楽譜作成ソフトを比較 ― Finale 対 Sibeliusの2強時代から、ここ数年で大きな変動が!(natsuki)

楽譜作成ソフト比較
こんにちは、natsukiです。今回は、「楽譜作成ソフト」の比較をしてみたいと思います。というのも、ちょっと前までは楽譜作成ソフトと言えば、圧倒的に「Finale」で、そこに「Sibelius」がどれだけ挑めるか、といった状況だったのですが、ここ数年でその様相が大きく変わってきたからです。新興の魅力的なソフトの登場、老舗の変化、変わらないがゆえに結果的に良さが光ってきたソフトなどなど、なかなか面白くも悩ましい状況になってきています。

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さて、「音楽」を作成するソフトは、大きく分けて二つの方向性に別れます。一つは、「人間が演奏するための楽譜」を作成することを目的とするもの。これが「楽譜作成ソフト」です。もう一つは、「コンピューターに演奏させること」を目的とするもの。これは一般に「DAW」と呼ばれるものです。「楽譜」には「音楽」を成立させるための最小限の情報しか書かれていません。はじめからあえて未完成だからこそ、表現の余地があるわけです。なので、人間用の楽譜を作るなら、デザイン・レイアウトが極めて重要で、そこには視認性・操作性(譜めくりのタイミングなど)に加えて一種の視覚芸術性すら要求されます。これを追求するのが「楽譜作成ソフト」ということになります。一方、コンピューターに演奏させるなら「楽譜」だけでは全く情報が足りないので、様々な「表現」を入力してやる必要があり、そもそも私たちがイメージする「楽譜」は使いません。これが「DAW」ソフトです。最近はDAWソフトでも、ずいぶん美しい「楽譜」を出力できる機能を持つようになってきましたが、やはり根本的な目的が違うので限界があります。

今回、楽譜作成ソフトの中で、比較のためにとりあげるのは、すでに多数のユーザーがいるものか、大手のメーカーが出しているものに絞らせていただきます。ラインナップは以下の通り。

Finale
Sibelius
スコアメーカー
MuseScore
Notion
Dorico

これらに限定したのは、マニアックなのまで取り上げているときりがないというのもありますが、他にも理由があります。そもそも、楽譜作成ソフトは非常に複雑で、とっかかりは簡単に操作できるような作りになっていても、ちょっと凝ったことをしようとすると、ソフトごとに大きく操作が異なってきます。そのため、がっつり使うためには、メーカーのサポートがしっかりしていたり、情報交換できるユーザーが多数いることが非常に重要になってくるんです。なお、私自身は昔ながらのFinaleユーザーで、現在使用しているバージョンは2014だということを申し添えておきます。

それでは、順にご紹介しましょう。記事の性質上、テキスト主体になりますがご容赦ください。

1.Finale

楽譜作成ソフト比較 Finale
老舗にして最大手。楽譜作成ソフトといえばコレ! ここ数年は更新のペースが落ちているものの、かつては毎年新バージョンを更新していた、全ての楽譜作成ソフトの基準となるソフトです。その圧倒的な歴史の長さは、メリットでもありデメリットにもなっています。良くも悪くも基準になるソフトであり、私自身も使い込んでいるので、少々詳しく説明します。

優位点

Finaleの優位性は、まず「Finaleに書けない楽譜はない」と言われる多機能さ。それに加えて、圧倒的なシェアによる情報入手のしやすさです。後述のように、Finaleのインターフェースは、おせじにも分かりやすいとは言いがたいものがあります。しかし、「これどうやるんだろう」と思ったときは、Google検索でもかければたいてい解決策に行き当たります。関連書籍も豊富に出版されていますし、特に『Finale User’s Bible』の著者の星出尚志氏のホームページの掲示板では、盛んにユーザー間の情報交換や星出氏からのアドバイスも行われており、分からないことがあればここに聞きに行けば丁寧に対応してくださいます。私も非常にお世話になりました。

できないことはない。しかし、その機能がどこに格納されているかが分からない! そして、それをどうやればいいかという情報は入手しやすい。これがFinale!!

楽譜作成機能

もちろん、機能の多さは文句なしのトップと言ってよいでしょう。こと、記譜に関して他の楽譜ソフトと比べたとき、「Finaleより簡単にできる」ことは多々あっても、「Finaleにできないことができる」ということはまずありません。

また、作編曲関係の機能も充実していて、例えば、ピアノ曲を読み込んで、ワンタッチで4声部に分割してそこから4重奏曲に編曲する、和音のトップやベースのみ抽出する、複数の声部を和音に集約する、なんてこともお手のものです。

もっとも、その圧倒的な「できること」の多さは、Finale最大の問題点でもあります。かつて、機能が少なかった頃から徐々にバージョンアップを重ね、ゴテゴテと、それはもうゴテゴテと、様々な機能を次々と付け足してパワーアップしてきたため、操作方法が複雑怪奇なことになってしまっています。機能のスパゲティ化によるバグも多い。ただし、先述のように情報はあふれているので、分からないことは調べればたいてい解決します。

それから、「何でもできる」ということは、設定しなくてはいけないことが多いということでもあるわけで、例えば、後述のSibeliusが音楽記号のレイアウトをかなり自動で行ってくれるのに対し、Finaleはデフォルトの位置パターンこそあるものの、基本的には全てを自分で設定します。はじめからある音楽記号も案外少なく、自分で使いやすいようにカスタマイズした記号をどんどん作って付け足していく感じです。

こういったことは、ショートカットを使いこなしたり、よく使うテンプレートを蓄積したり、果てはスクリプトを組んだりと、徹底的に使い込んでいくと解決する部分なんですが、そこまで到達する道のりが長い。先述の星出氏がどこかで「ぬか床」という表現を使っていましたが、言い得て妙だと思います。カスタマイズ大好き、全てを自分で設定したいという性格の人には向いていると思います。

再生(プレイバック)機能

楽譜を音に出すプレイバックは、Garritan社の豊富な音源がついてくる上、GarritanがFinale制作元のMakeMusic傘下になったこともあってFinaleにGarritan音源のコントロールがシームレスに組み込まれており、さらに、「Human Playback」という、再生時に「楽譜に書かれていない表現」を補う機能までついているので、特に再生のための複雑な設定をすることなく「そこそこの音質」で楽譜を音にすることができます。ついでに、おまけ程度ですが、簡単なMIDI編集機能まで付いています。また、Garritan製の追加音源の導入も容易です。Garritan音源は、初音ミクで有名なクリプトンが日本での販売代理店となっていますが、ソフト音源としては激安で、かつ、オーケストラからジャズ、民族楽器まで、そのラインナップも非常に充実しています。本格的なDAW向けには、はっきり言って力不足な音源ですが、とりあえずの響きを確認したい楽譜作成ソフトにとっては、軽量で最適な音源といえます。

とはいえ、所詮は補助的な機能と割り切ることも大切です。Finaleらしく、再生に関してもいじくれるところが大量にあり、なまじ使い込んでいると不満点も設定次第でなんとかなってしまいそうな気もしてしまうんですが、やり出すと複雑な上にバグも多く、どツボにはまります。Finaleの再生周りはマジ魔窟(笑)

一方で、近年、DAWソフトとの連携というのが流行りで、Sibelius、Notion、Doricoは、いずれも有名DAWメーカーが制作しており、程度の差はあれ、それぞれのDAWソフトとの連携が見込めるようになっています。その点では、FinaleにできるのはただMIDIファイルを出力する程度ですから、弱いといえます。ただし、これは欠点というよりはソフトの方向性の問題ですね。

互換性

ファイル形式について、地味に重要なのが「MusicXML」という楽譜ファイルの共通形式への対応です。共通形式ということは、裏を返せば、各ソフトの独自仕様がそぎ落とされたり、レイアウトが崩れたり文字化けが発生したりなど、互換性に一定の問題を抱えざるを得ないのですが、この「MusicXML」の仕様を策定しているのがFinaleの製造元のMakeMusicなので、FinaleのMusicXMLでの入出力は最も互換性が高く安定しているといえます。

最新版での注意点

最新盤の新Finale(今まで、年号がバージョン名だったのが昨年末に発売された最新バージョンでは、単に「Finale」となったので便宜的に「新Finale」と呼んでおきます)では、ソフトの性格を左右する大きな変化がありました。第一に、ようやく、やっと、64bitにネイティブ対応したということ。この恩恵は、プレイバックの面で特に大きいです。実は、Finale2014までは32bitのためにRAMを十分に使いこなせず、同時発音数が限定されるという致命的な問題がありました。それが解決されたわけです。また、Garritan社音源との一体化がさらに進み、プレイバックの軽さと質ではさらに進化を遂げたと言えます。

一方、きついのは、楽譜スキャン機能が削除されたこと。もともと、Finaleの楽譜スキャン機能は音符だけ読み取れれば御の字程度のものでしたが、それでもピアノ譜くらいであればかなり正確に読み取ってくれるので、有ると無いとでは大違い。やはり、著作権がらみのなんやかんやがあったようですが、紙と連携してこその楽譜作成ソフトにおいてこの変更は非常に痛いです。個人的には、これだけで大きく魅力を損なってしまったと感じています。

総評

2014年まででしたら、迷ったならとりあえずFinale買っとけ。機能面で悔やむことはないから、あとは軍服に体を合わせろ(笑)、と言えたのですが、スキャン機能の削除はやはりショックです。紙寄りの制作環境を考えている人にとっては、スキャン機能付きである後述のSibeliusやスコアメーカーの魅力が相対的に増してきたといえます。

なお、Finaleには廉価機能制限版の「Finale PrintMusic」「Finale SongWriter」、フリーの事実上体験版の「Finale NotePad」があります。廉価版はフル機能版より一気に安くなるので、自分が必要な機能に応じて選ぶとよいでしょう。現実的には、「Finale SongWriter」は機能制限が厳しすぎるので、「Finale PrintMusic」あたりが現実的かと。Sibeliusとスコアメーカーの廉価版はパート数が16までで、これだと吹奏楽やフルオーケストラでは厳しいのに対し、「Finale PrintMusic」はパート数24と、基本的な編成なら十分対応できます。なお、現行の「Finale PrintMusic」は「Finale 2014」が元になっているので、スキャン機能がまだ付いているということも付け加えておきます。

2.Sibelius

楽譜作成ソフト比較 Sibelius
Finaleの対抗馬といえば昔からコレ。機能面では申し分ないものの、一時期、経営的に危機に陥り、なんやかんやあって現在は持ち直したものの、主要スタッフの一部が他社に移籍して後述のDoricoが開発されたという経緯があります。なお、今回紹介するソフトの中で唯一、月額のサブスクリプション方式に対応しています。

優位点

「Finaleのライバル」ということを強く意識して開発されてきたので、Finale最大の欠点である操作の複雑さと設定の煩雑さが大幅に改善されています。それでいて、Finaleほど神経質ではないにせよ、商業レベルの細かいレイアウトや印刷設定も可能。

スキャン入力機能に手書き機能も付いていますので、Finaleからスキャン機能が削減された今、これも優位点となりました。ただし、この辺の機能は本来的には別のソフトを連携させているということもあり、日本語化されていません。

楽譜作成機能

というわけで、機能面で見た場合、Finaleの煩わしさを解消して、できることもほぼ同等に迫るという、極めて優秀なソフトであることは間違いありません。

とはいえ、やはり多機能なので、すべての操作を直感的に、とはなかなかいかず、そういうときの情報量の差でFinaleの圧倒的シェアの前に後塵を拝してしまっている感があります。丁寧な機能解説をしてくれているサイトもいくつかはあるんですけどね。

再生機能

こちらも、特に面倒な設定もなく、それなりの音質での再生が可能です。もっとこだわりたいときは、Sibeliusの開発元であるAVID社は、有名DAWソフト「Pro Tools」も開発しているので、Sibeliusから出力したデータをPro Toolsで編集するという連携も可能です。

1点不満があるとすれば、付属の音源が約40GBもありやがることでしょうか。いやいやいや、重いわ!! だから本質的にそういうソフトじゃないから、DAWでやれ、DAWで!! 別に、マジなソフト音源としては、40GBってのは決して重くないですよ。ただ、往年の名音源「QUANTUM LEAP Symphonic Orchestra」の Gold Complete がほぼ同じ容量ですが、じゃあ、それ並みの音質かというと、とてもとても…… 実は、この点に関しては、「NOTE PERFORMER FOR SIBELIUS」ってのを導入すると劇的に改善するんですが(RAMは喰います)、追加で約¥15,000の出費をどう評価するかですね。

互換性

MusicXMLに、入出力ともに対応しています。いかにFinaleユーザーを乗り換えさせるか、ということを常に考えているソフトですので、この辺の互換性のレベルは高く、抜かりはありません。

総評

基本的な性能の優秀さは、圧倒的シェアを誇るFinaleに長く挑み続けてきた実績があるだけに折り紙付きです。Finaleのスキャン機能削減により、結果的に、今回比較するソフトの中では最も欠点らしい欠点のない全方面対応の楽譜作成ソフトとなっています。ただし、いつの間にかお値段も高騰して、買い切りでFinaleよりも約¥20,000も高いです。

あとは、経営面のドタバタは大きく信用を損ないましたから、それが再燃しなければいいんですが。現在でも、旧バージョンのSibelius 7のサイトが中途半端に放置されていて、最新バージョンと統合されておらず、こういったところに一抹の不安を感じてしまうんですよね。

なお、廉価版の「Sibelius First」がありますが、最大パート数が16までなので、フルオーケストラや吹奏楽だと役者不足になってしまいます。ここは、「Finale PrintMusic」に軍配かな。

3.スコアメーカー

楽譜作成ソフト比較
カワイが提供する、純国産楽譜作成ソフトです。多ソフトの追随を許さない、スキャン機能の優秀さがウリです。

優位点

ということで、ともかく、他ソフトとは一線を画すスキャン機能が素晴らしい。読み取り精度もさることながら、そもそもの設計に根本的な違いがあります。楽譜のスキャン認識はまだまだ発展途上で、さすがのスコアメーカーでも誤認識は多数起こるのですが、スコアメーカーの場合、元のスキャンした画像と認識結果を重ね合わせて修正を加えながらスキャン認識を進められるのです。旧FinaleやSibeliusのスキャン認識は、認識過程にこちらから指示をする余地はないので、例えばフルスコアの場合、左ページのフルートと右ページのオーボエをつないでしまったりというような取り返しのつかないことを平気でやってくれます。スコアメーカーの場合、そこに人間の手でパートを指定したり印刷が薄い小節線や調号を補ったりと、スキャン途中に介入して様々な修正を加えていけるのです。こういうソフトは、スコアメーカーが唯一無二です。

単純な性能比較でも、旧FinaleとSibeliusのスキャン機能は独立したソフトの機能限定版を取り込んでいるため、ほとんどの音楽記号は読み取れない他、旧Finaleは16パート、Sibeliusは12パートまで、音符も旧Finaleは32分音符、Sibeliusは16分音符までと、かなりきつい制限があります。

なお、純国産なので日本語ローカライズによる不具合の心配がないのも魅力。どうしても、西洋音楽の中で発達した楽譜という書式は日本語との相性が悪く、特にFinaleの日本語ローカライズによるバグはもはやお約束のようなものです(しかも、データが飛ぶようなとんでもないのをやらかしたこともある)。Sibeliusもスキャンがらみの機能は英語のままだったりしますから。

楽譜作成機能

楽譜作成機能の面でも、決してFinaleにひけを取らず、商業品質の楽譜の作成が可能です。作編曲機能は、FinaleやSibeliusに一歩劣るものの、和音を複数声部に分離くらいはできます。そして、いかにも日本のソフトらしく、機能解説が非常に丁寧。マウスオーバーであらゆる機能に説明が表示されます。

ただし、商売の仕方がちょいといやらしく、高度な機能は「拡張キット」として別売しています。しかも、これがそれぞれ約¥10,000と高い。特に「編集拡張キット」は、FinaleやSibeliusなら標準で付いているような機能ばかりなので、これはそりゃないだろうという感じがします。「作曲拡張キット」も、ユニークな機能はそろっているんだけれど、本当に欲しいのがない感じなんですよね。

再生機能

音色は豊富ですが、そもそもシンセ音源です。あくまでも、確認用と割り切りましょう。

互換性

致命的なことに、MusicXMLへの対応が出力のみで、入力ができません。これが何を意味するかというと、他のソフト(私ならFinale)で作成してきたいままでのデータが使えないということです。初めて楽譜作成ソフトを買うのならよいのですが、他のソフトからの乗り換えを考えたときにこれは痛恨。

総評

スキャン機能の優秀さに尽きるソフトです。再生機能が貧弱とはいえ、楽譜作成ソフトにとってはそもそも本来的な機能ではありません。しかし、MusicXML入力の未対応がFinaleからの乗り換えを阻む。なんとも惜しい。

MusicXMLの出力はできるので、お金に余裕がある人は、スキャン用と割り切って買うのもありかも? そのくらい、こいつのスキャン入力は魅力的です。ちなみに私の場合、あまり褒められた使い方ではありませんが、ここ数年の試用版は一定期間フル機能が使えるタイプなのを利用して、高度なスキャンが必要なときは試用版で集中的に作業してMusicXML出力をしておき、あとでFinaleで使えるようにしておく、ということをやったりしています。

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なお、フル機能版のPlatinumに対して、廉価版のStandardもありますが、16パートまでなのでオーケストラや吹奏楽には役者不足です。しかもあんまり安くならない。さらに、スキャン機能を最低限に絞ったElements、スキャン機能の付属しないスコアパレットもありますが、そこを限定しちゃうとこのソフトの存在意義が……

4.MuseScore

楽譜作成ソフト比較 Musescore
タダですよ! タダ!! フリーの楽譜作成ソフトの中で、群を抜く性能の高さとユーザー数を誇るソフトです。

優位点

タダ!!

そして特筆すべきが、フリーの投稿スペース「Sheet Music | MuseScore」の存在。全世界のユーザーが、MuseScoreで作成した楽譜を投稿しており、誰でもダウンロードが可能。しかもその形式にMusicXMLを選べる。つまり、他の楽譜作成ソフトのユーザーも、この投稿スペースの恩恵にあずかれるわけです。

ユーザー数も多く、操作に必要な情報も比較的容易に手に入ります。

楽譜作成機能

楽譜を作成するだけなら、かなりの水準を達成しています。しかし、作編曲に関するツールなどの高度な部分は、当然ながら有料ソフトには及びません。もちろん、スキャン機能なんかありません。

再生機能

これも、フリーである以上、シンセでとりあえず音が出るというだけの機能です。

互換性

MusicXMLの入出力両方に対応しています。フリーゆえに、他のソフトとの連携の要であるここをきちんとしているのは重要です。

総評

楽譜を書き上げるという点だけなら、悪くないです。ただ、バリバリに使い込むには、やはりツール面や周辺機能の面で力不足。本格的に楽譜作成ソフトを使いたい人へは、入門用としてもあまりお勧めはできません。楽譜作成ソフトはどれも操作にかなり個性があるので、変にMuseScoreを使って癖が付いてしまうより、はじめから自分の狙いに合った有料ソフトを買ってそちらの習熟に勤しんだ方がいいでしょう。

一方、そんなにしょっちゅうは使わないけれど、というライトユーザーにはお勧め。ただし、フリー特有の不親切さや不安定さも抱えているので、そういうトラブルに対応できることは必要です。

5.Notion

楽譜作成ソフト比較 Notion
新興DAWソフトの「Studio One」を開発するPreSonusからリリースされている、かなりDAW寄りの楽譜作成ソフト。というか、設計思想がDAWの延長線上。単独の楽譜作成ソフトというよりは、Stugio Oneの楽譜作成用拡張機能と捉えた方がしっくり来るかもしれません。高度な再生機能に加え、手書き入力やギターフレット入力など、多彩な入力方法を備えるところは面白い。お値段もダウンロード版で¥14,500と、他の楽譜作成ソフトに比べて圧倒的に安い。ただし、Stugio Oneの上位版とのバンドルで、だいたい他の楽譜作成ソフトと同じくらいの値段になります。

優位点

入力方法が多彩で、タブレット時代にマッチしていること。入力方法の多彩さは非常に斬新で面白い。手書き入力にも本格対応。今回紹介したソフトの中で、唯一、タブレットでまともに作業のできるソフトです。

楽譜作成機能

基本的なことはできる、……のかな? すいません、操作感がFinaleと違いすぎて、うまく評価できません。肝心の手書き機能は、試用版では封印されているんですよね。

安いだけあって、高度な作編曲機能などでは劣ると思うんですが、私が使いこなせていないだけかも。というか、これを使う人は作編曲はStudio Oneの方でやるのか?

なお、スキャン入力はできません。

再生機能

楽譜作成ソフトとしては異様なくらい充実。というか、再生機能を中心に楽譜を作成していく感じ。このあたりが、他の楽譜作成ソフトと根本的に作業感が異なります。

互換性

MusicXMLの出入力に対応しています。バージョン5までは、一応対応しているというだけで、互換性はヒドイものだったようですが、最新のバージョン6ではずいぶんマシになっているらしいです。すいません、この辺は試用版では封印されている機能なので実際に確認してはいません。

総評

他の楽譜作成ソフトとはかなり毛色が違います。DAWから入った人には扱いやすいのではないでしょうか。ただ、ソフトの説明でも散々強調されているように、Studio Oneとセットで使うことが前提のソフトかと思います。

6.Dorico

楽譜作成ソフト比較 Dorico
Sibeliusお家騒動の中で、有名DAW「Cubase」を開発するSteinbergにSibeliusの主要開発メンバーの一部が移籍して作成した楽譜作成ソフト。こういった経緯から、Finaleよりも、Sibeliusよりも、さらに洗練されたインターフェースと操作性が魅力。ちなみに、SteinbergはYAMAHAに買収されて子会社となっています。つまり、楽譜作成ソフト業界に、ついに音楽業界全体の巨人YAMAHAが満を持して乗り込んできたという構図です。

優位点

FinaleとSibeliusの二大巨頭を凌駕する使命を背負って生まれただけあって、ユーザーインターフェースと操作性は秀逸。伝統的楽譜作成ソフトの作業感を受け継ぎながら、ここまでスタイリッシュにまとめてくるとは。Finaleユーザーとしては、ちょっといじってみただけでもうならされる部分が多々ありますね。

楽譜作成ソフトの鬼門ともいえる日本語ローカライズについても、YAMAHAがやっているという安心感があります。

楽譜作成機能

Finale、Sibeliusに正面から挑むだけのことはあり、基本的な楽譜入力機能は網羅。今後も様々な機能の追加が予定されています。ただ、現状では声部の分離・集約・抽出などの作編曲系のツールがほとんど無い感じです。少なくとも、ヘルプ見ながらちょっといじった限りでは分かりませんでした。こういった機能が提供されないと、とっつきやすくはあってもその後の効率化が図れませんから、今後、プラグインなどの提供がどの程度進むかに注目です。

それから、スキャン入力はできません。

再生機能

付属音源として、HALion Sonic SE 2とHALion Symphonc Orchestraを収録し、Cubaseと同じサウンドエンジンを搭載。楽譜作成ソフトとしては十分でしょう。

一方、Cubaseとの連携については、特段の機能は持たないようです。せっかく同じエンジンなので、もうちょっと接続性があってもよいかなと思いますが、今後機能が増強されるかも知れませんね。

互換性

もちろん、MusicXMLの読み込み書き出し両方に対応しています。

総評

見ただけで分かる洗練されたインターフェースと操作性。思わず買ってしまいそうになりますが、細かく見ていくと、まだまだ機能不足な面があります。もうちょっと様子を見て、どの程度機能が充実していくかを見極めてから購入しても遅くはないでしょう。

7.価格の比較

以上の楽譜作成ソフトですが、お値段をざっと比較すると、だいたい以下のようにグルーピングできます。

フル機能レベル

Sibelius 8(永続ライセンス) ¥74,600
Dorico(ダウンロード版) ¥60,480
新Finale(ダウンロード版) ¥54,800
スコアメーカー Platinum(ダウンロード版) ¥49,680
  ※ スコアメーカー 編集拡張キット ¥10,080
Notion 6 + Studio One 3 Professional ¥46,800

廉価版レベル

スコアメーカー Standard(ダウンロード版) ¥30,240
スコアメーカー Elements(ダウンロード版) ¥20,520
Sibelius First 8(永続ライセンス) ¥14,800
Notion 6 + Studio One 3 Artist ¥19,800
Notion 6(ダウンロード版) ¥14,500
Finale PrintMusic 2014(ダウンロード版) ¥13,800

フリー

Finale Notepad ¥0
Musescore ¥0

楽譜作成ソフトは、基本高いです。ツールの位置づけとしては、イラスト作成にとっての液タブみたいなものだから仕方ないか……

中でもFinaleは高いソフトの代名詞のように言われてきましたが、こうして並べてみるとそれほどでもないですね。というよりも、月額サブスクリプション方式があるとはいえ、Sibeliusが高騰しすぎな気がする。スコアメーカーは機能限定版もあんまり廉価になってくれません。それと拡張キットをもうちょい押さえて欲しい。NotionはStudio One 3 Professionalとの抱き合わせでスコアメーカーとだいたい同価格になります。Studio OneのArtistとProfessionalの比較をするのは私の手に余るので、分かる人はこちらの比較表をみてください。

ただし、以上の値段はあくまで「定価」で、実際には、キャンペーンやクロスグレード(他の楽譜作成ソフトから乗り換えると安くなるというやつ)、旧バージョンや下位バージョンからのグレードアップやアカデミック版など各種の割引があるので、目安程度に考えてください。特に、クロスグレード版とアカデミック版は劇的に安くなります。私も、学生のうちにFinaleのアカデミック版を購入し、以後、何年かおきに旧バージョンからのグレードアップ版を買う形で2014に至りました。

8.マニュアルで細かい機能を確認

楽譜作成ソフト比較 マニュアル
いずれも高価なソフトなので、何ができるのか細かいところまで知りたいというのも人情というもの。以上のソフトの、詳細なユーザーマニュアルの公開状況も列挙しておきます。参考にしてください。

Finale

公式サイトのサポートページ内()に全バージョンの日本語マニュアルが公開されています。こういうところは、さすがです。

Sibelius

最新のSibelius 8のマニュアルは、現在のところ、英語版のみこちらに公開されています。前のバージョンのSibelius 7であれば、こちらに日本語のマニュアルが全文公開されています。ただ、旧バージョンなのでいつまで公開されたままかは分かりません。

スコアメーカー

公式にリンクされてはいないのですが、完全なオンラインマニュアルが特に認証などなく誰でも閲覧できる状態になってます。「スコアメーカー リファレンスマニュアル」でGoogle検索かけるとひっかかかります。

MuseScore

こちらに完全なオンラインマニュアルとPDF版マニュアルがあります。ちょっと前は、日本語版のマニュアルは最新機能に追いついていなかったのですが、ずいぶん改善しました。

Notion

英語版はこちらに完全なユーザーマニュアルがあります。日本語版は、購入したユーザーにのみ提供されるようです。ただ、簡易マニュアルである「クイックリファレンス」のみは、いまのところ、Google検索をかけると認証無しで閲覧可能な状態にあるのがひっかかります。

Dorico

こちらの最下段の「Doricoヘルプ」にオンライン版とPDF版の完全な日本語マニュアルがあります。また、YAMAHAのよくあるお問い合わせ(Q&A)ページの、Steinberg製品 > ソフトウェア > Dorico にも機能に関するQ&Aがあります。

9.まとめ ~ 使い方を考えて選ぼう

Finaleが開拓をはじめ、Sibeliusが追いかけた楽譜作成ソフト業界も、ずいぶん様変わりしたものです。背景にあるのはやはり、音楽や書籍、ソフト作成といった事業のビジネスモデルの変化、そしてDAWとの連携というあらたな状況でしょう。ざっとまとめると、王者Finaleからスキャン機能が無くなった結果、相対的にスキャン機能までカバーするSibeliusやスコアメーカーの魅力が光り出した感があります。スコアメーカーは、MusicXMLへの対応さえしっかりすれば、他ソフトからの乗り換え需要も見込めると思うのですが。フリーのMusescoreは、地道に機能向上を続けて、楽譜を作成するというだけなら有料ソフトに見劣りしないくらいになりました。NotionはDAWとの連携を強く押し出したソフトで、機能もインターフェースも魅力的なものを持っています。Doricoは、非常にカッコよくて未来を感じさせるのですが、FinaleとSibeliusユーザーからの乗り換えを促すには細かい機能がまだ不足。これからの成長に期待です。

それで、何を選ぶべきかという問題ですが、これは、どのような使い方がメインになるかによるでしょう。

編曲中心の使い方

楽譜作成ソフト比較
まず、編曲が主になる場合。既存の曲を自分の所属する楽団の編成に合わせて集成したり、ピアノ曲なんかを元に器楽合奏に編曲したりといった使用方法で、私なんかは、これがメインです。この場合、まず既存の楽譜を利用することになるので、スキャン機能が非常に重要になってきます。また、和音を複数声部に分離したりといった作編曲ツールの充実も重要です。スキャン機能の充実度は、スコアメーカー(スキャンに命をかけてる)、Sibelius(お試しレベル)、Finale(機能削除)、の順になります。

もっとも、スコアメーカー以外のスキャン機能は、読み込んだ後にどうせ大幅な修正が必要なので、MIDIキーボード入力に熟達しているのなら、スキャンよりも弾いた方が速いかもしれません。

一方、作編曲ツールでは、Finaleが最も充実、次いでSibelius、スコアメーカーの順になります。スキャン機能の順と逆ですね。例えばFinaleなら、和音の上から2番目の音だけを抽出、なんてことも簡単にできます。もっとも、ここまで高度な操作になると、他のソフトでもできるのだけど私が試用版をざっといじっただけでは気付けていない可能性もありますが。ただ、高度な機能であればあるほど、Finaleならそういう機能の使い方や使い方のコツといった情報を入手しやすいというのは間違いないでしょう。

MIDIキーボードの腕と、スキャン機能にどのくらい頼るか(ピアノ譜くらいならSibeliusでもかなり読み込めるけれど、フルスコアなんかはスコアメーカーじゃないと厳しい)によって、Finale、Sibelius、スコアメーカー、のどれかから選ぶとよいでしょう。

作曲中心の使い方

楽譜作成ソフト比較
まず、DAWで作曲する場合は、明確に連携しているのはNotion & Stugio Oneと、Sibelius & Pro Toolsの2つのペアです。ただ、どっちがどのような使用感だとか、連携していないソフトの場合どうすればいいとかは、私には評価できません。一応、DAWはMIDIキーボードにバンドルされていたSONAR X1 LEを持ってはいますが、まったく使いこなせていないものですから。

で、楽譜作成ソフトで作曲する場合ですが、作業効率を考えるなら普通はMIDIキーボードに行き着くわけで、その場合、どのソフトも入力機能にそれほど差はありません。

すると、作編曲ツールの充実、という点から見ると、やはりFinaleかSibeliusというのが無難な選択になります。一方、ツールでは後れをとるものの、インターフェースではDoricoが非常に魅力的です。インターフェースの出来は作業効率に直結するので、入力した音をあれこれいじくりまわさないなら、十分選択肢に入るかと思います。

今後への展望

にわかに騒然としてきた楽譜作成ソフト界隈ですが、最後に、各ソフトに今後期待したいことを、実現可能な範囲で指摘して結びたいと思います。

Finaleには、やはりスキャン機能は復活して欲しいですね。それから、流行りになりつつある手書き機能の導入なんかはどうでしょう? DAWの連携とかは要らないんで、楽譜作成ソフト本来の機能の強化で、王者の貫禄を見せて欲しい。

Sibeliusは、全方面スキのない完成度となってきた感があります。強いて言えば、スキャン機能の制限が厳しすぎるので、せめて旧Finaleくらいにはして欲しい。あとは、お値段をもうひと頑張りして!

スコアメーカーは、散々言い続けたようにMusicXML入力に対応してください!! これでは他ソフトから乗り換えられません。あと、作編曲ツールは「そこそこ」充実しているので、別売に目をつむるとしても、もうひと踏ん張りを。FinaleやSibeliusでできることの完全実現まで、ほんともうあとちょいな感じ。

MuseScoreは、そもそもフリーですから劇的な機能拡張は望みません。現状でも、フリーゆえのSheet Musicのようなコミュニティの形成という面で、しっかり個性を出していますから。今後も地道にクオリティを高めて、有料ソフトにプレッシャーをかけ続けて欲しいですね。

Notionは、手書き入力やタブレット対応など、一番挑戦的なことをやっているんですが、すいません、うまく評価する力が私に足りていないです。

Doricoは、ちょっと特殊なNotionを除けば、基本設計が最も優れていると言っていいでしょう。作編曲ツールの充実やCubaseとの連携など、機能の充実によっては一気にFinaleやSibeliusを喰う可能性を秘めています。YAMAHAはかなりヤル気のようなので、これからの成長に注目です。

Comment

  1. わらびもち より:

    musescore様々ですよ。本当に。音は他のサウンドフォント導入で多少はどうにかなりますし。
    しかし高いので7万4千か…私の愛機transbookがもう一台買えてしまう(((°Д °;))))

    • natsuki より:

      コメントありがとうございます。MuseScoreは本当に成長しましたよね。正直、基本的な楽譜作成機能のみならもはや有料ソフトと比べて遜色ないですものね。「Sheet Music | MuseScore」も、いろんな人の編曲が見られて楽しいので、参考になりますし、飽きが来ません。

      それにしても、楽譜作成ソフトは確かにともかく高い。学生時代にアカデミック版とはいえ初めてFinale買ったときも、相当の覚悟が要りましたからね。一度買ってしまうと、勢いでGarritan音源そろえちゃったりしてしまうんですけれども。正直、Doricoにはお値段の面でももうちょっと頑張って風穴を開けて欲しかった。

  2. 匿名 より:

    今年発売のDorico、かなりいいです。入力もシンプルで優れているうえ、ただ音符などを並べただけですごく美しい楽譜が作れる。このクオリティをFinaleで出すにはかなり手作業で調整しなければならないはず。
    Atomタブレットでもまあまあ動いてくれます。
    ただ、足りない機能が結構あるので、完全に満足できる使い勝手になるのは時間がかかりそうです。

    • natsuki より:

      コメントありがとうございます。まったく、おっしゃるとおりだと思います。整理された操作インターフェースと、オートで任せられる部分をちゃんと任せられる快適な操作感。まさにSibeliusの方向性をさらに一歩深化させた、ベースとなる部分ではFinale・Sibeliusを確実に上回るソフトだと思います。

      ただし欠点も、おっしゃるとおり。なんか、まだ骨組みしかできてません感があるんですよね。今後も機能は付け足す予定らしいので、期待です。

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