記事内に広告が含まれています。

Wacom MovinkPad Pro 14 - いま注目のイラスト用Androidタブレットに、ロマンあふれる最上級品が登場!

Android

Wacom-MovinkPad-Pro-14
こんにちは、natsukiです。ここ1年ほど、イラスト作成能力に特化したAndroidタブレットが相次いで発売され、個人的に非常に注目しています。実際にウインタブでも、そのいくつかを実機レビューし、私もXPPen Magic Note PadXPPen Magic Drawing Padをレビューさせていただいて、従来のAndroidタブレットとは大きく異なるコンセプトにすっかり魅せられました。一方で、これらのラインナップは、メーカーを問わず、SoC(CPU)が最高でもMediaTek Helio G99レベルに止まり、取り回しの良さの反面、一定以上の作業レベルを要求すると、どうしても処理能力がボトルネックになる面もありました。そこに、さすがは業界を牽引してきたWacomが、SoCにSnapdragon 8s Gen 3を搭載する、他製品と比べると圧倒的にハイスペックな「Wacom MovinkPad Pro 14」を投入します。これは!興奮する!!今秋発売予定とのことで、まだ正式な発売日はアナウンスされていません。

スポンサーリンク

1.スペック

基本スペック

基本的なスペックです。比較のために、すでに発売済みのMovinkPadを冠する製品である「Wacom MovinkPad 11」のスペックも載せます。特に注目すべき違いは太字にしてあります。

  Wacom MovinkPad Pro 14
(DTHA140L0Z)
Wacom MovinkPad 11
(DTHA116CL0Z)
OS Android 15 Android 14
SoC Snapdragon 8s Gen 3 MediaTek Helio G99
RAM 12GB 8GB
ストレージ 256GB + microSDカード 128GB
ディスプレイ 14.0インチ有機EL(OLED)
解像度2,880×1,800ピクセル

アンチグレア、指紋防止、反射防止加工
11.45インチIPS液晶
解像度2,200×1,440ピクセル
アンチグレア、指紋防止加工
ペン 替え芯ホルダー付きWacom Pro Pen 3
8,192段階筆圧感知
傾き検知60°
替え芯ホルダー付きWacom Pro Pen 3
8,192段階筆圧感知
傾き検知60°
LTEバンド
SIM
ネットワーク IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax
Bluetooth 5.4
IEEE 802.11a/b/g/n/ac
Bluetooth 5.2
カメラ なし イン5MP、アウト4.7MP
バッテリー 10,000mAh 7,700mAh
サイズ 323×210×5.9mm 266×182×7mm
重量 699g 588g
付属ソフト CLIP STUDIO PAINT DEBUT(1年ライセンス)
CLIP STUDIO PAINT EX(試用+3ヶ月ライセンス)
Wacom Canvas
Wacom Shelf
Wacom Tips
Wacom Lab
CLIP STUDIO PAINT DEBUT(2年ライセンス)
Wacom Canvas
Wacom Shelf
Wacom Tips

細かい部分の違いはありますが、簡単に言うと、より「デカくて」「高性能」ということです。

Wacom MovinkPad Pro 14のディスプレイサイズは、製品名にも示されているように14インチ。これは、タブレット製品としては破格の大型なサイズです。参考までに、iPadの現行製品最大サイズが13インチです。Samsung Galaxy Tabには14.6インチの製品もありますが、こちらは、専用キーボードとセットにしてノートパソコンのように使うことを想定した、Wacom MovinkPad Pro 14とは別方向で個性を追求するためのサイズです。サイズの大きさは、言うまでもなく作業領域確保のために大きなメリットとなります。なお、Wacom MovinkPad Pro 14のディスプレイ縦横比は16:10で、Wacom MovinkPad 11よりもやや横長になっています。これは、通常イラスト作成時には、左右にブラシやレイヤー情報のウィンドウを配置するため、ディスプレイサイズに余裕があるほど横長気味の形状の方が表示しやすいという、理にかなった比率です。ディスプレイそのものも、液晶から有機ELにグレードアップし、より高いコントラストと鮮やかな発色が期待できます。

処理能力の面では、冒頭で触れたようにSoCにSnapdragon 8s Gen 3を搭載。MediaTek Helio G99が、Antutu v10のスコアで、おおよそ40万点なのに対して、Snapdragon 8s Gen 3は140万点~180万点とすさまじい差があります。参考までに、Snapdragon 8s Gen 3を搭載した製品としては、スマホなら、コスパのバケモノPOCO F6や、AQUOSシリーズ最高峰の一角AQUOS R9 Pro、タブレットだとXiaomiのフラグシップ製品Xiaomi Pad 7 Proなどがあります。

この他、メモリ12GBは、多数のレイヤーを使ったときなどに効果が期待できるほか、microSDカードによるストレージ拡張に対応しているのは嬉しい点です。このスペックなら、タイムラプスも快適に録画できるでしょう。

イラスト作成への影響は?

この処理能力の差が、現実のイラスト作成作業にどのくらい関係するのかというと、以下のWacomによる比較表が分かりやすく示してくれます。特に実作業に関わる部分を、赤で囲みました。

Wacom-MovinkPad-Pro-14_spec
Wacom MovinkPad 11と同じくHelio G99を搭載するXPPen Magic Drawing Padのレビューで、私は、Helio G99の処理能力だとA4サイズ(350dpi)の1枚イラスト作成が適正と評価しましたが、Wacomによる評価もまったく同じようで安心しました(笑)。「A4 600dpiでも安定動作」ということは、標準的な印刷解像度である300dpiであれば、単純計算でA3サイズでの作成まで十分に可能ということです。ブラシについて「500px~800px程度が快適」とありますが、実際に数百ピクセルサイズのブラシを使うのは、毛筆の表現くらいでしょう。私がニャンコのモフモフを描くときでも、200ピクセル以上はまず使いません。もちろん、処理能力の高さは、このような適性サイズの拡大と同時に、追随性など、単純な反応速度の向上にも寄与するでしょう。

あえての、カメラ無し

back
ぱっと見、見逃しがちかもしれませんが、なんと!このWacom MovinkPad Pro 14、カメラを搭載していません。イン/アウトどちらかではなく、完全に無いんです。おそらく平置きしやすくするためにアウトカメラを廃止するというのは、XPPen Magic Note Padも同じですが、まさかインカメラまで廃止するとは。あえて汎用性を捨て去った、「これはイラストを描くためのタブレットなんじゃ」という強いプライドを感じさせる構成です。

2.Wacom MovinkPad Pro 14の見どころ

Wacom MovinkPad Pro 14の見どころをまとめてみましょう。

1台でイラスト作成がすべて完結する取り回しの良さ

concept
パソコン本体と液晶タブレットをつなぐといった環境面のわずらわしさから解放された、タブレット1台でイラスト作成が完結する取り回しの良さ。これこそは、この1年で次々と発売されたイラスト用Androidタブレットの大きな魅力です。ただし、すでに述べたように、ここまで発売されてきた製品は、価格が手頃な反面、当然ながら処理能力に限界があり、液晶タブレットを完全に代替するには至っていません。まあ、別に悪いというわけではなく、製品のすみ分けということでもあると思いますが。しかし、Wacom MovinkPad Pro 14であれば、従来製品とは別次元の処理能力で、そのような制限はもはや取り払われ、完全に「イラスト作成ならこれだけ持っていればいい」というのを目指した製品になっています。ロマン!

Wacom製液晶タブレットと同等のペン入力精度

pen
Wacom MovinkPad Pro 14で使われているWacom Pro Pen 3は、Wacomのフラグシップ製品で最高で50万円クラスまである液晶タブレットWacom Cintiq Proシリーズにも使われているシステムです。

pen_spec
ペン性能については、Wacom MovinkPad 11と基本的に変わりません。これは別に悪いことではなく、Wacom MovinkPad 11の段階で、液晶タブレットWacom Cintiq Proシリーズと同等の性能を持っているので、それをしっかり受け継いでいるということです。つまり、ペン入力は、現技術の最高峰の水準であると言ってよいでしょう。

イラスト作成作業用に、こだわり抜かれたディスプレイ

display_spec
ディスプレイは、先述のように、発色とコントラストに優れた有機ELを採用。Wacom MovinkPad 11でのアンチグレア、指紋防止加工に加えて、新たに「AR(反射低減)」加工もなされているとのこと。具体的にどういうものなのかよく分かりませんが、見やすさがさらに増したと考えていいでしょう。

また、摩擦感にもこだわっていて、こういった部分は、イラスト用Androidタブレットに共通する、iPadへの優位性の1つです。

なお、アンチグレアにすると、斜めから見たときに暗くなりがちになるため、作業は快適な一方で、動画視聴にとってはマイナスになる可能性があることは申し添えておきます。このあたりのバランスは、実機を見てみないと何とも言いがたいところではありますが。

充実したプリインストールアプリ ― 特にCLIP STUDIO PAINTとの連携に注目

app
プリインストールアプリとしては、Wacom MovinkPad 11と同じものとして、専用スケッチアプリWacom Canvas、専用ギャラリーアプリWacom Shelf、マニュアルアプリWacom Tipsを備えます。もっとも、Wacom Canvasは、スリープ状態からいきなり描き始められる、スケッチをシームレスにCLIP STUDIO PAINTに取り込めるといった特徴はあるものの、機能面ではレイヤーすらない最小限のスケッチアプリで、Wacom Shelfも、Googleフォトなどと比べて劇的に使用感の変わるものではなさそうです。ここで重要なのは、CLIP STUDIO PAINTとの連携でしょう。

Wacom MovinkPad Pro 14は傾き検知機能を備えますが、実は、Androidのイラストアプリで傾き検知に対応しているものはかなり限られ、例えばメジャーなイラストアプリであるibis Paint XやMedibang Paintはアプリ側が傾き検知に対応していません。CLIP STUDIO PAINTなら、対応しています。つまり、Wacom MovinkPad Pro 14のハードとしての能力を十全に活かすにはCLIP STUDIO PAINTが必要なんです。

よく見ると、Wacom MovinkPad 11では、CLIP STUDIO PAINTのライセンスは、入門版であるCLIP STUDIO PAINT DEBUTのみです。まあ、DEBUTでも、イラスト作成にはかなり十分な機能を搭載しています。一方のWacom MovinkPad Pro 14には、これに加えてCLIP STUDIO PAINT EXのライセンスも付いてきます。EXは、CLIP STUDIO PAINTの最上位版で(DEBUT<PRO<EX)、では、どういう部分が強化されているかというと、イラスト作成部分に加え、「複数ページをまとめて管理するマンガ作成編集機能」が大幅に追加されているバージョンです。ここからも、Wacom MovinkPad 11は1枚イラスト作成が適性、Wacom MovinkPad Pro 14なら、これ1台で本格的なマンガまでこなせるゼ!という、処理能力に応じた主張が感じられます。

液晶タブレットとしても利用可能など、「Wacom lab」で新機能にも期待?

wacom-lab
Wacom MovinkPad Pro 14には、「Wacom lab」という実験的機能を追加するアプリも入っています。「リリース前の機能をユーザーのみなさまにいち早く体験いただき、そのフィードバックをもとに新たな機能・サービスを共創していく場」とのこと。まずは「第1弾実験機能:Instant Pen Display Mode」実装されます。パソコンにつないで、WindowsやMacのソフトをWacom MovinkPad Pro 14で操作する、つまり、Wacom MovinkPad Pro 14を液晶タブレットのように使える機能のようです。
XPPen-Magic-Drawing-Pad_dp-in
うん?これ、XPPen Magic Drawing Padも同じような機能を備えていますね。上の画像は、XPPen Magic Drawing Padのものです。残念ながらXPPen Magic Drawing Padでは、この機能は現時点でまだ完成度が低く、ネット上のレビューを見ていても、環境によって様々な不具合が出ているようです。私の場合は、機能面では問題無いものの、解像度設定がうまくいかずに肝心の映像がボケてしまうという、わりと致命的な不具合が発生しています。さて、Wacomの方はどうか? Wacomの方でも、「実験機能」とのネーミングで、あくまでこの機能は「リリース前の機能」をお試しで使い、フィードバックを求めるという位置づけとなっています。より大手のメーカーだけに、実験機能とはいえ完成度も期待したいところですが、いかに。

また、「第1弾」とのネーミングから、今後、他の機能もアップデートされる予定のようです。

スポンサーリンク

3.Wacom MovinkPad Pro 14は、iPadと比べてどうなのか?

Wacom製「イラスト用タブレット」は、実は「古くて新しい」製品

Wacom-Mobile-Studio-Pro
ところで、詳しい方はご存じと思いますが、「1台で完結するイラスト用タブレット」をWacomが造るのは、MovinkPadシリーズが初めてではありません。製品名はいろいろ変遷したものの、Wacom製「イラスト用Windowsタブレット」には、わりと長い歴史があります。上の画像は「Wacom Mobile Studio Pro 13」で、2020年頃に発売したモデルです。これらは、20万円から30万円台という高価格帯の、ガチ仕様の製品群でした。ただ、2020年頃より後になると、新しいモデルは発売されなくなってしまいました。ちなみに、Wacom以外のメーカーでもイラスト用に特化したWindowsタブレットを造る動きがなかったわけではなく、例えば、廉価帯の「ASUS Vivotab Note8」(所持していて、今なお稼働可能)、「ドスパラ raytrektabシリーズ」(実機レビューしました)あたりは比較的大きな話題になったと思うのですが、いずれも長く後継モデルが続くことなく消えていきました。マニアックなところでは、我が家でながらくイラスト用機として活躍してくれた「Cube Mix Plus」なんてのもありましたね。

では、なぜ「イラスト用Windowsタブレット」が顧みられなくなっていったかというと、これは推測になりますが、まあ、iPadの圧倒的普及が大きな要因でしょう。我が家でも、iPadの導入にともないCube Mix Plusは引退しました(使わなくなっただけで問題無く稼働します)。

Lenovo-Ideapad-2in1
脱線になりますが、実のところ、現行のWindowsパソコンも、少なからぬ機種がペン入力に対応しています。特に国際大手メーカーのコンバーチブル形式のものは、ほぼ対応しているはずです。実際に私が所持しているパソコンでも、「Surface GO2」「Lenovo Yoga 770(14型 AMD)」「Lenovo IdeaPad 5 2-in-1 Gen 9 14(AMD)」が、筆圧検知を含む本格的なペン入力に対応しています。ただ、いずれも用途として「イラスト作成」はそれほどアピールされていません。例えばLenovoの2台については詳細なレビュー記事を書いているのでそちらを参照していただくと分かりますが、ペンのカタログスペックはよくても、ジッターがかなり強く、イラスト作成に使うのは厳しいと言わざるを得ない精度です。上の画像は、Lenovo IdeaPad 5 2-in-1 Gen 9 14(AMD)のものです。他社製品で、試し書きした程度の感触ではなかなか悪くないペン性能を持つも機種も知っていますが(詳細なチェックをしたわけではありません)、それらも、宣伝を見るに、あえてiPadに対抗してイラスト作成機能を前面に出す気はないようです。一般的には、やはりWindowsのユーザーインターフェースはタブレットとしての利用に適さないと感じる人が多い(使い勝手どうこうだけでなく、シェアの問題としてスマホ・タブレット分野でのOS競争にWindowsがiOSやAndroidに敗北した)ことも、いまのところ、「イラスト用Windowsタブレットorコンバーチブル」が市民権を得られていない原因でしょう。

最近の「イラスト用Androidタブレット」全体の特徴と傾向

では、最近注目の「イラスト用Androidタブレット群」は、従来のWacom製、あるいは他社製「イラスト用Windowsタブレット」と何が違うのか?

もちろん、最大の違いはOSがAndroidであることです。意外にも、Androidタブレットの分野では、ペン性能はあまり重視されてこず、長期にわたってペン性能で安定した評価を得てきたのは、日本ではあまり普及していないSamsung Galaxy Tabシリーズくらいです。その上で現在の時点では、上記のように、「Windowsタブレット」となるといまやそれ自体がニッチなジャンルとなってしまいましたが、「Androidタブレット」であれば、これからの一般への訴求力は十分にあるでしょう。

そして、非常に重要な点は、iPad(とGalaxy Tab)に比べて圧倒的に安価であることです。iPadは、最廉価クラスの製品はディスプレイの仕様のコストダウンから、ペン入力の使用感が大きく劣ります。十分にペンを使える製品となると、ペンが別売であることも含めて、基本的に10万円以上はかかります。そんな中で、実売で「Wacom MovinkPad 11」「XPPen Magic Drawing Pad」が6万円台、「XPPen Magic Note Pad」が4万円台というのは、ライトユーザーにとって手頃な価格で、1台で完結するという取り回しの良さからも、非常に優れたパッケージであると感じています。もちろん、価格が安い分のスペックダウンはあり、基本的に「A4サイズの1枚イラスト作成が適性」である点は、すでに触れたとおりです。ただ、XPPen Magicシリーズについて、実際にレビューし、また継続利用している体感として、「こういうのでいいんだよ、こういうので!」という水準は満たしていると思います。

一方で、ちょっと意地悪な言い方をすれば、最近のイラスト用AndroidタブレットはiPadとの直接対決を避け、iPadがカバーしてない領域に活路を見いだしたという言い方もできるでしょう。ところがここに来て、「Wacom MovinkPad Pro 14」は、iPadのクラスにいよいよ対決を挑んできたわけです。

Wacom MovinkPad Pro 14は、iPadと何が違うのか?

concept2
さて、「Wacom MovinkPad Pro 14」は、価格が144,980円(税込)と予告されています。これは、ここまでの価格勝負のイラスト用Androidタブレットとは違い、サイズ感からも価格からも、現行のiPad Airの13インチモデルとがっぷり組み合うことになります。また、この価格なら、Galaxy Tabもそれなりの性能のものを購入可能です。それを意識してなのか、Wacom MovinkPad Pro 14は、他のイラスト用Androidタブレットと比較しても、汎用性をあえて犠牲にして「イラスト用」に特化した、非常に個性の強い構成となっているように思えます。

まず、すでに触れたように、Wacom MovinkPad Pro 14はカメラを搭載していません。XPPen Magic Note Padも、平置きをしやすいように背面カメラを廃止していますが、それでもインカメラは残しています。Wacom MovinkPad 11は、普通にインカメラもアウトカメラもあります。が、Wacom MovinkPad Pro 14は、スパッと、表も裏もカメラ無し!これはかなり思い切った構成です。

また、アンチグレアで反射防止のディスプレイは、アンチグレアにすると、どうしても斜めから見たときに暗くなりがちで、その影響は画面が大きくなればなるほど目立つはずです。どの程度かは実際に見ないと分かりませんが、要するに、作業の快適性を、世間一般にタブレットの主要な用途と見なされている動画視聴体験よりも優先しているということです。この点は、最近のイラスト用Androidタブレットに共通する個性です。

14インチという大型のサイズも、重要でしょう。言うまでもなく、大画面は作業領域の確保(特にブラシやレイヤー管理)という面でプラスで、可搬性の面ではマイナスです。先述のように、現行iPadの最大サイズは13インチで、機能性と可搬性とのバランスを練り抜かれたiPadの最大サイズを超えてくるあたりに、イラスト作成作業の快適性こそ最優先!という意気込みを感じます。

もちろん、徹底的にこだわり抜かれたペン性能は言うまでもありません。特に、ペン先の摩擦とアンチグレアディスプレイによる作業感は、iPadとの大きな違いです。もっとも、この部分は、iPadの場合、豊富なサードパーティー製周辺機器である程度カスタマイズできる部分ではありますが。

4.まとめ ― Wacom MovinkPad Pro 14は、イラスト用Androidタブレットの集大成にしてさらに尖らせた「イラストガチ仕様タブレット」だ!

Wacom MovinkPad Pro 14は、方向性としては、同社のWacom MovinkPad 11をさらにスペックアップさせたイラスト用Androidタブレットです。しかし、Wacom MovinkPad 11も含めて、同類製品の多くが処理能力についてはHelio G99クラスで横並びだったのに対して、Wacom MovinkPad Pro 14はSoCにSnapdragon 8s Gen 3を搭載するため、ズバ抜けて高性能な処理能力を持ちます。また、有機ディスプレイをはじめとして、細かい部分も製品ランクに応じたブラッシュアップがなされ、ここ1年で次々と登場したイラスト用Androidタブレットの集大成と呼ぶにふさわしい構成に仕上がっています。

ただその分、予定価格は144,980円(税込)と、Wacom MovinkPad 11と比べて2倍以上になり、また、この価格帯に来てしまうと、iPadやGalaxy Tabという、すでに定評のあるタブレット製品と競合することにもなります。この点については、iPadやGalaxy Tabが極めて汎用性の高い製品であるのに対して、Wacom MovinkPad Pro 14は、思い切ってカメラを完全に廃止したほか、サイズ感やアンチグレアディスプレイなど、徹底してイラスト作成に尖らせた構成にすることで個性を出しています。かつてWacomは、20万円クラス以上の高価格帯でイラスト特化型Windowsタブレットを販売していましたが、ある意味、その系譜に連なる製品と見ることもできるかもしれません。ただ、そのようなかつてのラインナップとの比較で見れば、価格も抑えられ、筐体はスリムになり、取り回しの良さが格段に向上しています。

はじめに見たWacom MovinkPad 11との比較表や、私自身のXPPen Magicシリーズの使用経験からして、Helio G99クラスの製品が、手ごろな価格であるがゆえにA4サイズ1枚イラストの作成あたりを適性とするのに対して、Wacom MovinkPad Pro 14は、より高度なイラスト作成やマンガ作成など、本格的なクリエイティブ作業にも十分応えてくれる製品です。想定される作業の水準は、Wacom MovinkPad 11にはイラスト作成までのCLIP STUDIO PAINT DEBUTライセンスが、Wacom MovinkPad Pro 14には、これに加えてマンガ作成機能の充実したCLIP STUDIO PAINT EXのライセンスが付属することに、端的に表されています。Wacom MovinkPad 11やXPPen Magicシリーズについて「もはや液タブは不要か?」と聞かれたならば、「1枚イラスト作成レベルなら不要、それ以上の高度な作業にはやはり液タブがあった方がよい」という答えになるでしょう。これがWacom MovinkPad Pro 14なら、ついに「もはや液タブは完全に不要」と言える時代になるかもしれません。

5.関連リンク

Wacom MovinkPad Pro 14:メーカー公式サイト

【新製品】Wacom MovinkPad Pro 14を詳しく紹介!:メーカー公式紹介動画

執筆者:natsuki ウインタブをきっかけに、海外通販で奇天烈なガジェットを漁ることにハマる。趣味は旅行(自然も史跡も)、アマチュアオーケストラなど。自分の知識欲も満たせるので、楽しんで記事を書いています。興味を持ったもの、面白いと思ったものを、読者の皆さんと共有できれば幸いです。
サイト紹介・ウインタブについて

コメント

タイトルとURLをコピーしました