Lenovoの15.6インチノート「ThinkPad E15 Gen 3(AMD)」の実機レビューです。ThinkPad EシリーズはThinkPadの中でも比較的購入しやすい価格になっていて、しかし筐体品質はしっかりThinkPad、という、ある意味非常にコストパフォーマンスの高いシリーズと言えます。
今回レビューする「EシリーズのGen 3」はCPUにAMD Ryzenを搭載する「現行の型番」です。現行のE15にはCPUにIntel Coreを搭載する「E15 Gen 2」もあり、筐体はほぼ同じなので、Intel CPUがお好みの人はGen 2にされてもいいかもしれません。
・第4世代Ryzen搭載で、ビジネスノートとしては高いパフォーマンス
・注文時にきめ細かい構成カスタマイズが可能
・キーボードの品質はノートPCとして最高水準
・堅牢な筐体
・ThinkPadシリーズとしては割安な価格設定
ここはイマイチ
・15.6インチノートとしては若干大きめサイズ
・黒くてそっけないデザイン(でも、人によってはメリットと言えるかも)
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ThinkPad E15 Gen 3 (AMD):Lenovo
目次
1.ThinkPad E15 Gen 3 スペック
ThinkPad E15 Gen 3 (AMD) | |
OS | Windows 10 Home/Pro |
CPU | AMD Ryzen 3 5300U / Ryzen 5 5500U / Ryzen 7 5700U |
外部GPU | なし |
RAM(メモリ) | 8GB16GB/24GB |
ストレージ | 256GB/512GB PCIe SSD 1TB SSDを増設可 |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 15.6インチ(1,920 × 1,080)(詳細は下記) |
ネットワーク | 802.11 a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.1 |
入出力 | USB 3.2 Gen1 Type-C(映像出力対応)、USB 3.2 Gen1、USB 2.0、LAN(RJ45)、HDMI、オーディオジャック |
カメラ | Webカメラ(720p)顔認証選択可 |
バッテリー | 駆動時間最大約14.2時間 |
サイズ | 365 x 240 x 18.9 mm |
重量 | 1.7 kg |
ディスプレイのバリエーション
ThinkPad E15 Gen3のディスプレイはすべて15.6インチ、FHD(1,920 × 1,080)解像度ですが、4つのバリエーションがあります(選択するベースモデルによっては選べるディスプレイ仕様が2つだけ、というケースもあります)。
・TN液晶、250nit
・IPS液晶、250nit
・IPS液晶、300nit
・IPS液晶、300nit、sRGB100%
コメント
ThinkPad E15 Gen 3(AMD)は他のThinkPadシリーズと同様、注文の際に細かく構成をカスタマイズすることができます。 なお、OSは10月5日よりカスタマイズ画面でWindows 11を選択できるようになりました。
CPUは第4世代Ryzen Mobile(5000番台)のRyzen 3/Ryzen 5/Ryzen 7で、いずれもZen3アーキテクチャではなくZen2アーキテクチャとなります。RAMは最大で24GBまで、ストレージは標準の256GB/512GBに加え、1TBのSSDを増設注文することができます(ベースモデルによっては容量の選択肢が異なるケースもあります)。なぜ増設SSDが「1TBのみ」なのかはわかりませんが…。また、レノボはSSDの増設・増量料金がかなり高めなんですよね。ちなみに1TB SSDを増設すると定価ベースでは93,500円、割引後でも約5万円(割引率によって金額が少し変わってきます)の追加料金がかかります。
ディスプレイは上に書かせていただいたとおり、輝度や発色性能によって4種類が選べます。ディスプレイについては最も高品質なsRGB100%のものにしても追加料金が小さい(定価ベースで3,300~6,600円程度。ベースモデルの初期ディスプレイ仕様によって変わります)ので、個人利用の場合はsRGB100%のものにしておくと後悔しないだろうと思います。
通信周りではWi-Fi6に対応し、入出力ポートの構成も悪くはありません。ただ、ThinkPadの15.6インチなので、USBポートがもう一つくらい欲しかったかな、とは思います。また、CPUがRyzenということで、USB Type-CポートはThunderboltではありませんし、Gen1規格なので、データ伝送速度も5Gbpsにとどまります。
サイズは15.6インチノートとしては「気持ち大きめ」ですね。もともとThinkPadシリーズは他のノートPCよりも大きめ、重めではあったのですが、最近はXシリーズ(モバイルノート)で超軽量モデルも登場していますので、スタンダードノートでももうひと頑張りして欲しいところです。ただし、重量1.7 kgというのは15.6インチノートとしては軽量な部類です。
なお、レビュー機の構成は「Windows 10 Home/Ryzen 5 5500U/RAM8GB/256GB SSD」という構成で、レノボ製品ページでは「パフォーマンス」という名称のモデル、10月6日現在の価格は税込み75,438円です(セール価格なので、時期によって変動します)。
2.ThinkPad E15 Gen 3 筐体と使用感
同梱物
同梱物です。ペーパー類では左下にスタートガイドがありますが、あとは保証関連、サポート関連のものになります。ACアダプターはスタンダードノート用としては標準的なサイズで、実測重量は電源ケーブル込みで296 gでした。
天板と底面
天板です。ThinkPadシリーズの天板はすべて同じデザイン(一部のモデルで筐体色が異なるものがあります)で、黒無地、左上にThinkPadロゴがついています。また、ThinkPadロゴの「i」の点の部分は通電時に赤く光ります。
筐体素材は他のThinkPadの多くと同じ樹脂製かと思ったら、どうやら金属製のようでした。ひんやりとした硬質な感触なので、黒い筐体色もあって実際の重量よりも重厚な印象です。
底面です。通気口のほか、ユーザーがメンテナンスできるようなハッチはありません(筐体は開口可能です)。また、この画像の下側が開口部(手前側)で、一番下の両サイドに細長くスピーカーグリルがついています。
側面
前面です。こちらにはポート類、ボタン類はありません。この画像でも筐体最下部の両サイドにスピーカーグリルが見えます。
背面です。こちらにもポート類、ボタン類はありません。
右側面には画像左からUSB 2.0 Type-A、有線LAN、セキュリティロックスロットがあります。
左側面です。画像左からUSB 3.2 Gen1 Type-C、USB 3.2 Gen1 Type-A、HDMI、イヤホンジャックがあります。ちょっと意外ですが、ThinkPad E15 Gen 3にはSD(microSD)カードリーダーはありません。
キーボード
キーボードです。「110キー (テンキー、Fnキー、PgUpキー、PgDnキー、Windowsキー)、JIS配列、TrackPoint、ThinkPadクリックパッド」と開示されていて、日本語配列と英語配列を選べ、バックライトはオプション扱いとなります。レビュー機は日本語配列でバックライトなしのものが装備されていました。
キーピッチは手採寸で約19 mm、キーストロークはThinkPadらしくやや深めです。
また、Lenovo Vantageという設定アプリで左下のFnキーとCtrlキーの入れ替えが可能なので、その前提では素直な配列である、と言っていいと思います。
ごらんのようにキートップは非常に立体的な形状で、中央部が大きく凹んでいます。この形状もまた、ThinkPadキーボードの評価を高めていると思います。
キーボードの使用感
「ThinkPadのキーボードなので、いいに決まってんだろうが!」ということです(冗談です)。ただ、個人的にThinkPadのキーボードはノートPCとして他の追随を許さない最高品質である、ということは確信していて、これは冗談ではありません。E15 Gen 3のキーボードも私の認識に沿ったもので、素晴らしい使用感でした。
キートップのくぼみは大きめで指のかかりがよく、確実な打鍵感が得られます。また、打鍵音も小さめで、静かな場所で使っても周囲に気を使う必要はないと思います。
タッチパッドが苦手、という人にぜひ試していただきたいのが「赤いデベソ(トラックポイント)」ですね。ThinkPadにはほぼ全モデルに搭載されているトラックポイントは両手をホームポジションから動かすことなくマウス操作ができ、個人的には「唯一マウス代わりに使えるポインティングデバイス」だと思っています。
私、ThinkPad推しなので、少し評価が甘いのかもしれませんが、E15 Gen 3のキーボードは100点満点で120点くらいをあげたい品質だと思います。
ディスプレイ
正面から見たところです。ベゼル幅はそんなに細いほうではありませんが、無骨なイメージのあるThinkPadとしてはなかなかスッキリしたものになっていると思います。ThinkPadの筐体は並外れて頑丈で、もはやレノボの製品ページでもくどくど堅牢性について説明をしていません(一応簡単には説明されています)が、そういった頑丈なスタンダードノートとしては悪くないデザインと言えるでしょう。
ディスプレイはノングレアタイプです。スペックのところでご説明した4種類のディスプレイはすべて「タッチ非対応でノングレア」で、このように映り込みは小さめです(この画像はちょっと意地悪く、できるだけ映り込みが激しくなるようにして撮影しています)。
ThinkPad E15 Gen 3のWebカメラには物理シャッターがついています。昨今、Web会議などの機会も増えていますので、「カメラやマイクをオフにし忘れて大惨事になった」経験のある人もいると思いますが、物理シャッターがついていればより安心と言えるかもしれませんね。
ディスプレイの使用感
レビュー機はおそらく「300nit、狭額縁ベゼル、45%NTSC」タイプが搭載されていたと思われますが、その前提で感想を述べます。
それほど発色にこだわることなくWebサイトを閲覧したり、Office系のソフトウェアを使ったりするぶんには十分、というか全く不満を感じません。とてもきれいなディスプレイだと感じました。
次に、ブラウザーで「花」を画像検索し、手持ちのデスクトップPCモニターと発色を比較したところ、自然な発色ながら、原色がやや淡く感じられました。ただ、その差は決して大きいものではなく、色が濃ければいいというものではないと思いますので、必ずしも発色品質が低いとは言えません。他のモニターと比較するようなことをしなければ(少なくとも私なら)気づかないくらいのレベルです。
個人的にはこのディスプレイでも十分かと思いますが、わずかな追加料金でsRGB100%品質のものが手に入ります(レビュー機の「45%NTSC」は「72% sRGB」に相当します)ので、予算が許す人はsRGB100%のものにされるといいでしょう。
筐体その他
ThinkPadシリーズ、と言うかレノボのノートPCはほとんどのモデルでヒンジが180度開口します。この構造はミーティングなどで向かいに座っている人と画面を共有する際にはとても便利です。
スピーカーの使用感
クリアな音質ですが、素(音響アプリを使わない)の状態だと低音が弱く、やや薄っぺらに感じられます。ノートパソコンらしい、と言えなくもありません。
しかし、この製品には「ドルビーオーディオ」アプリが入っていて、これをオンにするだけで低音も強化され、一気にバランスが良くなります。ヴォーカルを重視したいポップ系音楽であれば、ただオンにするだけで十分満足できる音質になります。また、ドルビーオーディオにはイコライザーもありますので、ロック系やEDMなどを聴く場合はイコライザーで低音を持ち上げてやるとかなり迫力が出ます。
筐体サイズが大きいというのも音質に寄与していると思われますし、音響アプリの助けも小さくありませんが、ノートPCの内蔵スピーカーとしては比較的高品質なものであると評価できます。
バッテリー駆動時間
試用期間中、下記の設定でバッテリー駆動時間を測定してみました。ディスプレイ輝度を70%にし、Lenovo Vantageのインテリジェント・クーリング(電源モード)を静音モードにして測定しています。
・ブラウザー上でYouTubeの動画・音楽視聴を15分、この際の音量は40%
・テキストエディタで文章入力を25分
・ソフトウェアGIMPで画像加工を30分
トータルで70分測定し、この間のバッテリー消費は16%でした。単純計算だとバッテリー駆動時間は7時間強、ということになります。ThinkPad E15 Gen3は15.6インチスタンダードノートなので、電源接続して使うことが多いと思いますが、このくらいのバッテリーもちなのであればたまに外に持ち出して使ってもバッテリー切れを心配しなくてよさそうですね。
3.ThinkPad E15 Gen 3 性能テスト
ThinkPad E15 Gen3(AMD)はゲーミングノートではないので、パフォーマンスを調整するような機能はありません。設定用アプリのLenovo Vantageに「電源スマート設定」というのがあり、性能テストにあたって、ここを「パフォーマンスモード」にしています。
スコアの目安(2021年水準)※あくまで「目安」です | |
GeForceなど外部GPU搭載機 | 5,000以上 |
高性能なビジネスノートパソコン | 4,000以上 |
中位のノートパソコン | 3,000以上 |
エントリーノートパソコン | 2,000以下 |
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。モバイルノートやスタンダードノートの性能測定では最も重視すべきベンチマークテストと言えます。
レビュー機はRyzen 5 5500U搭載です。第4世代Ryzen Mobileですが、Zen3アーキテクチャではなく、ひとつ前のZen3アーキテクチャです。ただし、4,638というスコアはビジネスノートとしては優秀なものと言え、第11世代のCore i5/Core i7といい勝負くらいです。ウインタブで直近実機レビューした製品のスコアを見てみると、
Lenovo ThinkPad X13(Core i7-1165G7):5,205
Lenovo IdeaPad Slim 550 14(Ryzen 5 5500U):5,076
dynabook MZ/HS(Core i7-1165G7):4,967
MSI Summit E13 Flip Evo(Core i5-1135G7):4,572
HP ProBook 430 G8(Core i5-1135G7):4,131
VAIO SX12(Core i3-1005G1):3,401
MSI Modern 15 A10M(Core i3-10110U):3,234
こんな感じです。同じ型番のCPUを搭載するIdeaPad Slim 550 14が5,000点をオーバーしているのを見ると若干不本意な感じもないではありませんが、実際の利用シーンで4,600点と5,000点の間に大きな体感差はまずないと思います。あと、どうしても「測定数値のばらつき(ウインタブのレビューでは3回測定し、最も高いスコアを採用しています)」とか「レビュー機のコンディション」によって多少変動してしまうんですよね。
続いてはCPU性能のみを測定するCINEBENCH R23のスコアです。この数値はRyzen 5 5500U搭載のPCとしては標準的なものです。第11世代Coreプロセッサーとの比較では、「シングルコアで若干低め、マルチコアでは高め」というのがRyzenの特徴です。
続いてグラフック性能を測定する3D Markのスコアです。ここはちょっと不本意な結果ですね。第11世代のIntel Coreのうち、内蔵GPUにIris Xeを搭載しているもの(Core i3を除くほとんどの型番がそうです)だと、今回のスコアよりも高いスコアになります(Core i5でもFireStrikeで4,000点が出ることもあります)。
Intel Coreプロセッサーは第10世代まではRyzenの後塵を拝する結果になることが多かったのですが、第11世代になって内蔵GPUの性能が飛躍的に向上し、同クラス(例えばRyzen 5とCore i5、Ryzen 7とCore i7)のRyzenを上回るグラフィック性能になっていると思います。
ただ、ThinkPad E15 Gen3はゲーミングノートではなくビジネスノートなので、動画編集や高度な画像加工(簡単な画像加工ならCPU/GPU性能はそんなに関係しません)、「職人芸的な」パワポ資料の作成などを別にすれば、十分なグラフィック性能にはなっていると思います。
ラストはストレージの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。ビジネス用としてだけでなく、仮にオンラインゲームをするとしても十分な速度になっています。というかですね、ストレージがSSDなのであれば、ビジネスノートとして読み書き速度を懸念する必要は全然ないんですよね。ここに掲載しているスコアはPCIe-NVMe接続のSSDのスコアで、SATA接続のSSDだとこの半分から4分の1くらいの速度になってしまうのですが、実際のところSATAの速度であっても不満は出ないと思いますよ。
4.ThinkPad E15 Gen 3 レビューまとめ
Lenovo ThinkPad E15 Gen 3はレノボ直販サイトで販売中で、10月6日現在の価格は税込み70,686円から、となっています。この価格は「平日の日中の価格」ですが、ThinkPadシリーズは平日22時からの「ナイトセール」と週末(土日)の「週末セール(週末限定のクーポンが出ます)」で購入するのが最もお買い得になります。平日の日中は避けましょう。
ThinkPad EシリーズはThinkPadシリーズの中でも低価格な部類で、お好みに合わせてCPUやRAM、ストレージの構成を変更しても10万円を切る価格で購入ができます(まあ、このへんは人によるとは思いますけど)。一般に、上位(価格が高い)PCのほうが下位(価格が安い)PCよりも筐体の品質とかデザインが良くなっていることが多いですが、ThinkPadシリーズに関しては基本的に「みんな同じデザイン」ですし、低価格だからといって筐体が華奢であるとか、キーボードが使いにくいといったことはありません。なので、個人的には「ThinkPadではEシリーズが一番の狙い目なのでは?」と思っています。
今回のレビュー機E15 Gen3(AMD)は15.6インチでテンキーのつくスタンダードノートですが、自宅や事務所などでじっくりPC作業をしたい人には強くおすすめできる品質だと評価します。また、筐体重量が1.7 kgということで、毎日バッグに入れて持ち歩くような使い方には向かないものの、ちょくちょく出先に持ち出して作業するくらいなら十分対応できると思います。
カスタマイズ項目について、あくまで個人の意見として述べさせていただくと、CPUはRyzen 5で十分、RAMとストレージは当座8GB/256GBでも問題ないと思いますが、この製品はWindows 11にも対応し、非常に堅牢な筐体を備えていますので、数年間は愛用できるであろうことを考慮すると、ご予算に合わせて多少増量(RAM16GB/ストレージ512GBなど)されるといいのではないかと思います。また、ディスプレイは僅かな追加料金でsRGB100%のものに変更できますので、ここは変更されることをおすすめします。
しかし、この価格できっちりThinkPad品質が実現できているというのは本当にすごいことだと思います。テレワークも含め、ビジネス用のスタンダードノートを探している人にはおすすめですね。
5.関連リンク
ThinkPad E15 Gen 3 (AMD):Lenovo