Lenovo ThinkPadには「Pシリーズ」というのがありまして、位置づけとしては「モバイルワークステーション」となります。ワークステーションとパソコン、どう違うのか、と言われれば私も明確な答えを持っていません。もともとThinkPadシリーズはデザインに共通性があり、Pシリーズも見た目はごく普通のThinkPadです。しかし、CPUにCore iプロセッサーではなく、「Xeon」という、サーバーなどにも使われる高性能なものが搭載されるほか、GPUも主にゲーム用のGeForceシリーズではなく、CADや動画編集、画像加工に向くと言われるQuadroシリーズが搭載されます。さらに、CPUのXeon特有の機能であるECCメモリー(エラー自己修復機能つきのメモリー)が採用されるなど、処理性能だけでなく、動作の安定、高負荷への配慮といった機能もあります。
先日、15.6インチの「ThinkPad P1」という製品の紹介記事を掲載しましたが、今回紹介する「P72」はそれよりも大型で、より本格的なワークステーションと言えます。ただ、ウインタブ読者の90%くらいには、あまり関係のない製品かもしれません。私もこの製品に大変興味がありますが、自分のPC利用環境から考えて、仮に予算が確保できたとしても、よし買おう!とは思いません。
1.スペック
この記事を書いている8月23日現在、P72はLenovo直販サイトでの販売がスタートしておらず(9月上旬から、とのこと)、販売代理店モデルのみスペックと価格が公開されていますので、ここでは販売代理店モデルについて説明します。P72のバリーション構成には「大きな断層」がありまして、最低価格は318,000円(税込み343,440円)から、となっているものの、直上位のモデルがいきなり605,000円(税込み653,400円)となり、当然システム構成も大きく異なります。
まずOSですが、最低価格のもののみWindows 10 Pro、それ以外はすべてWindows 10 Pro fot Workstationsとなります。CPUに関しても、最低価格のモデルのみCore i7-8750H(これでも相当に高性能)ですが、それ以外はすべてXeonです。GPUも同様ですね。Quadro P600、P4200、P5200と、Quadroに関する知識がない私でも「ずいぶん型番が飛んでるよなあ」と思います。数字の大きいほうが高性能ですが、CPUに搭載されるVRAMを見てもP600は2GB、P4200は8GB、P5200は16GBとなっていますので、なんとなく性能差はイメージできると思います。通常の画像加工くらいならともかく、業務でCADなどを使う場合にはこれらの型番による差は顕著に出るのではないでしょうか?
ディスプレイは17.3インチと大型で、IPS液晶、FHDもしくは4K解像度です。4K解像度のものは「Adobe RGB 100%」です。繊細な色の識別が必要な仕事をされている人にも十分満足できる品質と言えるでしょう。
入出力ポートも豊富です。さすが17.3インチのワークステーション、と言うべきでしょうか。Thunderbolt 3を2つ含み、USBポートは合計で5つ、HDMIとMiniDisplayPortの2つの映像出力ポート、そして有線LANポートを装備します。ちょっとしたデスクトップPC並みですよね!
サイズはかなり大きくなります。しかし、これは仕方ないと言うべきでしょう。3.4 kgという重量も最重量級のゲーミングノート(4 kgを越えます)と比べれば可愛いいもの…、いや可愛いくはないか…。
2.筐体
先日紹介した15.6インチの「P1」が素晴らしくコンパクトで軽量だったのに対し、このP72はそれほど絞り込まれた筐体ではありません。ベゼル幅も太すぎということはないにせよ、そこそこの太さになっていますし、厚みもそれなりに感じます。
天板など、基本的なデザインコンセプトは王道のThinkPadです。こうして見ると、他のThinkPadとは見分けがつきません。
キーボードにはテンキーがつきます。この画像は英語配列になっていますが、販売代理店モデルは「110キー、JIS配列、バックライトつき」です。直販モデルが販売開始される際には英語配列と日本語配列の好きな方を選べるようになると思います。
基本的なキーボードデザインは他のThinkPadと同じです。しかし、物理クリックボタンが「3ボタン」になっていて、これって少し珍しいと言えるかもしれません。また、指紋センサーも見えますが、販売代理店モデルは全機種指紋センサーが標準装備されます。
一方でWebカメラは最低価格のもののみ装備されておらず、上位モデルにはWindows Helloの顔認証に対応するIR(赤外線)カメラが装備されます。おそらく直販モデルだとカメラはオプション扱いになるんでしょう。
側面と前後面の画像です。この製品は豊富な入出力ポートを備えますが、側面だけでなく背面にもポートがついています。背面にあるのはUSB 3.0、HDMI、Thunderbolt × 2、そしてDC-INです。普通は、というかゲーミングノートだと背面に映像系やLANポートが装備されることが多いのですが、この製品の場合、いろいろとバラけてついてますね。
天板と底面です。底面の全体画像がありませんが、これを見ると開口部があり、メンテナンスが簡単そうです。
3.価格など
Lenovo ThinkPad P72は9月上旬からLenovo直販サイトで販売がスタートする予定で、8月23日時点では販売代理店モデルのみ販売中です。価格は、
Core i7/Quadro P600/RAM8GB/500GB HDD/FHDディスプレイ:318,000円
Xeon E-2176M/Quadro P4200/RAM16GB/256GB SSD/FHDディスプレイ:605,000円
Xeon E-2176M/Quadro P4200/RAM16GB/512GB SSD/4Kディスプレイ:680,000円
Xeon E-2186M/Quadro P5200/RAM32GB/512GB SSD/4Kディスプレイ:895,000円
※税抜価格
です。記事中にも触れましたが、Core i7モデルのみ相対的に見てスペックが低く、価格も段違いに安くなっていますが、上位モデルは「さすが」のお値段ですね。なお、Lenovo直販サイトでの販売がスタートすれば、この価格よりもかなり安く(おそらく30%くらい安くなるだろうと予想しています)購入できるはずです。いつも書いていますが、「Lenovoの定価には意味がない」ですから。
しかし、Core i7モデルを別にすれば、「安くても税込み50万円コース」にはなると思いますので、誰でも簡単に買えるような代物ではありません。また、業務用ではなくプライベート用ということならXeonにQuadroという構成は必ずしも必要とは思えず、Core i7とGeForceの組み合わせのほうがむしろ使いやすいだろうと思います。ま、「触ってみたい」というのはありますけどね…。
4.関連リンク
ThinkPad P72:Lenovo直販サイト