こんにちは、オジルです。今回の実機レビューはThinkPadなのですが、いつものThinkPadとは全く違う製品です。…何を言っているんだという話は置いておくとして、なんと光栄にも「世界初の画面折りたたみ式パソコン」である「Lenovo ThinkPad X1 Fold」を短い期間ながら触れさせていただく機会に恵まれましたので、その模様をお届けします。
(※トップ画像は「折りたたみ感」を出すために、あえて少しだけヒンジを閉じていますのでご了承ください)
X1 Foldはシンプルに表現するなら「半分に折りたためる13.3インチのタブレット」…なのですが、それだけでは片付けられないギミックの数々。ここであれこれ言うよりも見ていただいたほうが早いでしょう!それではどうぞ。
目次
1.スペック
ThinkPad X1 Fold | |
OS | Windows 10 Home / Pro |
CPU | Intel Core i5-L16G7 |
外部GPU | なし |
RAM | 8GB |
ストレージ | 256GB / 512GB SSD |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 13.3インチOLED(2,048 x 1,536) |
ネットワーク | 802.11 a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.0 ※5G選択可能 |
入出力 | USB 3.1 Gen2 Type-C x 2、microUSB(キーボード側、充電用) |
カメラ | Webカメラ(720p)顔認証対応 |
バッテリー | 最大 約11.7時間 |
サイズ | 299.4 x 236 x 11.5 mm(ランドスケープモード時) 158.2 x 236 x 27.8 mm(折りたたみ時) |
重量 | 本体: 約 973 g~ キーボード:178 g |
Lenovo直販サイトで取り扱われているほとんどの製品は構成のカスタマイズが可能で、X1 Foldも下記の項目に限られますがカスタマイズできます(厳密に言うと対応したモデルを選択します)。
■OS:Home版またはPro版
■ストレージ:256GBまたは512GB
■通信:5G選択可
CPUは見慣れないLakefield世代のCore i5-L16G7搭載です。これは通常のCore i5とは異なりCoreとAtomを両搭載した超省電力CPUで、性能も通常イメージするCore i5よりは見劣りします。私が使ってみた限りでは特にストレスを感じるようなことはありませんでしたが、実際どれくらいなのかは「4.性能テスト」の項目でご確認ください。
ほか、気になるのは入出力ポートがUSB Type-Cふたつという点ですが、これはパソコンとして考えたら明らかに少ないです。でも、タブレットであれば納得できます。感じ方に個人差はあるでしょうけど、私なら必要に応じてポート拡張を検討すればいいのかなと思いました。…というより、X1 Foldの製品特性からいくと、あまりジャラジャラ装着するようなものではないような気がします。
レビュー機はOSがHome版でストレージが512GB、5Gに関しては確認を失念しました(申し訳ありません)。初期状態は以下をご確認ください。
2.筐体
同梱品
まずは同梱品から。アダプターとペーパー類に加え、本体折りたたみ時に格納できるBluetoothキーボードと4,096段階の筆圧に対応したスタイラスペンが(オプションではなく)付属しています。キーボードとペンに関しては後ほど紹介します。
本体
さて、X1 Foldの本体なのですが、どこからご紹介していくか非常に迷いますね…。折りたたんだ状態から広げていきましょうか。キーボードを取り付けた状態で始めます。
画像の下のところ、本体から少し飛び出ている部分はキーボードについているスタイラスペンのホルダーです。折りたたんでいる時はB5サイズの厚めの手帳や単行本と同じくらいコンパクトで、以前紹介したXiaomiの肩掛けバッグにも余裕で入ります。本体と一体型のレザーカバーも相まって、一見すると本当に手帳のような雰囲気ですよね。また、ThinkPadのロゴがカバーに刻印されていて「らしさ」も忘れていないのがオシャレ。ちなみにカバーはヒンジの開口に伴い少しずつスライドし、全開まで広げると画像右端にあるプラスチック部分を完全に覆います。
閉じた状態の左側面にはUSB Type-C端子がひとつあるのみです。中段部分はキーボードがぴったりと収まっていて、触っても動かすことはできません。
閉じた状態の右側面にはポート類はありません。キーボードのところに端子やスイッチがありますが後ほど。
キーボードを取り外すと空間ができてしまいます。ピタっと閉じるように設計すれば折り目が気になりそうだし、かといって余裕を持たせると隙間ができる…そんな構造上の懸念をキーボードによって払拭する発想は素晴らしく、芸術性を感じます。
スタイラスペンを装着するとこのような状態に。手帳のペンホルダーと同じですね。
閉じた状態の手前部分の上段にType-C端子、画像では見えづらいですが下段右にSIMトレイ(5G選択時以外は機能しません)と電源ボタンが配置されています。
折りたたみ状態での裏面(…と呼べば良いか悩みますが)には斜めに線が入っていて、この部分がスタンドの役割を果たします。
開いてみるとThinkPadらしい鮮やかな赤のカラーリングがお目見え。生地もサテンのような風合いで上品さがうかがえます。シリアルや認証情報などをここに配置して見えないようにしているのは「上手い」ですね。
広げてスタンドを立てるとこのようになります。角度の調整はできません。余談ですが、縦にした状態でこのスタンドが機能するか試してみたところ、すごく不安定ながらぎりぎり立てることはできました。バランスが悪く、いつ倒れてもおかしくないので絶対にやめたほうがいいと思いますが…。なお、ヒンジについては無段階で開閉でき、ギシギシすることなくスムーズに動きます。
ディスプレイを広げて正面から見たところです。こうして見ると完全にタブレットですね。ご覧のようにアスペクト比が4:3になっているのが特徴で、ベゼルは若干太いものの、タブレットのように手持ちで使うのであればむしろこれで良しとするべきでしょう。
気になる「折り目」に関しては、意図的に反射させて撮影したところ、エアコンのところがわずかに歪んでいるのがご確認いただけるかと思います。画面を表示している状態でこの折り目が気になることはまずありませんけど、タッチ操作する際にはごくわずかに引っかかりを感じます。総じて不快感はなく、やはり完全に二つ折りにせずスペースを残した設計が奏功しているということなんだと思います。
スタイラスペン
4,096段階の筆圧検知に対応したペンですが、お絵かきでの使用感など細かい確認はしていないため紹介までとします。上部がキャップになっていてType-Cによる充電が可能。細かい描写をする際には画面の折り目が若干影響してきそうです。
キーボード
Bluetoothキーボードは折りたたんだ際に格納できるくらいですから薄型・軽量なのはもちろん、キーピッチも約18 mmとゆとりがあります。一方その代償として、よく見ると一部の記号が省かれ他キーとの共存を余儀なくされています。なお、タッチパッドも備えていますがThinkPadの象徴であるトラックポイントは搭載しません。
…と、ここまでは「小さいBluetoothキーボード」なんですけど、このキーボードは少し特殊です。
■裏面がマグネットになっていて、X1 Foldにピッタリはまる
■装着すると自動的に覆った部分の領域が隠れてミニノートのようになる(次項参照)
■X1 Fold本体のバッテリーが50%以上だと、折りたたみ時にワイヤレス充電できる
なお、このキーボードはmicroUSB端子から直接充電することも可能です。右にあるのはペアリング用のスイッチです。
形態の変化
まずはデスクトップライクなモードから。スタンドを閉じればそのままタブレットとして使えます。
縦にすれば画面も回転します。これはスマホやタブレットと同じですよね。この状態でキーボードをマグネット装着すると…
画面が上のみへと自動で切り替わり、ノートPCのようになります。
この一連の流れ、テキストと画像ではいまいち伝わりにくいかと思いましたので、形態の変化と挙動について動画を撮影しました。以下からご確認ください。
下の画像はオマケです。ソフトキーボードを使うこともできますが、物理キーボードを使用した後だとめちゃくちゃ使いづらい…w
Lenovo Mode Switcher
ヒンジを開閉する際に画面右下に現れるのが「Lenovo Mode Switcher」です。
拡大するとこのようになっています。要は、ディスプレイ設定の「マルチディスプレイ」項目のショートカットですね。画面を中央部分で分割し2画面として扱うことができます。これは縦型でも横型でも有効で、それぞれの画面に役割を持たせることで有効活用できるシーンがあるでしょう。
3.使用感
重量
サイズは13.3インチながら半分に折りたためるためコンパクトですが、重量が半分になるわけではありません(当たり前)。本体とキーボードを合わせると約1.15kg、モバイルノートと考えれば普通ですがタブレット換算すれば2台分ですから相応の「ズッシリ感」はありますね。公式では女性が片手で本のように持っているイメージ画像が掲載されているんですけど、実際にはよほど鍛錬を積んでいない限り難しいと思います。
形態変化
手動で操作しなくても開閉やキーボードの着脱で形態が切り替わるのは感動モノです。もう少しキビキビと切り替われば…と思いますがさすがに欲張り過ぎでしょうか。ヒンジ開閉時に自動で画面分割の機能が作動する機能は地味に便利で、うまく使いこなせば活用の幅が広がりそうです。
ディスプレイ
もはやX1 Foldにおいてはディスプレイの品質どうこうの話題が必要なのか甚だ疑問ではありますが、不満となるような要素は一切見当たりません。個人的にはOLEDということもあり発色が鮮やかだったのが印象的でした。
キーボード
通常のキーボードと比べるまでもないですが、相応の薄さながらペコペコ<パチパチ寄りでそれなりの打鍵感があります。それに、キーピッチもある程度確保されているため、思いのほか窮屈さは感じません。ただ、前述の通り一部のキーが省かれてしまっていることにより、「@」などたまに使う記号を入力しようとする際に戸惑うことが何度もありました。X1 Foldしか使わない方であれば慣れたら気にならないでしょうけど、短いレビュー期間では私の不器用さも手伝って「ちょっと大変だな」と感じました。
スピーカー
Dolby Atmos採用スピーカーなのですが、正直なところそこまでの感動体験はなく、及第点です(あくまでも個人の感想です)。作業中に適度なボリュームでBGMを流す分にはバランスが良く気になる点は見当たらないものの、音量を上げると低域が潰れがちな印象で迫力に欠けます。決して文句ではなく、X1 Foldの特性上、スピーカーで評価を下げること自体がナンセンスだと考えているため参考までとしてください。
バッテリー
明るさ50でYoutubeを連続再生し、ゲーム「ウマ娘」で初回起動時の追加データダウンロードを行っていたところ約1時間で20%のバッテリー消費となりました。ブラウジング+αの作業であれば7~8時間くらいはいけそうですが、超省電力を謳うCore i5-L16G7であるだけにもっと健闘してほしかったのが本音です。
4.性能テスト
直近のデータソースとの乖離が大きく、参考にならなそうだったので細かい比較は行わずに短評とします。
PC性能
パソコンとしての性能全般・CPUの処理能力としてはCeleron J4115辺りが近いイメージです。思ったよりもスコアが低かった印象で、第8世代のCore i5よりもはるかに下回る結果となりました。ウインタブでよく取り沙汰される「Celeron N4100より上なら日常利用で困らない」に照らし合わせてみると、前述した形態変化のスムーズさ以外は操作していて不満を覚えることはありませんでした。
ストレージ性能
ストレージの読み書き性能に関してのテストです。PCIe×NVMeのSSDとしては爆速まではいかないものの高速で、ストレスを感じることはないでしょう。
グラフィック性能
グラフィック性能のテストではだいたい第8世代のCore i5-8250Uと同等くらいのスコアでした。そこまで悪くはないという評価もできそうですが、スペック要求の高いゲームはプレイ自体が難しいと思いますし、重い画像処理などの作業ではモタつきもあるでしょう。
ゲーム
グラフィックス性能からゲームは軽量級のものしか対応しないと判断し、ベンチマークテストはドラクエ(低解像、640 × 480)のみに留めました。解像度を下げれば遊べる、くらいに考えておいた方がよいでしょう。
また、マルチプラットフォーム展開しているゲームで比較的動作が軽いタイトルであればプレイ可能だと思います。試しに「ウマ娘」のプレイ動画を撮影しましたので参考にしていただけたら幸いです。
5.まとめ・価格など
Lenovo ThinkPad X1 FoldはLenovo直販サイトにて販売中で、3月31日時点での販売価格は最小構成の「Home/256GB/5Gなし」モデルで税込み327,426円となっています。
※製品ページにあるクーポン適用時の価格です。
※割引額が変動することがあるため定期的に確認するのがベターです。
※その他モデルの販売価格はこちらからご確認ください。
また、ソフトバンクでも5Gモデル(512GB)の取り扱いがあり、機種代金の総額が税込み402,480円(8,385円/月×48回も可)となっています。詳細はこちら。
この製品は誰もが簡単に購入できるような価格ではないですが、いたずらに高いかというと決してそんなことはありません。率直な感想は、初の画面折りたたみ式PCながら「ただ折りたためるだけのロマン枠」の域を超えていることに驚きの連続でした。タブレット、ノートパソコン、デスクトップパソコンと様々な形態で利用できるため、ガンガン持ち運んで色んな場所で使う人にとっては現状で唯一無二の存在。何より触っているだけでワクワクするのは強烈に所有感を満たしてくれ、それだけで買う価値はあるのではないかと思います。
重量や形態変化の際のシームレスな動きなど、まだまだ良化の余地はありそうですが、既に実用レベルに達しているのは「素晴らしい」の一言です。タブレットでもパソコンでもない新ジャンルのコンピュータとして、今後の展開がとても興味深いですね。
6.関連リンク
ThinkPad X1 Fold:Lenovo
コメント
持ち運べる折りたたみデュアルディスプレイタブレットpcはまだですか?
コメントありがとうございます。Surface Neoが見送りになって以降、他社の動向も見受けられないですよね。
曲がるディスプレイはまだ各社コンセプト作っている段階ですよね。今年は巻物スマホがいくつかの会社から出てきそうで楽しみです。
ディスプレイで言うとE inkも期待されたけど価格が下がらずなかなか一般までは普及しませんね。
コメントありがとうございます。巻物スマホ、自動でウィーンって画面が広がるのはぜひ実物を見てみたいものです!X1 FoldもE InKも、もっとシームレスな画面遷移ができるようになれば世間の見る目も変わりそうですよね。今後に期待です。
ディスプレイが17インチ位かなと思ったら13なんですね
17位の大きいサイズのがでれば出先でメインPCのように使えるなと思いました
が何十万になるんだろ、、、
コメントありがとうございます。半分のサイズから倍に広がるので体感的には大きく見えるのですが、実サイズは変わりませんからね。となれば、大きいサイズならフォルダブルよりもLGのテレビよろしくローラブルなんかで出てくる展開も面白そうです。ただ、やはり普及するまで相応の価格になるのは否めないかと。。