Shokzの骨伝導イヤホンのニューモデル「OpenRun Pro」の実機レビューです。Shokzというよりも「AfterShokz」のほうがピンと来ると思いますが、実は最近ブランド名が変更されまして、現在は「After」がつかない「Shokz」です。名前が変わってももちろん「骨伝導イヤホンのトップブランド」であることに変わりはありません。
OpenRun Proは従来の最上位モデル「AeroPex」のさらに上位に位置する、新たな「フラッグシップモデル」です。
なお、発売に先立ち、レビュー機をShokzからサンプル提供していただきました。貴重な機会をいただきましたこと、この場にて御礼申し上げます。ありがとうございました。
・耳をふさがず、爽快な装着感
・使用中も外部の音が遮断されない、高い安全氏
・ShokZ TurboPitchテクノロジーによる低音強化
・長時間のバッテリー駆動&急速充電
・マイクはノイズキャンセリング
・IP55の防水・防塵性能
ここはイマイチ
・カナル型・インナーイヤー型の同等価格品よりも音質は低い
・2万円前後と、安価とは言えない
販売サイトはこちら
OpenRun Pro:GREENFUNDING
OPENRUN PRO:Shokz公式サイト 製品ページ
目次
1.OpenRun Pro スペック
スペック表
SHOKZ OPENRUN PRO | |
方式 | 骨伝導 |
周波数 | 20Hz-20KHz |
Bluetooth | バージョン5.1 |
対応コーデック | SBC |
接続可能距離 | 最大10 m |
バッテリー容量 | 140 mAh |
バッテリー駆動時間 | 最大10時間 |
充電時間 | 1時間(5分の充電で1.5時間利用可) |
防水・防塵 | IP55 |
重量 | 29 g(実測値28 g) |
主な特徴
Shokz TurboPitchでより深みのある低音再生を実現
OpenRun ProにはShokzとしては第9世代となる骨伝導技術「Shokz TurboPitchテクノロジー」が搭載されています。メーカーによれば「驚くほど深みのある低音を実現」しているとのことです。
最大10時間のバッテリー駆動、5分の充電で最大1.5時間利用OK
従来のフラッグシップモデル「AeroPex」も最大8時間の長時間駆動が可能でしたが、OpenRun Proではこれが「最大10時間」となりました。しかも急速充電に対応し、わずか5分の充電で最大1.5時間の利用が可能です。もともとBluetoothイヤホンはバッテリー容量も小さく、また駆動時間も5~6時間くらいのものが多いですが、この製品はかなりのスタミナ、と言えるでしょう。また、急なWeb会議でも「5分も充電すればOK」です。
Aeropexと比較して20%の小型化を実現
すみません、この項目のタイトルと画像が矛盾していますね。要は筐体が小さくなり、操作系のボタン類は大きくなった、ということです。Shokzのボタン類は右耳側の底面にあるため、どうしても手探りでの操作になってしまいます。そのため、ボタン類が大型化した、というのは地味に使用感を大きく高めてくれます。
IP55レベルの防水・防塵
OpenRun ProはIP55レベルの防水・防塵性能があります。「水しぶき」くらいなら大丈夫です。製品特性上、屋外での利用機会が多いと思いますが、多少雨に濡れる程度であれば壊れたりはしません(ただし、雨が降ってきたら使用を控えるほうがいいです)。しかし、防水・防塵性能については従来モデルのAeroPexがIP67対応だったので、少し後退しています。
Shokzアプリ
Google PlayおよびApp StoreからShokzのアプリがダウンロードできます。このアプリはマルチペアリング、イコライザ、言語切替、バッテリー残量確認などに対応します(これらは本体側のみの操作でも対応しています)。ただし、レビュー時点で日本からのダウンロードができず、今回のレビューではテストできませんでした。
このほか、AeroPexから引き続きデュアルノイズキャンセリングマイクによりノイズのない通話・Web会議ができます。
では、筐体を見ていきましょう。
2.OpenRun Pro 筐体
パッケージはこんな感じです。
同梱物です。本体のほか、キャリングケース、充電ケーブル(独自規格の端子とUSB Type-A)、ペーパー類ではユーザーガイド、法律上のご注意、保証書、Shokzアプリの案内が入っていました。キャリングケースは筐体の保護に役立ちそうなセミハードタイプで充電ケーブルも収納できます。
Shokz製品でいつも感心するのが取扱説明書のわかりやすさです。このように必要最小限のことがしっかり図示されていますので機械に弱い人でも安心です。この画像では英語になっていますが、もちろん日本語表記もあります。
なお、この製品はかなり多機能で、しかも本体のボタン操作だけですべてまかなえるようになっています。そのかわり(あまり使わない機能の場合)ボタン操作がやや複雑なので、購入されたらSHOKZのWebサイトからユーザーマニュアルをダウンロードしておきましょう。
トップ画像を再掲します。本体のデザインですが、従来モデルから変わってはいるものの「いつものShokz」です。とても華奢に見えますが、フレームはチタン製で弾力性もあり、実際はとてもしっかりした作りになっています。まあ、そのぶんお値段も結構なものですが…。
ひっくり返してみました。画像左側が「右耳」になりますが、操作系のボタンと充電コネクタがあります。
充電はこのようにして行います。端子形状はShokz独自のもので、本体とマグネットでくっつくようになっていますので、方向を間違えることはありません。ただし、独自規格なので、ケーブルをなくすと詰みます(というか、Shokzから購入することになると思います)。
右耳側です。こちら側の底面に操作系ボタンがありますが、それ以外にはマイク穴が2つあります。1つはわかりやすいと思いますが、もう1つは見えにくいですね。右下にも穴があります。また、「SHOKZ」ロゴの左側にLEDインジケーターがあり、電源オン/オフ時やペアリング時に点灯/点滅します。
左耳側です。こちらには物理ボタンがついています。他のワイヤレスイヤホンと同様、ここを一度押しや二度押し、長押しなどをすることによって曲送りや電話応答などができます(後述します)。完全ワイヤレスイヤホンではこのボタンがセンサータイプになっていることが多いですが、個人的には物理ボタンのほうが誤操作が少なく、使いやすいと思います。
内側です。この部分が肌に触れるわけですが、このとおり何もありません。
ただし、このように下部と前面にグリルがついています。このグリルは私が知る限り、従来モデルにはありませんでした。上でご説明した「Shokz TurboPitch」の関係で追加されたものではないかと思われます。
3.OpenRun Pro 主な機能
言うまでもなくOPENRUN PROは「骨伝導イヤホン」ですが、イヤホンとして備えておきたい周辺機能も充実しています。
●マルチファンクションボタン
本体の左側面についているマルチファンクションボタンは「音楽鑑賞」と「通話(Web会議等ではなく、電話)」の際の基本操作に対応します。今回のレビューでは「電話」をしていませんが、長時間音楽を聴きました。実際によく使ったのはこの図の「上の4つ」でしたが、やはり物理ボタンは操作感がよく、とても便利に使うことができました。
●マルチペアリング
最大2台のデバイスとペアリングができます。
●言語の切り替え
電源オン/オフ時やペアリング時などに音声ガイダンスが流れますが、この際の言語を「日本語、中国語、英語、韓国語」から選べます
●水濡れ検出アラート
水(液体)を検出する機能があり、濡れた状態でイヤホンを充電すると本体のLEDインジケーターが点滅し、ビープ音が鳴ります
●イコライザーモードの切り替え
出力される音を「スタンダードモード(音楽用、汎用のバランスモード)」と「ボーカルモード(オーディオブックやポッドキャストなど、人間の声に最適化)」の2種類から切り替えて使うことができます(今回のレビューでは主に「スタンダードモード」を使っていますが、両者に劇的な音質差は感じられませんでした)。
●バッテリー残量チェック
所定の操作でバッテリー残量を音声でアナウンスしてくれます(「バッテリーは充電されています/バッテリーはおよそ半分です/バッテリーは残りわずかです/充電してください」の4パターン)。
上記の操作は全て「本体のみ」で可能です。また、上でご説明した専用アプリでも対応していて、おそらく専用アプリのほうが使いやすいと思いますが、レビュー中に専用アプリのダウンロードができない状態だったので、今回はテストしていません。
なお、これらの機能の操作方法についてはSHOKZのユーザーマニュアルでご確認ください。
4.OpenRun Pro 使用感
装着感
装着イメージです。下の子にモデルになってもらいました。体の小さい子ですが、大人としても頭のサイズが大きい私が使っても後頭部のバンドにはかなり余裕がありますので、OpenRun Proのサイズが小さすぎる、と感じる人はほとんどいないと思います。これが小さすぎるとしたらチェ・ホンマンかアンドレ・ザ・ジャイアントくらいでしょう(ちょっと言い過ぎ)。また、締めつけ感は強からず弱からず「適度」と感じられ、長時間使用しても耳が痛くなったりとか(耳をふさがないので)耳穴がムレたり、といったことはありませんでした。私と私の家族の感想としては「普通のイヤホンよりも快適」でした。
音質
音質について、初めてShokzの骨伝導イヤホンを使われる人は「耳をふさがないのにここまでの音質とは!」と驚かれるだろうと思います。それくらいの水準ではあります。また、私の手元に以前レビューした、同じShokz製(レビュー当時はAftershokz)の「テレビ用 トランスミッター付きイヤホン」がありましたので、それとも比較してみましたが、Shokz TurboPitchの恩恵で低音域が強化され、一段と豊かな音質になったと評価できます。
…ただし、この音質、一般的なイヤホン(高価格帯のもの)と比較できる水準ではありません。ここははっきり言っておきます。要は「耳穴に直接音を流し込む」カナル型やインナーイヤー型のイヤホンとは「聞こえかた」が異なります。構造上やむを得ない話ではありますが、臨場感という点ではカナル型やインナーイヤー型に及びません。「ワンクッションある」という感じですね。私の家族は「少し離れたところで演奏が聞こえる感じ」と評していました。
また、音漏れは多少あります。室内で比較的低音量で聴く場合はあまり気にする必要はありませんが、音量を中レベル以上に上げると少しずつ音漏れが確認できます。一般的なインナーイヤー型のイヤホンよりも音漏れは小さい方だと思いますし、後述する屋内での利用シーンを考えると、あまり気にしなくても大丈夫だと思います。また、最大音量にすると音割れもしますね。
仕事や勉強をしながらBGM用として使うには十分な音質ですし、低価格帯のイヤホンには劣らないと思います。しかし音楽をじっくり聞く趣味があり、高価格帯(この製品と同等の価格のもの)のイヤホンを使っている人には不満が出るでしょう。
じゃ、それが悪いか、というと「そんなことはありません」。このイヤホンはカナル型やインナーイヤー型のイヤホンには真似のできない長所があります。これからご説明します。
屋外での利用
今回、レビュー期間を長くいただいたことにより、室内や屋外、様々な場所でテストができました。結論を言うと「屋外で安全に使え、実質的に『自動ミュート』する」ような挙動でした。例えばこんな感じです(なお、文中にある「dB」はスマホアプリで測定したものなので、精度はあまり高くないと思います)。
住宅エリアの生活道路にて
自宅を出て、地元駅まで歩いてみました。駅までの道のりは住宅街(というかマンション街)で、「なにもない(人が集まっていたり、自動車が通っていない)」状態だと騒音レベルは40-45dBくらいです。この場合、OpenRun Proはとても気持ちよく利用でき、音楽を楽しむことができました。ただし、近くを自動車が通過する場合(このとき、一時的に60dBくらいになりました)、自動車の走行音ははっきりと聞こえました。あと、談笑しながら歩いていたおばさん二人組とすれ違いましたが、おばさんの「ホッホッホー」という笑い声(このときも一時的に60dBくらいw)もガッツリ聞き取れました。
駅前にて
地元駅の前に行ったら、縁日みたいなことをやってまして、それなりに人通りもあり、店舗からBGMが流れていたりして、騒音レベルは常時65-70dBほどでした。この際、OpenRun Proは屋内(自宅)や住宅エリアと同じ音量だとまともに音楽が聞こえません。もう少し音量を上げてやるとしっかり音楽が聴けますが、外部の音が聞こえてしまうので音楽に集中できる、という感じではありませんでした。そのかわり(当然ですが)いま外の様子がどうなっているのかを把握する、という点ではイヤホンなしの状態と大差ありませんでした。
パチンコ店にて
おそらく街中で最も騒々しいと思われるのがパチンコ店の中ですよね?パチンコをしながら音楽を聴く人がどのくらいいるのかはわかりませんが、テストということで店内に入ってみました。さすがに店内は騒々しく、騒音レベルは85dBくらいありました。
こうなると屋内、住宅エリア、縁日の音量では太刀打ちできず、最大音量近くまで上げてようやく音楽が聴けました。一応X JAPANの「紅」で対抗してみたんですけどね…。この状態だと、確かに音楽は聴けるものの、「耳に悪影響がないはずがない」と思います。なので、80dBとかの騒音下でOpenRun Proを使うのは難しいと思います。
ここに埼玉県深谷市がまとめた「騒音の大きさの目安」という資料があります。
騒音の大きさの目安:埼玉県深谷市
これを見ていただくと、「走行中の電車内」も80dBとなっていますので、通勤電車の中でOpenRun Proを使うのは厳しいでしょうね。音量を上げすぎると音漏れも出てきますので、隣のおっさんがブチ切れるかもしれませんし。
屋外での利用まとめ
上のほうで「実質的に自動ミュート」と書きました。屋外にいると周囲の環境が目まぐるしく変わることがあります。特に今回のテスト「自宅から駅前の繁華街まで歩く」というのはまさにそれに当てはまります。この時「どうしても常に音楽を聴いていたいか」それとも「あくまでもBGM用として、周囲の環境に合わせて聴こえ方が変わるのを受け入れる(≒安全)か」によってOpenRun Proの評価は変わってくると思います。
私、別な日に自宅でPC作業をしながらOpenRun Proを使っていて、そのまま外出し、コンビニで買い物をしたこともあります。この際、「最初から最後まで」音量は変えませんでした。自宅を出て、住宅エリアを歩いている際にはしっかり音楽が楽しめ、コンビニの店内では自動的に音楽がミュートされ(店内の騒音のほうが大きかったため、相対的にOpenRun Proの音量が下がったと感じた)、そのまま商品を選び、店員さんと会話しながら会計を済ませ、店外に出たらまた音楽が聴こえてくる、という感じでした。私はこの挙動に非常に満足しましたが、「コンビニの中でも音楽を聴きたい」とか「いやコンビニの中で音楽を聴いちゃダメだろ」とか、人によって感じ方は様々だと思います。
一番いいのはShokzの製品ページにあるような、またこの製品の製品名通り、ジョギングやエクササイズをしながら使う、ということでしょうね。皇居一周マラソンで快適に使えるとは思えませんが、自宅の周辺を散歩したり、ジョギングする際に使えば、とても快適に、安全に音楽を楽しめると思います。
5.OpenRun Pro レビューまとめ
Shokz OpenRun ProはGREENFUNDINGでクラウドファンディング中で、1月10日現在の最も安価なプランは19,999円です。また、3月からはShokz公式サイトでも発売される予定で、公式サイトでの予定価格は税込み23,880円となっています。
骨伝導イヤホンは一般的な音楽用イヤホンとは明らかに特性が異なります。実際、2万円で音楽用イヤホンを購入するとしたら、相当に高音質なものを選べると思いますが、こと音質に関してOpenRun Proは高級イヤホンには及びません。
一方で「耳をふさがないことによる爽快感、疲れにくさ」「耳をふさがないことによる安全確保」という点では抜群ですね。世の中的にANC(アクティブノイズキャンセリング)機能に経営資源を投入する企業が多い中、全く逆のアプローチを取っているとも言えます。
記事中にも書きましたが、イージーリスニング用としての音質は十分に確保されていると評価していますので、お仕事中のBGM用として室内で使うのもいいでしょうし、屋外で安全・快適に音楽を楽しむのに最適なイヤホンだと思います。
6.関連リンク
【Shokz】骨伝導イヤホンを再定義する OpenRun Pro:GREENFUNDING
OPENRUN PRO:Shokz公式サイト 製品ページ
コメント