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Ryzen 7 4800UとRyzen 7 5700Uの相違点を探る(読者投稿:近郊ラピッドさん)

Ryzen 7 4800UとRyzen 7 5700Uの相違点を探る
こんにちは、近郊ラピッドです。今回もよろしくお願いいたします。近年モバイルPCにもRyzenが搭載される事が多くなり、様々な型番のRyzenを見かけるようになりました。モバイル向けRyzenにはデスクトップ向けと同じようにたくさんの種類があるのですが、その中でも特に仕様が似ているAPU(CPUとGPUを統合した製品)があります。Ryzen 7 4800UとRyzen 7 5700Uの2つです。

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実際4800Uと5700Uの2つはかなり仕様が似ており特にCPU部分はほとんど同じように見えますが、それでも「番号」は大きく異なっています。今回はこの2つのAPUの相違点はどこにあるのかについて探りたいと思います。

1.CPU部分の考察

まずCPU部分についての仕様を表にして比較してゆきます。

Ryzen 7 4800UとRyzen 7 5700Uの相違点を探る
この表にもある通りRyzen 7 4800Uと5700Uはコア数やスレッド数、キャッシュ構成やアーキテクチャーも全て同じです。半導体プロセス技術や対応メモリ規格、TDPまで同じです。強いて言えば多少最大クロックが違う程度の差しかありません。

これだけ見ると比較した2つのRyzenのCPU部分のスペックにはほとんど差がないとしか言えませんが、この2つのRyzenの内蔵GPUにはどのような違いがあるでしょうか。次は内蔵GPUを比較して行きます。

2.内蔵GPU部分の考察

内蔵GPU部分の仕様を表にしてみました。

Ryzen 7 4800UとRyzen 7 5700Uの相違点を探る
この表を見ると分かる通り5700Uは4800Uよりも最大クロックが150MHz高く、約9%アップしています。9%の差をどう見るかは人によって変わってくると思います。ゲームをしない人ならばほとんど気にならない差と言えますが、少しでも快適にゲームをしたい方なら多少気になる差になっているのではないかと思います。

ここまではスペック表から見える差について考えてきました。今回取り上げた2つのRyzenはここまで見てきた限りではクロック上限を引き上げただけのほぼ同一の製品に見えますが、実は設計レベルではもっと差があるようです。

3.Ryzen 5000シリーズのAPUのコード名

今まで考えてきたAPUの差はスペック上での比較でした。確かにスペックだけを見るとよく似ていましたが、実は5700Uの方はRyzen 4000シリーズから内部構造に大きな変更が加わっているようです。今からはその点について考えますが、その前にモバイル向けRyzen 5000シリーズのAPUに付けられたコード名をご紹介します。

同じモバイル向けRyzen 5000シリーズのAPUでも2つの系統がありますが、Ryzen 7 5700Uといった、5000番台なのにCPU部分にZen 2アーキテクチャーを採用している系統のAPUは「Lucienne」と呼ばれています。

一方で、Ryzen 7 5800Uといった、CPU部分にZen 3アーキテクチャーを採用している系統のAPUは「Cezanne」と呼ばれています。ちなみにデスクトップ向けのZen 3 ベースAPUも同じコード名になっています。

こうしたコード名はCPUについて解説したり、CPUについてのリーク情報を扱っているWebサイトでは頻繁に登場します。コード名を使う利点として、Ryzen 5000シリーズの様に同じシリーズなのに設計が大きく違う系統が混在する場合に、それぞれの系統をコード名で呼ぶことで整理しやすくなるという点が挙げられます。

今回の記事でも今紹介した呼び方が何回か登場しますので、どちらの名前がどれを指しているのかを把握しながら読んでいただければと思います。それでは今から内部構造について考察して行きたいと思います。

4.設計の違いの考察

ここからの部分はASCIIやマイナビニュースなどでプロセッサーの記事を執筆しておられる大原氏の記事を大いに参考にしながら書かせていただいております。こうした記事が公開されているのは本当にありがたいです。とても参考になりますので、ぜひご覧になってみてください。

今回の参考記事リンク
Ryzen 5000G (Ryzen 5000 Mobile) Update – CezanneとLucienneの構成と性能:マイナビニュース
CezanneはRenoirをZen 3に置き換えただけでなくあちこち再設計されている AMD CPUロードマップ:ASCII

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大原氏の記事によると、LucienneはCPU部分はZen 2ベースになっていますが、他の部分はZen 3アーキテクチャー採用のCezanneがベースになっているとのことです。

そのため、Cezanneで追加された新しい電力制御技術が Lucienneにも搭載されているそうです。例えば、CPU部分とGPU部分に別々の電圧を掛けられるようになったり、CPU部分のそれぞれのコアに別々の電圧を掛けられるようになるという技術が導入されています。それぞれの部分の動作クロックに合わせて別々に電圧を調整できるようになったためRyzen 4000シリーズ(このAPUはRenoirと呼ばれています)よりも効率の良い電力の使い方ができるようになっています。

また、Cezanneで有効になったCPPC2という技術も利用可能なようです。CPPC2が有効だとクロックスピードの変更を従来の30ms(ミリ秒)から1~2msまで短縮できるとされています。このため高負荷時にすぐにクロックを上げることができるようになっており、以前の製品よりも実性能が少し高くなっているものと思われます。こうした技術による性能向上は長時間負荷を掛け続ける形式のベンチマークの結果には反映されにくいですが、実際のアプリケーションの利用においては多少なりとも違いが生じると思います。

Lucienneは電力制御技術だけではなくGPU部分もCezanneのものとなっているそうです。そもそもCezanneのGPUはRyzen 4000シリーズ(Renoir)と同じVega アーキテクチャーなのですが、実は同じCU(GPUコア)数の製品同士で比較しても明らかに大型化しているようです。その理由ですが、大原氏の記事によると、同じ消費電力でもより高速に動作できるように作り直されたのではないかとされています。実際LucienneのGPUコアの仕様はCezanneにかなり近くなっています。

こうした点を考えると、Ryzen 7 5700UといったLucienneのAPUは、GPU部分がCezanneベースに強化され、電力制御技術もCezanneのものが使用可能になっていると言う点でRyzen 7 4800UといったRenoirのAPUと異なっているという事が分かります。

上記の仕様はスペック表では分からない点ですが、内部的にこうした改良が加えられていることを考えると、大きく違う型番になっているのも理解できます。

5.どちらを選んだほうが良いか

Ryzen 7 5700Uは旧来のRyzen 4000シリーズによく似ていますが、ここまで見てきたように、見えないところではきめ細かい改良が加えられているようです。内蔵GPUがCezanneのものに更新された点や、CPPC2が有効化され高負荷時にクロックをすぐに上げられるようになった点、CPUやGPU部分のそれぞれにきめ細かく電圧をコントロールして電力を供給できるようになった点などの改良が加えられているそうです。

こうした改良の結果、5700UではGPUの最大クロックを引き上げることができたため4800UとはGPU部分である程度の差異が生じています。そのため少しでも高い内蔵グラフィックス性能を持つ方を選びたい方はGPUの最大クロックが約9%上がっている Ryzen 7 5700Uを搭載した機種を選ぶ方が良いと言えるでしょう。

しかしCPU性能はどちらも十分高いので、そこまで内蔵グラフィックス性能にこだわっていないという方ならどちらを選んでもよいと思います。ただ電力制御機構などの改良といった様々な細かな改良が5700Uには加えられているため、価格差が許容できる範囲ならRyzen 7 5700U搭載機種を選ぶ方が無難だと思います(どの程度の価格差だったら許容できるかは人それぞれだと思いますが、自分だったら1万円前後までの価格差なら5700U搭載機を選ぶと思います)。

もちろん4800Uもかなりの高性能で5700Uとの差もそこまで大きくはないので、価格差が大きいなら4800U搭載機種を選ぶ方がコストパフォーマンスは良いでしょう。

6.終わりに

今回はよく似た型番のRyzen同士を比較して、どのような違いがあるのかを考察しました。今回比較した2つは、見た目の性能は似ているのに内部構造が結構違うという点が個人的には興味深い点でした。5700Uと4800Uでは主にグラフィックスの仕様に差がありましたが、実際のグラフィックス処理性能にはどのように違いが生じるのかが気になるところです。

7.参考リンク

AMD Ryzen 5000 シリーズモバイルプロセッサー搭載超小型ミニPC
最近発表されたRyzen 7 5700U(またはRyzen 5 5500U)を搭載しているASUSの小型ベアボーン「Mini PC PN51-S1」の製品紹介ページです。このページではRyzen 7 4800U搭載機と比較する形でRyzen 7 5700Uのベンチマーク結果が公開されているため、5700Uと4800Uの性能差を比較することができます。しかも引用されているRyzen 7 4800Uのベンチマーク結果はこのベアボーンの前モデル「Mini PC PN50」で計測された数値(前モデルの結果のページはこちら)なので計測条件が比較的近いと考えられます。そのため参考にしやすい情報となっています。

ASUSの特定の機種においての結果なので、他のPCでもこうなると断言することはできませんが、結果を見る限りでは確かに5700Uの方が4800Uを全体的に上回っていることが分かります。

8.関連リンク

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