バッテリー容量の単位は本当に「mAh」でいいのか?「Wh」で表すべきなのでは?

バッテリー容量の単位
こんにちは、natsukiです。すごく昔からずーっと不思議に思っていてモヤモヤしていながら、言い出せないままになっていたことを言ってしまいます。ズバリ、世の中、バッテリーの「容量」を「mAh」で表していますが、これでいいんでしょうか? 確かに言葉の定義としては、「mAh」で表される値は「放電容量」という名称ですよ。でもこの「放電容量」って、実用面の、直感的な意味での「容量」とはちょっとズレてると思うんですよ。むしろ、「電力量」を示す「Wh」の方が、実用面での「容量」として適切なんじゃないでしょうか。

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理屈としては中学校理科レベルの話なので、多くの方が、んなこと分かっとるわい! という上で「mAh」の単位を使っているんだとは思いますが、個人的にはどうにも納得がいかないので、ついに書いてしまいます。

1.私たちが思う電池の「容量」って、「仕事」=「電力量」では?

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根本的に、最初の最初から私が違和感を持っているのはここです。商品に示す「容量」って何? という言葉の問題です。確かに、冒頭で述べたように、「mAh」で表される量は、電池の「放電容量」です。これは、そう呼ぶものと決まっていることです。しかし、私たちの生活上の感覚での「容量」、つまり商品表示で知りたい「容量」とは、「電力量」つまり「仕事」の方なんじゃないでしょうか?

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「仕事」とは、その名のごとく、「どれだけのことができるか」ということです。単位は「J(ジュール)」。一般的には「熱量」のイメージがあるかもしれませんが、「発熱」ってのは立派な仕事ですからね。これを電気で言えば「電力量」になります。

で、「仕事率」、つまり単位時間あたりにどのくらいの仕事をするかの単位が「W(ワット)」。電気では、この「仕事率」を「電力」と呼びますね。以下の式が成り立ちます。

「電力量=仕事(単位J)」=「仕事率=電力(単位W))」×「時間(単位h)」

なので、「J(ジュール)」は「Wh(ワットアワー)」でも表せます。「10Wh」なら、「10Wの仕事率で1時間」「5Wの仕事率で2時間」「1Wの仕事率で10時間」働くことができるというわけです。

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「Wh」なんてあんまり見たことがない、という人は、電気料金の明細を見てください。電気料金は、まさに「電力量」すなわち「Wh」を基準にして徴収されているはずです。ここからも、生活上の感覚での「容量」といったら「電力量=仕事」を差すべき、というのは理解されるのではないでしょうか。

2.「容量」を「放電容量(Ah)」で表すと何が問題なのか?

では、一般に行われているように「放電容量」を使って電池の「容量」を表すと、どういう問題が生じるでしょうか。この「放電容量」の単位は「Ah」で、「○○Aの電流を1時間流すことができる」という意味です。なお、「mAh」と書いてある場合の「m」は、「ミリ(1,000分の1)」「1,000mAh=1Ah」というだけですね。つまり、「10Ah」なら「10Aの電流を1時間」「5Aの電流を2時間」「1Aの電流を10時間」流し続けることができるということになります。

「放電容量(Ah)」が同じでも、「電圧(V)」が違えば「電力量(Wh)」は変動する

バッテリー容量の単位
別に「Ah」でも「Wh」でも、どっちで表したっていいじゃん、と思うかもしれません。ええ、それが「同じ種類の電池」だけの話ならね。他の電池と比較する場合には、「電圧」という要素が入ってくるのを忘れてはいけません。

「電流」「電圧」と、「電力」の関係は、

「電力(単位W)」=「電流(単位A)」×「電圧(単位V)」

となります。つまり、電流が同じでも、電圧が高ければ「電力=仕事率(W)」は高いですし、逆に、電圧が低ければ「電力=仕事率(W)」は低くなります。従って、「放電容量(Ah)」が同じでも、「電力量(Wh)」は電圧によって変わってしまうんです。それでは、比較の目安になりませんよね。

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現実に、電子機器で利用される電圧は様々です。電池の側に絞っても、マンガン電池やアルカリ電池は最大1.5Vから使用とともに1V以下まで下がっていくし、ニッケル系は1.2V位で比較的安定、リチウム系は公称3.7Vくらいで、現実には最大4.2Vくらいから使用とともに3.5Vあたりまで下がっていくし、さらに最近はHV(ハイボルトバッテリー)なんかのバリエーションもあるし。もちろん、直列に繋げば電圧は上がるし、と、まちまち。ちなみに、ニッケル系やリチウム系の電池は「Ah」が明記されている場合が多いですが、マンガン電池やアルカリ電池は、接続する機器によって流れる電流が違ってくるので、「Ah」の算出は困難だそうです。この辺は聞きかじりなので、詳しいことはスルー。

というわけで、同じ「放電容量(Ah)」でも、実際の「電力量(Wh)」は電圧次第でまったく違うんです。

それでも「Ah」が単位として使われる背景のひとつは、電子機器に使われる充電式電池の多くに、内部的に公称3.7Vのリチウム系バッテリーが使われていることが圧倒的に多いためでしょう。実際、いろんなメーカーの注意書きをよく読んでみると、「この製品のAhは、3.7Vでのものです」と書かれていることがよくあります。例えば、ELECOMの製品Q&Aにも、「Q.【モバイルバッテリー】mAhの数字が大きいほうが充電できる量は多いのですか?」という問に対する解答の中で、「※エレコムでは容量は3.7V換算で統一しております。」と注意書きがあり、さらに「(a) 3.7V/5200mAhのバッテリー、(b) 7.4V/3050mAhのバッテリー → 3.7Vで換算すると6100mAh → (b)のほうが、実際はバッテリー容量が大きいということになります。」と、電圧が変われば「Ah」の数値があてにならないことが示されています。ちょっと冷静に言葉の定義を考えると、この文章中では「容量」という言葉が、文脈によって「放電容量(Ah)」と「電力量(Wh)」の両方の意味で使われるという、ややこしいこととなってしまっています。

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それでですよ。先ほどの式から、「放電容量(Ah)」「電力量(Wh)」「電圧(V)」の関係は、
「電流(A)」×「電圧(V)」×「時間(h)」
=「電力(W)」×「時間(h)」
(=「放電容量(Ah)」×「電圧(V)」)
=「電力量(Wh)」

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となります。このように、はじめから電力量の「Wh」で表記をしてしまえば、異なる電圧のバッテリー同士を比較することができます。上の画像のバッテリーは、ちゃんと「mAh」と「Wh」の両方を表記していますね。なぜ、みんなこれをやらないんでしょうか?

電圧の違うバッテリーの比較

理屈が先行したので、具体的な例をみてみましょう。

バッテリー容量の単位
ここに、容量表示750mAhの単4ニッケル水素電池と、260mAhのリチウムポリマー電池があります。「mAh」だけで比較すると、ニッケル水素電池の方が、3倍近くの「容量」があることになります。しかし、「電力量(Wh)」を比較すると、

単4ニッケル水素電池:750mAh×1.2V=900mWh
リチウムポリマー電池:260mAh×3.7V=962mWh

となり、ほぼ同程度で、むしろリチウムポリマー電池の方がやや多いことが分かります。実際に、変圧器などを使って電圧をそろえて両方の電池を比較してみれば、ほぼ同じだけの「仕事」をするはずです。

このように、電圧が異なってしまえば、「Ah」での比較は意味をなさなくなります。

モバイルバッテリーの評価についてありがちな誤解

バッテリー容量の単位
または、この「Ah」表記がもっとも注目されるモバイルバッテリーについて、以上の話を理解していないと起こりがちな誤解をあげてみます。

「5,000mAhのモバイルバッテリーで、同じバッテリー容量5,000mAhのタブレットを充電したところ、40%しか充電できなかった。このモバイルバッテリーは60%ものロスのある(もしくは実容量のない)粗悪品だ」

この判断は、正しいでしょうか? はい、それには、タブレット側のバッテリーの電圧を見ないといけないわけですね。

まず、モバイルバッテリー側の電圧は、特記がない限り3.7Vです。従って、その「電力量」は

5,000mAh×3.7V=18,500mWh

となります。

さて、タブレットのバッテリーの電圧ですが、多くは、以下の4種類のどれかです。

3.7V:通常のリチウム系バッテリー(まれにMAX電圧の4.2V表記あり)
3.8V:リチウム系ハイボルト(HV)バッテリー(まれにMAX電圧の4.35V表記あり)
7.4V:リチウム系バッテリー2本直列
7.6V:リチウム系HVバッテリー2本直列

特に電圧の表記がなければ、慣習的に3.7Vのはずです。が、中にはしれっとHVバッテリーを使っているものもあるようです。たかだか1.25V~1Vと侮るなかれ。ドローンなんかで使ってみると、そのパワーの差は歴然です。もっとも、瞬間的な出力に関しては「C(放電)レート」も関わってくるんですが、そこは今回の話とは関係無いので割愛。さて、表記のない場合、バッテリー容量表記が「5,000mAh」だったときの「電力量(Wh)」は、

5,000mAh×3.7V=18,500mWh(通常のリチウム系バッテリーの場合)
5,000mAh×3.8V=19,000mWh(HVバッテリーの場合)

となります。もし、HVバッテリーが使われていたとしても、電力量については、このくらいなら誤差の範囲かもしれませんね。この場合、上記の「60%もロスのある粗悪品だ」という評価は正しいと言えるでしょう。

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問題は、多くのタブレットで行われているように、内部でバッテリーを直列配列して、電圧を高めてある場合です。我が愛用のCube Mix Plusの場合も、バッテリーのスペック表記は「7.4V 4300mAh」となっています。つまり、3.7Vバッテリーを2本直列配列しているものと思われます。この場合、電力量は、

4,300mAh×7.4V=31,820mWh

となります。したがって、5,000mAhのモバイルバッテリーで充電した場合、もしロスが全く無かった(そんなことはあり得ませんが)としても、

18,500mWh(モバイルバッテリーの電力量)÷31,820mWh(Cube Mix plusの電力量)=58%

と、「mAh」の値ではモバイルバッテリーの方がCube Mix plusを上まわっていながら、6割弱しか充電できないことになります。もちろん、ロスがあるので、実際の充電量はもっと少なくなります。

上記の「5,000mAhのモバイルバッテリーで、同じバッテリー容量5,000mAhのタブレットを充電したところ、40%しか充電できなかった。このモバイルバッテリーは60%ものロスのある(もしくは実容量のない)粗悪品だ」という例をあらためてみると、もし、そのタブレットのバッテリー電圧が7.4Vであったなら、タブレットの電力量は、

5,000mAh×7.4V=37,000mWh

このうち40%を充電できたのだから、モバイルバッテリーが実際に充電した電力量は、

37,000mWh×40%=14,800mWh

モバイルバッテリーの規格上の電力量と比較すると、

14,800mWh÷18,500mWh=80%

となるので、ロスは20%の、優秀なモバイルバッテリーという事になります。

実製品の電圧例

じゃあ、実際に各種タブレットやなんかの電圧はそんなにまちまちなのか? 調べ出すとキリがないので、最近のウインタブの記事で取り上げたタブレットやロースペックPCの中で、スペック表に特記のあるものをざっとピックアップしてみました。

CHUWI Herobook:7.6V-5,000mAh
ALLDOCUBE Kbook:7.6V-5,000mAh
CHUWI AeroBook:7.6V-5,000mAh
BMAX Y11:3.8V-7,000mAh
Alldocube M8:3.8V-5500mAh
CHUWI Hi9 Pro:3.8V-5,000mAh
Teclast F5R:3.8V-7,000mAh

やっぱり、比較的負荷の大きいWindows系で、高電圧が多いですね。と、思いきや、CPUにCore m7Y30を積むTeclast F6 Proは3.7Vと明記されていたりします。まあ、いろいろということです。

ちなみにスマホの場合、スペック表に電圧の書いてあるものは、最近の製品ではまず見ません。が、ちょっと古い製品ですが、手持ちのUMI Zのスペックには、バッテリー電圧が「4.35V」と書いてあります。標準電圧が4.35Vのバッテリーというのは、一般的に使われるバッテリーの中にはないはずで、一方、リチウム系HVバッテリーのMAX電圧は4.35Vなので(普通のリチウム系バッテリーの最高電圧は4.2V)、おそらく、これはHVバッテリーを差しているんではないかと思われます。その場合3.8V表記が一般的なんですが、その辺はいい加減なんでしょう。というように、スペック表には何も書かずに、実はHVバッテリーが使われているという例は他にもあるかもしれません。

3.まとめ ― バッテリーの「容量」は「Wh」で考えるべき

今さらですが一応のお断りとして、この記事は科学的に正しい表記は心がけていません。例えば、「電流(A)」なんて書き方は、確かに自分でも気持ち悪さを感じますよ。ただ、ここで「電流(I)」とかやりだすとややこしいだけなので、その辺はご容赦ください。

バッテリー容量の単位
ということで、バッテリーの「容量」は、「放電容量(Ah)」ではなく、「電圧(V)」も織り込んだ値である「電力量(Wh)」で表すべきだと考えるんですが、いかがでしょうか? その方が、そのバッテリーが「どれだけのことをできるのか」というのを知る面でも、「他のバッテリーと比較する」という面でも、より直感的で便利だと思うんですけど。

少なくとも、特にタブレット製品やロースペックなモバイルPCなどで、バッテリースペックに「mAh」表記が多く見られますが、これを見るときに電圧にも注意を払わないと正しい評価ができないということは、知っておくべきでしょう。

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コメント

  1. 匿名 より:

    最近買ったUSB充電の単3形Li-Ion電池がmWh容量表記になっていました。(端子間電圧は1.5V)
    最初やけに数値が大きいなとよく見ると単位がmAhでなくてmWh。まぁ売り手は単に数字を大きく見せたかっただけかと思われます。中華セラーでしたし。
    mAh表記は今更止められないでしょうから、両方の併記でしょうね。先に書いた電池でもmWhを大きく(数値が1.5倍になるから)mAhを小さく併記していました。

    • 匿名 より:

      だんだん併記標準になって欲しいものです。リポバッテリー界隈では、併記のものを時々見かけるようになってきましたね。もっとも、リポバッテリーをバラ買いするような人は、こういう理屈は十分分かっているとは思いますが。

  2. 匿名 より:

    仰るように紛らわしいのでWintabでは両方併記して他と比較しやすくして欲しい。

    • natsuki より:

      ところが、電圧が書いていないものがほとんどなんですよね。特記がなければ3.7Vだろうと思われますが、HVが使われている可能性もあります。あとは、標準電圧なのか最大電圧なのか。3.7Vや3.8Vって書いてあれば標準電圧で、4.2Vや4.35Vなら最大電圧だろうと予想は付くものの、これも明記されているわけではないですから。あと、〇〇mAh✕2 みたいな表記も散見されます。7.4V or 7.6Vって解釈でいいのかな? とりあえず、電圧に特記があれば書く、くらいしかできないと思います。

  3. 匿名 より:

    通信速度のアレと同じく数字を大きく見せたい商法の害ですね
    恐らく直ることはないです

    • natsuki より:

      希望の種は、下の方がコメントで言及してくださっている、飛行機の持ち込み基準値(100Whで個数制限、160Whで不可)だと思っています。
      モバイルバッテリーの大容量化に加え、災害対策の緊急電源の重要性が認識されて来たこともあって、ちまたに基準値近くやオーバーの電池があふれるようになってきました。こういう製品は、さすがにWh表記がされています。それがもっと増えてくれば、そこからWh併記が広まっていかないかな〜と。希望に過ぎませんが。

  4. miz より:

    航空機の規制が100″Wh”なのだから合わせて欲しいんですけどね。GalaxyやMacbookで持ち込みが社会現象にもなりましたし号令かけてWhで統一してほしいです。PSE義務化改正と一緒にやってしまうのがタイミング良かったのではと今になって思う…。

    • natsuki より:

      ほんと、そのとおりだと思います。規制値近くの大容量モバイルバッテリーや、規制値オーバーのアウトドア/災害対策用充電電池の場合は、さすがにWh表記が普及しているので、モバイルバッテリーの大容量化の進展とともに、併記が一般化してくれるといいんですが。