こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。今回は富士通のモバイルノート「LIFEBOOK WS1/B3」の実機レビューです。この製品は富士通の直販サイト「富士通WEB MART」で販売される「カスタムメイドモデル(注文時に構成のカスタマイズが可能)」で、家電量販店などで販売されているカタログモデルだと「LIFEBOOK SHシリーズ」に相当します。
13.3インチとモバイルノートとして「王道サイズ」でありながら、光学ドライブをを内蔵する、富士通らしく「いろんな意味で密度の濃いノートパソコン」と言えます。
1.スペック
富士通WEB MARTの「カスタムメイドモデル」というのはそのへんのBTOメーカー以上に細かく構成のカスタマイズができます。このWS1/B3もCPU、RAM、ストレージはもちろん、ディスプレイとかバッテリーとか、非常に多くのパーツをカスタマイズ可能です。
CPUは第8世代のCore i5もしくはi7、RAMは標準だと4GBですが、カスタマイズにより最大20GBまで増設が可能です。ストレージはSSD専用となっており、標準だと128GB SSD、最大で512GB SSDにすることができます。それと…、
この製品には「モバイル・マルチベイ構造」が採用されていて、デフォルトでは光学ドライブが装備されているのですが、ここにHDD(ハードディスク)やバッテリーを装備することもできます。そのため、上のスペック表に記載しているSSDのほかに、大容量のハードディスクも搭載可能です。注文時には500GB HDDのベイユニットを追加できます。
ディスプレイはIGZOです。標準だとFHD(1,920 × 1,080)解像度に非タッチ液晶となりますが、 WQHD(2,560 × 1,440)という高解像度なものに変更することもでき、さらにWQHDにはタッチディスプレイもあります。また、入出力ポートは非常に充実しています。13.3インチサイズながらD-subや有線LANポートも装備していて、もちろんUSBポートは合計で3つ、HDMIもあります。これならビジネス利用も快適でしょう。
バッテリーに関しても、注文時に51Whr(標準)と77Whrが選べるほか、上に書いたモバイルマルチベイにもバッテリー(28Whr)を搭載できる仕組みです。最長のバッテリー稼働時間は「33.1時間」で「ウソだろ?」と言うくらいの数値になっていますが、これは77Whrの内蔵バッテリー+モバイル・マルチベイのバッテリーを使用した場合のFHDディスプレイモデルの稼働時間です。これ、ひょっとして「日本一」なんじゃないか、と(詳しく確認してません)。
サイズは13.3インチとしては比較的小さいほうです。しかし、D-subや光学ドライブ(モバイルマルチベイ)を搭載しているためか、最厚部は2センチ近くあります。また、重量についても、このような筐体構造なので、かなり幅があります。標準的に「FHD液晶+DVDスーパーマルチドライブ」という構成だと1.28 kgですから、最近のモバイルノートとして軽量とは言えないまでも、十分に合格点をあげられる水準だと思います。
レビュー機のシステム構成です。第8世代のCore i7-8550U、20GBのRAM、512GB SSDを搭載する上位の構成でした。また、モバイル・マルチベイにはDVDスーパーマルチドライブが装備されていました。
2.筐体
富士通という、日本の伝統大手メーカーの製品なのでさぞや同梱物は多かろう、と思っていたのですが、実際それほどでもありませんでしたw しかし、しっかりした取扱説明書がついていて、このへんはさすが富士通、と思いました。
なお、画像右上にあるのは「モバイル・マルチベイ用カバー」です。光学ドライブを使用しない場合、軽量化のために光学ドライブの代わりにこのカバーを装着します。これは標準装備品ですね。また、ACアダプターはモバイルノートにふさわしい小型・軽量なものでした。
天板です。WS1/B3には「スパークリングブラック、ブラック&シルバー キーボード」と「アーバンホワイト、ホワイト&シルバー キーボード」の2パターンのカラーが設定されていて、レビュー機は「スパークリングブラック」でした。当初プラスティック製だとばかり思っていたのですが、実は「天板と底面にマグネシウム合金を採用した『超圧縮ソリッドコア』構造」だったんですよね。このような誤解は以前NECの「LAVIE Direct HZ」のレビュー時にも経験してまして…、どうやら私はハイエンドな素材には弱いみたいです…。ちなみにこの製品は約200kgfの天板全面加圧試験をクリアしているなど、とんでもなく頑丈です。
左側面です。画像左側が後部(ヒンジのあるほう)、右側が前部ですが、後部に行くに従って厚みを増しています。しかし、13.3インチサイズということで、手に持った感じは悪くありません。むしろ薄型の製品よりも収まりがいいと感じました。
ポート類は画像左からDC-IN、LAN、通気口をはさみD-sub、HDMI、USB Type-C、オーディオジャックです。
右側面です。画像左からUSB 3.0、光学ドライブ(モバイル・マルチベイ)、USB 3.0、ケンジントンロックです。
この製品の特徴は何と言ってもこれ、「13.3インチにして光学ドライブ内蔵」というところですよね。光学ドライブを内蔵したモバイルノートは他にPanasonicのLet’s Noteシリーズがありますが、かなりの少数派であることは間違いありません。
前面です。この製品は側面に光学ドライブを装備していることもあり、前面にもいろんなものがあります。
SDスロットは前面ですね。また、各種LEDインジケーターもついてます。それと、画像右に見えるのがスピーカーです。この製品は前面にステレオスピーカーが配置されています。
背面には何もありません。
底面です。こちらも、なんだっけ、あ、そうそう「超圧縮ソリッドコア構造」です。画像上が後部(ヒンジのあるほう)で、バッテリーは着脱式になっているのがわかると思います。また、中央にある縦長の開口部は、
RAMのスロットです。ただ、スロットは1つしか見当たりません。メーカーによれば「4GBオンボード」となっていたので、このスロットには4GB~16GBのRAMを1枚挿せる、ということです。
キーボードです。日本語配列、86キーで、キーピッチは19 mm、キーストロークは1.2 mmとなっています。また、この画像を見るとパームレストが小さめですよね。そのぶんキーの配置に余裕がある、ということです。この発想は私がメインに使用しているThinkPadシリーズにも共通します。実際に使ってみると、「見たまんま」です。つまり、キーボードは非常に打鍵しやすく、パームレストは少しばかり小さくて使い始めのうちは若干違和感があります。
それと、この製品は標準で指紋センサーが装備されます。パームレスト右側にあり、スライド式(センサーの上で指を滑らせる方式)です。また、タッチパッドには物理クリックボタンが2つあります。使いやすさという点では物理ボタンがついていたほうがいいですよね。
キートップはフラットです。また、バックライトは装備されません。
富士通らしい配慮だと思います。この製品は場所によってキーの重さが異なります。中央部の、主にアルファベットのあるあたりが重く、周辺部(つまり、小指などでタイプするキー)が軽くなっています。
電源ボタンの横に「ECOボタン」がありました。これを押すと、瞬時に省電力モードに移行します。Windows 10なら、OSの機能で割と簡単に切り替えられますけどね…。
ヒンジを開いて電源を入れてみました。なんか、「トラディショナルなノートPC」という風情があります。塊感もあって、個人的にはカッコいいと思います。
正面から見るとこんな感じです。最初に思ったのが、「Fujitsuのロゴって、ずーっと前からこうだよなあ」ということです。この製品がトラディショナルに見えたのはこのロゴの影響もありますね。なんか安心感があります。
この製品の横幅は315 mmで、13.3インチモバイルノートとしては特に大きい方ではありませんが、例えばDELL XPS 13(横幅302 mm)のような狭ベゼルの製品よりは1センチ前後大きいです。それもあって、ベゼル幅は太いというほどではないにせよ、それなりの幅はあります。
ヒンジを最大開口したところです。開口角度は十分にありますが、最近はヒンジが180度開口するクラムシェルノートも多いですからねえ。ただ、これで実用性には全く問題ないと思います。
3.使用感
ディスプレイ
パソコン用のIGZOディスプレイをテストするのは、たぶんこれが初めてです。さすがに明るく、発色も素晴らしいですね。この製品には光学ドライブも内蔵されているため、映画とかMV(音楽ビデオ)などのコンテンツを楽しむ機会もありそうなので、このように美しい液晶画面は大きなメリットになります。一方、この製品はオプションでWQHDディスプレイも選択可能です。その場合、2月16日現在の追加料金は8,800円(非タッチ)と、比較的手頃です。ビジネス利用であればFHDでも十分すぎるくらいだと思いますが、映像コンテンツをさらに楽しみたいのであれば、WQHDディスプレイにするという手もあるでしょう。
キーボード
これはいい!と思いました。かなりの静音でありながら打鍵感も確実です。ウインタブは最近メカニカルキーボードに傾倒しているわけですが、このサイズのモバイルノート用キーボードの王道は「確実に打鍵できて打鍵音が静か」ということだと思います。その意味ではこの製品のキーボードは満点をあげてもいいと思います。
また、上に書いたとおり、このキーボードは場所によってキーの重さを2段階にしているとのことですが、使ってみてもほとんど実感はありませんでした。キーの重さを強く意識してみてようやくその差を認識できるという感じです。ただ、これは悪い意味で書いているのではなく、要するに「自然だ」ということです。ユーザーがメカ的なものを意識することなく、結果的に気持ちよく使えるように作る、というのが実は一番難しいことだと思いますしね。
スピーカー
製品価格というか、製品の格からみて不十分だと思います。スピーカーの配置は悪くなく、ステレオ感はしっかり出ますが、肝心の音質があまり良くありません。ややこもり気味ですし、高音ばかりが印象に残り、低音は弱いです。製品ページを確認すると「Waves MaxxAudio(DELL製品にも採用されています)」ということなのですが、残念ながらその効果は実感できませんでした。
最近はHPなど、モバイルノートでもスピーカー品質にはかなりの力を入れているメーカーが多い中、富士通にしては少しレベルが低いと思います。ましてやこの製品は光学ドライブを内蔵し、DVD鑑賞なんかもできる製品ですから、スピーカー品質についてはもう少し「富士通の本気」を発揮してもらいたかったです。
バッテリー
この製品のセールスポイントの1つに長時間のバッテリー稼働というのがあります。レビュー機にはLサイズ(77Whr)のバッテリーが搭載されていて、レビュー機のスペックだと公称のバッテリー稼働時間は22.3時間となっています。
「ディスプレイ輝度を50%から75%にちょくちょく変更しつつ、バックグラウンドでYouTubeの音楽動画を流し(内蔵スピーカーで音量30%~50%)、テキストライティングやWebブラウジングをして1時間使用」した結果、バッテリー消費は約10%でした。つまり、22.3時間は持ちません。ディスプレイ輝度を落とし、テキストライティングやOfficeソフトの使用のみに絞れば稼働時間はさらに伸びると思いますが、22.3時間も使える気はしません。
ただ、22.3時間というのを抜きにして、一般的なモバイルノートとしてみた場合は優秀です。私はこれまで多くのモバイルノートやスタンダードノートの実機レビューをしています。例えばDELL XPS 13も「21時間(レビュー実施時のモデル)」という公称値でしたが、実際のところ「10時間も使えるかどうか…」と言うくらいでした。このWS1/B3に関しては、そんなに気を使わなくても10時間は行けると思いますし、私の経験上、実際に10時間充電なしで使えるノートPCはほぼ試用したことがありません。たとえ公称値がどうあれ、です。
4.性能テスト
この製品はCore i7搭載機なので、「ドラゴンクエスト X ベンチマーク」「ドラゴンズドグマオンライン(DDON)ベンチマーク」「3D Mark」そして「PC Mark」をやってみました。
参考:
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 9,643
HP Spectre 13(2017)(Core i7-8550U): 8,727
HP Spectre x360(Core i7-7500U): 8,385
HP Spectre x2(Core i5-7260U): 8,207
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 8,106
HP ENVY 13(Core i7-8550U): 7,646
DELL XPS 13(Core i5-7200U): 7,405
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 7,230
東芝 dynabook VZ72/B(Core i7-7500U): 7,224
FRONTIER NLK(Core i5-7200U): 7,162
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 6,986
マウス m-Book F(Core i7-7500U): 6,974
Microsoft Surface Pro(Core i5-7300U): 6,902
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U): 6,775
HP Spectre 13(Core i7-6500U): 6,505
DELL Inspiron 13 5000(Core i3-6100U): 6,418
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U): 6,352
Cube Mix Plus(Core m3-7Y30): 6,293
HP Spectre 13 x360(Core i5-6200U): 5,859
参考:
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 4,706
HP Spectre 13(2017)(Core i7-8550U): 4,210
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 4,115
HP Spectre x360(Core i7-7500U): 4,003
DELL XPS 13(Core i5-7200U): 3,958
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 3,787
HP Spectre x2(Core i5-7260U): 3,670
HP ENVY 13(Core i7-8550U): 3,634
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 3,592
東芝 dynabook VZ72/B(Core i7-7500U): 3,540
FRONTIER NLK(Core i5-7200U): 3,412
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U): 3,394
HP Spectre 13 x360(Core i5-6200U): 3,304
HP Spectre 13(Core i7-6500U): 3,283
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U):3,190
ドラクエベンチに関しては、Core i7-8550U搭載機としては若干低めかと思います。しかし、もちろん異常値ではありません。この辺は富士通の調整が保守的というか、安全志向になっているのが要因だろうと思います。
参考:
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 4,365
HP Spectre 13(2017)(Core i7-8550U): 3,921
HP ENVY 13(Core i7-8550U): 3,487
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 3,436
DELL XPS 13(Core i5-7200U): 3,379
FRONTIER NLK(Core i5-7200U): 3,326
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U): 3,260
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 3,085
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 3,068
HP Spectre 13(Core i7-6500U): 2,869
HP Spectre x360(Core i7-7500U): 2,867
マウス m-Book F(Core i7-7500U): 2,755
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U):2,751
Microsoft Surface Pro(Core i5-7300U): 2,558
DDONに関しても、ドラクエよりは良好なスコアですが、NECのLAVIEやHP Spectre 13よりも若干低めです。ただ、ドラクエにしてもDDONにしても、このくらいの結果だとLAVIEやSpectreと使用感は全然変わらないと思います。
参考:
HP Spectre x2(Core i5-7260U): 1,114、4,389
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 1,097、4,471
HP Spectre 13(2017)(Core i7-8550U): 1,000、4,304
HP Spectre 13 x360(Core i5-7200U): 932、3,994
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 930、4,028
HP ENVY 13(Core i7-8550U): 923、3,857
FRONTIER NLK(Core i5-7200U): 877、3,991
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 871、3,710
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U):857、3,608
マウス m-Book F(Core i7-7500U): 811、3,782
Microsoft Surface Pro(Core i5-7300U): 790、3,812
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U):784、3,608
HP Spectre 13 x360(Core i5-6200U): 749、3,414
Cube Mix Plus(Core m3-7Y30): 680、2,889
マウス LuvBook J (Core i5-5200U): 626、2,631
Lenovo Miix 700(Core m5-6Y54): 611、2,469
ドスパラ Critea DX10(Core i3-6100U): 577、2,780
※左からFire Strike、Sky Diverのスコア
3D Markでも傾向は同じです。スコアのばらつきは小さめですけどね。富士通のほうでクロックスピードをあまり上げていないのかもしれません。WS1/B3はやや安定志向に振った調整がなされているのだろうと思います。繰り返しますが、このくらいのスコア差だと、全然体感差は出ないと思います。
参考:
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 3,704
HP ENVY 13(Core i7-8550U): 3,534
HP Spectre x2(Core i5-7260U): 2,822
最後にPC Markです。まあ、このくらいの差は無視していいかもしれないですね。Core i7-8550Uを搭載した製品としては妥当なスコアだと思います。
5.まとめ
富士通 LIFEBOOK WS1/B3は富士通WEB MARTで販売中で、2月16日現在の価格は税込み153,619円から、となっています(20%オフです)。レビュー機の構成だと226,227円となります(RAM20GBと512GB SSDというのが価格を引き上げています)。また、ウインタブの「上級モバイルノート勝手基準(Core i5/RAM8GB/256GB SSD/FHDディスプレイ)」に合わせると177,811円となります。これ、光学ドライブを含んでの価格です。
美しいディスプレイ、非常に出来のいいキーボード、豊富な入出力ポート、極めて頑丈な筐体と、ビジネス利用を含め、どんな利用シーンでも快適に使えるパッケージングになっていると思います。また、標準装備の光学ドライブを含め、モバイル・マルチベイの存在も大きいですね。少しお金はかかりますけど、予備のHDDとか予備のバッテリーとかを一緒に購入することもできるので、よりニーズに合った使い方、さらに言うと、他社のモバイルノートには真似の出来ない使い方が可能です。
富士通ファンの人はもちろん、初めてパソコンを購入する初心者の人も、バリバリのビジネスマンも満足できる製品だと思います。