富士通が「定番」とも言える15.6インチスタンダードノート「LIFEBOOK AHシリーズ」をリニューアルしました。日本のPC市場では非常に強い富士通のスタンダードノートですが、このニューモデルは筐体に大きな変化はないものの、「上位モデルが一段と強力」になっています。なお、LIFEBOOK AHシリーズにはカタログモデルとカスタムメイドモデル(Web直販モデル)がありますが、この記事ではカスタムメイドモデル(WA1/D3、WA3/D3、WA-X/D3)を中心にご説明します。
1.スペック
富士通WEB MARTで販売されるカスタムメイドモデルは注文時にある程度構成を変更することができます。ただし、選択するCPUによってカスタマイズに制約がありますので、詳細は製品ページでご確認下さい。CPUは「非常にワイド」でCeleronからCore i7までを選べます。最も低価格となる「Celeron 4205U」という型番はこれまでウインタブで取り上げたことがありませんが、開発コードネームがWhiskey Lakeと新しく(Celeronとしては珍しくもあります)、2コアで、Passmarkが公表しているベンチマークスコアが1,951と、それほど高性能なものではありません。ウインタブでおなじみの開発コードネームGemini LakeのCeleron N4100(4コア)が2,270、N4000(2コア)が1,435なので、「その中間」くらいのスコアですね。ただ、このCPUはまだ新しく、搭載例も少ないことからPassmark公表値の算出に使われたサンプル数がわずかに2しかなく、今後評価が変わってくる可能性があります。
また、Core iプロセッサーのラインナップもちょっと変則的です。Core i3とCore i5はノートPC用としては一般的なWhiskey Lakeですが、Core i7だけはゲーミングノートにも使われる第9世代、Coffee LakeのCore i7-9750Hです。なので、CPU性能に関しては、Core i7モデルのみ飛び抜けて高い、と言えます。一方でGeForceやRadeonなど、外部GPUの設定はありません。
RAMは最低で4GB、最大で32GBまでと、非常に幅広く容量を選べます。Core i3以上のCPUを選ぶ場合は8GB以上を選ばれることをおすすめします。また、動画のエンコーディングなどに使う予定があるのなら、16GB以上にしたほうがいいかもしれません。
ストレージもかなりワイドバリエーションですね。ご利用目的に応じて容量を選べばいいと思いますが、ウインタブでは選択するCPUに関わらず、ストレージがHDDのみとなる構成はおすすめしません。というか、ウインタブは読者の製品選びにケチをつけたりしませんが、ストレージに関してだけは「HDDだけ、というのはおやめなさい」と強くアドバイスさせていただきます。少なくともOSだけはSSDにインストールされるような構成を選んで下さい。
このニューモデルの最大の特徴が「4K解像度の有機ELディスプレイが選べる」という点です。応答速度1ms、コントラスト比100,000:1、DCI-P3色域カバー率100%という高精細かつ高速なものになっていますので、クリエイターの人が使うのにも向くと思われます。ただし、有機ELの場合、「焼き付き(画面に残像が表示されたままになる状態)」が発生する場合があり、一度焼き付いてしまうと元に戻せなくなってしまいます。この製品では「画面の前に人がいることをセンサーが検知して画面の明るさを自動調整」など、ある程度対策はなされているようですが、PCの場合は長時間ディスプレイが表示されっぱなしという利用パターンも少なくないので、ズボラな人は注意したほうがいいです(富士通の注意事項はこちら)。
また、有機ELはCore i5以下のCPUでは選択ができず、必ずCore i7搭載にする必要がありますので、価格面でもやや高価になってしまいます。
入出力ポートは15.6インチノートとして十分な水準だと思います。またSDカードリーダー(micro規格ではない)や有線LANポートもしっかり備えています。それと、当然のように光学ドライブも標準装備され、オプションでBlu-rayも選べます。
サイズは従来モデルから変化がありません。しかし、横幅は361 mmと小さめになっています。横幅が360 mm前後の15.6インチPCというのは2019年の水準だと珍しくもありませんが、富士通の場合はしっかり光学ドライブも装備していますし、(後述しますが)キーボードにもテンキーがついています。
2.筐体
左右のベゼル幅は7.8mmと、他社製品と比較して非常に細い、というわけでもありませんが、ナローベゼルと言っていい水準だと思います。
ドロップダウンタイプのヒンジ(ヒンジ開口時に天板が筐体後部に潜り込み、ディスプレイ面に適度な角度がつく構造)を採用しているので、開口時には下部のベゼルも細く見える効果があります。
天板はシンプルで、おなじみの富士通ロゴがあるのみ。しかし、塗装とかエッジ部分のラウンド処理に高級感がありそうです。
キーボードです。日本語(JIS)配列でキーピッチ約18.4mm、キーストローク約2.5mm、テンキーもしっかりついています。なお、有機ELディスプレイモデル(型番名WA-X/D3)のみバックライトが装備され、Core i7以上のCPUを搭載するモデルにはキートップ側面が透明になっている「プリズムクリア」タイプのキーボードが採用されます。また、キーボード面上部にあるスピーカーはONKYOとの共同開発です。
さすが富士通!と思えるのが底面の構造です。ユーザーが開口できるハッチがついていて、バッテリーの交換やRAMの増設がDIYでできます。
側面と入出力ポートの配置です。光学ドライブが残され、SDカードリーダーもmicro規格ではなくフル規格です。USBポートも合計4つと、全く不足ありません。
3.価格など
富士通LIFEBOOK AHシリーズ(WA/D3)は富士通WEB MARTで販売中で、10月15日現在の価格は税込み100,144円から、となっています(会員価格)。また、有機ELディスプレイのWA-X/D3は後日の発売となり、10月15日時点ではまだ注文ができません。
富士通WEB MARTではMy Cloudという会員制度(登録無料)があり、会員登録をすると割引率が拡大します。この製品の場合、非会員だと16%OFF、会員だと20%OFFなので、購入にあたっては必ず会員登録をするようにして下さい。
ウインタブでも富士通のPCを何度も実機レビューさせていただいておりますが、「なんだかんだ言って快適」です。また、「世界最軽量のモバイルノートPCなのに有線LANポートがついている」ようなことをするメーカーなので、その妥協のない、真面目なものづくりの姿勢には頭が下がります。日本のノートPC市場で最も販売台数が多いのが15.6インチのスタンダードノート、そしてこのジャンルで最も大きなシェアを握っているのが富士通やNEC、東芝といった伝統大手メーカーです。伊達にトップシェアなわけではなく、日本人の嗜好に合わせたものづくりができているからこそのトップシェアだと思います。
コメント
富士通はバッテリーを自分で交換できるのは便利ですよね
ただ数年前に買った時は付属の謎アプリ群に辟易してそれっきりになっています。いまはどんな感じなのでしょうか
筐体はよさげなだけに気になります