こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。今回はHPの13.3インチコンバーチブル2 in 1「HP ENVY x360 13」の実機レビューです。旧モデル(2019年モデル)は「ENVY」というプレミアムPCブランドの製品でありながら、どう考えても激安としか思えない価格帯で販売され、大人気となりました。今回レビューするニューモデル(ay0000という枝番です)は、一見するとキープコンセプトながら、スペックがさらに向上し、筐体サイズも一回り小さくなった、「売れ筋必至」の製品だと思いますので、実機をしっかり確認してみましょう。
1.スペック
HP ENVY x360 13(ay0000) | |
OS | Windows 10 Home |
CPU | AMD Ryzen 3 4300U / Ryzen 5 4500U / Ryzen 7 4700U |
外部GPU | なし |
RAM | 8GB/16GB |
ストレージ | 256GB / 512GB SSD |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 13.3インチIPS(1,920 × 1,080)タッチ |
ネットワーク | 802.11 a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.0 |
入出力 | USB Type-C、USB × 2、microSDカードリーダー、オーディオジャック |
カメラ | Webカメラ(92万画素) |
バッテリー | 稼働時間 最大17時間 |
サイズ | 306 × 194 × 15.5-16.5 mm |
重量 | 1.25 kg |
「ENVY 13」にはクラムシェルとx360(HPではコンバーチブル2 in 1筐体のことをこう称します)があり、クラムシェルはIntel CPU、x360はAMD CPUを搭載します。と言うことで、この製品のCPUはAMD Ryzenで、「モバイル用第3世代(4000番台)」のものが搭載されています。レビュー機のCPUはRyzen 5 4500Uですが、ベンチマークスコアがどうなるのか、とても楽しみですね。
RAMは8GBもしくは16GBで、Ryzen 7モデルのみ16GB、Ryzen 3とRyzen 5モデルは8GBで固定です。ストレージはRyzen 3モデルが256GB SSDのみ、Ryzen 5モデルは256GBと512GBを選べ、Ryzen 7モデルは512GBのみとなります。この製品、Ryzen 3モデルだとセール価格が税抜き7万円を下回ることもありますが、ビジネス用として表計算ソフトやZoom会議など、またペン入力でイラストやマンガの制作をするくらいの用途なら、Ryzen 3モデルでも十分対応できると思われます。Ryzen 7モデルなら16GBのRAM、512GBのSSDということもあり、モバイルPCとしてはハイエンドクラスの実力があると言えるでしょう。
ディスプレイは13.3インチのFHD(1,920 × 1,080)解像度、IPS液晶でグレアタイプのものが搭載されます。コンバーチブル2 in 1なので、当然タッチ対応もしますし、ペンは別売りとなりますがMPP2(Microsoft Pen Protocol)ペンで4,096段階の筆圧に対応したペン入力が可能です。ペン入力に関しても、旧モデルは筆圧1,024段階でしたから、格段にレベルアップしたと言えます。
通信まわりではWi-Fi6(ax規格)に対応します。また、入出力ポートはやや少なめで、USBポートは合計で3つありますが、HDMIや有線LANポートは装備されません。映像出力に関してはUSB Type-Cが対応しています。
サイズは旧モデルからずいぶんと小さくなりました。
ニューモデル:306 × 194 × 15.5-16.5 mm / 1.25 kg
従来モデル:306 × 212 × 14.5-16 mm / 1.28 kg
と言っても小さくなったのは「奥行き」なんですけど、その「奥行き」が2センチ近くも小さくなっています。旧モデルも13.3インチ2 in 1としては十分にコンパクトだったので、そこからの2センチというのはすごいと思います。
レビュー機のシステム構成です。「Ryzen 5/RAM8GB/256GB SSD」ですから、7月25日現在、通常の製品ページで75,000円(税込み82,500円)で販売されている「スタンダードモデル」ですね。
2.筐体
いつもだと同梱物一覧をご案内できるのですが、今回のレビュー機は海外仕様で、ペーパー類もすべて英語だったので、おそらく日本仕様の同梱物とは異なります。なので、ACアダプターのみ。ただ、このACアダプターもコンセント形状が一般的なものと異なっていた(3ピンタイプでした)ので、日本仕様は別な形状である可能性もあります。実測重量は電源コード込みで271 gでした。
天板です。筐体色は「ナイトフォールブラック」で、見る角度とか光の当たり具合によってわずかに茶色っぽく見えます。筐体素材は金属で、おそらくアルミ合金製と思われます。天板のHPロゴはプレミアムタイプのものが使われています。
底面です。上下にゴム足があり、中央やや上に通気口がありますが、基本的にユーザーが開口する前提の作りではありません。
両側面にスピーカーグリルがあります。旧モデルでは4スピーカーが搭載されていましたが、ニューモデルでは底面に2つのみに変更されました。
前面です。こちらにはポート類やボタン類はなく、ヒンジ開口用の手がかり(凹み)もありません。開口は少しやりにくいですね。
左側面です。画像左からイヤホンジャック、USB Type-A、そしてUSB Type-Cポートです。
背面には通気口があるのみ。
アングルを変えてみました。通気口は2つあるように見えますが、右側はダミーですね。また、ヒンジ部分にはENVYの刻印が入っています。以前から思っているんですけど、この、少し間隔の空いたアルファベット表記はカッコいいですね。
右側面です。画像左からmicroSDカードリーダー、USB Type-A、DC-INです。ポートは左右側面にバランス良く振り分けられていて、使い勝手はいいです。
キーボードです。上に書いたように、今回のレビュー機は米国仕様だったので、配列も英語になっています。日本仕様は「JIS標準88キー」となります。また、主要キーのキーピッチは19.0 × 19.0 mm、キーストロークは約1.3 mmと開示されていて、十分に余裕のあるサイズと言えます。
キートップはフラットで、バックライト(色はホワイト、明るさは2段階に調節可能)も装備されています。打鍵感等については後述します。
正面から見たところです。旧モデルも左右と上部のベゼルは十分に細いものでしたが、ニューモデルになって上部ベゼルがさらに細くなり、下部ベゼルは奥行きサイズが小さくなったことにより、ずいぶんと細くなりました。HPの上位モデルらしい高級感もありますね。
コンバーチブル2 in 1筐体なので、このようにテントモード(画像上)、スタンドモード(画像中)、タブレットモード(画像下)にして使うこともできます。ENVY x360 13は4,096段階の筆圧対応のペン入力ができますので、特に「タブレットモードでのペン入力」は非常に便利だと思います。
3.使用感
ディスプレイ
ENVY x360 13のディスプレイは13.3インチFHD(1,920 × 1,080)解像度、IPS液晶、グレアタイプです。また、コンバーチブル2 in 1筐体のため、タッチ対応もします。
モバイルノートのディスプレイとしては、個人的にはノングレアタイプのほうが使いやすいと思っています。いろんな場所で、いろんな姿勢で使うことになりますので、場合によって映り込みが気になり、作業に集中できなくなるようなこともあり得ますからね。ただし、タッチディスプレイの製品の場合、ほとんどがグレアタイプです。技術的な事情はよく分かりませんが、「タッチディスプレイなのでグレアタイプで仕方ない」ということなのかもしれません。
その映り込みですが、「普通」くらいですね。HPの最新モデルでもSpectreシリーズなどは「グレアタイプでも映り込みが小さい(アンチ・リフレクション)」構造になっていますが、ENVYはそうではなく、一般的なグレアタイプの映り込み、という感じです。
ただし、グレアタイプゆえに発色は良好です。手持ちのディスプレイ(23インチ・FHD解像度・IPS液晶・ノングレアタイプ、15.6インチFHD解像度・IPS相当・ノングレアタイプ)との比較では、「色の濃さ」は大きく違わないものの、くっきりと見えますね。黒の表現が良好なのだと思います。一般にディスプレイの発色に関してはノングレアタイプよりもグレアタイプのほうが良好で、「映り込みが大きいかわりに色がきれい」ということは言えます。
この製品のディスプレイであれば、一般的なビジネス利用にしても、エンターテイメント系の利用にしても、十分満足できるものと思われます。ただし、sRGB100%とか、AdobeRGB100%という仕様にはなっていませんので、専門職の人がどのくらい満足できるか、という点については何とも言えません。一般人なら文句なし、でいいかと思います。
キーボード
上にも書きましたが、ENVY x360 13のキーボードはキーピッチ19 × 19 mmと開示されています。レビュー機は日本仕様とは異なる英語配列でしたが、基本的なタイピングでの使用感には差がないと思いますので、その前提で書かせていただきます。
打鍵音は小さめで、あまりパチパチと言いません。どちらかというと「もそもそ」という感じの打鍵音です。ただし、打鍵の感覚がもっさりしているということではありません。感覚としては一般的なノートPCのキーボードと変わることなく、十分なキーピッチもあって、確実かつ快適に打鍵はできます。
あとは配列ですね。レビュー機が英語配列だったので、詳細なことを書くべきではないと思いますが、やはりENTERキーの右の一列は気になるところでしょう。この配列はHP製品としてはごく一般的なものなので、HPユーザーなら全く気にならないと思いますが、そうでない人は少し慣れが必要かもしれません。ただし、私が試用していた限り、この配列によるミスタイプはほとんど発生せず、該当のキーも「Home」とか「PgUp」など、私が日ごろ使わないキーばかりだったので、それも幸いしたのかもしれません。
それと、筐体サイズが小型化したことにより、パームレストが小さくなっています。この点についても試用開始時から気にかけていて、打鍵のしにくさにつながっていないか注意しましたが、私の手の大きさ(身長170センチくらいの一般的な男性の手の大きさだと思います)だと困ることは全くありませんでした。パームレストに手のひらがしっかり乗り、打鍵はしやすかったです。
スピーカー
低音から高音までクリアに聞こえます。ただ、もはや記憶が定かではありませんが、旧モデルではクアッドスピーカーを搭載していたところ、このニューモデルではデュアルスピーカーに変更されたことで、臨場感という点では少し後退したのではないか、という気はします。とはいえ、13.3インチサイズのモバイルPCのスピーカーとしては非常に高く評価していいと思います。
音響アプリは「Bang&Olufsen Audio Control」。グラフィックイコライザーもつき、好みの音質に仕上げることができます。
もともとハードウェアとしての素性もいいほうだと思いますし、音響アプリの効き目も大きいと感じられます。ほとんどの人はこのスピーカーには合格点を出せるのではないでしょうか。
バッテリー
ディスプレイ輝度を70%に設定し、画像加工ソフトのGIMPで画像加工を20分、その後テキストライティングを20分、ブラウザーを立ち上げ、ボリューム30%でYouTubeの音楽を20分、合計で60分使用して、バッテリー消費は17%でした。この使い方だと単純計算で6時間弱バッテリー稼働が可能ということになります。
ウインタブのレビューでバッテリー稼働を測定する場合、非常にライトといえる使い方をしていると思っています。今回でも、ディスプレイ輝度を落とす(実際、輝度を50%に落としても問題なく使えるとは思います)、音を消すなどの節約手段は残されていますが、その場合でもせいぜい7時間程度で精いっぱいなのではないか、と思います。なので、公称値の「最大17時間」はどうやってもクリアできないものと考えます。
4.性能テスト
参考:
HP ENVY x360 15(Ryzen 3500U) : 2,269、7,922
Lenovo ThinkPad E595(Ryzen 5 3500U): 2,259、7,741
Lenovo ThinkPad E495(Ryzen 5 3500U): 2,257、7,874
マウス m-Book X400B(Ryzen 5 3500U): 1,528、4,659
HP ENVY X360 13(Ryzen 7 3700U): 1,513、6,808
HP ENVY 13 X360(Ryzen 3 2300U): 1,513、5,396
ASUS VivoBook S15 S531FA(Core i7-10510U): 1,241、4,733
Lenovo ThinkPad X1 Yoga(2019)(Core i7-8665U):1,211、4,946
Lenovo ThinkPad X280(Core i7-8550U): 1,211、4,871
Lenovo ThinkPad T490s(Core i7-8565U): 1,181、4,845
DELL XPS 13(9380)(Core i7-8565U): 1,189、4,586
HP Spectre x360 13(Core i7-8565U): 1,178、4,574
DELL XPS 13(9370)(Core i7-8550U): 1,161、4,719
Microsoft Surface Laptop 2(Core i5-8250U): 1,157、4,652
Microsoft Surface Pro 6(Core i5-8250U): 1,136、4,524
ドスパラ Altair F-13KR(Core i5-8250U): 1,126、4,746
東芝 dynabook AZ65/G(Core i7-8550U): 1,116、4,367
HP Spectre x2(Core i5-7260U): 1,114、4,389
富士通 LIFEBOOK WU2/C3(Core i7-8565U): 1,111、4,325
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 1,097、4,471
HP Elite Dragonfly(Core i5-8265U): 1,092、4,383
Lenovo IdeaPad C340 (15)(Core i5-8265U): 1,085、4,370
DELL Inspiron 15 5000 2in1(Core i7-8565U):1,084、4,421
東芝 dynabook VZ82/F(Core i7-8550U): 1,084、4,282
iiyama Style 17FH054 i7(Core i7-8750H): 1,082、4,559
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-8665U): 1078、-
Lenovo ThinkPad X390(Core i7-8565U): 1,063、4,350
ドスパラ DX-C5(Core i5-10210U): 1,010、4,262
※左からFireStrike、SkyDiverのスコア
グラフィック性能をテストする「3D Mark」のスコアです。GeForce等の外部GPU搭載有無によって顕著にスコアが変わります。ここでは当然「外部GPU非搭載機」との比較をしていますが、その前提では「過去最高」のスコアとなりました。ただし、外部GPU搭載機のスコアには全くかないませんので、「この製品ならどんなオンラインゲームもサクサク動く」という感じの結果ではありませんね。あくまでお仕事などで動画や画像を扱う際のサクサク感が優れている、という感じでしょうか。あるいは動きの激しくない、軽めのオンラインゲームなら行けそうです。
参考:
HP OMEN X 2S 15(i9-9880H、RTX2080 Max-Q):6,447
Lenovo Legion Y740(17)(Core i7-9750H、RTX2080Max-Q): 6,151
MSI GE66 RAIDER(i7-10875H、RTX2070):6,081
ASUS ROG Strix SCAR 15 G532LWS(i9-10980HK、RTX2070SUPER):6,023
ASUS ROG Zephyrus G14(Ryzen 9 4900HS、RTX2060 Max-Q):5,852
Lenovo Legion Y740(15)(Core i7-9750H、RTX2070 Max-Q): 5,830
ASUS ZenBook Pro Duo UX581GV(Core i9-9980HK、RTX2060): 5,727
Lenovo Legion Y7000(Core i7-9750H、GTX1650): 5,618
ドスパラ GALLERIA GCR1660TGF-QC-G(Core i7-9750H、GTX1660Ti): 5,573
ASUS ROG Zephyrus S GX502GV(Core i7-9750H、RTX2060): 5,506
ドスパラ GALLERIA GCR2070RNF(Core i7-9750H、RTX2070): 5,505
DELL G7(Core i7-8750H、GTX1060): 5,401
ドスパラ GALLERIA GCF2060GF-E(Core i7-8750H、RTX2060): 5,328
MSI GP65 Leopard(Core i7-9750H、RTX2060): 5,299
ドスパラ GALLERIA GCF1070GF(Core i7-8750H、GTX1070): 5,122
MSI GF75 Thin(Core i7-8750H、GTX1050Ti): 5,009
ドスパラ GALLERIA GCF1060GF-E(Core i7-8750H、GTX1060): 4,976
ドスパラ GALLERIA Mini 1060(Core i5-7500、GTX1060): 4,906
ドスパラ GALLERIA GCF2070GF-E(Core i7-8750H、RTX2070): 4,893
ASUS ZenBook 15 UX534FT(Core i7-8565U、GTX1650): 4,709
ドスパラ GALLERIA GCF1050TGF-E(Core i5-8300H、GTX1050Ti): 4,545
ASUS ROG Zephyrus G GA502DU(Ryzen 7 3750H、GTX1660Ti): 4,365
OMEN X by HP(Core i7-7820HK、GTX1080): 4,290
iiyama STYLE-17FH054-i7(Core i7-8750H) : 4,281
HP Spectre x360 13(Core i7-8565U): 4,223
Lenovo ThinkPad T490(Core i7-8565U、MX250): 4,158
ASUS VivoBook S15 S531FA(Core i7-10510U): 4,155
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-8665U): 4,132
ASUS TUF Gaming FX505DT(Ryzen 5 3550H、GTX1650): 4,124
Lenovo ThinkPad X1 Yoga(2019)(Core i7-8665U):4,120
ASUS ZenBook 14 UX434FL(Core i5-8265U、MX250):3,933
Lenovo ThinkPad X280(Core i7-8550U): 3,909
HP Elite Dragonfly(Core i5-8265U): 3,843
ドスパラ Altair F-13KR(Core i5-8350U): 3,778
HP Spectre 13(Core i5-8265U): 3,766
ドスパラ DX-C5(Core i5-10210U): 3,737
HP ENVY X360 13(Ryzen 7 3700U): 3,728
Lenovo ThinkPad E595(Ryzen 5 3500U): 3,714
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 3,704
ドスパラ Critea VF-HEKS(Core i7-8550U、MX150): 3,704
マウス m-Book X400B(Ryzen 5 3500U): 3,659
HP ENVY x360 15(Ryzen 3500U): 3,617
DELL Inspiron 17 5000(5770)(Core i7-8550U、Radeon 530): 3,607
Lenovo ThinkPad E495(Ryzen 5 3500U): 3,574
東芝 dynabook AZ65/G(Core i7-8550U): 3,546
HP ENVY 13(Core i7-8550U):3,534
DELL XPS 13(9370)(Core i7-8550U): 3,518
ドスパラ Critea VF-HGK1050(Core i7-7700HQ、GTX1050): 3,492
東芝 dynabook VZ82/F(Core i7-8550U): 3,491
富士通 LIFEBOOK WS1/B3(Core i7-8550U): 3,479
Microsoft Surface Pro 6(Core i5-8250U): 3,399
東芝 dynabook DZ83/J(Core i7-8550U): 3,353
マウス m-Book J(Core i5-8250U): 3,350
東芝 dynabook UZ63/F(Core i7-8550U): 3,341
Microsoft Surface Laptop 2(Core i5-8250U): 3,199
HP Spectre Folio 13(Core i5-8200Y): 3,108
続いて、グラフィック性能だけでなく、表計算ソフトや画像加工、ビデオチャットなど、ビジネスシーンでの利用をシミュレートするPC Markのスコアです。第2世代(3000番台)のRyzenは、上の3D MarkではCore iプロセッサーよりも高いスコアが出る傾向にありましたが、このPC MarkではCore iプロセッサーよりも若干低めのスコアになる、というのがこれまでのウインタブの認識でした。
…すごいですね、Ryzen 5 4500U。PC Markはどちらかと言うとCPU性能が重視され、外部GPU搭載有無によるスコアへの影響は3D Markほど大きくはないと言われていますが、それでも参考データを見ていただければ分かる通り、外部GPU搭載機のほうが高いスコアになります。
ENVY x360 13のスコアはGTX1050とかGTX1650を搭載するゲーミングノートに匹敵しています。PC Markでこれだけのスコアが出る、ということは、ビジネスシーンでもCore i7と同等以上の「速さ」になると言えます。
参考:
ASUS ROG Strix SCAR 15 G532LWS(Core i9-10980HK):497、4,120
ASUS ROG Zephyrus G14(Ryzen 9 4900HS):485、4,226
MSI GF63 Thin(Core i7-10750H): 466、2,572
MSI Prestige 15(Core i7-10710U): 458、2,528
ドスパラ DX-C5(Core i5-10210U): 422、1,223
HP EliteBook x360 1040 G6(Core i5-8265U): 396、1,177
MSI Modern 14 B10R(Core i7-10510U): 389、1069
HP Elite Dragonfly(Core i5-8265U): 318、1,187
CHUWI Hi10 X(Celeron N4100): 153、404
Microsoft Surface Go 2(Pentium Gold 4425Y): 147、366
続いては「CPU性能のみ」を測定するCINEBENCH R20です。まだウインタブでの参考データが少ないのですが、ここでもCore i5との比較で、特にマルチコアのスコアが非常に高くなっています。
ラストはストレージの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markです。このスコア、おそらくPCIe ×4接続ですね。×4接続とみなせばやや遅いほうとも言えますが、一般的なモバイルノート、スタンダードノートよりは数段高速です。ビジネス用として使うのならオーバースペックと言っていいくらいに高速です。製品特性上「合格すぎる」という感じです。
発熱について
ENVY x360 13という製品は歴代「発熱は大丈夫か?」という話になりがちです。特に初代モデルでは発熱による性能低下の話をよく耳にした(正確にはWeb情報で見た)んですが、ウインタブのこれまでのレビュー経験では「そんなに気にしなくていい」と結論づけていました。なので、今回はいつもよりしっかり発熱はチェックしました。
ENVY x360 13には「HP Command Center」というアプリが入っていました。ゲーミングノート用ではないので、機能は少なく、このように「サーマルプロファイル」を調整できるのみです。試用中、基本的に「HP推奨モード」を使い、ベンチマークテストのときに「パフォーマンスモード」にしました。ファン風量はパフォーマンスモードのほうが大きくなるはずですが、ファン音は耳障りな水準にはならず、ノートPCとしては比較的静かな方だったと思います。
結論から言うと、発熱を体感する場面はありました。キーボード面上部と底面に少し熱を持ちます。テキストライティングや動画視聴時などは、ほとんど気にならないレベルなので、事務作業で発熱を気にする必要はないと思います。一方、ベンチマーク測定中はキーボード面上部と底面が結構な熱を持ちました。発熱を確認するために、3D Markの3つのテストを間髪入れずに実施してみましたが、「ちょっと熱い」という感じでしたね。おそらくこの程度の発熱では性能低下は起きないと思いますが、これまでのウインタブの経験上、発熱量は大きめと感じました。
先日MSI Modern 14 B10Rの実機レビューの際、Modern 14が「GeForce MX330を搭載している」という理由でオンラインゲーム(GTX1060くらいを推奨しているもの)をプレイしてみましたが、このとき、開始後数分で発熱による性能低下が発生しました。ENVYは外部GPU搭載機ではなく、実際にオンラインゲームのプレイはしていませんが、仮にプレイしたら、おそらくModern 14に近い結果になっただろうと思います。
この筐体、発熱に関しては一般的なノートPCとさほど変わらないと考えていいでしょう。Ryzen 5の性能は素晴らしいですが、一般的なビジネス用途とかけ離れたPC負荷を長時間かけるべき製品ではないと思います。
5.まとめ
HP ENVY x360 13(ay0000)はHP Direcyplusで販売中で、7月25日現在の価格は70,000円(税込み77,000円)から、となっています。上にも記載しましたが、レビュー機のスペックでも75,000円(税込み82,500円)です。また、この製品はたまに週末限定セール(原則として毎週金・土・日に開催されるタイムセール)の対象になっていますので、購入される際は週末限定セールの内容をチェックされることをおすすめします。
私はENVY x360 13(AMD)という製品を過去2回実機レビューしています。初代、二代目、そして今回、この三代目をレビューさせてもらいました。実機を手にとった印象は「キープコンセプト」で、少し悪く言うと「あんまり変わってないなあ」というものでした。ニューモデルの筐体サイズはかなりコンパクト化されましたので、初めてこの製品を手に取ると「わあ、小さいなあ」と感じると思うんですけど、初代と二代目も同クラスのコンバーチブル2 in 1としては非常にコンパクトなものだったこともあり、レビュー経験者としては少し感動が薄かったです(すごい贅沢なこと書いてますね、すみません)。
顕著に改善されたのは、やはりパフォーマンスだと思います。この記事に掲載したベンチマークスコアを見ていただければわかる通り、第3世代Ryzenの恩恵は非常に大きいと言えます。また、「あんまり変わってないなあ」と書きましたが、ディスプレイのベゼルが一段と細くなりましたので、デザイン面でも魅力を増しているということは感じられました。筐体の高級感とか、キーボードの打鍵感はいい意味で「変わっていない」と思います。非常に高品質です。
今回は残念ながら大きな変更点である「ペン入力(筆圧1024段階から4096段階に変更された)」を試すことができませんでしたが、もともと1,024段階でもイラストやマンガの制作には十分使えそうな品質だったので、ニューモデルのペン入力性能について、絵描きさんは「大いに期待してよし」だと思います。
ニューモデルの価格は発売から日が浅いにもかかわらず、旧モデルに迫る水準まで購入しやすいものになっていますので、「当然のように買い」でいいと思います。実際、さっきHPの公式サイトを見たら、「売れ筋No.1」になってました。当然だと思います。