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年末商戦の目玉?Intel次世代Meteor lakeは 電池持ち改善に期待

今年初め、Intel第13世代Raptor lakeが発売されました。この世代はIntelも公式に中継ぎ的な小改良版と認めており、大きな世代交代は今年2023年後半発売予定の第14世代「Meteor lake」で訪れます。今回は、そのMeteor lakeの性能についおおよその推測を書いていきたいと思います。

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Meteor lakeの性能は?

消費者にとってMeteor lakeの最大の変更は、製造ノードがIntel 4になることでしょう。2022年5月の学会発表をまとめたページ(日本語, 英語)によると、同一クロックで消費電力4割減または同一消費電力で2割のクロック向上が可能であるという試験チップでの実測値が示されています。このため、大幅な性能向上または電池持ちの改善を期待でき、電力効率が前世代比+50%となることが目標とされています(@OneRaichu)。

また、シリコン部分を一枚のチップとして製造するのではなく、複数のチップを接続する方式に切り替わります。こちらは製造上の問題解決の意義が強いですが、Meteor lakeの代でも内蔵GPUの強化につながると見られています。

Meteor lakeが現行第13世代からどの程度変わるか、現状できる得られる情報から性能予想を表にすると以下のようになります。ただしこれは、テストチップのリーク情報すら全くない状況で、学会発表等から理論上ありえる値を予想しているだけですので、外れる可能性も小さくないことはご承知ください。

Meteor Lake

Meteor lakeが第12/13世代からどの程度性能が変わるか、各電力帯について予想したもの

CPU性能

Intelは新ノードの立ち上げ時はあまりクロックが上がらず、前述の事情通はMeteor lakeは第13世代と同程度と見ています。また、Meteor lakeのPコアはダイ写真からAlder lakeと似た構造(英語)と推定され、クロック当たり性能(通称IPC)は現世代に比べ微増程度(@OneRaichu)と考えられます(大幅向上するという主張[Moore’s Law Is DeadのYouTube動画]もありますが信憑性は低いです)。このため、いわゆるシングル性能は第13世代から据え置きになるでしょう。

別のリーク(英語)では、末尾5Uが現在の2+8コアから4+8コアに、末尾Pが4+8コアから6+8コアになることが示唆されています。ノート用CPUはTDP枠U/P/Hで消費電力固定ですから「電力効率+50%」は性能+50%のことだと解されますが、IPCが上がらず同電力クロックを上げたところで+20%にとどまるのであれば、+50%の数字はコア数増加によるマルチ性能向上と考えるのが妥当で、消費電力が2/3に減った分コア数を増やしたとすれば辻褄が合います。

末尾H(35W)は6+8コアならばシングル性能据え置き、マルチ性能は同電力クロックの向上を反映して2~3割増となり、「異次元」と評される13980HXにも匹敵する性能になると推定しています。一部6+16コアがあるという噂もあり、その場合はマルチ性能5割増を期待できますが、可能性は低いだろうというのが私見です。

末尾0U(9W)については、第12世代では消費電力制限のため単一コアの最大クロックすら抑える必要がありましたが、Meteor lakeの9W製品ではこの抑制が解除され、第13世代の末尾5U(15W)と同等の性能を発揮することになると予想しています。

内蔵GPU性能

内蔵GPUはCPUコアと切り離されて別タイルとなり、実行ユニット(GPUコア)数は第13世代の最大96から、上位の”GT2″では128となり、1.33倍になります。内蔵GPU性能が2倍になる(@OneRaichu)とする主張もありますが、個人的にはあまり信じていません。ただ、タイルがTSMC N5製造になり同一消費電力でもクロックをやや上げられるので、ユニット数以上の性能向上もあり得るでしょう。GT2では現行i7の約1.3~1.5倍、Ryzen 6000/7035シリーズ並は期待してよいと思います。

また、現行iGPUはCPUのL3キャッシュに相乗りしており、iGPUでゲームをしようとするとCPUとiGPUの間で競合が生じて効率が悪いのですが、Meteor lakeのGPUはタイル化でCPUのキャッシュから切り離され独自キャッシュを持つようになるため(英語)、タイトルによってはベンチマークの数字以上のFPS向上もあり得るでしょう。28W版や35W版では画質を落とせばAAAタイトルも遊べる程度になると予想します。

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これに加え、実行ユニットが半減した廉価版の”GT1″もあります。こちらは現行世代のi5(実行ユニット数80)からユニット数が2割減の64ユニットですが、”GT2″の段で説明したようにユニット数以上の性能向上が期待でき、少なくとも現行世代i5程度の性能になるでしょう。廉価版でもデスクトップ版内蔵GPUの2倍程度の性能で、本体モニタ+外部モニタ1つ程度を想定した性能を持っていると考えてよいでしょう。

省電力性能

ノートPCの電池持ちは、ベンチマークなど最高負荷をかけたときの消費電力では決まらず(そもそもバッテリーが60 Wh程度しかないのに28 W全力で回したら2時間しか持ちません)、オフィスアプリ使用中のような低中負荷時の省電力性で決まります。

第12世代Alder lake発売前には、ARMのbig-LITTLEと同様に低負荷時には新導入のEコア(高効率コア)を活用して節電し電池持ちがよくなることを期待していましたが、実際には「もっさり感」をなくすためか積極的にPコア(高性能コア)のクロックを上げ、電池持ちは改善しませんでした(Eコアの実際の役割は筆者作成動画を参照ください)。

一方Meteor lakeでは、最大クロックを上げない見込みであることから、Pコアを積極的に使う今のやり方を変えずとも、Intel 4の特性「同一クロックで消費電力4割減」の恩恵を受けるでしょう。例えばPコア1つを5.0 GHzまで上げるのに現行世代では実測で20 W消費していますが、Meteor lakeでは12 Wで済むようになるだろう、といった具合です。Meteor lakeではそのほかにも細かい省電力性能の向上が見込まれています。

●第13世代でDLVRという、低~中クロック時の無駄を削って消費電力を1~2割程度下げる技術の導入が予定されていたものの(おそらくマザーボード側対応が間に合わず)見送られていました(英語)。技術的には完成しているはずで第14世代で導入されると考えられます。
●別の技術ブログ(英語)では、第13世代まで内蔵GPUとCPUコアが連動していた構造が、Meteor lake以降のタイル分割によって連動しなくなったため、無駄に互いに足を引っ張る場面がなくなり、高速化・省電力化に貢献すると見込んでいます。
●Web会議の背景ぼかしなど一部で地味に重い処理が、新設のAIコア(VPU)で効率よく処理できるようになります。

周辺機器やモニタ、CPUのコア以外の部分もそれなりに電力を消費しているので、CPUが1.5倍の効率になったからといって電池持ちが5割伸びるわけではありませんが、15-28Wの主力製品では実用的負荷での電池持ちが2~4割程度伸び、「他のレビューサイトよりも辛口」なウインタブ基準 でも現行世代に多い5~7時間程度から7~9時間程度に伸び、一応1日は使える水準に達する機種が増えるものと予想しています。

末尾Hの製品では消費電力の多い外部GPU(dGPU)や高速SSD、高リフレッシュレートのモニターなど、CPU以外の電力消費が多いため電池持ちの改善は一定の度合いにとどまると思いますが、それでも前世代に比べ1~2時間程度の延長は期待してもよいでしょう。

第12世代の末尾0U(9W)の製品には消費電力を抑えてM1 Macbook並の電池持ちを実現しているものもありましたが、一方でクロックを抑えすぎてM1の2/3程度の性能にとどまっていました(外部レビュー)。Meteor lake世代でM1並の電池持ちでM1並の性能を達成するものも出てくると見込んでいます。

Meteor lakeはいつ出る?

Meteor lakeは2023年の発売予定と従前から発表されており(2021, 2022)、今年頭にはさらに狭まって今年後半発売となっています(2023)。リーク情報によれば2023年2月時点で設計完了後の社内微調整段階(エンジニアリングサンプル; ES)で、ES2チップが5.0 GHz台に入った(@OneRaichu)とされています。ES2は発売までの10か月で行う5ステップのうち2ステップ目(参考)で、順調にいけば6か月後の8~9月ごろに出荷開始と予想されます。第12世代と第13世代は搭載製品の発売時期が9~10か月間隔で推移しており、Meteor lakeも9~10か月間隔ならば、搭載製品は10~11月ごろ発売と見込まれ、年末商戦にはある程度商品が出そろっている程度ではないかと思います。

遅れているという噂や「10nmの時はあんなに苦戦していたのにすんなり出るわけがない」という意見はありますが、すでにES2で実用レベルに達した話があり、それに従えば順調です。Intel4も、学会発表の資料を見る限り10nmの延長線上にあり、EUV使用を除けばそれほど難易度が高いようにも見えませんし、仮に当初目標を全て達成できずともできた部分だけ積み上げて商品化できるのではないかと思っています(個人的には中間的な「Intel 6」のようなものがあっても不思議ではないと思うほどです)。

ただ、以前の記事でも書いた通り量産工場が1カ所しか建設されていないので[2022]、どの程度のラインナップになるかはまだ不透明なところも多い状況です。

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ウインタブよりご連絡

これまで多くの記事を投稿してくださっていた渋谷Hさんに、ライターにご就任いただくこととなりました。お忙しい方ですので投稿頻度は多くないと思われますが、今後の投稿記事にご期待ください!

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