こんにちは、natsukiです。以前にもご紹介した、電子ペーパー楽譜専用端末「GVIDO」。すでに発売から約1年が経過しました。ぜひ、現物を触ってみたかったんですが、なかなか忙しくてずっと機会が無いままでした。それが先日、やっと、都内に用事があって比較的時間に余裕もあったので、銀座の山野楽器に寄って、ついに実際に使ってみることができました。せっかくなので、その使い心地などを、レポートしてみたいと思います。
目次
1.「GVIDO」とは?
「GVIDO」とは、要は、13.3インチ電子ペーパーディスプレイを2枚合わせて、楽譜専用にしたという製品です。ソニーのDPT-RP1やONYXのBOOX MAX2を2枚つなげたようなもんで、価格も、それらの2倍の税抜き180,000円というウルトラスーパーデラックススペシャルロマン価格。どうしようもない部分なので、以後、価格のことは言いません。もちろん、「楽譜専用」をうたうだけあって、実際にはDPT-RP1ともBOOX MAX2とも、まったく特性の異なる製品に仕上がっています。
今回の記事では、スペックや機能についての細かい紹介はしません。その辺は、公式HPをご参照ください。一通り基本機能を触ってみて、どのくらい使えるものなのか、というところを中心にレポートします。
2.筐体
やってきました、銀座山野楽器。店頭の高級オーディオに聞き惚れ、2階3階で楽譜とCDを一通り物色して伊福部昭の管弦楽曲集CDを買った後、6階ピアノフロアへ。
発見。GVIDOです。この日はすいていて、他に人もほとんどいなかったので、店員さんに撮影許可をいただいていろいろいじらせていただきました。
手に持ったサイズはこんな感じ。重量は660gですが、手に持った重量感は、紙の楽譜と同じくらい。参考までに、手持ちの厚さ7mm程度のよくあるピアノ曲集は約350g、厚さ約2cmのドーヴァー出版大判スコアのブラームス交響曲全集は約1,100gでした。
原寸大パンフレット(笑)なんてものを配ってまして、家に帰ってみてから、実際のピアノ譜と比較してみたところです。ディスプレイ部分がA4相当で、ベゼル部分も含めた筐体全体は、一般的な楽譜サイズとピッタリ合わせてあることが分かります。
3.実際に使ってみる
ディスプレイ
視認性は、さすがの電子ペーパー。最近の電子ペーパーは、「白い」ですね。写真は、いつでもいっしょ、愛用の「BOOX C67ML」と。写真だと分かりづらいんですが、BOOX C67MLは、わら半紙っぽい色です。もっとも、先日レビューした「BOOX Note」もかなり「白かった」ので、電子ペーパー業界全体の質の向上が感じられます。
アップです。スペック上で言えば1,600×1,200ピクセルの150dpi。こうしてみると、案外ジャギーが目立ちますね。なお、同サイズのDPT-RP1とBOOX MAX2は、2,200×1,650ピクセルの207dpiです。実用面で言えば、演奏用の、ピアノ譜や楽器譜の場合は、この解像度で十分だと思います。ただ、指揮などのためにフルスコアを表示した場合は気になるかもしれません。
操作は、ペンとタッチセンサー
操作は、方法が非常に特殊です。まず、画面タッチでは操作できません。製品特性上、わざとそうなっているんですが、この一点をもっても、タブレットとは根本的に違うということが察していただけるかと思います。操作は、「タッチセンサー」「ボタン」「ペン」によって行います。
主に、譜めくりなどに使うのが「タッチセンサー」。タッチと言っても、触るのはディスプレイ部分ではありません。画像の、赤で囲んだ部分がセンサーになっています。電子書籍リーダーの「ページめくりボタン」と同様と考えればいいでしょう。
また、画像の下部に、青で囲んだのがボタンです。機能を呼び出すための、メニュー表示ボタンと思っておけばよいです。
それから、「ペン」。サイズ感は、特にコメントのしようがありません。重要なのは、画面をタッチしての操作ができないため、楽譜や機能メニューなどの「選択」が必要な操作は、基本的にこの「ペン」がないとできないということです。え!? じゃあ、ペンを忘れたらどうすんの? ご愁傷様、楽譜をライブラリから選択することができないので、詰みです……だったのが、最近のシステムアップデートで、タッチセンサーによって「選択」ができるように改良されたようです。もっとも、3つしかないタッチセンサーで「選択」を行うので、操作にはかなり慣れが必要ですが。
では、実際に操作している動画をどうぞ。片手で撮影しながら操作しているので、手ぶれしまくりなのは勘弁してください。ついついタッチ操作で動かそうとしてしまうので、なかなか思ったように動かせなかったりしています。
また、レスポンスですが、お世辞にも良いとは言えません。「譜めくり」としては十分な速度ですが、機能の操作についてはワンテンポ遅れるため、慣れないと感覚が狂います。ただし、動画中で操作にかなりモタついているのは、レスポンスの遅さよりも、操作に習熟していなくて、狙った動作をできないでいる部分が大きいです。
ウリのペン機能は?
そして、ペンで書き込める、というのもGVIDOの特徴です。安心のワコム製ということで、期待が高まります。これも、動画をどうぞ。
むむむ、微妙。ペンを近づけると、自動でメニューが表示されます。ここまではよい。しかし、肝心のペンの使い心地は、太さは選択可能だが、筆圧検知は無し。追随性も、動画のようにワンテンポ遅れるので、文字はなかなか書きづらい。電子ペーパーなんだからこんなもんじゃないの? とも思えるかもしれませんが、同じワコム&電子ペーパーの組み合わせでも、BOOX Noteは素晴らしい描き心地だったんだよなぁ……
なお、動画を見て分かるかもしれませんが、書き込みは「ベクタ画像」、すなわち、線で保存されています。従って、消しゴムをかけると、「面」が消えるのではなく、消しゴムの引っかかった「線」がまるまる消えます。これは、例えば、「Windows Ink ワークスペース」の「スケッチパッド」や、「Bamboo Paper」などと同様の挙動です。
ともあれ、慣れればそれなりに書き込めるのでしょうが、紙のようにサラサラとはいきません。細かい書き込みとかも厳しい。まあ、「ワコム」と聞いただけで期待値がグッと上がってしまうから、というのは考慮してあげてもいいかもしれません。BOOX Noteを体験してしまうと、どうしても、ねぇ。
基本機能をざっとチェック
細かい機能はさておき、すぐにアクセスできる基本的な機能は、次の通り。
初期画面です。楽譜を選択します。
楽譜表示中に、下のボタンを押すと表示される機能メニューです。長い曲で、第2楽章の頭へ、なんてときは、ここでブックマークを作成して、ページを跳躍します。指揮に使う場合は、このブックマーク機能をいかに使いこなすかがミソになるでしょうね。
ちなみに、長い繰り返しや、コーダ・ダカーポ・ダルセーニョなど、演奏中に跳躍がある場合は、いちいちボタンを押してなんていられません。その場合は、あらかじめ「タッチセンサーによるページめくり」で表示されるページの順番を指定しておくことができるので、そっちの機能で設定しておきます。
4.周辺機器のフットスイッチと専用カバー
周辺機器として、別売で、無線接続可能なフットスイッチと専用カバーがあります。ペンは、先ほども触れたように操作に必須なのではじめから付いていますが、別売で追加購入もできます。店頭では、フットスイッチの使用もできたので、試させていただきました。動画も撮ったんですが、フットスイッチと画面を同時には映せないので割愛。
で、使い心地は上々。フットスイッチのページめくりレスポンスは、十分に実用レベルです。フットスイッチによる楽譜めくりの手軽さもGVIDOのウリのひとつですが、ここは納得の素晴らしさ。ピアノだと、ペダルとのすみ分けに悩むところですが、その他の足の空いているたいていの楽器にとっては、物理的に譜面をめくる必要がないこの機構は革命的です。感動します。
だが、しかしだ、ガマンできん、言わせてくれ。価格については言わないと言ったな? あれはウソだ。フットスイッチ単体で、税抜き30,000円はねーよ。本体が本体なので、少しでも安く、なんて言うつもりはない。でも、どんなに質を重視しても、他社の無線フットペダルと比較して考えれば、せいぜい15,000円でしょう。専用カバーも同じく。税抜き30,000円は何かの冗談か? ソニーDPT-RP1純正カバーでも、定価で税抜き8,800円だぞ? うーむ、ますます個人利用からかけ離れていく……
なお、フットスイッチは、他社製品でも使えるものがある模様です。もちろん、ちゃんと動作する保証はどこにもないわけですが、これの有る無しでGVIDOの存在意義が大きく変わってくるので、試してみる価値はあるか?
5.まとめ
あこがれの「GVIDO」、堪能させていただきました。やや厳しめのレビューとなりましたが、思った以上に操作が特殊で、そこに振り回されてしまったところもあります。習熟して、思い通りの操作ができるようになれば、また評価も変わってくるかもしれません。システム面については、かなり頻繁にアップデートを行ってユーザーの要望を取り入れた機能改善につとめているので、この操作感も今後、洗練されていくでしょうし。
全体的に、機能の方向性は、素晴らしいです。欲しいか欲しくないかの2択なら、むっちゃ欲しい。しかし、操作に習熟していないという点を割り引いても、「むむむ、惜しい!」という点を多く感じたのも事実。これが廉価な製品なら、そこは目をつむって工夫でなんとかするんですが、この価格だと製品側に期待しちゃいますよね。
ともかく、唯一無二の製品であることは間違いありません。なので、この操作の特殊性や私が惜しいと感じた点も、人によってはまったく評価が変わってくることでしょう。GVIDOは、山野楽器とタイアップしていて、山野楽器の銀座本店、仙台店、西宮ガーデンズ店、ロックイン難波、武蔵小杉店にて、実機展示が行われています。もし、近くに寄った際は、是非、実際に使ってみることをお勧めします。実際に買うかどうかは別問題として、ひとつの未来を垣間見せてくれる製品ですから。
コメント
楽器は音大生でも数百万のもの持っているから正直価格なんてどうでもいいんじゃないですかね。レスポンスが遅すぎて使えなそうなのと、書き込みがLayer単位で消せないのがイマイチですね。これはしょうがないのですが色ペンが使えないのも…
付箋機能はあるのかな?
どんなに素晴らしい腕があっても、楽器本体がダメなら限界がありますから、プロである以上、楽器についてはある程度お金をかけるのは当然でしょう。もっとも、数百万は管楽器ではまずないですが。
その分、他で苦労するので、価格なんてどうでもいいというわけには行かないですよ。音楽で食っていくのは大変なようです。
ただ、だからこそ、プロであれば、GVIDOの利用に20万以上の価値を見いだせるでしょう。ソロやアンサンブルでの演奏なら、フットスイッチによる譜めくりひとつとっても、パフォーマンスへの影響は大ですから。
そういう意味でも、プロ向けのガジェットだと思います。
となると、これを使うべき人は、必ずしも電子ガジェットに興味を持っていないわけで、もうちょっと操作性がこなれていたりしないと、導入のハードルが高くなってしまいますねぇ。
色々と、「もう一歩」あれば素晴しい、という部分が多いのが惜しい製品です。
ガチなプロ用としてはやはりレスポンスの悪さがネックになりそうですね
めくるだけなら、十分いいんですけどね。
個人的には、ペンの遅延が残念です。