Xiaomiのサブブランド、POCOのニューモデル「POCO F4」の実機レビューです。この製品および同時に発売されたPOCO X4 GTは残念ながら現時点で日本国内での正規販売はありませんが、購入しやすい価格帯ながら「原神」などの最新3Dゲームを快適にプレイできる性能を備えており、「POCOらしい」抜群のコストパフォーマンスを誇ります。
POCO X4 GTはMediaTek製CPUを搭載していますが、今回レビューするPOCO F4はQualcomm製CPUを搭載し、中国市場向けに投入された「Redmi K40S」のPOCOブランド版とされています。とはいえ、両者は外観がよく似ており、価格帯も接近していますので「どっちがいいの?」と悩んでしまうことにもなりそうです。そのため、このレビューでは適宜POCO X4 GTとの相違点についても触れていきます。
POCO X4 GTの実機レビュー記事はこちらです。あわせてご覧ください。
POCO X4 GTの実機レビュー - これで4万円ちょっと!?ハイエンド機に匹敵するパフォーマンスを備えたPOCOの最新モデル
レビュー機はAliExpress内のPOCO Official Storeよりサンプル提供していただきました。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございます。
・ハイエンドに迫る高性能CPU、Snapdragon 870を搭載
・リフレッシュレート120Hz表示に対応する有機ELディスプレイ
・光学式手ぶれ補正を搭載するカメラ
ここがイマイチ
・3.5 mmイヤホンジャックが非搭載(変換アダプターは標準付属)
販売サイトはこちら
POCO F4:POCO Official Store(AliExpress)
目次
1.POCO F4 スペック
スペック表
POCO F4 | |
OS | MIUI 13(Android 12ベース) |
CPU | Qualcomm Snapdragon 870 |
RAM | 6GB/8GB |
ストレージ | 128GB/256GB |
ディスプレイ | 6.67インチAMOLED(2,400 x 1,080)120Hz |
LTEバンド | 5G:n1/3/5/7/8/20/28/38/40/41/77/78 FDD-LTE:B1/2/3/4/5/7/8/12/17/18/19/20/26/28 TDD-LTE:B38/40/41 |
SIM | nanoSIM × 2 |
ネットワーク | 802.11a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.2 |
入出力 | USB Type-C |
カメラ | イン20MP/アウト64MP + 8MP + 2MP |
バッテリー | 4,500 mAh |
サイズ | 163.2 x 75.95 x 7.7 mm |
重量 | 195 g |
バリエーションモデル
・RAM6GB/ストレージ128GB(レビュー機の構成)
・RAM8GB/ストレージ256GB
コメント
プリインストールされているOSは同時発表されたPOCO X4 GTと同じくAndroid 12ベースのMIUI 13 for POCOです。
CPUはSnapdragon 870です。2年前のハイエンドスマートフォンに採用されていたSnapdragon 865 5Gのマイナーチェンジ版となる製品で、Xiaomi端末ではXiaomi 12Xなどに搭載されています。内蔵されているAdreno 650 GPUの性能も高く、「原神」などの最重量ゲームも快適に楽しめる性能を備えています。RAMは6GB/8GB、内蔵ストレージは128GB/256GBという構成で、MicroSDカードによるストレージ拡張には対応しません。
ディスプレイは6.67インチサイズで、解像度はFHD+(2,400 × 1,080)です。パネルはAMOLED(有機EL)が採用されており、リフレッシュレートは120Hz表示、タッチサンプリングレートは360Hzです。ディスプレイの仕様についてはPOCO X4 GTとは明確に異なります(X4 GTは6.6インチIPS液晶、2,460 x 1,080解像度、リフレッシュレート144Hz、タッチサンプリングレート270 Hz)。
カメラはイン20MP、アウト64MP(メイン) + 8MP(超広角) + 2MP(マクロ)という構成です。アウトカメラのスペックだけ見ると先にレビューしているPOCO X4 GTと共通ですが、F4ではX4 GTにはない「光学手ぶれセンサー(OIS)」を搭載しています。POCOブランドのスマートフォンで光学式手ぶれセンサーを搭載するのはF4が初となります。
ワイヤレスネットワークは802.11a/b/g/n/ac/axとBluetooth 5.2に対応します。日本国内で投入されているPOCO F4 GTとは異なり技適の電磁表示は今のところ確認できませんでしたが、4G、5Gともに国内主要4大キャリアの回線をサポートしているほか、VoLTEも利用可能です。対応バンドに関してはPOCO X4 GTよりもF4のほうが多いです。
バッテリー容量は4,500 mAhで、67W出力の急速充電に対応します。
2.POCO F4 筐体と使用感
付属品はマニュアルなどのペーパー類(日本語表記なし)、USB-C to 3.5 mmイヤホンジャック変換ケーブル、USB-C to Aケーブル、67W出力対応ACアダプター(海外プラグ)、純正TPUケース、純正液晶保護フィルムです。POCO X4 GTとは異なり、POCO F4には3.5 mmイヤホンジャックが装備されていないため、変換ケーブルが付属しています。基本的に必要なものはすべて揃っているので購入してすぐに使い出すことができます。
前面です。POCO X4 GTと共通…のように見えるのですが、下部ベゼルはPOCO F4の方がより狭くなっているほか、パンチホールノッチのサイズも小さくなっています。
POCO X4 GT(左)とPOCO F4(右)を実際に比較してみます。よく見るとPOCO F4の方がよりスタイリッシュなデザインになっている印象を受けます。パンチホールノッチのサイズを確認したところ、POCO X4 GTが約5mm、POCO F4が約3mmでした(F4のメーカー公称値は2.76mm)。
背面です。中国市場で販売されているRedmi K40Sと共通のデザインで、背面ロゴが変更されていることを除けば「POCO」としての差別化は施されていません。ガラス素材が採用されており、フラッグシップモデルさながらの高級感ある質感となっています。POCO X4 GTもPOCO F4も良くも悪くも「POCO」らしくないデザインに仕上がっていると感じました。ただしカメラバンプ部のデザインは個性的で印象に残るものになっています。レビュー機は「ナイト・ブラック」ですが、ほかに「ムーンライト・シルバー」と「ネビュラ・グリーン」もあります。しかし、POCOのイメージカラーともいえる「ポコ・イエロー」はF4でもX4 GTでも設定されていません。
左側面にボタンやポート類はありません。
右側面には指紋認証センサーを兼ねた電源ボタン、ボリュームボタンがあります。F4のディスプレイは有機ELですが、画面埋め込み式指紋認証センサーではありません。認証精度はPOCO X4 GTと同様に高く、スムーズに画面をロック解除することができました。
上部にはマイク、スピーカー、赤外線センサーがあります。
下部にはSIMトレイ、マイク、USB-Cポート、スピーカーが配置されています。3.5 mmイヤホンジャックは搭載されていないため、有線イヤホンを接続する場合付属している変換ケーブルを使用する必要があります。SIMトレイは2枚差しに対応しますが、MicroSDカードには対応していません。
システム
デフォルトの壁紙はさすがに別ですが、プリインストールされているアプリの構成はPOCO X4 GTと共通で、MIUI標準アプリ、Google純正アプリのほか、WPS Offic等のサードパーティアプリが搭載されています。高性能CPUを搭載していることもあり、「原神」もプリインストールされています。ただし、イヤホンジャックが搭載されていない関係でPOCO X4 GTとは異なり「FMラジオ」はインストールされていません。
POCO X4 GTと同じくゲーム支援機能「ゲームターボ」もプリインストールされています。この機能自体はPOCO特有というわけではなく、Xiaomi 12 ProやRedmi Note 11 Pro + 5Gでも全く同じUIのものが搭載されています。他社メーカーでもこのようなゲーム支援機能を搭載することは珍しくなくなってきましたが、MIUIに搭載されているゲームターボでは「ボイスチェンジャー」機能も利用可能です。
…かのあゆ自身音声付きでゲーム配信を行うことがないので個人的にはあまり使わなさそうではあるのですが、動画配信サイトなどで実況プレイ動画をアップロードする際には重宝すると思います。
工場出荷時のストレージ情報です。今回のレビュー機はRAM 6GB/ストレージ128GBモデルで、システムで使用しているサイズは14.54GB、プリインストールされているアプリのデータは2.06GBで、空き容量は105.1GB確保されています。
工場出荷時のバージョン情報です。MIUI 13としては最初のバージョンとなるMIUI 13.0.0がプリインストールされており、Androidセキュリティパッチは「2022年4月1日」のものが適用された状態になっています。
なお、既に最初のシステムアップデートがリリースされており、この記事を執筆している2022年7月7日時点では2022年6月1日のAndroidセキュリティパッチが適用されたMIUI 13.0.4が最新バージョンとなります。
ディスプレイ
リフレッシュレートは120Hz表示となり、POCO X4 GTにあった「Dynamic Switch」もサポートされていませんが、タッチサンプリングレートは360Hzとより高速になっているほか、高品質なAMOLEDパネル(有機EL)が搭載されています。POCO X4 GTのIPS液晶もきれいなので、どちらが良いかは好みの問題になってくると思うのですが、(有機ELだけに)黒の発色に関してはPOCO F4のほうが優れていると感じました。
またXiaomi 12 Proと同じく画面オフの状態でも通知や時計を表示できるAlways On Displayやフレーム補完機能の「MEMC」も利用可能です。
…今回同時発表されたPOCO2機種に関しては、F4もX4 GTもとてもこの価格帯の製品とは思えない高品質なディスプレイを搭載しているんですよね。この点は高く評価できると思います。
なお、DRM Infoで確認したところ、Widevineレベルは「L1」となっており、Netflixなど動画サブスクリプションサービスのHD画質再生にも対応しています(すべての動画サブスクリプションサービスでHD画質に対応しているとは言えません)。
スピーカー
POCO F4とPOCO X4 GTはスピーカー性能も力を入れています。Harman/CardonやJBLといったオーディオメーカーがチューニングを担当しているわけではありませんが、内蔵ステレオスピーカーはDolby Atmosもサポートしており、POCO X4 GTと同じく迫力のあるサウンドを楽しむことが可能です。
ただし、3.5 mmイヤホンジャックを内蔵していないためか、有線ヘッドフォン接続時に利用できる「Hi-Fiオーディオ」の項目はPOCO F4では用意されていませんでした。
カメラ
標準カメラのUIはPOCO X4 GTと共通で、「夜景モード」や「64MP撮影モード」「VLOGモード」などの機能が用意されています。ただし一部の機能に関してはプリインストールされているわけではないので、あとから追加ダウンロードする必要があります(カメラアプリのメニューから直接ダウンロード可能です)。
同時期にレビューをしたこともあり、POCO X4 GTも一緒に持ち込んでサンプル写真を撮影していました。つけ麺画像はPOCO X4 GTの実機レビューで使用したサンプルと同じような構図になっていますが、ちゃんとPOCO F4で撮影したものです。
搭載されているセンサーの仕様などは確認できなかったのですが、スペック的には共通と言うこともあり、POCO X4 GTと同じく POCO F4のカメラ性能も満足度が高いものになっています。明るい場所の写真も飯テロ写真もきれいに撮れている印象です。
また、POCO X4 GTでは搭載されていなかった光学式手ぶれ補正が搭載されていることもあり、夜景も安定した写真を撮影可能です。夜景での撮影性能も重視するのであればPOCO F4の方が向くでしょう。
3.POCO F4 性能テスト
参考:
Xiaomi 12 Pro(Snapdragon 8 Gen 1):971,423
ASUS ROG Phone 5s(Snapdragon 888+):846,862
POCO X4 GT(Dimensity 8100):798,752
ASUS Zenfone 8(Snapdragon 888):785,280
Galaxy S20 SC-52A(Snapdragon 865):655,707
Mi 11T(Dimensity 1200 Ultra):582,178
Xiaomi Pad 5(Snapdragon 860):566,309
realme GT Master Edition(Snapdragon 778G):542,182
Xperia 1 SOV43(Snapdragon 855):511,163
Xiaomi Mi 11 Lite 5G(Snapdragon 780):500,573
Oneplus Nord CE 2 5G(Dimensity 900):430,049
Redmi Note 11 Pro + 5G(Dimensity 920):427,053
Samsung Galaxy Fold SCV44(Snapdragon 855):414,302
OnePlus Nord CE 5G(Snapdragon 750):384,505
iiiF150 R2022(Helio G95):350,565
POCO M4 Pro 5G(Dimensity 810):349,498
OnePlus Nord N10(Snapdragon 690):342,506
AGM Glory G1S(Snapdragon 480):340,864
AGM Glory Pro(Snapdragon 480):340,772
POCO M3 Pro 5G(Dimensity 700):330,303
Redmi Note 11 Pro(Helio G96):336,280
POCO M4 Pro 4G(Helio G96):311,030
Redmi Note 11S(Helio G96):307,755
realme narzo 50(Helio G96):287,043
Redmi Note 11(Snapdragon 680):277,105
Blackview A95(MediaTek Helio P70):227,817
DOOGEE S98(Helio G96):277,159
CHUWI HiPad Plus(MT8183):172,713
Samsung Galaxy Note FE(Exynos 8890):177,984
Blackview BV6600 Pro(Helio P35):102,808
OUKITEL C22(Helio A22):99,664
AGM H3(Helio P22):84,184
BlackView A55S(Helio A22):78,630
geanee ADP-503G(MT6737M):46,316
AnTuTu Benchmark v9.4.0での総合ベンチマークスコアは658,456点でした。POCO X4 GTと同じくバッテリー設定を「パフォーマンス」モードに設定してベンチマークテストを行ったのですが、Snapdragon 865を搭載するGalaxy S20とほぼ同等の総合スコアを計測しています。
ただしGPU性能に関してはマイナーチェンジ版となるSnapdragon 870の方がやや高くなっています(Galaxy S20でのベンチマークスコアは220,039点、POCO F4では243,324点)。
POCO X4 GTに搭載されているDimenisty 8100には届かないものの、POCO F4もゲーミングスマートフォンとしてのポテンシャルは高く、「原神」を最高画質で快適にプレイすることが可能です。発熱に関しても抑えられており、長時間安定したパフォーマンスでゲームをプレイできるという意味ではXiaomi 12 ProやPOCO F4 GTよりもPOCO F4のほうがいいのかもしれません。
4.POCO F4 レビューまとめ
POCO F4はAliExpress内のPOCO Official Storeにて販売中で、価格は379ドルから、と表記されていますが、買い物かごで50ドルOFFとなり、329ドル(45,526円)で購入できます。
今回POCO X4 GTとPOCO F4の2機種を同時レビューしたのですが、どちらも「安すぎる!」というのが正直な感想です。日本国内での正規販売が始まったPOCO F4 GTもお買い得価格だと思うのですが、「POCOらしい安さ」という意味においてはX4 GTやF4のほうがインパクトが大きいと感じます。POCO F4に関しては日本国内でも技適を通せばそのまま快適に利用できるような仕様になっていることもあり、F4 GTよりもこちらを投入してほしかったところ…。ハイエンドスマートフォンが軒並み高くなってしまった現在、「コストパフォーマンス・モンスター」と言えるPOCOはとても魅力的です。
個人的にはPOCO X4 GTの「より高いパフォーマンス」や「背面デザイン」が好みではあるのですが、POCO F4も「有機ELディスプレイ」や「光学式手ぶれ補正に対応するカメラ」ということで、正直悩ましい限りです…。どちらにしても、メイン端末として長く使っていける機種だと思います。おすすめです。
5.関連リンク
POCO F4:POCO Official Store(AliExpress)