atomプロセッサ自体はUHSもサポートしているはずなのですが、どうもGOLE1の場合はハードウェア的にふさがれてしまっているようです。残念ですがUHS非対応のmicroSDカードを選んで使うしかなさそうです(UHS非対応のClass 4対応のmicroSD 16GBは問題なく認識しているのでやっぱりUHS非対応で確定のようです)。
GOLE1に搭載されたAndroid 5.1のホームです。搭載ランチャーが4.4以前の標準なので一見すると5.1には見えませんが、一応バージョンとしてはちゃんと5.1になっています。
PIPO版x3はWindows 10のみのシングルブート構成で販売される予定だったようですが、GOLE 1は一応Android 5.1も搭載されたデュアルブートタブレットになっています。ただし、GOLE1として販売する際に急に仕様変更されたからなのか、Googleが配布しているAndroidのコードをそのままビルドしただけの「非常に簡素」な内容になっており、標準ランチャーも近年のAndroid 5.0以降搭載機に標準搭載された「Launcher 3」ではなく、Android 4.4以前で標準採用されていた「Holo Launcher」を採用するなど本当に「素の」Androidそのものとなっています。
またウィンタブさんの先行レビュー通りAndroid側に割り当てられているデータ領域は4GBと本格的な環境を作るにはあまりにも少なすぎるため、最低限のソフトのみ入れて緊急用の環境として用意しておき、普段はWindows 10側で利用するのが正解なんじゃないかなぁ、と思います。
ちなみにroot化は出荷時の状態で完了済みで、プリインストールアプリの中には「端末エミュレーター」というLinuxコマンドを操作できるアプリも含まれています。ただし逆に言えばGOLE1ではroot対策が取られているアプリは標準で動作しないということになってしまいますが…。
前述の通り現在ではスマートフォンが高性能化し、すでにそれ自体が「小型PC」としても運用できるので「フルバージョンのWindows」を持ち運べるという要素にあまり魅力を感じない人も多いかもしれません。しかし、かつてのUMPCやF-07Cなど、「ポケットに入る真の小型PC」が好きだった人たちならこの機種は見た時点で一目ぼれするんじゃないでしょうか。実際自分もその中の一人でしたし(笑)
発売後もIndigogoの商品ページ内フォーラムの意見から、当初は配布予定が全く存在しなかったWindows/Androidのシステムリカバリイメージが配布されるようになったり、Google+内の非公式フォーラムなどでも本機のオーナーさんたちが熱心に情報をやり取りしていたり、自分のところのGOLE1もTwitterなどで写真を掲載したところ、結構リツイートされたりとやっぱり小型PCは注目されるんだなぁといった印象です。
かつてのWILLCOM D4ユーザーやF-07Cユーザーにこそお勧めできる、真の意味で「待っていた」ポケットサイズのWindows PCです。
関連リンク
GOLE 1 - 5インチのフルWindows 10 / Android 5.1 デュアルブートマシン、これ、ロマンだから!(実機レビュー):ウインタブ
Gole1, Cheapest Windows10 Intel Touch Mini PC:Indiegogo
GOLE1 5 inch 720 x 1280 Mini PC:Gearbest
※4GB/64GB版はクーポンコード「GBGF4」で138.99ドルに割引されます
OverLay Brilliant for GOLE1(国内製の専用保護フィルム):Vis-a-Vis
かのあゆブログ
※この記事の執筆者のブログです
コメント
F-07Cめちゃ懐かしい…
高校時代欲しくて、買えなくて、大学入ってから買って、いじり倒して今はlinux入ってる…
そう考えるとヤバいな…物欲が…
もりもりさん、こんにちは、コメントありがとうございます。この記事の執筆者と同じ匂いがしますなあw
ズボンの後ろポケットに入れる写真は、VAIO Pを思い出しますね。
VAIO Pでやったときは大きいのでツッコまれまくりでしたが、
これだったら様になるかも。
こんにちは、コメントありがとうございます。イヤー!そんなことしたら壊れちゃう!と思いました。カッコいいっすけどね。筐体はそんなに丈夫じゃないと思ったもので…
FlipStartがどなたの話題にも出てこないのですが、これはマイナーすぎるの
でしょうか。
売れずにメーカーが在庫処分しているのを買ったのですが、いいもの
でした。仕事に十分使えるパワーがあり小型なので重宝したものです。
GOLE 1にキーボードがついていたら即買いだったのですが…
7インチサイズでクラムシェル型のPCってもうどこも作らないのでしょうか。
PIPOの製品はX8を使っています。USBのTVチューナーを差して小型TV
として使っていますが、なかなか使いやすいです。
うこんさん、こんにちは、コメントありがとうございます。すでに私にはついていけない世界になりつつあります。かのあゆさんと徹夜で議論できそうな逸材、とお見受けしましたw
>>もりもりさん
LibrettoにVAIO Type U、LOOX UにF-07C…
魅力的な小型PCはみんな高くてあこがれの存在でしたから。その気持ち本当にわかりますです・・・
13年前にジャンクでLibretto 50の特殊仕様”ほほえみくん”が大量放出したときは本当に抑えようと思ってたんですけどWin95 For Pen関連のファイルが入手不可なんで断念して後悔した思い出があるくらいちんまいPCは好きなんでこの値段で実用的な速度で動くポケットサイズPCが購入できるようになったのは本当に驚異的なことだと思います。
>>匿名さん
VAIO Type P懐かしいですね!あの機種も名機でしたw
当時「あれ実際にポケットに入れたら筐体が折れるだろ…」とかよく言われてましたよねw
GOLE1のプロモーション画像見たときに真っ先に同じことを思ったので意識してる可能性もありそうですよね!!こっちは本当にポケットにすっぽり入っちゃいますけどw
>>うこんさん
FlipStartといえばこの子ですね
http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0706/25/news074.html
MSのOrigamiプラットフォーム登場~UMPC登場時代に出た子ですけど今見てもちんまいですよねこの子。
キーボード付きのポケットPCは需要があると思うんですけど、そちらを望むならモバイルゲーミングPCになっちゃいますけどGPDWinあたりのほうが最適かもしれませんね…