Wildcat lake - 次世代の安価・小型CPUの噂

オピニオン

Wildcat lake
最近、通関申請Linuxのソースコードなど複数のソースから、Intelが”Wildcat lake”と呼ばれる新CPUを用意している可能性が高い状況になっています。噂レベルですが、次世代ノート用CPUのPanther lakeと同じ世代で、より低電力・低価格のセグメントを担うと推測されています。

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Panther lakeは今年2025年に立ち上がるIntel 18Aを使用するとされおり、基本的な設計はLunar lakeの発展版といった趣になる一方、Arrow lake-Hと同様のマルチスレッド性能を持たせるため4P+8E+4LPE(ないし6P+8E+4LPE)になるようです。

一方のWildcat lakeは2P+0E+4LPEと噂されています。これはLunar lakeの4P+0E+4LPEと比べても小さく、Alder lake-N (Twin lake)の0P+8Eよりわずかに大きい程度の規模感になっています。このため、Wildcat lakeがAlder lake-Nの後継ではないか、という声があるようです。

なおさらに以前の噂には4P+0E+4LPEのPanther lake-Uが存在するという話もあり、それが本当ならWildcat lakeと被っているようにも見えますが、冒頭で示したLinuxのソースコードではPanther lake-Uは存在しないようです。

N100の後継にしては高価すぎる設計?

Alder lake-Nの後継となるとそれなりに注目を集めそうですが、しかしWildcat lakeがN100のように安くできるか?と言われると疑問が残るところです。以前の記事でも取り上げましたが、Raptor lakeまでの単一ダイ(モノリシック)型なら単に設計図から一部のコアを取り除くだけのカットダウンで安価な製品を製造できましたが、タイルアーキテクチャとなった現在、複数のタイルを再設計するとコストがかかりすぎる&部品共通化によるコスト低減メリットが損なわれ、Foverosの接合コストもかかるため、単純にカットダウンしても安価な製品は作れません。

もしそうであるならば、Wildcat lakeがどのようなターゲットの製品なのか、ということが疑問になるでしょう。筆者はここでPanther lake-Uが存在しない前提のもとに「Core 3 (N305や100U)の後継だが、N100の後継ではない」という説を提示します。また、可能性が低いですが一応「Panther lake-Uと共存し差別化がなされている」という説も提示します。

Core 3 (N305や100U)の後継説

Alder lake-Nファミリーの中には、8コア製品とのCore i3-N305・N300と、4コア製品のN200・N100があります(他にいくつかマイナーなSKUがありますがここでは無視します)。このうち8コア製品はCoreの冠を持ち、希望卸売価格は309米ドルで、Raptor lake Refreshのエントリー型番のCore 3 100U (2P+4E)と同価格となっています。

第12-14世代の2P+4Eと0P+8Eは、同電力マルチスレッド性能はほぼ同等ですが、パソコンの待ち時間の半分以上を決めるシングルスレッド性能では1.8倍ほどの開きがあり、0P+8Eが300ドルもするのはコスパが悪いと見なされているようで、ADL-Nの全出荷数の15%前後に留まる不人気SKUになっています(RPL-Hのi7/i5の出荷比率からの概算では、製造技術的には7割程度がN305として出荷可能と推測されます)。

N305:$309, 269 passmark samples
N300:$309, 33 passmark samples
N200:$80, 173 passmark samples
N100:$55, 2005 passmark samples

同じようなダイ面積なら0P+8Eよりも2P+4LPEとしてシングルスレッド性能を高めたほうが実用性が高くなり、Core i3-N305では名前倒れに終わってしまった”Core 3″の役割を担えるようになるのではないか、というのがIntelの打算ではないかと推測します。

2P+4LPEという構成は最近の傾向からするとコア数が少なすぎにも感じますが、4P+4LPEのCore Ultra 200V (Lunar lake)は省電力で性能面も使えるCPUとして評価が高く、前世代4EのみのN100ですら最低限使えるという扱いですから、次世代の2P+4LPEならば十分「ネットとオフィスなら快適につかえるし、i3相当と考えれば納得」という評価は得られるのではないかと思います。Cinebench 2024のシングル/マルチは258Vが120/600、N305が65/320、N100が60/200程度に対して、Wildcat lake 2P+4LPEは130/500、1P+4LPEで120/420、0P+4LPEで90/350程度と期待されます。

N100の後継ではない説

一般的にCPUは歩留まり7割から採算に乗るとされ、最近のCPUは「完動品が上位型番、コアの7割が動作する製品が下位型番として流通、コアの5割しか動作しない型番はほとんど出荷されない」という傾向が見られます。Intel Core 100Uシリーズを例にとると、完動品の2P+8Eが大半(passmarkサンプル数は150U+120Uが285回)で、2P+4Eが多少見られる程度(100Uが78回)、半分まで減った1P+4Eはほとんど見られません(U300が22回)。以前も旧Pentium Goldが全然出荷されないということを指摘しましたが、状況は変わっていません。

この伝で考えると、Wildcat lakeが噂通り2P+4LPEのダイであるならば、完動品の2P+4Eが過半、1P+4LPEや2P+2LPEが下位型番として出荷され、半分を無効化する0P+4LPEや1P+2LPEの構成はほとんど出荷されないのではないかと思います(Intel 18Aが立ち上げ直後で歩留まりが上がりきらなければもう少し下位の比率は上がるかもしれませんが)。

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2P+4Eの100Uは定価300ドル、1P+4EのU300は定価200ドルの値札が付いており、N100の55ドルに比べるとずいぶん値が張ります。Intel 18A+Foverosを使うとすれば原価も決して低くはないので投げ売りはされず、N100のように3万円以下のミニPCがあふれるというようなことにはならず、その手の用途には相変わらずTwin lakeのN150が使われるのではないかと予想します。

9/7/5がPanther lake、3/Pentium/CeleronがWildcat lake?

以前の予測の通りCore Ultra世代のCPUは省電力化が進んでおり、例えば1kgを切るMSI Prestige 13シリーズは、Meteor lake 6P+8E搭載でもLunar lake 4P+4E搭載でも特に問題なく動かせるようになっています。次の世代はさらに省電力化が進み、4P+8E+4LPEと言われるPanther lake-Hも軽量ノートからゲーミングノートまで幅広く、Core Ultra 9/7/5の型番をカバーできるようになるでしょう。

Wildcat lakeはコア数的にちょうどCore Ultra 3以下を担う位置にはまり、その選別落ちがAlder lake-Nの範囲をカバーする形になるのでいはないかと思います。既存製品のコア数や価格付けを参考にすると、Panther lakeのCore Ultra 9/7/5が定価$600/$500/$400、Wildcat lakeのCore 3/Pentium/Celeronが定価$300/$200/$100というきれいな階梯構造になりそうに思えます。

Core 3/Ryzen 3相当の廉価品としてAlder lake-NやRyzen 7020シリーズ (Mendocino)などを別枠生産する試みはIntel・AMDともうまくいっておらず、ここ最近は前世代・前々世代の製品を廉価品枠に充当するのが常になっていました。しかしIntel的にはArrow lakeは内製できないので旧世代になったとしても高コストになるため、それを廉価品として売り続けることは考えていないでしょう。それでWildcat lakeという内製廉価品を改めて設計してきたのではないかと思います。

Wildcat lake

Raptor lake Refreshのコア数・価格(左)と、筆者が予想するPanther lake&Wildcatlakeのコア数・価格(右)

CPUコア以外のコストダウンは?

昨年のIntel製品の搭載iGPUを見ると、Meteor lake-Hが128EU、Meteor lake-Uが64EUに対して、Alder lake-Nは32EUと廉価品らしい切り詰め方をしていました。Wildcat lakeの場合、Core 3扱いで売ると予想されること、部品共通化によるコスト削減効果を合わせると、普通にPanther lakeと共通の4xGPUコア(かその選別落ち)を使い、Lunar lake並みのiGPUを搭載するのではないかと予想します。

もう一つ気になるのはNPUの扱いです。NPUは現状Copilot+PC認定に必須で、特にメーカー側がこの認証を求めて可能な限り新規モデルをNPU付きのCPUに変えています。ただ、NPUはLunar lakeで17mm²と決して小さくない面積を食っており、コストダウン重視なら可能な限り取り除きたいでしょう。

Arrow lake-Hでは、本来の予定を変更してGPUにAI用回路のXMXが搭載されています。私はこれをXMXでのCopilot+PC認証を取得する筋道があっての仕様と見なしていますが、もしそれが可能であるならば、Wildcat lakeではNPUを削除してGPUのみにするのではないかと予想しています。

Panther lake-Uとの共存説

以上の話はPanther lake-Uは存在せず、それがカバーする範囲もWildcat lakeが担う、というものになります。ただ、さらに以前の噂あった4P+0E+4LPEのPanther lake-Uがなお存在するのであれば、自社製品どうしで競合するのもおかしな話なので、Wildcat lakeはなにがしか差別化した製品ということになるでしょう(冒頭のソースコードではPTL-Uはありませんし、4P+0E+4LPEダイと2P+0E+4LPEダイを別に作るコストを払うとは信じがたいですが……)。こちらは可能性が低いので好き放題想像で書いていきます。

ありそうな話としては、Lunar lakeで試したオンパッケージメモリ製品の後継として、さらにコア数を削って小型化に注力し、よりタブレットやスマホに狙いを絞った製品、という可能性を挙げることができます。これはOEMメーカーの求め次第でしょう。

Wildcat lakeがN100の後継になれる(Panther lake-Uとも共存できる)とすれば、なんらかの方法で大幅にコストダウンされているときくらいではないかと思います。これにはかなり大胆な変更がないと考えにくく、例えば「Panther lakeの論理設計をIntel 7にバックポートして物理実装したもの」「Intel 3で設計済みのRedwood cove+Crestmont+Panther lake用Xe³GPUを組み合わせてモノリシックにしたもの」というくらいの変更が必要と考えますが、技術的には不可能ではないにしても経営的にはやらなそうに思えます。

ほかには、Foverosを使わずにパッケージ基盤上の接続(OPIO)でダイを繋ぐとか、Lakefieldのようにベースタイルに機能を持たせてシリコンのコストを節約するといったことも考え得ますが、再設計コストが高くつきそうで、こちらも可能性は低そうに思えます。もっとも、今後の製品のためのテストベッドとして利益度外視で作るなら別でしょう。

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