ASUSが5月15日に発表したゲーミングスマートフォン「ROG Phone 8」の実機レビューです。大手メーカーが手掛けるハイエンドなゲーミングスマホももう8代目(メジャーなバージョンとして)、最新のSoCを搭載しているだけでなく、ゲーミングスマホに必要な諸機能をハードウェア面、ソフトウェア面から追求・実現した、ある意味マニアックな製品です。
・Snapdragon 8 Gen 3搭載、現行のスマートフォンとして最高性能
・リフレッシュレート165Hzの有機ELディスプレイを搭載
・小型化・薄型化した筐体
・設定アプリARMOURY CRATE/GAME GENIEの機能が充実
・AirTriggersやモーションコントロールなどによる高い操作性
・美しい写真・動画を撮影できるカメラ
・ワイヤレス充電やおサイフケータイなど便利機能も搭載
ここがイマイチ
・さすがに高いでしかし
・Snapdragon 8 Gen 3の発熱は大、AEROACTIVE COOLER Xの購入を推奨
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Gaming Phone:ASUS Store
1.スペック
スペック表
ROG Phone 8 | |
OS | ROG UI(Android 14) |
SoC | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 |
RAM | 16GB(LPDDR5X) |
ストレージ | 256GB |
ディスプレイ | 6.78インチAMOLED(2,400 x 1,080)最大165Hz |
バンド | 5G:n1/2/3/5/7/8/12/18/20/25/26 n28/38/40/41/48/66/77/78/79 FDD-LTE: B1/2/3/4/5/7/8/12/17 B18/19/20/25/26/28/32/66 TD-LTE: B34/38/39/40/41/42/43/48 |
SIM | nano SIM × 2 |
ネットワーク | 802.11a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.4 |
入出力 | USB 3.1 Type-C、USB 2.0 Type-C、オーディオジャック |
カメラ | イン32MP/アウト50MP + 13MP + 32MP |
バッテリー | 5,500 mAh |
サイズ | 163.8 x 76.8 x 8.9 mm |
重量 | 225 g |
バリエーションモデル
筐体色は「ファントムブラック」「レベルグレー」の2色から選べますが、システム構成は上記の単一バリエーションです。また、RAM/ストレージ構成などが異なる「ROG Phone 8 Pro」「ROG Phone 8 Pro Edition」もあります
コメント
フルモデルチェンジ換算だと8代目となるハイエンドなゲーミングスマホ、ROG Phone 8ですが、SoCにはもちろんSnapdragon 8 Gen 3を搭載し、RAMも16GBと大容量です。ただ、ストレージが256GBでmicroSDカードによるストレージ拡張もできないので、ゲーミングスマホとしてはちょっと容量不足かなと思います(容量不足と感じる場合はROG Phone 8 Pro/Pro Editionをおすすめします)。
ROG Phone 8とPro/Pro Editionとの相違点についてはこちらをご覧下さい
ASUS ROG Phone 8 Pro/Pro Edition - RAMとストレージを増量、背面のLEDでアニメーションも作れるROG Phone 8の上位モデル
また、グローバル発表以来賛否両論あるのが「ディスプレイにパンチホールが開いた」ことです。しかし、ASUS側でもパンチホールを考慮した設定(全画面表示の他に片寄せ、中央表示が可能)を追加しています。また、パンチホールにしたことにより筐体は小さくなりました。
ROG Phone 8:163.8 x 76.8 x 8.9 mm /225 g
ROG Phone 7:173 × 77 × 10.3 mm /239 g
このように、同じ6.78インチディスプレイながら、長さ(長辺)が1センチも小さくなり、パンチホールとはまた別の話になりますけど厚さも1ミリ以上薄くなっています。
また、以前から発熱対策に力を入れていたROG Phone、このニューモデルではSoCをセンター(筐体中央)に配置し、ゲームプレイ中に発熱を感じにくくしており、新冷却システム「GAME COOL 8」を採用しています。別売りとなりますが、おなじみのAERO ACTIVE COOLER(外付けクーラーユニット)も新設計の「X」となりました。
それと、カメラの性能も高く、ワイヤレス充電やおサイフケータイなど普段使いでもぜひ欲しい機能もしっかり搭載されていますので、さすがに全くゲームをしないという人にはおすすめしませんけど、「普段使いのメインスマホ」としてもとても使いやすくなっています。
2.外観
同梱物は取扱説明書などのペーパー類、65W出力のACアダプター、USB Type-C – Type-Cのケーブル、SIMピン、そしてケースです。
前面です。ディスプレイはROG Phone 7と同様に有機ELパネルでFHD+解像度、ROG Phone 8からはディスプレイにパンチホールが開きました。これ、ゲームプレイ中に邪魔になるということで、SNSなどであまり評判が良くないようです。
しかし、ROG Phone 8は設定アプリArmoury Crateから画面表示スタイルの変更ができます。これはノーマル、というか普通の全画面表示。
こちらは片寄せ表示です。これでパンチホール部分が気にならなくなります。
ディスプレイは有機ELでリフレッシュレートは最大165Hz。ASUSはPCでも他社に先駆けて有機ELディスプレイの製品を積極的にリリースしていますが、ROG Phone 8のディスプレイも発色品質は非常に高く、ゲームプレイはもちろんのこと、動画視聴などでも高い満足感が得られます。
また、中央表示というのもできます。一応「横持ちでゲームプレイする際の誤タッチ防止」という趣旨です。
背面です。すでにご説明していますが、ROG Phone 8は筐体色が「ファントムブラック」「レベルグレー」の2色あり、レビュー機はファントムブラックでした。
ROG Phone Pro/Pro Editionには通知項目をドット表示したり、自分でアニメーションを作れる「ANIME VISION」という機能がありますが、ROG Phone 8にはANIME VISIONはなく、代わりにROGロゴが発光し、発光パターンをお好みに合わせてカスタマイズできる「AURAライト」がついています。
背面のカメラバンプはかなりゴツいですね。裸で運用するとすぐにキズがついてしまいそうに思われます。
右側面です。こちらには音量ボタンと電源ボタンがあり、ROG Phoneのトレードマークとも言える「AirTriggers」があります。
AirTriggers部分です。よく見ると「ROG」と書かれているのがわかります。AirTriggersはセンサーボタンですが、フォースフィードバック(押すと振動し、あたかも物理ボタンを押しているかのような反応がある)が効きます。この感触は従来のROG Phoneシリーズよりもレベルアップしているように感じられました。
左側面です。こちらにはUSB Type-Cポートがあります。ROG Phoneシリーズはスマホとしては珍しくUSB Type-Cポートを2つ装備しており、左側面にあるUSB Type-CポートはUSB 3.1規格で、映像出力とUSB PD3.0に対応します。また、今回のレビューの対象外となりますが、別売りの「AEROACTIVE COOLER X」もここのUSB Type-Cポートに接続します。
上面です。こちらにはポート類やボタン類はありません。
下面です。画像左からUSB Type-Cポート(USB 2.0規格です)、SIMスロット、スピーカー、そしてイヤホンジャックがあります。
付属のケースを装着してみました。主に「背面と四隅」あと「カメラバンプ」を保護するもので、側面や上下面はカバーされません。ただ、スマホが破損する場合、大抵は前面ガラスか背面、四隅のいずれかだと思うので、このケースであれば落下などの衝撃からある程度は筐体を保護してくれると思います。また、ROG Phone 8の前面ガラスは「Corning Gorilla Glass Victus 2」なので、傷つきには強いです(ただし、傷がつくときはつきますので、別売りのASUS純正スクリーンプロテクターを貼っておくほうが安心かと思います)。
3.システム
ホーム画面とアプリ一覧です。Antutuベンチマークのみ私がインストールしたもので、あとは初期状態です。以前のROG Phoneにはいくつかゲームがプリインストールされていましたが、ROG Phone 8にはありませんでした。
UIは純正のAndroidをベースに機能を追加したものになっており(ASUS UI)、設定で純正AndroidのUIに変更することもできます。
このように「エッジツール(画面右からスワイプすると小さなメニューが表示される)」も使えますし、今回のレビューでは試していませんが「通話の自動録音機能」もついています。ちなみに私、楽天モバイルのユーザーでRakuten Linkを使っていますが、Rakuten Linkには通話の録音機能はなく、またLINEも通話録音機能はないので、ニーズのある人にはかなり便利だと思います(特にニーズを感じなくても、いつかは重要な通話とかヤバい通話を録音しておきたい、という日が来るんじゃないかと思います)。
ROG Phoneと言えば、いやASUSのゲーミングデバイスと言えば設定アプリの「ARMOURY CRATE」です。ROG Phone 8のゲームに関する諸設定はすべてここで行います。この画像は「コンソール」といい、システムモニターが表示され、パフォーマンスモードの変更が可能です。基本的に「Xモード(最高性能)」「ダイナミック(標準)」「超省電力(省エネ)」の3段階に設定でき、それぞれのモードで通知のミュートやリフレッシュレートの設定など、細かく調整ができます。
「ゲームライブラリ」ではインストールしたゲームが自動的にメニューに取り込まれ、ゲームタイトルごとにパフォーマンスモードを設定したり、上でご説明した表示方式(全画面・片寄せ・中央)やAirTriggersの動作設定などができます。私が試した限りだと「ゲームタイトルごとにほぼすべての設定項目を決められる」という感じで、「すげえ!」と思いました。
AirTriggersは「デュアルパーテーション(左右のAirTriggerに2つの操作を割り当てられる)」になっており、感度の微調整もできます。上にも書きましたが、ROG Phone 8のAirTriggerは押下時のフィードバックが素晴らしく、まるで物理ボタンのような操作感が得られます。
また、ROG Phone 8ではモーションコントロール(ジェスチャ操作)が可能です。この画像は「前方に傾ける」ですが、「後方に傾ける、左に傾ける、右に傾ける、左に回転する、右に回転する、振る、前方に移動する、左に水平移動する、右に水平移動する」という動作について機能割り当てと感度の設定ができます。ただこれ、かなり器用な人でないと完璧には使いこなせないような…。
それと、「バックグラウンドモード」という、周回プレイに便利な機能もつきました。これでレベル上げも楽になるかと。
背面のAURAライトの設定もARMOURY CRATEから。通話時や音楽再生時など、利用シーンごとに異なる色(レインボーも可)にすることができます。
ゲームプレイ中に呼び出せるGAME GENIEも健在。パフォーマンスモードの切り替えやシステム情報の表示、通知の拒否やAirTriggersの設定などができます。
音響アプリも搭載しています。ROG Phone 8はハイレゾ再生に対応しており、BluetoothでもaptX Adaptiveに対応しています。また、スピーカーの音質も素晴らしく、ゲームプレイ中にも迫力のあるサウンドが楽しめます。私の手持ちのGoogle Pixel 8と比較すると「重厚」というか、厚み、深みのあるものでした。
4.カメラ
ROG Phone 8はカメラ品質も高いです。数年前のゲーミングスマホ(ゲーム性能・機能に特化していてカメラ品質は後回しだった)とは全然違いますね。私はROG Phone 5から実機レビューをさせてもらっていますが、当時からゲーミングスマホとしては高いカメラ性能を備えていたように思います。
何枚か写真を撮ってみました(いずれも12MPです)。個人的には「満点」だと思います。
ROG Phone 8は3倍までは光学ズームになるので、画質はそれほど劣化しません。最大で30倍ズームができますが、さすがに画質がかなり劣化するものの、標準倍率だと視認不可能な美容院のカラー料金が4,290円、カット料金が2,970円で美容師さんを募集中というのがはっきり識別できるのがすごいですね。
ナイトモード(夜景モード)も素晴らしい画質だと思います。また、繰り返しになりますが3倍までなら光学ズームになるのでナイトモードでもかなり画質がいいですね。
なお、ROG Phone 8ではライトトレイルモードも搭載しており、幻想的な撮影ができます(私は幻想的な人間でもないので、今回はテストしていません。すみません)。
ごく簡単ではありますが、動画も撮影してみました。ROG Phone 8は「6軸ジンバルモジュール」を搭載しており、強力な手ブレ防止機能がついています。この動画で「階段を上る」こともしてみましたが、かなり滑らかな動きになっていると思います。
5.性能テスト
ベンチマークテスト
Antutuベンチマークスコアです。パフォーマンス設定を「Xモード」にして測定しましたが、文句なしにウインタブ史上最高スコアとなりました。正直「こんなにいらんがな」と思うレベル。また、超省電力モードで測定しても152万点をマークしましたので、「ずっと超省電力モードでいいがな」とも思いました。ただし、超省電力モードで測定中にGAME GENIEが「なにかやってる」ような挙動を見せていたので、測定中に一時的にモードが切り替わっていた可能性はあります。しかし、それを考慮しても超省電力モードでずっと使ってていいんじゃないか、という気はします。
ゲームプレイ
オーディン:ヴァルハラ・ライジングをプレイしてみました。この画像の下部にGAME GENIEの機能である「システム情報」を表示させています。このゲーム、グラフィックがかなり凝っていて、SNSなどでは「クソ重い」などと評されています。
Xモードにして最高画質でプレイしてみたところ、フレームレートは最大で60fpsでした。ただ、おそらくゲーム側での制約で60fpsになっているものと思われ、CPU/GPU使用率から見て、ROG Phone 8側には全然余力があったはずと思われます。また、プレイ中に背面が多少熱を持ちましたが、それほど気になりませんでした。
PCでもプレイしているFPSとローグライクダンジョンRPGを組み合わせたようなゲームGunfire Rebornもプレイしてみました。このゲームのシステム要件は「Snapdragon 821、Kirin 960以上」ということですが、最高画質でもプレイには全く支障がなく(当たり前か…)プレイ中の発熱も気になりませんでした。
この他にReal Racing 3でステアリング操作をAirTriggersに割り当ててプレイしたりもしましたが、AirTriggersの操作性や感触は素晴らしいものでした。
発熱について
ベンチマークテストとゲームプレイを通じ、最も筐体が発熱したのはAntutuベンチマークでしたw 特にXモードでかなりの発熱を感じました。メーカー側では…
このように冷却面にかなり注力しており、Snapdragon 8 Gen 3を筐体中央に配置し、ゲームプレイ中に発熱を感じにくいとのことですが、Antutuベンチマークテスト直後は筐体の左右でもはっきりと発熱を感じましたので、ゲームタイトルによってはやはり「熱くて怖い」思いをしそうです。今回は試せませんでしたが、システム負荷の大きい重量級ゲームを長時間プレイするのならAEROACTIVE COOLER Xを一緒に購入しておくと良いでしょう。
6.レビューまとめ
ASUS ROG Phone 8シリーズは5月17日の発売で、ASUS Storeではすでに予約販売がスタートしています。価格はROG Phone 8(レビュー機)が159,800円、ROG Phone 8 Pro(16GB/512GB)が179,800円、ROG Phone 8 Pro Edition(24GB/1TB、AEROACTIVE COOLER X同梱)が219,800円です。また、7月31日までキャンペーンが開催されており、ROG Phone 8シリーズと周辺機器の同時購入で周辺機器が15%OFFとなり、ROG SACKPACK(バッグ)がプレゼントされます(Pro EditionのみSACKPACKプレゼント対象外)
十分すぎるパフォーマンスに加え、AriTriggersやモーションコントロールによる多彩な操作方法、ARMOURY CRATEやGAME GENIEによる細かな設定カスタマイズなど、コアゲーマーも納得の製品です。また、カメラ性能やオーディオ性能も非常に高く、(いまいち不評のようですが)パンチホールカメラ採用による筐体の小型化など、普段使いのスマホとしての使い勝手も大きく向上したと思います。さすがに値は張りますが、ゲーマーも一般人もメインスマホとしてぜひ欲しいハイエンドスマホと言えるでしょう。
7.関連リンク
Gaming Phone:ASUS Store