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Alder Lake-Hの内蔵グラフィックスはどう活かせるか(読者投稿:近郊ラピッドさん)

Alder Lake-Hの内蔵グラフィックス性能
こんにちは、近郊ラピッドです。よろしくお願いいたします。2022年1月に正式発表されたモバイル向けAlder Lakeシリーズですが、その中でもハイエンド向けのAlder Lake-Hシリーズは前世代よりもかなりCPU性能が強化されています。その一方で内蔵グラフィックスの構成にも変化があり、前モデルよりも強化されているようです。強化されたAlder Lake-Hの内蔵グラフィックスはどう活用できるでしょうか。今回はその点について見ていきたいと思います。

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1.Alder Lake-Hの内蔵グラフィックス

Tiger Lake世代からAlder Lake世代になって変わった点は数多くあります。CPUのコア数はPコア最大6コア、Eコア最大8コアとなっておりマルチコア性能が大幅に向上しています。一方で内蔵グラフィックス(iGPUとも呼ばれます)も強化されています。

Alder Lake-Hの内蔵グラフィックス性能

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この表を見ると分かる通り、TDP45WのAlder Lake-HではiGPUが96EU(実行ユニット、基本的にこの数が多いと性能が上がる)の構成のプロセッサーが平然とラインナップされています。実は前世代のTiger Lake-Hの中でもCPUが最大8コアでTDP枠が45WのTiger Lake-H45では、最大でも32EU搭載のモデルしか存在しませんでした。しかし今世代ではCore i9-12900Hなど のCPUコア数がPコア6・Eコア8のフルスペック構成でも96EU搭載のプロセッサーが存在します。

Alder Lake-Hの内蔵グラフィックス性能

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前世代のTiger Lake世代のHシリーズプロセッサーのうち、主要なものを比較してみました。TDP枠が35-45Wの方は最大32EUになっていますが、TDP枠が28-35Wの方は最大96EUとなっています。

Tiger Lake-HでもTiger Lake-H35という開発コード名で呼ばれるTDP35Wのシリーズは一応最大96EUのiGPUとなっていますが、CPU部分が最大4コア8スレッドになっており、薄型ノート向けのTiger Lake(UP3と呼ばれています)のTDP枠を引き上げたバージョンという形になっています。

一方でTiger Lake-H45ではiGPUが最大32EUとなっていますが、最大8コアとなるCPU部分の面積を確保するためにiGPU部分の面積を減らしたというのが理由のようです。CPUのダイサイズ(CPUの回路が実際に入っているシリコン半導体の大きさ)はむやみに大きくできないため、内蔵グラフィックスは削らざるを得なかったのだと思われます。

しかし今回のAlder Lake-Hでは最大Pコア6・Eコア8となっており、従来の8コアモデル並みか、それよりも大きな規模となっています。それでも内蔵グラフィックスは最大96EUとフルスペックになっています。余談ですがTDP28WのAlder Lake-PですらPコア6・Eコア8でiGPUが96EUの構成のモデルがあります。今までのIntelのモバイル向けプロセッサーとは一線を画する製品ラインナップです。

なぜCPU部分もiGPU部分も同時にフルスペックにできたのかは特に情報がありませんが、恐らくプロセスが10nm SuperFinからIntel 7(以前は10nm Enhanced SuperFinと呼ばれていた)に更新されたのが大きな要因なのだと思います。プロセスの刷新によってダイサイズを抑えることが出来、両方フルスペックにしても問題がなくなったのだと思います。この辺りは有識者の有力な情報源も無いため推測ですがご了承ください。

このようにかなり強化された内蔵グラフィックスですが、Alder LakeはDDR4・LPDDR4xに加えてDDR5・LPDDR5というメモリ規格もサポートしているため、LPDDR5搭載機種ならば更に高い性能になると思われます。Ryzen 6000シリーズのRyzen 9・Ryzen 7のiGPUにはゲーム性能等は及ばないとは思いますが十分高性能と言ってよいと思います。

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2.内蔵グラフィックス性能が高いメリット

先ほどから見てきたようにAlder Lake-Hは内蔵グラフィックスが大幅に強化されています。しかしAlder Lake-Hクラスのプロセッサーを搭載するノートPCは大抵外部GPUを搭載しています。その点を考えると、Alder Lake-Hの内蔵グラフィックス性能を活かせる機会が少ないのではないかと思われる方もおられるかもしれません。

デスクトップ版のようにPコア8・Eコア8搭載でiGPUが32EUの構成にするのではなく、敢えて96EUのiGPUを搭載することによってどんなメリットがあるかを今から考えて行きます。

Intel Arcという外部GPUと連携できる

実際にAlder Lake-Hの内蔵グラフィックス性能を活かせる機会はあるのでしょうか。実は2022年前半に登場するとされる外部GPUのIntel Arcと連携することで内蔵グラフィックスを活かせるようです。

Intel ArcはTiger LakeやAlder Lakeと組み合わせることによってグラフィックス処理をIntel Arc単独で行うよりも高速化できます。この連携機能をDeep Link機能と言うようです。

Deep Link機能の詳細はまだあまり明らかになっていませんが、いくつかの機能は明らかになっています。例えば内蔵グラフィックスとIntel Arcが協働して動画のエンコード処理を行ったりすることができるようです。またゲームを配信するときに、ゲームの描画をIntel Arcに集中させて、OBSなどの配信ソフトウェアのグラフィックス処理を内蔵グラフィックスに担当させるといった役割分担もできるようです。

Intelはこうした連携をかなり重視しているらしく、Alder Lakeで新しく追加されたHシリーズのEvo プラットフォームではIntel ArcとDeep Link機能搭載が必須となっています。

Intel Arcはまだ詳細が明らかになっていませんが、DG2-128(最大128EU)とDG2-512(最大512EU)の2種類に分かれるそうです。このうちDG2-128の方はEU数が最大でも128EUとなっており、フルスペックのiGPUより32EU多い程度に抑えられているためエントリー向けの性能となっています。

こうしたエントリー向けIntel Arcは単体では性能が低めになっていますが、Alder Lake-Hの内蔵グラフィックスと同時にエンコード処理を行うことによって高速にエンコードを行うことができるようになります。エンコード以外にどのクリエイティブ処理が早くなるのかは分かりませんが、エンコードはクリエイティブ作業の中でも特に時間のかかる処理なので少なくともエンコード処理が早くなることが分かっているだけでもある程度の利点となります。

外部GPU無しの構成のPCもメーカーのやる気さえあれば製造可能になった

先ほどの部分でAlder Lake-HクラスのCPUだと大抵は外部GPUを搭載すると書きました。しかし今世代では内蔵グラフィックスが80EU~96EUのCPUが多くなっており、48~64EUのCPUが少し存在する程度で、全体的に見れば高いiGPU性能となっています。それで敢えて外部GPUなしの構成にすることで内蔵グラフィックスを活かすPCも理論的には製造可能となっています。

今までのTiger Lake-H45ではこうした構成はあまりにもCPU部分とGPU部分の差が大きく、GPU性能が低すぎたので実用的ではありませんでした。しかし、今世代では80EU~96EUのiGPUを搭載したCPUの場合は実用的な構成になっていると思います。しかもAlder LakeはDDR5・LPDDR5にも対応しているため、DDR5・LPDDR5搭載機はTiger Lake世代よりも高いグラフィックス性能を期待できます。

最大Pコア6・Eコア8のAlder lake-Pも存在するため、敢えてAlder Lake-Hでこの構成を選んだPCが登場するかは分かりません。しかし折角最大96EUになったので、こうした変わった構成のPCも登場して欲しいと個人的には思っています。ただMax Turboが95W~115Wとされているので流石にモバイルノートには搭載されないとは思いますが……しかしTurboを落として強引に搭載するメーカーが現れないとは言い切れません。

一方で、ノートPCではなくデスクトップスタイルのミニPCならばまだ可能性はあるのではないかと思います。高性能なファンと大容量電源を搭載して全力でAlder Lake-HのCPU性能とiGPU性能を発揮させるような構成を取ることができますし、敢えてAlder Lake-Hを使うメリットも生じると思います。デスクトップならば電源や排熱問題もまだクリアしやすいので、ノートPCよりは可能性はありそうです。

3.おわりに

今回はAlder Lake-Hの内蔵グラフィックス性能について考察しました。最大96EUにまで強化されている内蔵グラフィックスですが、Intel Arcと組み合わせるとIntel Arcのクリエイティブ性能やゲーム配信性能が向上するようです。また外部GPUなしの構成でもある程度のGPU性能を確保できるため、敢えてAlder Lake-Hを採用しつつも外部GPUがないと言う構成のPCを製造することも可能となっています。

折角内蔵グラフィックスが強化されたので、その性能を活かせるような構成のPCが登場してほしいと思います。まだ未知の部分の多いIntel Arcとどのように協力して性能を発揮できるかが楽しみです。

4.参考リンク

今回のIntel ArcのDeep Link機能についての記述は、大原氏の記事を参考に書かせていただきました。このような記事が公開されていることはとてもありがたいです。
Alder Lake-HはIntel Arcと連動させてエンコードを高速化できる インテル CPUロードマップ:ASCII

5.関連リンク

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コメント

  1. 匿名 より:

    最弱クラスのnVidiaGPUやRyzenGシリーズと同一ゲーム同一グラフィックス設定で比較している某記事では、Intel内蔵グラフィックスの描画表現が陳腐なことがわかります。
    Intel内蔵グラフィックス(のドライバ)は3D表現を’手抜き’することが昔からあるので、そこを今後解消して欲しいですね。