Timekettleの翻訳イヤホン、W4 Proの実機レビューです。形状としては(個性的な外観ですが)完全ワイヤレスイヤホンで、もちろんイヤホンとしても使えますが「翻訳機」でもあります。ウインタブではつい先日「Timekettle M3」という翻訳イヤホンのレビューをしていて、M3がカナル型の形状であったのに対し、このW4 Proは「いま旬の」オープンイヤー型になっており、筐体品質・音質・翻訳品質のいずれもTimekettle製品としては「ハイエンド」となるモデルです。
先日レビューしたTimekettle M3のレビュー記事はこちらです。この記事と一緒にぜひご覧ください。
Timekettle M3 レビュー - 見た目はイヤホン、中身は高性能な翻訳機。海外とか「ガチ中華」で強力な助っ人に!
・3つの翻訳モードを搭載、二人の会話のほか、講演や動画の翻訳にも対応
・40言語、93のアクセントに対応
・認識精度・翻訳精度が素晴らしい
・一部言語ではオフライン翻訳にも対応
・オープンイヤー型なので装着感がいい
・音楽用のイヤホンとしても高品質
ここはイマイチ
・講演、映画や海外ニュースなど早口な外国語の翻訳ではラグが長め
・一般的なイヤホンよりもサイズが大きい
販売サイトはこちらです
Timekettle W4 Pro AI翻訳イヤホンで、世界とつながろう:Makuake
※12月13日現在、一般販売予定価格の20%OFFで応援購入できます
1.製品概要
スペック表
Timekettle W4 Pro | |
サイズ(本体) | 80.1 × 57.7 × 25.4 mm |
重量(本体) | 16.1 g |
サイズ(ケース) | 83.3 × 83.5 × 41.7 mm |
重量(ケース) | 188 g(本体+ケース) |
接続方式 | Bluertooth5.3 |
バッテリー | 110 mAh(本体1個あたり)/ 800 mAh(ケース) |
駆動時間 | 音楽再生約12時間 通話約8時間 翻訳約6時間 |
出力ポート | USB Type-A(5V/2A) |
翻訳機として
Timekettle W4 Pro AI翻訳イヤホン(以下、W4 Proといいます)の翻訳言語は「40」にのぼります。また、アラビア語や英語、スペイン語などは複数のアクセント(例:アメリカ英語、オーストラリア英語など)にも対応しており、アクセントまで含めると「93」の言語(アクセント)の翻訳が可能です。
また、オフライン翻訳も可能ですが言語パックのダウンロードが必要で、2言語まで無料、3言語目からは有料です。
W4 Proは3つの翻訳モードが使えます。頻繁に外国語話者とコミュニケーションを取る必要がある場合は「二人での会話モード」が便利ですし、海外旅行中に買い物をしたりタクシーに乗ったり、また国内でも日本語が通じない「ガチ中華」の飲食店に行ったりする場合は店員さんなどにイヤホンを装着させるわけにもいかないので「傍聴通訳モード」が使いやすそうです。
それと、前回のM3のレビューの際には実装されていなかった「通話と動画翻訳モード」ですが、これは「スマホ上でYouTubeなどのアプリを開き、外国語のスピーチを視聴する際に、Timekettleのアプリを重ねて開き、リアルタイムで翻訳する(電話などの音声通話時にも使えます)」というものです。個人的には当分海外に行く予定がないので、この「通話と動画翻訳モード」に最も大きな期待を寄せています。
イヤホンとして
M3の製品ページには音質に対するこだわりがふんだんに説明されていましたが、W4 Proでは音質のアピールは控えめです。しかし、「オープンイヤー型」になったことにより装着時の爽快感は格段に上がり、音質も改善されました。詳しくは後述しますが、W4 Proの「音楽用イヤホンとしての音質」はM3が足元にも及ばない、素晴らしいものでした。
BluetoothコーデックはSBCとAACが使え、LDACなどのハイレゾコーデックには対応していません。手持ちのスマホ、Google Pixel 8に接続した際には自動的にAACが選ばれました。
その他
外観についてはこの後ご説明しますが、W4 Proはかなり個性的な形状をしています。いわゆる「うどん型イヤホン」とも違う感じですね。この独特な形状に片側3つのマイクを搭載しており、クリアな翻訳・通話を可能にしています。
2.外観
外箱です。これだけ見ると「ちょっと豪華」くらいの印象ですが…
開けてみるとこんな感じです。凝ってるなあ…。私は外箱とかにはあまり関心がないのですが、W4 Proはそれなりのお値段の製品ですし、このように「ちょっとワクワクする」仕掛けになっているのはいいなあと思いました。
同梱物です。上の2つは「クイックガイド」で、多言語で書かれているので2冊になっていますが、言語が異なるだけで同じ内容です。ちなみに日本語は左側の冊子にありました。右下がFAQですが、「サポートの連絡先」とか「製品仕様」も含まれていました。
画像左下がケースに入った本体で、その上に充電用のUSBケーブル(USB Type-C – USB Type-A)があります。
ケースは金属製で上面がガラス張りっぽくなっていて高級感があります。中央にはTimekettleのロゴ。
底面です。中央に四角いボタンがあり、これは「ペアリングボタン」です。ただ、スマホなどデバイスとの初回接続時にはこのボタンを押す必要はなく、いったん接続済みのデバイスとの接続を切って他のデバイスに接続し直すときに押します。なので、どちらかと言うと「リセットボタン」ですね。
側面その1です。上面のTimekettleのロゴを基準にすると「上側面」となります。ここには充電用のUSB Type-Cポートがあります。
こちらが反対側の側面。中央下部に穴のようなものが見えますが、これはLEDインジケーターで、充電中に点灯します。なお、他の側面には何もありません。
ケースを開口してみました。このようにパカッと真ん中から分離する構造です。
本体を取り出しました。画像左側が左耳用、右側が右耳用ですが、「これ、どうやって装着するの?」と思ってしまうくらいに独特の形状をしています。
右耳用です。画像の「うどん」の部分に3つ穴が空いていますが、これは3つとも「マイク」です。一番上のマイク穴のさらに上にLEDインジケーターがあります。このLEDはペアリング時に点灯し、普段は消灯しています。
背面です。中央にスピーカーがあり、下部には充電コネクターがあります。
ということで、形状は個性的ですが、各部の構造は割とシンプルで、余計なものはついていないですね。
装着したところです。モデルはうちの下の子で、小柄ではあるのですが、それにしてもW4 Proはイヤホンとしては「大きい」です。そのぶん、声をしっかり拾ってくれそうですけどね。
3.使用感
翻訳
Google PlayとApp Store(iOS)に「Timekettle」というアプリがあり、無料でダウンロードできます。このアプリはW4 Pro専用のものではなく、Timekettle製品汎用のものですが、接続すれば製品固有のメニューや機能が使えます。
画像左が接続した直後のホーム画面、ここでオフライン翻訳の設定、上でご説明した「二人での会話」「傍聴通訳」「通話と動画通訳」の3つのモードを選択できるようになっています。
画像真ん中が「二人での会話」、画像右が「傍聴通訳」モードの画面です。
「二人での会話」モードを試してみました。残念ながら外国語ネイティブの方は見つからず、家族にサポートしてもらいました。画像左は「日本語で話し、それを英語に翻訳」、真ん中は「英語で話し、それを日本語に翻訳」、右は「日本語で話し、それをギリシャ語に翻訳」したものです。いずれもスマホの画面に表示されたものを掲載していますが、実際にはイヤホンに音声も流れています。
私が右のイヤホンを装着して話し、家族が左のイヤホンを装着して聴く、という使い方でしたが、翻訳の精度は非常に高いと感じました(ギリシャ語は精度が高いかどうかわかりません、すみません…)。また、真ん中の画像では私のネイティブではない、ジャパニーズ系の発音で英語を話しましたが、誤認識は非常に少なかったです(誤認識がないわけではありません。ただそれは私の発音が悪いせいであってW4 Proのせいではないはずです)。
翻訳の「タイムラグ」は想像していた以上に小さく、「ワンテンポ」くらいだったので、十分会話は成立すると思います。
次に「傍聴翻訳」モードです。このモードでは「リスニング(スマホのマイクで声を拾い、W4 Proで翻訳結果を聴く)」と「発言(W4 Proのマイクで声を拾い、スマホのスピーカーで翻訳結果を聴く)」の2種類の使い方ができます。ここでもスマホの翻訳画面を表示していますが、実際にはW4 Proあるいはスマホから音声が流れています。
まず、画像右側の「私が日本語で話し、それを英語に翻訳する」ほうですが、非常に素晴らしい精度だと感じました。この画像では先日公開した記事を読み上げたのですが、上のほうで「超制音キーボード(本当は超静音キーボード)」と誤認識しているにも関わらず、翻訳結果では「ultra-quiet keyboard」になっているのがすごいですよねw
画像左側は「YouTubeでCNNニュースを流してスマホのスピーカーで音声を拾い、それを日本語に翻訳したもの」です。こちらも「まずまず」かなとは思いましたが、若干直訳が強すぎるかな、と感じました。
ラグは短めですが、あります。日本語と外国語の場合、語順(主語、述語、装飾語)が異なるため、あまりにもリアルタイムだと正確に訳せない(きりの良いところまで待たないと訳せない)というのもあると思います。その点を考慮すれば十分合格点をあげられると思いました。ただ、英語の話者が日本人向けに比較的ゆっくり、区切りながら講演してくれる場合はかなり使いやすいと思いますが、CNNのアナウンサーのように高速で喋られてしまうと、訳を待っている間に話題が転換してしまい、こちらの頭がついていけない、というのはありますね。
こちらは「通話と動画通訳モード」です。この画像、タブレットを使って試しました。画像左に「利用可能な時間:290分」とありますが、このモードは毎月300分まで無料、それを越えると有料になります。Timekettle内のアプリ内通貨であるFishコインをチャージし、それを使って「時間を買う」仕組みです。とはいえ、300分(5時間)というのは結構な長さなので、多くの場合は無料時間で事足りるんじゃないかと思いますね。
このモードの特徴は「電話やYouTubeなどのアプリに重ねて表示させ、通話中あるいは動画視聴中にリアルタイムで翻訳する」というものです。画像右を見ていただくと「スティーブ・ジョブズ氏の講演動画」をYouTubeで視聴中に、Timekettleアプリ(画像下部にある黒い部分です)で翻訳をしているのがわかると思います。なお、このモードでもスマホ上に訳文がひょうじされるだけでなく、W4 Proから翻訳音声が流れます。
で、動画の翻訳精度ですが、「ものによります」。私は当初、キング牧師のスピーチの「I have a dream ~」というのを聴きたかったのですが、このスピーチはまともに翻訳ができませんでした。どうやらキング牧師の声をうまく認識できなかったようです(ソース動画はこちら)。次にスティーブ・ジョブス氏の講演で試してみたところ、こちらはかなり高い精度で翻訳ができました(ソース動画はこちら)。
「通話と動画通訳モード」に関しても、どうしても翻訳ラグは発生します。センテンスが長くなるほどラグも長くなると感じましたが、これは(上にも書いた通り)言語構造によるものだと思うので、完全にラグをなくすのは難しいでしょうね。
あと、Timekettleアプリには「AI機能」も実装されています。特に良さげだったのは「傍聴翻訳モード」および「通話と動画通訳モード」で生成された訳文を「まとめて(サマライズして)」くれるという機能です。この画像はスティーブ・ジョブズ氏の講演の冒頭部分をサマリーしたもの(つまり完全な講演内容ではありません)ですが、なかなか優秀なのでは?と感じました。
最後にオフライン言語パックについて。この機能はデバイス内で翻訳を完結させるためのもの(データ通信を行わないので、飛行機の中などでも使えます)ですが、言語パックのダウンロードは「2言語まで無料、以降は1言語あたり5Fishコイン(1,220円)かかります。
音楽・動画鑑賞
W4 Proは「普通のイヤホン」としても使えます。ただし、上でご説明したTimekettleアプリの起動中は翻訳機としてしか使えません。なので、動画や音楽を聴く際はTimekettleアプリを終了させる必要があります。
で、音質ですが「オープンイヤー型イヤホンとしては素晴らしい」ですね。前回レビューしたM3はカナル型のイヤホンで、メーカーでは音質の良さをアピールしていましたが、実際「翻訳ニーズのない場面では使いたいと思わない」くらいの音質でした。しかし、W4 Proの音質であれば「翻訳ニーズのない場面でも積極的に使いたい」と思えました。
ご存知の通り、オープンイヤー型イヤホンは耳をふさがないので使っていて爽快感があります。一方で外部の音が聞こえてしまいますし、カナル型に比べて音漏れも大きめなので騒々しい場所では使いにくいです。W4 Proについても一般的なオープンイヤー型イヤホンと同じことが言えますので、室内で音楽を聴いたり、動画を視聴するのには向きますね。
4.レビューまとめ
Timekettle W4 Pro AI翻訳イヤホンはMakuakeでクラウドファンディング中で、12月13日現在の価格は51,199円です(一般販売予定価格の20%OFF)。割引価格ではありますが、イヤホンとしてはかなり高価ですし、先日レビューしたM3の約2倍です。
翻訳の精度は高く、特に「二人での会話モード」は実用性が高いと感じました。Timekettleでは「最短(のラグ)が0.2秒のリアルタイム翻訳」を謳っていますが、私が試した限り0.2秒というのは無理でした(Timekettleの説明によれば「0.2秒の瞬間翻訳は実験室で得られた結果ですが、実際の使用環境では、ネットワークの変動や録音機器などの影響を受ける可能性があります」とのこと)。
しかし、「二人の会話モード」が想定する「双方向かつ比較的短めのセンテンスによるコミュニケーション」であれば満点をあげていいくらいの使い勝手でした。なぜなら「センテンスが短いのでラグも短く、よって相手がストレスを感じることなく翻訳を待ってから応答できる」からです。
しかし「傍聴翻訳モード」「通話と動画通訳モード」ではそうは行きません。これらのモードは基本的に「一方通行でセンテンスも長めである」という特徴があり、「センテンスが長いのでラグも長く、翻訳を待っている間に話者が次の話題に移ってしまう。講演などで表示されるスライドや動画視聴で表示される画面も翻訳を待っている間に切り替わってしまう」ことになります。これだと講演とか動画を視聴していても集中できません。
このため、私は「『二人での会話モード』は素晴らしいと思うし、自分でも積極的に使いたい。しかし『傍聴翻訳モード』と『通話と動画翻訳モード』は使える場面が限られるのではないか。特にネイティブな外国語話者向けの外国語の講演(例:アメリカ人がアメリカ人向けに講演する)にW4 Proを持って参加する、というのは少し無理があると思う(話すスピードが早くセンテンスも長いので、翻訳が間に合わない)」と評価します。
一方、音楽用イヤホンとしては、多くの方は「翻訳機能のおまけ」くらいに考えると思いますが、これが予想外に優秀です。音質の良いオープンイヤー型イヤホンとして高く評価できます。W4 Proはもちろん「翻訳ニーズがあるから購入する」製品ですが、「常に翻訳が必要ということはなく、翻訳しない時間のほうが長い」方がほとんどだと思うので、音楽用イヤホンとしても品質が良い、というのは実は大きなメリットだと思います。
5.関連リンク
Timekettle W4 Pro AI翻訳イヤホンで、世界とつながろう:Makuake
※12月13日現在、一般販売予定価格から20%OFFで購入できます
2014年、低価格な8インチWindowsタブレットに触発されサイト開設。企業でユーザー側代表としてシステム開発や管理に携わっていました。「普通の人」の目線で難しい表現を使わず、様々なガジェットを誰にでもわかりやすく紹介・レビューします。