こんにちは、近郊ラピッドです。今回はRyzen 6000シリーズ上位モデルに搭載されている内蔵グラフィックス(iGPU)、Radeon 680Mのベンチマーク結果をご紹介したいと思います。果たしてRDNA2世代に更新されたiGPUはどの程度の実力を持っているでしょうか。
目次
1.Radeon 680Mの概要
名称 | Radeon 680M |
CU(GPUコア数) | 12 |
クロック | 2400MHz(Ryzen 9 6900HXの場合) |
アーキテクチャー | RDNA2 |
対応メモリー規格 | DDR5-4800、LPDDR5-6400 |
Radeon 680Mのスペック表です。なおAPU(CPUとGPUを1つの製品にしたもの)の型番によって微妙にクロックが異なります。
このiGPUはCU数が12と多く世代がRDNA2に更新されている点が特徴となっています。Zen 3世代のRyzen 5000シリーズまではCU数は最大8、世代も少し古いVegaだったため、スペックだけを見てもかなりの性能向上を果たしていることが分かります。またRyzen 6000シリーズはDDR5対応なので、DDR4対応だった前世代に比べてメモリーの速度が引き上げられた点も性能向上に寄与しています。
Radeon 680MはRyzen 6000シリーズの内、Ryzen 7、9のグレードに搭載されています。一方でRyzen 5に搭載されているiGPUはCU数が半分の6に減らされたRadeon 660Mとなっていますので、その点はご注意ください。
ちなみに、Ryzen 6000シリーズ全体の特徴については以前記事にしておりますので、CPU情報 記事一覧のバックナンバーよりご覧ください。
2.Radeon 680Mのベンチマーク
測定について
今回はRyzen 9 6900HXに搭載されたバージョンのRadeon 680Mを使用しています。測定機種はASUS ROG Strix G15 G513RWで、電源に接続した状態で計測したスコアとなっています。
Port Royal
まず、スコアの高低以前に外部GPU無しでレイトレーシングを使ったベンチマークを実行できたこと自体が驚異的です。動作すると分かっていても、実際に動作させた際にはレイトレーシングが正常に機能し、映像が正しく描画されている事に驚きました。
流石にベンチマーク中の映像はカクカクであり、平均FPSは5.09とかなり荷が重いテストでしたが、スコアは1098であり、十分健闘したと言えるでしょう。現状では「実行できる」というレベルですが、これからの世代の性能向上に期待したいところですね。
Time Spy
次はTime Spyのスコアです。2645というスコアを叩き出し、IntelやAMDの製造するx86-64系プロセッサーに内蔵されたiGPUとしてはトップクラスの性能を誇っています。
このスコアはGTX1650(2988~3722程度)と比べると流石に差はありますが、GTX 1650 Max-Q(3111~3286程度)と比較すると追い付くまであと少しというスコアであり、GTX1050Ti(2449~2528程度)と同程度の水準のスコアです。今世代ではGTX1650とは差を付けられましたが、いよいよAMDのiGPUによるGTX1650越えが現実味を帯びてきたと言えるでしょう。
Tiger Lake(第11世代Core)が登場した際もiGPUの性能向上が目立っていましたが、Radeon 680MはXeグラフィックスを更に上回る実力を発揮しており、技術革新の速さを感じます。
Fire Strike
こちらもGTX 1650 Max-Q(6973~7326程度)を少し下回るスコアとなっていますが、グラフィックステスト1が32.72FPSと30FPSを超えており、想像以上にスムーズな描画ができていたことが印象的でした。
Wild Life
Windows、Android、Apple製品で実行できるクロスプラットフォームのベンチマークテストです。平均フレームレートは90FPSを超え、実際テスト中もかなり滑らかに映像が表示されていました。
余談
Radeon 680Mはかなり高性能ですが、ベンチマークスコアはかつてIntelとAMDがコラボして誕生した「Kaby Lake-G」(最大24CUのRadeon搭載でTime Spy総合スコアが3000を超える場合もある)と比べると少し低い場合もあるようです。
しかし、これは本来は別々のチップのIntel CPUとAMDの外部GPU、そしてVRAMを一つのパッケージに収めた製品であり、全体のTDPも100Wと非常に高くなっていて、Kaby Lake-GのRadeonは純粋な内蔵グラフィックスとは言えないものとなっています。そもそもIntelの製品ページでも搭載されているRadeonが「ディスクリート・グラフィックス」(外部GPUの事です)と表現されており、これとは別にiGPUもCPUに搭載されています。
以上の点を踏まえると、Kaby Lake-GのRadeonはiGPUとは言えないのでRadeon 680Mがx86-64系に搭載されたiGPUではトップの性能である、と言っても良いと個人的には考えています(細かい話ですが、気になる方もおられるかもしれないと思い、調べました)。
Kaby Lake-Gのような力業で高いグラフィックス性能を実現したCPUに、Ryzen 7 6800Uのような「普通の」プロセッサーがグラフィックス性能でほぼ並んだ、という事もRadeon 680Mのパフォーマンスの良さを印象付ける一つの点だと言えるでしょう。
3.Radeon 680Mの総評
今回ご紹介したのは3DMarkという一ベンチマークのスコアであり、実際に動作させるアプリケーションによって発揮できるパフォーマンスは変化するものと思われます。
しかし、ベンチマークの結果だけを見てもiGPUとしてはかなり高性能であり、GTX1050 Tiと同等、GTX1650 Max-Qにあと少しまで迫る実力を有しています。外部GPU非搭載機でも、ある程度のゲームやクリエイティブアプリケーションを実行できる性能となっています。
薄型ノートやミニPCに向いているRyzen 7 6800UにもRadeon 680Mは内蔵されており、各所で話題のポータブルゲーミングPCにも採用されるなどの活躍を見せています。 また、最近発表されたMinisforum UM690にもRadeon 680Mを内蔵したRyzen 9 6900HXが搭載されています。超小型デスクトップPCとしては破格のグラフィックス性能を発揮することでしょう。
記事執筆時点では搭載機種が多いとは言えない点が数少ない弱点ではありますが、これからもRadeon 680Mを内蔵した超小型PCや薄型ノートPCが登場することを期待しています。