こんにちは、natsukiです。手軽に撮影できる、スマホ用顕微鏡レンズ「Apexel 200X」を購入して使っています。この手の製品は、広告イメージからだけだとその本当の性能が分かりにくいので、実際に購入して検証してみました。結論を言えば、数千円程度の製品ながら、簡易顕微鏡として実用レベルの性能を持っています。ただし、後述の検証で分かるように、レンズそのものの倍率が製品名にあるような200倍もあるわけではなく、「拡大レンズ」かつ「接写補助レンズ」としての性格も持っているため、高倍率になればなるほど、画質はスマホ側のカメラ性能に依存します。アプリなども必要なく、クリップでスマホに取り付けて撮影するだけと、超手軽なので、特性を分かった上でならば、かなり活躍の場がありそうな製品です。
目次
1.Apexel 200X 概要
こういうスマホ用お手軽ガジェットは、ノーブランド品や出品者が勝手にブランド名を付けているだけのものが多いんですが、この「Apexel」は、ちゃんとメーカーサイトもあるブランドです。レンズ系の製品を豊富にラインナップしているブランドで、スマホ用顕微鏡レンズも複数リリースしています。今回、私が購入した200Xは、その中でも最も廉価な価格帯の製品となります。
APEXEL EXPAND YOUR VISION:メーカーサイト
使い方は見たまんま。スマホのカメラ部分にクリップで挟んで固定するだけです。バリエーションは、カラーが「Black」「White」の2色。また、照明がON/OFFのみのものと、2段階明るさ調整のあるもの。さらに「CPL」フィルターの付いているものと付いていないものがあります。私が購入したのは「Black」「照明2段階調整付き」「CPLフィルター付き」のフルスペックのものです。素人知識だと、接写の場合にCPLフィルターはあんまり関係無いように思うんですが、Apexel製品は、他のレンズでもやたらCPLの効果を主張してますね……。まあ、このあたりは深く突っ込まないことにしましょう。私が「CPL付き」の方を買った理由も、たまたまAliexpressでセール対象になっていて安かったってだけですから。写りゃいいんだよ、写りゃ。
2.Apexel 200X 筐体
箱です。こういう安価なガジェットって、販売の便宜から、ブランド名が書いていなかったり、あるいは段ボール箱詰めやバルクの場合も珍しくないんですが、このApelex 200Xは、箱もブランド名入りのしっかりしたものです。Aliexpressでの買い物に慣れている身からすると、この「安価な製品であるにもかかわらず箱がブランド名入りでしっかり作られている」という段階で品質への期待がグッと高まります(笑)。
同梱品一覧です。充電ケーブル、レンズふき用クロス、持ち運び用巾着袋、マニュアル。マニュアルは日本語非対応ですが、まあ、使い方は迷いようがありません。巾着袋は、プラスチック生地ながら硬めで、これなら雜にカバンに放り込んでも簡単にはレンズが傷ついたりしないでしょう。
本体です。ボタン長押しで照明ON/OFF、短押しで照明の明るさ調整。ぶっちゃけ、スマホ側のセンサーで光量調整しちゃうので、これで明るさ調整しても写りにはほとんど変わりがありません(笑)。重量は実測16.6g
裏側です。このクリップではさみます。
装着すると、こんな感じ。ご覧のように、比較的軽量なタフネススマホ(画像は「Armor X5」)やゴツめの保護ケースでも十分に挟めます。ただ、プラスチックの弾性で抑えているだけなので、バッテリー容量10,000mAhのタフネススマホ(笑)とかはやめといたほうがいいでしょう。また、レンズの位置を多少調整できるので、位置合わせの汎用性は高く、現在市販されているスマホやタブレットでカメラの位置とレンズが合わないということはまず無いと思います。
3.Apexel 200X 撮影例
撮影には、「Xiaomi 12T」を使用しています。Apexel 200Xを評価するのに関わってくるポイントとしては、以下の通りになります。
・通常撮影モードの画素数は4,000×3,000の12MP、検証にはこれを使用
・素の撮影性能自体は高いが、ズーム撮影はデジタルズームのみで苦手
なお、以下の画像の、撮影例はすべて、「2,560×1,920ピクセル」に縮小したものです。クリックで拡大します。
約500円のマイクロスコープと比較
ここまで読んできて、何か似たようなのを前に見たことあると思った方は、なかなか古参のウインタブ読者ですね。ありがとうございます。はい、かなり前に似たような製品のレビュー記事を書いています。こちらは、Aliexpressで約500円程度で、なんなら3つで5.99ドルセールにもよく並ぶ現在でも安価で入手可能な製品。これはこれで、オモチャとしてはかなり手軽に遊べる、楽しい製品です。詳しくは下記レビュー記事をご覧ください。さて、今回の「Apexel 200X」も安価とはいえ、価格はずいぶん違います。では、品質はどのくらい違うんでしょうか?
スマホ用マイクロスコープ - 手軽になんでも拡大できて、使ってみると予想以上に楽しい!
使ってみてすぐ分かるのは、画角の差です。
これは、新聞の文字を撮影したものです。下が、Apexel 200X。ご覧のように、Apexel 200Xの方が撮影範囲がはるかに広いのが分かるかと思います。(上記の前の製品の記事の画像は、余白をトリミングしています)
拡大してご覧いただくと分かるのですが、Apexel 200Xの方が精細であることも明らかですね。レンズの構造上、ピントがしっかり合うのは中央部分のみで、周辺部に行くとボケるのはやむを得ないのですが、そのボケもApelex 200Xの方がよく抑えられています。もっとも、数値上は安物の方が60倍でApexel 200Xは200倍と、3倍強の拡大率の差があるはずのところ、ドットを計測してみると、拡大率の差はほぼジャスト2倍でした。なお、このApelex 200Xの「200倍」ってのがどこまで本当なのかは、後で検証します。
この他、照明についての仕様が異なります。安物のレンズの方は内部電池(おそらくボタン電池)が交換も充電も不可能な構造のため、電池が切れてしまうと照明が使用できません。私が持っているものも電池切れです。ただし幸いにして、外部の光を取り込む構造になっているため、十分に明るいところで撮影すれば、夜の屋内であっても問題無く撮影が可能です。実際に上の写真は、レンズの照明無しで撮影しています。一方のApexel 200Xは、被写体に完全に密着するため、照明無しでの撮影は不可能ですが、電池が充電式のため充電電池が壊れるまで使用可能です。
撮影例
以下、いずれもスマホ側のカメラを2倍ズームにしています。スマホによって多少の違いはあると思いますが、2倍にすると、おおむね周囲の欠けがなくなって、全画面での撮影が可能だからです。また、ミッドレンジクラスのたいていのスマホであれば、2倍ズームくらいなら画質の劣化もさほど大きくないでしょう。これは、楽しい、美しい。
先ほどの新聞のフォントです。新聞紙の粗い繊維までよく見えます。
こちらは別の本のフォント。こうして拡大してみると、紙質によって印刷の具合が大きく違うことが分かりますね。
ワイシャツです。布の織り目は生地ごとに特徴的な幾何学模様を描くので、撮影していて面白いジャンルです。ワイシャツの織り目は、いかにもオーソドックスです。
こちらはフェルト生地。織り目がなく、繊維が絡み合っています。
これは、Apexel 200X付属の巾着袋。ナイロン生地で非常に細かく織り込まれています。
新500円玉の「0」部分の拡大です。新500玉は、見る角度によって「JAPAN」「500YEN」の文字が浮き出ますが、このように、別方向に彫り込みを入れることでそのような効果を実現していることが分かります。
はい、定番ですね。10,000円札の隠し文字です。探してみましょう。
「200倍」なのか?
さてこの製品、製品ページには「Actual shots with 200X Microscope Lens」なんて紹介があります。製品名も「200X」。でははたして、200倍の撮影は可能なんでしょうか?検証してみます。
Apexel 200Xは、使用が想定される代表的なスマホとして、iPhone 13を挙げています。iPhone 13のカメラ解像度は12MP(4,000×3,000ピクセル)。今回、撮影に利用したXIAOMI 12Tの、デフォルト撮影モードでの解像度はやはり12MPです。
さて、この12MPのカメラでApelex 200Xを使って、定規を撮影したところ、ズームなしの場合、定規の1mm分の目盛りが370ピクセルとなりました。これを、一般的な印刷品質とされる350dpiの解像度で印刷したとすると、370ピクセルは約27mmとなります。つまり、27倍ズーム。うーむ。
いやまて、製品解説には「Support mobile phone 2X/5X/10X camera zoom」との記載も。これを最大限好意的に解釈してあげるとすると、27倍×スマホで10倍で、270倍ととれなくもない。ウォーズマンかよ! 現実的には、拡大による画像の劣化はスマホのズーム性能によって大きく左右され、確かにフラグシップ級のスマホなら10倍でもそれなりの撮影能力を持つ機種は多くあります。例えば、先ほどまでのスマホでの2倍ズームは、印刷品質だと約50倍強のズームの計算になりますが、ご覧のように十分な美しさを見せてくれました。12MPで撮影した場合、約7.4倍で200倍となるので、ズームを得意とするハイエンドクラスのスマホであれば、200倍撮影も現実的でしょう。120倍ズームが可能なXIAOMI 12S Ultraなら、理論上は3,240倍のズームが可能だ!(本格的な光学顕微鏡でも、実用レベルでの最大倍率は1,500~2,000倍とされている)。この製品そのもののレンズ倍率じゃないがな! まあ、価格帯からして、そんなもんだろうとは思ってましたけど。
「100倍」「200倍」の撮影例
ものは試し、XIAOMI 12Tで、1倍(約27倍)→3.7倍(約100倍)→7.4倍(約200倍)と撮影してみます。なお、XIAOMI 12Tは、通常の撮影であれば十分に高性能なカメラを搭載していますが、光学ズームなどは備えずデジタルズームのみのため、ズーム性能はあまり高くありません。
稲の葉の表面です。3.7倍ではやや画質の劣化が見られるものの、まあ、悪くないんじゃないでしょうか。7.4倍になると、かなり劣化しますね。ただ、表面の気孔が整然と並ぶ様は十分に観察できます。
観葉植物の葉です。細胞のひとつひとつがはっきり視認できます。
絨毯の生地です。なお、絨毯の生地は立体的なため、焦点を全体に合わせるのは不可能なため、ある程度のボケはやむを得ません。むしろ、立体的なものをこれだけ撮れることに驚きです。
ティッシュペーパーの繊維です。
ソファーのカバー生地です。
他にも色々撮ってみましたが、XIAOMI 12Tのカメラ性能だと、3.7倍(約100倍)くらいなら被写体によってはそれなりに納得の絵が撮れます。7.4倍(約200倍)だと、さすがにかなりボケるものの、観察用としては、使えなくもないくらいでしょう。ズーム性能に優れるフラグシップ級のスマホであれば、「200倍で撮影する」ことも、まあ、可能……なのかな?
4.販路と価格
Apelex 200Xを購入できる販路は、メーカーサイトの他、Aliexpress、Amazonあたりがあります。メーカーサイトはPayPalにも対応しているのですが、記事執筆現在「CPL付き」で39.99ドルとあまり安くはありません。
比較的手軽でもっとも安価なのは、やはりAliexpressでしょう。例によって、Aliexpressでは同等品の販売が膨大にありますが、「APEXEL Official Store」と「APEXEL Direct Store」の2つの出品者はトップブランドマーク付き(メーカー直売か公式販売代理店)なので、信頼性は高いと思います。私が実際に購入したのも、「APEXEL Official Store」からです。価格は、「照明2段階調整」「CPLフィルター付き」のフルスペックで、おおむねセール価格で2,000円台半ばから3,000円くらいといったところ。記事執筆現在、「APEXEL Official Store」出品なら、Aliexpressの「Choiceセール」対象でフルスペックBlackのみ15.80ドルの送料無料、通常の販売では、白黒両色ともフルスペックが20.99ドルに3ドルOFFクーポンと5%コイン割引適用となっていて、いずれでも2,000円台半ばとなります。配送保証はChoiceの方が手厚いですが、まあ、それほど大きな違いはありません。色の好みや手持ちのコインなどと合わせて、ご判断ください。下記に両方のリンクを張っておきます。
日本のAmazonでも販売がありますが、記事執筆現在ではマーケットプレイスの出品者のみのため、リンクは張りません。価格は3,000円台前半から4,000円くらいのようです。ブランド名の「Apexel」で検索するとすぐ引っかかると思います。
ご覧のように、このApelex 200Xは、少なくとも「一般的なカラー印刷品質換算で27倍の接写が可能」で、それ以上の倍率はスマホ側のズーム性能に依存するものの、画質についても「かなり使える」品質になっています。以前レビューした500円程度の拡大レンズも、オモチャとしては十分に楽しめるものでしたが、それと比べると、価格差を納得させるだけの全くレベルの違う品質を備えています。これだけの品質があれば、色々と使い道は広がるんじゃないでしょうか。この手の製品は、販売ページの広告イメージではなかなか実際の品質が分かりにくいので、参考になればと思います。
5.関連リンク
APEXEL New Mobile 200X LED Microscope Lens:メーカーサイト
Apexel-マイクロフラッシュレンズ200倍倍率,携帯電話用,LEDライト付き:Aliexpress内「APEXEL Official Store」(Choiceセール対象ページ)― 私が実際に購入した出品者です
Apexel-マイクロフラッシュレンズ200倍倍率,携帯電話用,LEDライト付き:Aliexpress内「APEXEL Official Store」(通常商品ページ)― 同じ出品者のChoiceセール対象外の商品ページ