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楽譜作成ソフトの先駆者「Finale」が開発終了、35年間の歴史に幕が!乗り換えの候補も検討してみます

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こんにちは、natsukiです。去る8月26日、音楽界隈に衝撃的なニュースが飛び込んできました。これまで、楽譜作成ソフトの先駆的存在であり、少なくともかなりの期間デファクトスタンダードになっていたソフトである「Finale」の開発・販売終了が突然発表されたんです。先駆者の宿命として、旧来の操作性をある程度維持しながら更新を重ね続けたことによるユーザーインターフェースの複雑化、直感的でない操作、バグの多さなどを抱え、新興ソフトに追い上げられてきた部分は確かにあるものの、それでも、依然として非常に高度な機能を備えてアップデートを続けており、ここまで、「パソコンで楽譜を作る」ということにおいて業界の基準になり続けてきたことは間違いありません。あるいは、アマチュアユーザーにとっては、楽譜を書いてスコアとパート譜を管理し、しかも、パソコン上でとりあえずの演奏をさせて曲を確認までできるというのは、これはもう、Finale以前には事実上職業音楽家にしかできなかったことなわけで、全世界の音楽そのものの裾野を広げてきた意義は計り知れないでしょう。かくいう私も20年来のFinaleユーザーで、Finaleがあるからこそ、浄書や編曲や、ある程度の作曲も行えてきました(クォリティはさておき)。実際に、まさに所属する楽団で使う楽譜をFinaleで書いていたところに、突然のサポートメールでこのニュースを知らされました。今回の発表は青天の霹靂、非常にショックを受けています。

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もう7年も前、ウインタブに、下記のFinaleを含む楽譜作成ソフトの比較記事を書かせていただきました。そのときの記事に書いたように、当時すでに、他社楽譜作成ソフトが洗練されてきて、特に後述のDoricoの登場と成長は大きく、また、無料楽譜作成ソフトMuseScoreも充実してきていました。しかし、Finaleが築き上げてきた「財産」は非常に大きく、まさか無くなる日がこようとは夢にも思ってもいませんでした……

楽譜作成ソフトを比較 ― Finale 対 Sibeliusの2強時代から、ここ数年で大きな変動が!

1.MakeMusicおよびMUSIC EcoSystemsによる発表

makemusic
8月26日に行われた、Finaleの開発元であるMakeMusicの発表の要旨は、以下の通りです。(その後の追加発表も含みます)

・Finaleおよびその関連ツールは、今後アップデートされません。
・今後、Finaleの購入はできません。
・Finaleのサポートは、今後1年間継続し、2025年8月をもって終了します。(購入済みのFinaleの新規認証は永続)
・現在インストールされているFinaleは、今後も引き続き動作します。
・Finaleユーザーには、Doricoへの乗り換え特別割引プランを提供します。
・Doricoへの乗り換えプラン購入者には、Finale最終版となるFinale 27も付属させます。

4つめの、Finaleの継続利用について、この今後も動作しますというのは、すでに認証されているソフトに追加のオンライン認証などは必要ないということを意味しているだけです。一方で、当初の発表では、すでに購入済みのFinaleの新規認証も1年間だけとなっていて、これでは、例えば2025年8月以降にパソコンを換えたりしたらもう使えなくなることを意味しているので、大問題だったんですが、追って、すでに購入済みのFinaleの新規認証は永続することが追加で発表されました。ただし、次期WindowsなどのOS環境の変更による不具合まではサポートされません。この新規認証をいつまで続けるかとかはユーザーにとって非常に重要なことなのに、MakeMusicの発表には、率直に言って場当たり的なものが感じられると言わざるを得ません。インストーラーの提供も当面は続けるとのことではあるものの、とりあえず、ローカルに保存しておいた方がよさそうです。

Finaleからの乗り換え先として、先のウインタブの楽譜作成ソフト比較記事でも取りあげている「Dorico」が提示されています。そして、Doricoへの乗り換えプランを購入した場合には、Finaleの最終版となるFinale 27も付属させるとのこと。これ、どういう意味かというと、Finale専用のファイル形式は、そのままではDoricoに読み込むことはできません。そこで、これまでFinaleで作成したファイルをDoricoに移行するには、Finaleから、一旦、汎用的なファイル形式である「musxml」に変換して出力し、これをDoricoで読み込む必要があるんです。つまり、実質的に、従来のFinale用ファイルのmusxmlへのコンバーターとして、Finale 27を提供するということになります。

MakeMusic Sunsets Finale, Announces Partnership with Steinberg, Makers of Dorico:MakeMusic

また、Doricoへの乗り換え関連を含む、今回の件に関してのQ&Aページが提供されています。

Finale Sunset FAQ:MakeMusic

Finaleの日本での公式販売代理店であるMUSIC EcoSystems(サイト名はMI7 JAPAN)からは、上記の発表を受けて、8月28日付けで「Finaleおよび関連製品の販売、配布、サポート、WEBサイト、PRやロゴ使用などのすべての活動も、即日終了せざるを得ない状況」との発表がなされました。あわせて、Finaleを購入済みの場合、当面の間のインストーラーの提供と(記事執筆現在、期限は示されていません)、今後1年間の認証の保証がアナウンスされました。認証の期限に関しては、本家MakeMusicが永続に訂正したので、おそらくMI7 JAPANで購入したものも、永続になるとは思います。

また、Doricoへの乗り換えについては、「期間限定でDoricoシリーズの最上位であるDorico Proのクロスグレード版を特別価格20,900円で購入」とのプランが提示されました。

ただ、発表の書きぶりから、Finaleの開発終了は、MUSIC EcoSystemsにとっても寝耳に水の出来事だった様子がうかがえます。

Finaleの開発/販売終了のご案内 2024年8月28日:MI7 JAPAN(リンク先の内容は、今後、適宜更新される可能性があります)

2.Doricoとは?

dorico
Finaleの乗り換え先として示されている「Dorico」について、解説しておきます。開発元のSteinbergは、楽譜作成ソフトよりも先に、DTM(基本的にコンピューターのみで完結する音楽作曲・演奏)ソフト「Cubase」の開発で知られたメーカーです。2005年からヤマハの完全子会社になり、2016年末に楽譜作成ソフト「Dorico」をリリース。さすがのヤマハのノウハウを活かしたのか、またFinaleに対抗する楽譜作成ソフト「Sibelius」の有力スタッフが合流したこともあってか、洗練された新時代を感じさせる楽譜作成ソフトで、先の私のウインタブの楽譜作成ソフト紹介記事も、直接的にはDoricoのリリースに触発されて書いたものです。親会社がヤマハというのは、経営規模という面でも、日本メーカーなので、日本でのサポートの充実が期待できるという面でも安心です。

個人的にも、FinaleじゃなければDoricoだな、と思っていたソフトではあります。もっとも、Finaleの複雑怪奇な操作性をすでに体が覚えてしまっていて(笑)、テンプレートや設定などの蓄積もあるし、やりたいことは全部Finaleでできるし、プロではないので作業効率の追求なんかもあんまりしないので、結局乗り換えはせずに現在にいたるのですが。

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Doricoの側からも、今回の件について、リリースを行っています。

Finale ユーザーの皆様へ:Stainberg

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3.乗り換え候補の楽譜作成ソフト

実際問題として、楽譜作成ソフトは使うんで、これからは否応なしに他のソフトに乗り換えることになります。そこで、有力な乗り換え先を、いくつか検討してみます。それぞれ特性が異なるので、結局は、各自が「何を必要とするか」で選ぶことになるでしょう。

Steinberg「Dorico Pro」

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上述のように、Finaleとしても公式に乗り換えを推奨しているのが、「Dorico Pro」です。Doricoシリーズの最上位版なので、機能制限はありません。Finaleユーザーは、買い切りで20,900円のプランが用意されています。「Finaleでできること」を、比較的そのまま引き継ぐなら、これになります。

Dorico:Steinberg

Avid「Sibelius」

ながらくFinaleと双璧をなした楽譜作成ソフト「Sibelius」。もっとも、経営はかなり厳しかったようで、なんやかんやでスタッフが大勢抜けて、彼らがDoricoの作成スタッフになったわけですが、その辺はまあいいでしょう。ただ、乗り換え先としては、価格が……。最上位版「Sibelius Ultimate」の、Finaleからの乗り換え版は、買い切り版はなくサブスクリプションのみで年間18,370円。通常版の買い切りは92,290円。アカデミック版の買い切りは46,090円。うむ、高い。なお、これら価格は販売サイト掲載の価格表と違いますが、私が実際にカートまで行って確認した記事執筆現在の価格です。

私は、DoricoもSibeliusも無料版を試用した程度ですが、そのくらいでのイメージとしては、少なくとも私が使うレベル(オーケストラスコアは書く、よっぽど特殊な記譜や楽器は扱わない)だと、機能面(操作性やUIではなく)ではそんなに変わらない印象です。すると、価格から見ても、経営の安定性から見ても、Doricoを蹴ってまでSibeliusにする動機は乏しく感じます。もちろん、このあたりは好みや、具体的にSibeliusの個別の機能が欲しい場合などもあると思います。あ、DoricoになくてSibeliusにあるものとしては、楽譜スキャン機能がありますね。もっとも、Sibeliusのスキャン機能は別ソフトの簡易版なので、機能が限定的ですが。

Sibelius:RygaSound

カワイ「スコアメーカー」

日本の楽譜メーカーカワイが開発する楽譜作成ソフトが、スコアメーカーシリーズです。他の楽譜作成ソフトとの大きな違いとして、紙やPDFの楽譜からのスキャン性能に注力しています(Finaleは2014年以降スキャン機能をオミット、Doricoシリーズはスキャン機能無し)。2014年版までのFinaleや、下記のMuseScoreも楽譜スキャン機能は備えますが、その認識精度とスキャン設定や修正の利便性においては、スコアメーカーシリーズが頭抜けています(例えば、スキャン元の楽譜の画像を見ながら、スキャンの設定を調整したりできる)。その分、インターフェースも独特です。正直、私はスキャン機能をある程度使うんですよね、そのために、Finaleでスキャン機能の付いた最後の版であるFinale 2014を生かしてあるくらいなんで。なので、これも魅力的な選択肢になります。

scoremaker-zero
ところがこれ、購入プランにちょっと悩ましいものがあります。というのは、最新版の「スコアメーカーZERO」は買い切り版が無く、完全サブスクリプションのみなんです。で、最上位版「スコアメーカーZERO プラチナム」の年額は、Finaleからの乗り換えプランで16,280円(2年目以降も同額)。うーん、やはり高い。

スコアメーカーZERO:KAWAIコンピュータミュージック

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その一方で気になるのが、開発終了した型落ちの「スコアメーカー Ver.11」。これは買い切りで、本家カワイのサイトでは販売終了したものの、現在はソースネクストで販売中です。そして、9/3までセール対象になっていて、最上位の「スコアメーカー Ver.11 Platinum」が、通常価格50,600円のところを21,980円。なにぃ、安いぞ!? デメリットは、もちろん型落ちということ。もっとも、ソースネクストからの販売とはいえ、1年でサポート終了のFinaleと違って、ちゃんとカワイのサポートを引き続き受けることができます。これは、迷う。あとは、スコアメーカーは、演奏音源が貧弱なんですよね。まあ、それは楽譜作成ソフトの本来機能ではないかもしれませんが。

スコアメーカー Ver.11:ソースネクスト

MuseScore

musescore
無料の楽譜作成ソフト「MuseScore」です。MuseScoreは、無料ながらも、機能の充実は著しいものがあります。もうひとつ、MuseScoreの独自性として、オンラインサービスとの連携があります。例えば、楽譜をスキャンする場合は、MuseScoreのアカウントでWEBサービスにPDFをアップロードするという、独特の操作を行います。また、各自が自作楽譜などをアップロードするコミュニティサイトの充実も特徴です。もっとも、コミュニティサイトを十全に利用するためにはサブスクリプションが必要だったりしますが。ともかく、これはこれで、常にオンラインな現代的環境を生かした、独特の楽譜作成ソフトの方向性を開拓していっています。

MuseScore

4.まとめ

冒頭にも書いたように、Finaleといえば、「パソコンで楽譜を作る」ということそのものの先駆者であり、業界のスタンダードであったソフトでした。私がはじめて目にしたのは高校生の時で、そのときの単純に「パソコンでこんなこともできるんだスゲー」という感動は今でも覚えています。高校時代は高くて手が出ませんでしたが、その後、大学時代に購入して使いはじめて以来、20年以上にわたって愛用し続けてきました。そしてまさに使用中に、開発終了のメールが届いたのは先述の通りで、自身の音楽活動のそばに、いつも寄り添い続けてくれたソフトです。今回の開発終了のニュースは、驚きとともに、一時代が去って行く複雑な感慨を覚えずにはいられません。

5.関連リンク

Finale関係

MakeMusic Sunsets Finale, Announces Partnership with Steinberg, Makers of Dorico:Finale開発元MakeMusicからのアナウンス
Finale Sunset FAQ:MakeMusicのFinale開発終了に関するQ&A(英語)
Finaleの開発/販売終了のご案内 2024年8月28日:Finaleの日本の販売代理店MI7からのアナウンス
Finale ユーザーの皆様へ:Doricoの開発元SteinbergによるFinaleからの乗り換えについてのアナウンス

乗り換え候補

Dorico:Steinberg
Sibelius:RygaSound
スコアメーカーZERO:KAWAIコンピュータミュージック
スコアメーカー Ver.11:ソースネクスト
MuseScore

執筆者:natsuki
ウインタブをきっかけに、海外通販で奇天烈なガジェットを漁ることにハマる。趣味は旅行(自然も史跡も)、アマチュアオーケストラなど。自分の知識欲も満たせるので、楽しんで記事を書いています。興味を持ったもの、面白いと思ったものを、読者の皆さんと共有できれば幸いです。
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