ASUSが8月1日に発表/発売したノートPC「Zenbook S 16 UM5606WA」の実機レビューです。CPUに最新の「Ryzen AI 9 HX 370」を搭載する16インチノートで、どうしてもそのパフォーマンスが気になってしまいますが、この製品はCPUの型番だけでなく、極めて上質で超薄型、軽量な筐体を備え、ASUSが他社に先駆けて積極的に採用した有機ELディスプレイを搭載する、ハイエンドノート「Zenbook」の名にふさわしいハイエンド・ノートPCです。
・AMDの最新CPU「Ryzen AI 9 HX 370」を搭載
・16インチで2,880 × 1,800解像度の有機ELディスプレイの発色は圧倒的
・まさに「上質」なデザインと手触り、キーボードの感触も素晴らしい
・厚さ12.9 mm、重さ約1.5 kgとモバイルできるサイズ感
・harman/kardonの6スピーカーはPCとは思えない高い音質
・高性能マシンとは思えない長持ちバッテリー
ここはイマイチ
・ディスプレイがグレア(光沢)タイプなので、映り込みは大きめ
・30万円オーバーの価格
製品ページはこちら
ASUS Zenbook S 16 UM5606WA :ASUS Store
目次
1.製品概要
スペック表
Zenbook S 16 UM5606WA | |
OS | Windows 11 Home |
CPU | AMD Ryzen AI 9 HX 370 |
外部GPU | なし |
RAM | 32GB(LPDDR5X-7500、オンボード) |
ストレージ | 1TB SSD(PCIe 4.0 x4接続、NVMe/M.2 ) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 16インチOLED(2,880 × 1,800)120Hz |
ネットワーク | Wi-Fi 7(a/b/g/n/ac/ax/be)、Bluetooth5.4 |
入出力 | USB4 Type-C(映像出力、PD対応)× 2、USB3.2 Gen2 Type-A、SDカードリーダー、HDMI、オーディオジャック |
カメラ | Webカメラ(207万画素)顔認証対応 |
バッテリー | 78Wh(動画再生約10.7時間) |
サイズ | 353.6 × 243.0 ×11.9-12.9 mm |
重量 | 1.5 kg |
レビューのポイント
真っ先に目が行くのがCPUの型番ですね。AMD Ryzen AI 9 HX 370という新型番を搭載しています。参考までにこれまでの最新型番、Ryzen 7 8840U、Ryzen 7 8845HSと主要な構成を比較してみます。
Ryzen AI 9 HX 370 | Ryzen 7 8845HS | Ryzen 7 8840U | |
コードネーム | Strix Point | Hawk Point | Hawk Point |
アーキテクチャ | 4x Zen 5 / 8x Zen 5c | Zen 4 | Zen 4 |
コア数 | 12 | 8 | 8 |
スレッド数 | 24 | 16 | 16 |
クロック | 2GHz/5.1GHz | 3.8GHz/5.1GHz | 3.3GHz/5.1GHz |
デフォルトTDP | 28W | 45W | 28W |
GPU | Radeon 890M | Radeon 780M | Radeon 780M |
GPUアーキテクチャ | RDNA 3.5 | RDNA 3 | RDNA 3 |
GPUコア数 | 16 | 12 | 12 |
NPUパフォーマンス | 最大50TOPS | 最大16TOPS | 最大16TOPS |
Ryzen AI 9 HX 370新アーキテクチャの「Zen 5」を採用し、12コア(Zen 5 × 4、Zen 5c × 8)24スレッド、TDPは28W、内蔵GPUはRadeon 890M(RDNA3.5)という仕様です。また「最大50TOPSのNPU」を内蔵し(Snapdragon X Eliteは最大45TOPSとされています)ており、ここだけ見ればMicrosoftのCopilot+ PCの要件も満たしています。ということで、「全方位で」従来のRyzenよりも大幅な性能向上が見込まれます。
Ryzen AI 9 370の詳細な仕様はこちらをご覧ください。
AMD Ryzen AI 9 HX 370:AMD公式サイト
ただ、冒頭にも書いたんですけど、この製品は決してCPUだけが見どころ、というわけではありません。ディスプレイは高精細な有機ELですし、超薄型の筐体は質感・デザインともに素晴らしいです。個人的にはむしろ、この美しい筐体にこそ、Zenbook S 16 UM5606WAの最も大きな魅力だと感じました。
2.外観と使用感
同梱物
同梱物です。取扱説明書(ページ数が多く、「真面目」に作られていますので、PC初心者の方々にも頼りになると思います)や保証書などのペーパー類とACアダプター、USB Type-C – USB Type-Cのケーブルが入っていました。
このACアダプターはプラグ部分を着脱できる構造になっているため、海外用プラグに取り換えることも可能です。ただし、本体に付属するのは日本向けのプラグのみなので、海外向けプラグが必要な場合はASUSに相談することになります。
見ての通りノートパソコン用としては非常に小さなACアダプターです。ちょっとびっくりするくらい…。電源ケーブル込みの実測重量も177 gと軽量です。
天板と底面
天板です。Zenbook S 16 UM5606WAの筐体色は「スカンジナビアンホワイト」と「スマイアグレー」の2色があり、レビュー機はスカンジナビアンホワイトでした。天板には「ASUSの”A”」をモチーフにしたストライプが入っています。
また、手触りが「かなり独特で上質感が半端ない」です。メーカー説明によれば「天板にはASUSが独自で開発した、新しいハイテクセラミックハイブリッド素材のセラルミナム加工が施されており、耐久性と美しさを兼ね備えています。これらは海洋プラスチック素材やポストインダストリアル素材をリサイクルし、環境にやさしい素材を使用しています。」とのことで、「ハイテクセラミックハイブリッド素材のセラルミナム加工」というのを嚙まずに一発で読めたらすごい、と感じましたが、要するに「セラミック系の素材なのでやさしくて冷たさを感じない手触り」でした。
また、この筐体は16インチサイズにして重量1.5 kgと軽く、モバイルノートとしても使えます。そして、MIL規格(MIL-STD-810H)準拠の堅牢性も備えています。
底面です。キーボード面と底面が天板と同じ素材なのかははっきりとはわかりませんが、冷たさを感じない優しい手触り、という点は同じです。
中央に通気口があり、この画像だとわかりにくいですが両サイドにスピーカーグリルがあります。
側面
前面と背面です。こちらにはポート類やボタン類はありません。
左側面です。画像左からHDMI、USB Type-C × 2、イヤホンジャックです。Type-Cポートは2つともUSB4規格で映像出力とUSB PDに対応します。また、この製品にはDC-INジャックはなく、2つのType-Cポートのいずれかを使って充電します。
右側面です。画像左からSDカードリーダーとUSB Type-Aポート(USB3.2 Gen2規格)があります。Zenbook S 16 UM5606WAは最厚部12.9 mm(突起部除く)という超薄型設計なので、それを思えばType-Aポートが装備されているのは立派だと思います。
ディスプレイ
ディスプレイは16インチで近年ASUSが注力している有機ELパネルが使われ、解像度も3K(2,880 × 1,800)と高精細、リフレッシュレートも120Hzです。発色については「文句なし」の水準ですが、グレア(光沢)タイプなので、設置場所によっては映り込みが気になってしまいます。
ASUSはいち早くノートPCに有機ELパネルを採用しており、そのせいもあって設定アプリ「MyASUS」で充実したパネル保護機能や細かい設定項目が用意されています。また、発色については「ネイティブ、sRGB、DCI-P3、Display P3」を選べ、ネイティブを選択した場合「通常、ビビッド、手動」も選べます。実際の発色品質についてはここで私が「キレイですね~」と言うまでもないでしょう。期待を裏切らない、素晴らしい品質です。
このディスプレイはリフレッシュレート最大120Hzです。60Hzもしくは120Hzに固定することもできますし、PCにお任せ(リフレッシュレートを上げるとバッテリー消費量が大きくなるため、電源接続の有無によってリフレッシュレートを自動的に切り替える)というのも選べます。基本的には「お任せ(ダイナミックスムージング)」でいいんじゃないかと思います。
キーボード
キーボードです。16インチサイズですがテンキーはありません。「84キー日本語キーボード (イルミネートキーボード) (JIS 配列)、Copilot キー搭載」と開示されています。ASUSのいう「イルミネート」というのは「バックライト付き」という意味で、ゲーミングノートのようにカラフルに発光したり、イルミネーション発光ができるというわけではありません。Zenbook S 16 UM5606WAのバックライト色はホワイトで、明るさを3段階に調整できます。
それと、タッチパッドがめちゃめちゃ大きいですよね!このタッチパッドは単にジェスチャ対応するだけでなく「左端を上下にスライドさせると音量調整」「上部を左右にスライドさせると早送り/巻き戻し」「右端を上下にスライドさせるとディスプレイ輝度調整」といった機能もついています。
MyASUSにこのようなメニューがあります。これらの機能はユーザーが自由に割り当てることはできず、「一括でオン/オフ」することになります。私はタッチパッドをほとんど使いませんが、タッチパッドを常用される方には非常に便利で使いやすいと思います。
それと、上部にスピーカーがあります。Zenbook S 16 UM5606WAは底面とキーボード面に合計で6つのスピーカーを搭載しています。チューニングは音響機器メーカーのharman/kardonです。
このキーボードを使ってしばらくテキスト入力をしてみましたが、打鍵音は静かですし、キーの感触が滑らかで非常に気持ちがいいです。うまく表現できませんが、メカニカルキーボードの気持ちよさとは全然違っていて、「上品」という感じ。私はキーボード好きなのですが、このキーボードの打鍵感はぜひ手に取って体験していただきたいと感じますね。
その他
ヒンジ開口角度
ヒンジを最大開口したところです。思ったよりも「体が硬い」ですね。実用上全く支障はありませんけど、最近のノートPCによく見られる「180度開口」はしません。
Webコミュニケーション
レビューの一環として、ライターのかのあゆさんとWebミーティングをしてみました。MyASUS上にマイクとスピーカーの設定項目があり、細かい調整が可能なので、いろいろと設定を変えて試してみました。
ASUS Zenbook S 16 UM5606WAのAIノイズキャンセリング機能は非常に優秀です。Webミーティング中に拍手をしたり、音楽を流したりしましたが、ミーティング相手のかのあゆさんによれば「声しか聞こえません」とのこと。完璧に私の声以外のノイズをカットしてくれました。
それと、もう一つ驚いたのが「スピーカーのAIノイズキャンセリング」です。Webミーティング中にかのあゆさんはビルのロビーにいまして、ちょうどミーティング中に近くで掃除が始まったとのことでしたが、私には掃除の騒音が全く聞こえませんでした。かのあゆさんが非常に静かな場所にいた、としか感じられなかったです。
WebカメラもFHD(1080p)画質で、Windowsの設定メニューで画質の調整ができます。ただし、先日レビューしたLenovo Yoga Slim 7x Gen 9(Copilot+ PC)に搭載されていた「AI画像加工(Windows Studio エフェクトと呼ばれる、カメラに映った自分の画像をオンデバイスAIでアニメ調などに加工できるCopilot+ PCの独自機能)」には対応していませんでした。
スピーカー
Webコミュニケーションとは異なる用途、動画視聴用や音楽用としてのスピーカー品質は「抜群!さすがはharman/kardonの6スピーカー!」という感じ。低音から高音までクリアに聞こえ、低音もそれなりの迫力を感じました。もはやノートPCの内蔵スピーカーとは思えない水準です。
音響アプリはDolby Access、つまりこの製品はDolby Atmos/Dolby Vision対応です。プリセットの「インテリジェントイコライザー」に加え、手動で音質を調整できるグラフィックイコライザーも使えます。
オンデバイスAI
Zenbook S 16 UM5606WAはNPU性能(最大50TOPS)を見る限りCopilot+ PCの要件を満たしていますが、この記事執筆時点でASUSはCopilot+ PCという表現を使っていません(おそらく後日のアップデートでCopilot+ PCの機能が利用可能になると思われます)。レビュー時点では最もわかりやすい新機能「ペイントアプリのコクリエイター機能(自分で描いたイラストや写真などをAIによって加工できる機能)」は搭載されていませんでした。カメラについても上でご説明した通りCopilot+ PCの機能「Windows Studioエフェクト」はありませんでした。
オンデバイスAI関連だと「StoryCube」という写真整理アプリが入っていた程度です。ただし、OSについては現状Copilot+ PCのみに配信されているとされるWindows 11 Home バージョン24H2が搭載されていました。
3.性能テスト
ベンチマークテスト
ベンチマークテストの実施にあたり、純正のACアダプターで電源に接続し、設定アプリMyASUSのファンモードを「フルスピードモード」に、Windowsの電源モードを「最も高いパフォーマンス」に設定しました。
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。どちらかというとビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。このテストではCPU性能の影響が大きいとされますが、テスト内容にグラフィック系のシミュレーションも含むため、外部GPUの性能も少なからず影響します。
参考(過去データから一部抜粋):
MSI Titan GT77 HX 13V(i9-13980HX、RTX4090):9,187
HP Victus 16(i7-13700HX、RTX4070):8,057
ASUS ROG Zephyrus G14 GA403(Ryzen 7 8845HS、RTX4060):7,946
GEEKOM NUC AE7(Ryzen 9 7940HS):7,521
Beelink SER8(Ryzen 7 8845HS):7,446
MSI Prestige 16 AI Studio B1V(Ultra 7 155H、RTX4060):7,298
HP Elitebook 635 Aero G11(Ryzen 7 8840U):6,949
HP EliteBook 860 G11(Ultra 7 155H):6,849
Lenovo Legion Go(Ryzen Z1 Extreme):6,691
ASUS ROG Ally(Ryzen Z1 Extreme):6,654
GEEKOM XT13 Pro(Core i9-13900H):6,542
MSI Claw A1M(Ultra 5 135H):6,485
HP EliteBook 830 G11(Ultra 7 155U):6,392
ASUS Zenbook S 13 OLED UX5304MA(Ultra 7 155U) :6,163
Lenovo Yoga 7 Gen 8(Ryzen 5 7535U):6,021
HP Pavilion 15-eh(Ryzen 7 5825U):5,954
DELL Inspiron 14 5430(Core i7-1360P):5,929
DELL Inspiron 14 5435(Ryzen 7 7730U):5,915
HP Dragonfly G4(Core i7-1355U):5,774
HP EliteBook 840 G11(Ultra 5 125U):5,741
DELL Inspiron 13 5330(Core i5-1340P):5,677
VAIO F14(Core i7-1355U):5,553
MSI Prestige 13 Evo A12M(Core i7-1280P):5,500
スコアのほう、外部GPU非搭載のノートPCとしては過去最高を記録しました。なお、Snapdragon X Elite搭載のCopilot+ PCではPC Markが動作しないため、比較はできません。
文句なしに素晴らしい結果になったと思います。
続いてはCPU性能のみを測定するCINEBENCH R23のスコアです。このテストではGPU(GeForceなど)の搭載有無は影響を受けないとされています。なお、比較対象にSnapdragon X Elite搭載機も含まれていますが、CINEBENCH R23はARM64ネイティブのソフトウェアではなく、エミュレーション動作となりますので、単純比較はできません。
過去データの一例:
MSI Titan GT77 HX 13V(i9-13980HX):2,149、30,358
MSI Vector GP78 HX 13V(i9-13980HX):2,112、29,156
MSI Creator Z16P B12U(i9-12900H):1,918、17,827
Lenovo LOQ 16IRH8(i7-13620H):1,857、14,383
GEEKOM AE7(Ryzen 9 7940HS):1,781、15,706
MSI Prestige 16 AI Studio (Core Ultra 7 155H): 1,827、 16,421
dynabook GZ/HV(Core i7-1260P):1,655、7,586
ASUS Vivobook S 15 S5507QA(Snapdragon X Elite):1,119、11,960
Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9(Snapdragon X Elite):1,105、9,620
ASUS ZenBook 14(Core i5-8265U):1,023、3,691
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
シングルコアの1,911というスコアは一部のモンスター級ゲーミングPCを別とすれば極めて高水準で、Core Ultra 7 155Hを凌ぎます。一方でマルチコアのスコアはシングルコアに比べてちょっと控えめですが、それでもトップレベルの水準ではあります。なお、この記事の公開前にRyzen AI 9 HX 370のベンチマークスコアを取り上げているサイトがあり、それを見るとマルチコアのスコアが17,000点越えとなっていましたが、ウインタブで数回テストした限り、15,000点を越えることはありませんでした。
続いてCINEBENCH 2024のスコアです。このソフトウェアにはARM64ネイティブバージョンもあり、(単純比較していいかは何とも言えませんが)一応Snapdragon X Elite搭載機との比較も可能です。
過去データの一例:
ASUS Vivobook S 15 S5507QA(Snapdragon X Elite):108、1,038
Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9(Snapdragon X Elite):107、962
GEEKOM AE7(Ryzen 9 7940HS):106、914
MSI Prestige 16 AI Studio (Core Ultra 7 155H): 105、964
ASUS Zenbook S 13 OLED(Core Ultra 7 155U):101、533
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
ウインタブにはCINEBENCH R23のスコアが極めて高かったゲーミングノートの測定データがありません。少ないデータの中での比較となりますが、Snapdragon X EliteやCore Ultra 7 155Hとほぼ互角、あるいはやや優勢と言っていいものになりました。もちろん、非常に高水準な結果ではあります。
グラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。ゲーミングPCでは最も重要になるテストと言えますが、レビュー機は外部GPUを搭載しておらず、スコアは低めになります。…とはいえ、搭載CPUのRyzen AI 9 HX 370が内蔵するGPU、Radeon 890Mの性能には注目です。なお、3D Markに関してもSnapdragon X Elite搭載機はエミュレーション動作となり、テスト中の挙動も少し不自然になるため、ここでは比較対象としていません。
参考1(Core Ultra搭載機)
MSI Prestige 16 AI Studio B1V(Ultra 7 155H):3,959、8,363、29,843
HP Spectre x360 14-eu(Ultra 7 155H):3,924、8,338、24,476
MSI Claw A1M(Ultra 5 135H):3,454、7,235、24,791
HP EliteBook 860 G11(Ultra 7 155H):3,388、6,785、23,662
HP EliteBook 830 G11(Core Ultra 7 155U):2,319、5,162、19,024
ASUS Zenbook S 13 OLED UX5304MA(Ultra 7 155U):2,280、5,121、19,020
HP EliteBook 840 G11(Ultra 5 125U):2,081、4,826、19,421
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
※Prestige 16は外部GPUを動作させずに測定したもの
参考2(外部GPU非搭載のノートPC・ミニPC)
GEEKOM NUC AE7(Ryzen 9 7940HS):3,362、7,776、29,076
Beelink SER8(Ryzen 7 8845HS):3,330、7,908、29,873
HP Elitebook 635 Aero G11(Ryzen 7 8840U):2,943、7,206、27,471
GEEKOM Mini IT13(Core i9-13900H):1,947、5,428、19,991
GEEKOM XT13 Pro(Core i9-13900H):1,946、5,440、19,477
dynabook GZ/HW(Core i7-1360P):1,786、4,991、16,779
HP Dragonfly G4(Core i7-1355U):1,760、4,859、16,891
Lenovo ThinkPad X13 Gen 4(Core i7-1355U):1,658、4,709、14,122
Lenovo ThinkBook 15 Gen 5 (AMD) (Ryzen 5 7530U)1,281、3,137、13,730
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
Core Ultra 7 155Hとは「いい勝負」、Ryzen 9 7940HSやRyzen 7 8845HS搭載のミニPCとの比較では「やや優位」くらいですね。ここまでのスコアが出るのであれば、性能的にはPCゲームのプレイも十分可能というか、AAAタイトルだとグラフィック設定を落とす必要があると思いますが、少し古いタイトルであれば高画質でも楽しめると思います。
ストレージの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。PCIe 4.0 x4接続らしい数値です。十分に高速です。
バッテリー駆動時間
MYASUSのファンモードを「ウィスパーモード」に、Windowsの電源モードを「最適な電源効率」に、ディスプレイ輝度を70%に、音量を30%に、キーボードバックライトをOFFにして、下記の作業をしました。
・画像加工ソフトGIMPで簡単な画像加工を約50分
・ブラウザー上でWordPressを使って記事執筆を約70分
・ブラウザー上でYouTube動画視聴を約15分
上記トータルで135分使用し、バッテリー消費は27%でした。単純計算で1時間あたり約12%のバッテリー消費、バッテリー駆動時間は8時間~8時間半程度となります。この駆動時間はSnapdragon X Elite搭載機には及ばないものの、「Ryzenの高性能型番」搭載機としては非常に優秀だと思います。ウインタブでは割とライトな使い方でテストをしましたが、このくらいの負荷で作業するのであれば、外出先で終日バッテリー駆動が可能ですね。
発熱とファン音
上記のバッテリーテスト程度の作業であればほぼ無音で発熱も全く気になりません。しかし、ベンチマークテスト中、またWebミーティング中の発熱量は一般的なノートPCより大きめです。HWiNFO64を使ってCPU温度を測定してみたところ、ベンチマークテストを繰り返し実施した際に最高で95℃まで上昇しました。この際キーボード面の上部もかなりの熱を持ち、手元のサーマルカメラでは約50℃を記録しました。なお、HWiNFO64のレポートによればサーマルスロットリングは発生していません。
というかですね、ウインタブの実機レビューでは通常HWiNFO64でCPU温度の測定なんてやりません。今回測定したのは、「キーボード面の上部が結構熱くなっている」と感じたためです。キーボード面の温度上昇は上部(スピーカーのあるあたり)が激しく、キー部分は特に大きな発熱量ではなかったので、実用面で「熱くて作業に支障をきたす」ことは心配しなくてよさそうですが、PCゲームなんかを長時間プレイするとサーマルスロットリングが発生する可能性もありそうです。
ただ、MyASUSの「フルスピードモード」というのは単にファン風量を上げるだけでなく電力や温度についても制限が緩和されるようなので、(少しパフォーマンスは落ちますが)ワンランク下の「パフォーマンスモード」にすれば発熱は緩和されるものと思います。
なお、高負荷時にはファン音も大きくなりますが、他のノートPCと比較して騒々しいというほどではなく、(時節柄)扇風機の音とか外の蝉の鳴き声など多少の生活音がある中で作業をする場合はあまり気にならなかったです。
4.レビューまとめ
ASUS Zenbook S 16 UM5606WAは8月1日に発売され、ASUS Storeでの価格は319,800円です。
おそらく各所でのこの製品のレビュー記事は「Ryzen AI 9 HX 370のパフォーマンス」がクローズアップされたものになるんだろうと思いますし、実際この点が購入検討される方々の最大の関心事にもなるんだろうと思います。
でも、私としては「それだけじゃないよ」と強く言いたいですね。この製品は決して安価とは言えませんけど、筐体はそれに見合う、というかそれ以上の上質感があります。「ギラギラ」しておらず、ソフトな印象で手触りが抜群にいいです。それでいてさり気なくMIL規格の堅牢性も備えています。ASUSの有機ELディスプレイは言うまでもなく抜群に美しいですし、スピーカー品質もそこらへんのノートPCには太刀打ちできないレベルです。Webミーティング時のマイクとスピーカーのノイズキャンセリング機能にも大満足です。
世の中「AI、AI」って騒いでますけど、AIさえ快適に使えればいい、などというバカな話はありません。それよりも「画面がキレイでキーボードが使いやすい」ほうが毎日のビジネスでは大切ですし、息抜きに音楽を聴いたり動画を観たりするのも楽しみですよね。といっても「これからはオンデバイスAIだ!」という論調も無視できません。Zenbook S 16 UM5606WAはこれらのニーズを全部満たせます、はい。予算さえあればおすすめ!
5.関連リンク
ASUS Zenbook S 16 UM5606WA :ASUS Store
コメント
完成度の高いノートPCだね。電源のない環境のモバイル機としてはかなりいいと思う。
CPUだけじゃないと言われつつもやっぱり新型CPUの初搭載機だしそちらの情報が気になってしまうw
まずはRyzen 9から出てきましたけどもう少しお手頃なRyzen 5あたりの新型が乗ったZenbookやVivobookも期待してます
この製品の場合、おそらくほとんどの方がCPUに強い関心を持たれると思いますし、私自身もレビューが決まった際に「とにかくCPUのチェックを!」と思いました。でもこれ、筐体品質もマジすごいんですよ。仮に搭載CPUがRyzen AI 300シリーズでなかったとしても「買い!」だと思います。さすが「Zenbookブランド」と感じました。なので、実機を手にして「CPU以外のところもきちんと記事にしたい」と思いました。