こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。モバイルノートPCのベストサイズは個人の主観に左右されるもので、どのサイズが一番いいか、なんてことは客観的に断言できるものではありません。以前マウスコンピューターの展示会に参加した際に、マウスの方が「13.3インチは日本人が大好きなサイズなんですよね」と発言されていたのがずーっと記憶に残っていて、いつしか「13.3インチこそモバイルノートの王道」なんて考えを持つに至りました。ThinkPad 13を購入したのもそんな深層心理が働いたからかもしれません。
今回の実機レビュー機「DELL Inspiron 13 5000」は13.3インチのキーボード非分離型2 in 1なので、ノートPCと考えた場合は私にとっての「王道サイズ」なわけですが、実はこれまで紹介記事も書いたことがないし、しっかりチェックしたこともありませんでした。深い理由はありません。でもDELLにはXPS 13という強烈な製品がありますし、若干小さいサイズですがXPS 12というSurfaceタイプの2 in 1もラインナップされていて、Inspironはどうしても地味な印象になりがちだったのかもしれません。そんなわけで十分な予備知識もなく実機レビューをやってみたわけですが、やっぱり安心感ありますね、DELL。
1.スペック
OS: Windows 10 Home 64ビット
CPU: Intel Core i3-6100U / Core i5-7200U / Core i7-6500U
RAM: 4GB / 8GB
ストレージ: 1TB HDD / 256GB SSD
ディスプレイ: 13.3インチ(1,920 x 1,080)
ネットワーク: 802.11 a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0
入出力: USB 3.0 × 2、USB 2.0、HDMI、SDスロット、オーディオ、DC-IN
カメラ: Webカメラ
バッテリー: 42Whr
サイズ: 324 x 224.8 x 19.5-20.4 mm / 1.62 kg
最初にスペック表を確認してみます。DELLはもはやBTOの会社とは言えず、構成変更の余地は決して大きくありません。この製品もベースグレードが3つ用意されています。
スタンダード(5368):Core i3、RAM4GB、ストレージ 1TB HDD
プレミアム(5368):Core i7、RAM8GB、ストレージ256GB SSD
プレミアム(5378):Core i5-7200U、RAM8GB、256GB SSD
※プレミアムモデル(5378)は最近追加されたもので、この製品のみCPUの世代がKabylakeとなります。
価格については後述しますが、Inspironという製品ブランドは「スタンダードクラス」に位置づけられる製品でもあり、筺体品質などを総合するとCore i3モデルのほうが主力なのかな、と思います。もちろんプレミアムモデルも含め、スペック表から見るかぎりコストパフォーマンスは非常に高いです。
試用機はスタンダードモデルでした。またストレージは500GB HDDですが、現在販売中のモデルだと1TBに変更されています。
2.筺体
同梱物です。本体のほか、電源ケーブル、ACアダプター、取扱説明書と非常にシンプルで、変換ケーブルなどは入っていませんでした。なお、最近よくレビューしている中華系の製品と異なり、DELLなど日本企業(あるいは日本法人)の試用機は新品ではないので、実際の同梱物とは若干内容が異なる可能性があります。
筺体はプラスティック製と思われますが、質感は決して悪くなく、価格以上の品質であると思います。DELLの製品は基本的に筺体に剛性感があり、使っていても安心感があります。
左側面です。画像左からDC-IN、HDMI、USB 3.0 × 2、オーディオジャックです。
右側面です。画像左から電源ボタン、音量ボタン、SDカードリーダー、USB 2.0、Nobleロックです。電源ボタンと音量ボタンがこの位置にあるということで、「そういえばこれ2 in 1だっけ」という気になります。それくらいこの製品は見た目クラムシェルノートです。
前面(開口部)です。画像の中央にステータスインジケーターがついています。ただ、目立ちません…。試用が終わってから画像を加工していてようやく思い出した、というレベル。
背面は2 in 1らしいヒンジが目立ちます。また、画像中央部に通気口がついています。
底面です。上下に長いゴム足がついています。また、画像上部左右にステレオスピーカーがついています。バッテリーは内蔵されていて、バッテリーだけを着脱することはできません。
キーボードです。キーのサイズはやや小さめ、キーストロークもかなり浅いですが、打鍵感はいいです。またレイアウトにもクセがなく、短時間の試用でしたが誤入力などはほとんどありませんでしたし、「あれ、あのキーはどこだっけ」ということもありませんでした。
キーの表面はフラットで特に加工はありません。また、このキーボードはバックライトがついています。もちろん赤とかではなく、普通に白く光ります。製品の価格帯を思えばうれしい機能だと思います。
キーボード非分離型2 in 1ということで、「テントモード、スタンドモード、タブレットモード」にしてみました。筺体のヒンジがしっかりしているため、簡単かつ確実に変形が可能です。いやね、さらっと書いてますけど、筺体の基本パーツの動作に安心感を持てるって、実は大事なことなんですよね、と中国製品をしょっちゅう試用している者として力説したいです。
最後にタブレットモード時の側面画像を。他のキーボード非分離型2 in 1と同様に、この製品も一枚板のようにはならず、どうしても隙間が開いてしまいます。ただし、タブレットとしての使用感は悪くありません(重いですけど)。
ひと通り筺体を説明しましたが、全体的に非常にしっかりした筺体だと思います。筺体素材とかにツッコミを入れてしまうとアレですが、高級感のあるなしとかではなく、工業製品として見ると、仕上がりは素晴らしいと思います。これって本当にいい意味でDELLらしいと思います。
3.使用感
いつものようにテキスト入力を中心にしばらく使ってみました。ひとことで言ってしまうと「使いやすい」です。慣れを必要とする部分がかなり少ないと思いました。上の方にも書きましたが、キーのサイズがやや小さく感じられ、キーストロークも浅いので、使い始めは若干不安感を抱いたものの、実際にテキスト入力してみると打鍵感もよく、すぐに慣れました。最近は高級なノートPCほど薄さを追求しているため、キーストロークが浅めになっています。浅いから気持ちよくない、なんてことはなく、浅くても打鍵感の良さというのはちゃんと演出できるんですよね。
また、13.3インチというサイズから、実際の利用シーンでは9割型ノートPCとして使うことになると思いますし、実際そんな感じで試用したのですが、テントモードやスタンドモードというのも動画視聴やゲーム(外付けコントローラーを使う前提)をする際には結構便利なんですよね。また、ノートPC形態のときはこの製品がタッチ対応のディスプレイであることを忘れてしまいますが、スタンドモードやテントモード、タブレットモードにしてみて初めてそれを思い出す、という感じです。
ただし、1.6 kgという重量は決して軽いとはいえません。私は最近ThinkPad 13(1.44 kg)を持ち歩いているので、この重量でもモバイルノートPCとして(個人的に)許せますが、タブレットとして使う場合は膝の上かテーブルの上でないと長時間は使えないだろうと思います。まあ、ここまでの重量だといちいち指摘しなくても読者の方も容易に想像がつくと思いますけどね。
4.性能テスト
この製品には「電源オプション」がいくつか設定されていました。
これまでの経験上、タブレットやモバイルノートだと「バランス」と、あとせいぜい「省電力」というメニューがあるくらいなのですが、この製品の場合は「高パフォーマンス」などの設定も可能でした。当初「省電力」の状態でテストをしてみたら、Core i3機としてはずいぶんと低いスコアになってしまったため、「高パフォーマンス」に変更してテストをしてみました。
参考:
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 7,230
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 6,986
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U): 6,775
HP Spectre 13(Core i7-6500U): 6,505
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U): 6,352
HP Spectre 13 x360(Core i5-6200U): 5,859
Lenovo ThinkPad 13(Core i3-6100U): 5,409
ドスパラ Critea DX11(Core i3-6100U): 4,956
Lenovo Miix 700(Core m5-6Y54): 4,741
DELL XPS 12(Core m5-6Y57): 4,658
Lenovo Yoga 700(Core m3-6Y30): 4,004
参考:
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 3,787
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 3,592
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U): 3,394
HP Spectre 13 x360(Core i5-6200U): 3,304
HP Spectre 13(Core i7-6500U): 3,283
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U):3,190
Lenovo ThinkPad 13(Core i3-6100U): 2,515
Lenovo Miix 700(Core m5-6Y54): 2,059
DELL XPS 12(Core m5-6Y57): 1,992
Lenovo Yoga 700(Core m3-6Y30): 1,150
ドラクエベンチに関しては標準品質だとCore i3機としてかなりの高スコア、逆に最高品質では物足りないスコアとなりました。特に最高品質については数回テストしてみましたが、スコアが2,000を越えることはありませんでした。この製品の場合、比較的負荷が小さい状態だとパフォーマンスが出やすい設定になっているのかもしれません。もともとCore i3機で高負荷のゲームをする目的を持っている人は少ないと思われるので、これはこれであり、というかいい設定になっていると思います。
参考:
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U): 3,260
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 3,085
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 3,068
HP Spectre 13(Core i7-6500U): 2,869
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U):2,751
HP Spectre 13 x360(Core i5-6200U): 2,484
Lenovo ThinkPad 13(Core i3-6100U): 2,393
ドスパラ Critea DX10(Core i3-6100U): 1,960
DELL XPS 12(Core m5-6Y57): 1,844
Lenovo Yoga 700(Core m3-6Y30): 1,220
ドラゴンズドグマオンライン(DDON)のベンチマークテストです。ドラクエの場合、テストごとに比較的スコアが変動しやすい傾向がありますが、DDONのほうは安定したスコアになります。ただ、このゲームはドラクエよりもかなり重いので、Atom機だとまともにテストできないんですけどね。で、結果はと言うと、同じCore i3を搭載しているThinkPad 13とほぼ同スコアになりました。ThinkPad 13は私が所有している製品なのですが、印象としては「そんなもん」だと思います。つまり、ThinkPad 13とほぼ同性能、という意味です。私は毎日幸福感をいだきつつThinkPadを使っていますので、この表現はポジティブなものとご理解ください。
参考:
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 885、3,768
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 871、3,710
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U): 857、3,608
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U): 784、3,608
HP Spectre 13(Core i7-6500U): 705、3,256
HP Spectre 13 x360(Core i5-6200U): 749、3,414
Lenovo ThinkPad 13(Core i3-6100U): 679、3,183
Lenovo Miix 700(Core m5-6Y54): 611、2,469
ドスパラ Critea DX10(Core i3-6100U): 577、2,780
DELL XPS 12(Core m5-6Y57): 511、2,113
Lenovo Yoga 700(Core m3-6Y30): 300、1,240
※左からFire Strike、Sky Diverのスコア
Core i3機の場合、Time Spyは論外、Fire Strikeでもかなり無理があるので、Sky Diverくらいが妥当なレベルのテストとなります。ここでもThinkPad 13とほぼ同スコアになっていて、やはり予想通りというか、Core i3機として妥当な性能を持っている、と思います。余談ですが、オンラインゲームなどの、負荷の高い作業をしないのであればCore i3-6100Uというのはかなりコスパの高いCPUだと思います。きっと最新のKabylakeならもっと高性能なんでしょうね。
5.まとめ
DELL Inspiron 13 5000はDELL公式サイトで販売中で、価格は下記のとおりです。
スタンダード(5368):Core i3、RAM4GB、1TB HDD:86,378円(税込み)
プレミアム(5368):Core i7、RAM8GB、256GB SSD:124,178円(税込み)
プレミアム(5378):Core i5、RAM8GB、256GB SSD:113,378円(税込み)
※クーポン割引などを勘案しない、定価ベースです
私がDELL製品に対して持っているイメージは「やや大ぶりで重く、でも頑丈で安定感のある挙動」です。ただし、最近はXPS 13のようにデザインがよくて軽く、小さい、というブレイクスルーを実現していて、固定概念を捨てなくてはならない、と思ってもいます。
じゃInspiron 13 5000は?といえば、その中間、という気がします。無骨、ということは決してないければ、XPS 13のような尖ったデザインでもないし、高級感にあふれる、という製品でもありません。でも、デザインにせよ性能にせよ機能にせよ、購入する前に期待したことはほとんど満たせるレベルの製品だと思います。また、価格がかなり割安でもあり、比較的低予算で購入できいる2 in 1としては素晴らしい出来栄えだと言っていいでしょう。
この冬にノートパソコンの購入を検討している人は多いと思いますが、10万円以下で買えて、ノートPCメインで使える2 in 1ということなら、Inspironはかなりの有力候補になる、と思います。DELLはしばしばクーポンセールなどをしているので、それに合わせて購入すれば一段とお買い得になるでしょう。
6.関連リンク
New Inspiron 13 5000シリーズ 2-in-1(2016/6/3発売)
inspiron-13-7378(2016/9/16発売)
コメント
日本人が13.3インチ好きと言うのはわかる気がします。
日本人って、一台で何でもできる中庸な万能マシンを好みますからね。
家でも外でも一台でと考えると、13.3インチがベストでしょう。
反転型2in1だと、テントモードが便利そうですね。
(ウインタブさんのように)デュアルモニター+外付けキーボードで使う場合、ノートのキーボードが邪魔にならないのは良いですね。
こんにちは、コメントありがとうございます。ウインタブの記事をよく読んでいただいていることがわかり、少し恥ずかしい気持ちです。いつもありがとうございます。しかし、ここ何日か自宅で作業しているので、ThinkPad 13が完全にデスクトップPCになってしまってます…
wintab さま、
興味深いレポートです。私は Inspiron 14 5000 を使用中です。
SSD に換装し RAM は 8GB に増設しています。
動画編集をやらないので、スペック的に不満はないのですが、液晶パネルの視野角、とくに上下の視野角の狭さにはガッカリすることが多いです。買い替えの頃合いでもあり幾つか質問させてください。
1. SSD とメモリの転用は可能でしょうか?
2. 私の Inspiron 14 5000 は USB3.0 x 2 ポートの嵌合がユルユルです。利用中に認識が切れることがあります。テスト機はそのような気配はありませんでしたか?
3. 液晶パネルは上等ですか?主に静止画の鑑賞用途です。
XPS シリーズ・前作の液晶パネルが眠たげで購入に至りませんでした。
Dekoさん、こんにちは、コメントありがとうございます。あくまで私の主観で回答いたします。1.RAMはおそらく大丈夫だと思います。SSDもeMMCではないのでたぶんいけます。しかし中を開けていないので、DELLに確認してもらったほうがいいと思います。2.試用機は問題ありませんでした。3.液晶は十分キレイです。でもXPSの前作が気に入らない、ということだと私よりも判断基準が厳しいと思うので、ちょっと自信ないですw
wintab さま、コメントありがとうございます。
現用のDell inspiron 14 5000はスリープからの復帰が不安定。3回に1回の割で電源長押しで起動をやり直すことになり困っています。
デルのサポートは独特ですが慣れたので、かなり良いと感ずるようになりました。
現在、Chuwi Hibook Proの習熟中で、これにストレスを感ずるようならInspiron 13 5000を購入することになりそうです。
Dekoさん、こんにちは、コメントありがとうございます。Chuwiは中国製品の中でも安定性は高いと思いますし、しっかりした知識をお持ちなので、問題なく使えるのではないか、と思います。でもやっぱDELLのほうが安心感が激高、とは思いますw
良い記事いつもありがとうございます。
購入を検討しているのですが、これってファンレスですか?
こんにちは、記憶が定かではないですが、ファン付きだったはずです。ただ、スペックはこの頃と変わっていますので、現行モデルについてはなんとも言えません。でもファンありだろうなあ…。