BeelinkのミニPC「Beelink SER4」の実機レビューです。CPUにRyzen 7 4800Uを搭載する、ウインタブ読者のメインPCとしても十分使えそうな高性能PCで、そっけないデザインの製品が多いミニPCとしては「ちょっとおしゃれ」なデザインになっています。ウインタブでBeelink製品のレビューをするのは実に2016年11月以来5年ぶりでして、今回この製品をレビューできるのがとても楽しみでした。
レビュー機はBeelinkよりサンプル提供いただいております。この場にて御礼申し上げます。なお、記事中で特定のパーツメーカー名に言及しておりますが、これらはあくまでも「レビュー機の仕様」です。RAMやSSDのメーカー名がすべての市販品で同じものになっているとまでは断言できませんので、この点あらかじめご了承ください。
・ビジネスマシンとして十分なパフォーマンス、ゲームもいける
・RAMはCrucial、SSDはIntel製(ノーブランド品ではない)
・RAMとSSDへのアクセスが容易
・しっかり感があり、カッコいいデザインの筐体
ここはイマイチ
・ファンの風量変化が大きめで、少し耳障り
販売サイトはこちら
SER 4800U:Beelink公式サイト
Beelink SER4:Banggood
目次
1.Beelink SER4 スペック
スペック表
Beelink SER4 | |
OS | Windows 11 Pro |
CPU | AMD Ryzen7 4800U |
外部GPU | なし |
RAM | 16GB/32GB(最大64GB) |
ストレージ | 500GB M.2 NVMe SSD 2.5インチSATAスロット空き×1 |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | なし |
ネットワーク | 802.11 a/b/g/n/ac/ax、Bluetoosh 5.0 |
入出力 | USB Type-C(映像出力対応)、USB 3.0 × 3、USB 2.0、HDMI × 2、オーディオジャック、LAN(RJ45) |
カメラ | なし |
バッテリー | なし |
サイズ | 126 x 113 x 42 mm |
重量 | 486 g(実測値) |
バリエーションモデル
・RAM16GB
・RAM32GB
※RAM以外の構成は同一です
コメント
メーカーサイトでは、OSは「Windows 11」とだけ記載されていましたが、実機を確認したところWindows 11 Proが搭載されていました。CPUはRyzen 7 4800Uで、旧世代となりますが、Passmarkが公表しているベンチマークスコアは17,099(3月31日現在の公表値)と、現在でも高い実力があります。ただし、外部GPUは搭載していません。
RAMは16GB/32GBを選べ、2スロットありますのでDIYで最大64GBまで搭載可能です。ストレージは公表値だと「500GBのM.2 NVMe SSD」ですが、レビュー機に搭載されていたのは512GB M.2 NVMe SSDでした。また、後述しますが、レビュー機に使われていたのは「SSDがIntel製、RAMがCrucial製」でした。
それと、筐体内部に2.5インチのHDDスロットがあり、増設が可能です(基本的にこのスロットはHDD/SSDとも対応すると思いますが、一部製品でHDDのみ対応、SSD非対応というケースがありますので、この記事では「HDDスロット」と表記しています)。
通信周りではWi-Fi6に対応し、入出力ポートはミニPCとしては「標準的」くらいですが、映像出力に対応するUSB Type-Cポートがついているのはありがたいところです。サイズもミニPCとしては標準的と言っていいと思います。
2.Beelink SER4 筐体
外箱です。ウインタブでは実機レビューの際に外箱の画像を掲載することはめったにありません。一般にミニPCの外箱はそっけないものが多いのですが、SER4の外箱はとてもきれいだったので、思わず掲載してしまいました(それ以上に深い意味はありません)。
同梱物です。ケーブルが2本ありますが、いずれもHDMI-HDMIのケーブルです。SER4はHDMIポートが2つ装備されていますので、2本あると便利ですよね(ただし、2本のうち1本はケーブルの長さがかなり短く、ディスプレイの背面に設置する場合に使うものと思われます)。画像右下にあるACアダプターは出力57Wで重量の実測値は220 gと、Ryzen 7搭載のミニPCにしては小型です。
あとは取扱説明書とディスプレイ背面に取り付けるためのブラケット、ネジ類が入っていました。
取扱説明書は日本語の表記がありませんでしたが、図解もされていたりして、わかりやすいものでした。
上面(天板)です。AMDのロゴやシールの配置がよく、黒い筐体ということもあって映えます。大部分がメッシュになっていて通気性が良さそうです。なお、筐体素材は「金属(おそらくアルミ合金)」です。
前面です。左にある小さな穴は「CLR CMOS」つまりリセットボタンです。中央にはUSB 3.0 Type-Aが2つにUSB Type-C、その横にイヤホンジャック、右端が電源ボタンです。
側面です。この画像は右側面ですが、左側面も全く同じなので掲載は省略します。左右側面にはボタン類はなく、赤く塗られた通気口があるのみ。この配色、個人的にはカッコいいと思います。
背面です。画像左から有線LAN、USB 3.0 Type-A(上)とUSB2.0 Type-A、HDMIが2つ、そしてDC-INジャックです。USB Type-Aポートは割と接近した位置にありますので、接続する端子部分の形状によって干渉してしまう可能性があります。ただし、私の手持ちの周辺機器については端子部分が干渉して使えない、ということはありませんでした。
底面です。左右にあるのはゴム足です。そして、開口は底面にあるネジ4つを外して行います。
開口してみました。精密ドライバー1本で容易に開口できました。
蓋部分に2.5インチのドライブベイがあり、今回はSSDやHDDを接続していませんが、配線も完備されているようなので、装着は容易だと思います。
本体の左側にSSDがあります。粘着性の放熱材が取り付けられていました。SSDスロットは1つだけ、適正サイズはM.2 2280でNVMeです。
右側にあるのがRAMで、レビュー機は16GB × 2(合計32GB)でした。
SSDはIntel 660p、RAMはCrucial製でした。これ、国内販売されているPCだと「大した話ではない」のかもしれませんが、比較的手頃な価格の中国ミニPCとしては「素晴らしい!」と思います。いやね、安価なミニPCだと聞いたこともないようなメーカーのSSDとかRAMが使われているんで…。個人的には「一気にBeelinkに対する信頼度が上がった」場面でした。
なお、さらに開口すればCPUや冷却ファンにもお目にかかれるはずですが、これ以上の開口は難易度が高く(ポート部分が干渉して、取り外しが難しい)、「分解」という領域になると思いますので、今回はここまでにとどめました。
これはレビュー機の画像ではありませんが、冷却ファンまわりの構造です。比較的大型のシングルファンですね。
一通り筐体を確認してみましたが、ウインタブとしては「非常に良い」という評価です。開口が容易でメンテナンス性も高く、PCにあまり詳しくない人でも容易にDIY作業は可能だと思います。また、繰り返しになりますが、RAMやSSDのパーツコストを惜しんでいる、という感じもありません。ちゃんと必要なコストをかけていると思います。
筐体のデザイン、質感も素晴らしいと思います。デザインはお好みによるでしょうが、筐体の剛性感は高く、ヤワな印象もありませんでした。SER4はBeelinkの中でも上位に位置する製品ですが、それに見合う筐体だと感じました。
3.Beelink SER4 システム
システム情報です。CPUはRyzen 7 4800U、RAMは32GB、SSDはスペック表の500GBではなく512GBでした。Beelinkオリジナルのアプリはなく、ほぼ「素のWindows」という状態でした。
UEFI(BIOS)画面です。American Megatrends製で、(CPUがRyzenなので当たり前かもしれませんが)TDPの変更などはできず、機能としてはごく標準的なものでした。
4.Beelink SER4 性能テスト
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。
レビュー機が搭載するRyzen 7 4800UはZen 2アーキテクチャで、最新のRyzen 6000番台がリリースされ始めていることを思うと、少々古い型番と感じられますが、PC Markのスコアに関しては「まだまだ十分に高性能」と言えます。
ウインタブで最近レビューしたノートPCのスコアはこんな感じです。
ASUS VivoBook Pro 15 OLED(Ryzen 9 5900HX):6,157
VAIO SX14(Core i7-1195G7):5,278
Lenovo ThinkPad X13(Core i7-1165G7):5,205
Lenovo IdeaPad Slim 550 14(Ryzen 5 5500U):5,076
ASUS VivoBook 15 OLED(Core i7-1165G7):5,017
dynabook MZ/HS(Core i7-1165G7):4,967
ASUS ExpertBook B9 B9400CEA(Core i7-1165G7):4,927
VAIO Z(Core i5-11300H):4,740
Lenovo ThinkPad E15 Gen 3(Ryzen 5 5500U):4,638
MSI Summit E13 Flip Evo(Core i5-1135G7):4,572
HP ProBook 430 G8(Core i5-1135G7):4,131
VAIO SX12(Core i3-1005G1):3,401
MSI Modern 15 A10M(Core i3-10110U):3,234
あくまで私の個人的な印象ですが、ビジネスPCとしてExcelとかPowerPoint、また画像加工やちょっとした動画編集に使う場合、Passmarkスコアは4,000点もあれば十分だと思っており、5,000点以上をマークできるのであれば、使っていてまず不満は出ないだろうと思います。
続いてCPU性能のみを測定するCINEBENCH R23のスコアです。このテストでも十分納得できるくらいの高いスコアとなりました。最近のデータと比較してみましょう。
ASUS VivoBook Pro 15 OLED(Ryzen 9 5900HX):1,482、12,108
VAIO SX14(Core i7-1195G7):1,441、6,039
ASUS VivoBook 15 OLED(Core i7-1165G7):1,497、5,555
MSI Summit E13 Flip Evo(Core i5-1135G7):1,311、5,341
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
Ryzenと第11世代Coreを比較すると、シングルコアのスコアでは第11世代Coreがやや優勢、マルチコアではRyzenが圧倒、という傾向があります。Beelink SER4の場合もこの傾向が顕著で、シングルコアのスコアだとCore i5よりも若干悪く、マルチコアならCore i7を凌ぐ、という結果になっています。
グラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。実は「外部GPU非搭載のPCの場合、第11世代CoreのほうがRyzenよりも3D Markのスコアは高い」という傾向が顕著です。過去のデータを見てみるとこんな感じになります。
VAIO SX14(Core i7-1195G7):2,069、5,422、14,536
ASUS VivoBook Pro 15 OLED(Ryzen 9 5900HX):1,415、3,529、7,815
MSI Summit E13 Flip Evo(Core i5-1135G7):1,498、4,213、11,048
ASUS VivoBook 15 OLED(Core i7-1165G7):1,433、3,431、8,281
Lenovo IdeaPad Slim 550 14(Ryzen 5 5500U):1,106、2,912、6,173
※左からTime Spy、Fire Strike、Wild Lifeのスコア
以前は「グラフィックならRyzenのほうが上」というイメージがありましたが、Intel Coreは第11世代になって内蔵GPUにIris Xeを搭載するようになり、Iris Xe搭載の型番であれば5000番台までのRyzenよりも高いスコアが出ます。
その前提で言えば、今回のレビュー機のスコアは「ごく優秀」であると言っていいと思います。後述しますが、オンラインゲームもちゃんとプレイできましたよ!
SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。PCIe接続のSSDとしては特に高速とは言えませんが、少なくともSATA接続よりも圧倒的に速いです。ゲーミング、また大容量の画像・動画データを常時扱うような使い方でなければまず不満は出ないだろう、というレベル。個人的には文句なしの速度だと思います。
ゲームプレイ
ウインタブの実機レビューでは、外部GPU非搭載のPCでオンラインゲームを試すことはめったにないのですが、今回は「Wreckfest」と「Gunfire Reborn」でしばらく遊んでみました。この2つのゲームの推奨スペックは下記の通りです。
Wreckfest:
CPU:Core i5 with 3.0 GHz or AMD equivalent
RAM:8GB
GPU:NVIDIA GeForce GTX970 or AMD Radeon R9 380X
Gunfire Reborn
CPU:Core i5-7500 / AMD Ryzen 5 1400
RAM:8GB
GPU:GeForce GTX1060 / Radeon R9 390
で、結論から言うと、どちらも(私のレベルでは)快適にプレイできました。私、特にWreckfestのほうはかなり「やり込んで」いるのですが、グラフィック設定を「中」にしておけば外部GPU搭載のゲーミングノートと変わらない印象です。たぶん、FPSゲームでもGS:GOくらいなら十分プレイできると思います。
最新のAAA(重量級)ゲームもサクサク動くかと言えば、決してそんなことはないと思いますので、ゲームが主目的であれば外部GPU搭載のゲーミングPCにすべきでしょう。でも、息抜きにゲームで遊ぶくらいなら、Beelink SER4でも十分楽しめると思います。
発熱とファン音
この製品、発熱に関しては非常に高評価できます。上に書いたとおり、しばらくオンランゲームをプレイしたり、3D Markのテストを連続して回したりしましたが、筐体からの発熱はほとんど感じられませんでした。また、Crystal Disk InfoでSSDの発熱状況も確認しましたが、30℃台で推移しており、不安を感じることはありませんでしたね。
一方、ファン音ですが、少々耳障りです。音量は大きくありません(50dbを越えることはめったにありませんでした)が、ファンの風量変化がやや敏感すぎるように感じられ、波打つような音量変化に感じられました。なので、実際の音量よりも少々気に触る、という感じでした。個人的にはそんなにファン音について神経質な方ではないのであまり意識しませんでしたが、気になる人もいるだろうと思われます。
ファン音(ファン風量)についてBeelinkから連絡があり、ファンの動作を最適化すべくBIOSのアップデートを実施したとのことでした。
5.Beelink SER4 レビューまとめ
Beelink SER 4はBeelink公式サイトで販売中で、4月1日現在の価格はRAM16GB版が699ドル、RAM32GB版が749ドルです。また、BanggoodでもRAM16GB版が販売中で、価格は公式サイトと同じ699ドル(87,622円)です。
Beelink製品の実機レビューは久しぶりでしたが、レビューを終えてみて「安価な中華メーカーの品質ではない」と感じました。筐体のデザインやしっかり感(剛性感)が高く、RAMやSSDもしっかり「ブランド品」が使われており、価格を抑えるための過度なコストダウンをしていないですね。
また、パフォーマンスに関してもRyzen 7 4800U搭載機として期待を裏切らないものであったと思います。というか、Ryzen 7 4800UというCPUの実力の高さを再認識できた、という感じです。
個人的には「Minisforumと互角以上」の品質であったと評価できます。冷却性能も高いですし、筐体のデザイン(配色など)に関してはMinisforumよりも上だと思います。唯一、ファンの音質について「気になる人もいるかも」とは感じましたが、ケチをつけるとしたら、そのくらいでしょうか。
価格のほう、さすがに安価な中華ミニPCと同等とは言えませんが、価格なりの価値は十分にある製品だと思います。
6.関連リンク
SER 4800U:Beelink公式サイト
Beelink SER 4:Banggood