パソコンを購入する上では、数多くの要素を検討することになります。しかし、あまりにも考えることが多く、調査するのも一苦労するというのが現実ではないでしょうか。今回は、難解な用語をあまり使わずに、なぜパソコン選びが難しいのかという点について見ていきたいと思います。
特にこの記事では処理性能面について絞って説明しますが、パソコンを選ぶ際にチェックするポイントは他にもたくさんありますので、その点はまた別の記事、もしくは動画にてご紹介する予定です。
1.検討すべき点が多すぎる……
パソコンを選ぶ上で、買おうとしているパソコンが性能面でどの程度の実力があるかどうかを気にする方は多いと思います。当然性能が高い方がより快適に作業を行うことができ、業務効率を高めたり、また新しいゲームや動画編集ソフトといった処理負荷の高いソフトウェアを実行できるようになります。性能が高いと様々な点で有利なのは明らかですが、問題はどんなパソコンが性能が高いのか、いまいち分かりにくいという点です。
そもそも、購入時に把握すべきスペックは数多く、それらが何を意味しているのかを理解するのは簡単ではありません。
- CPU(場合によってはAPUやSoCともいう、パソコンの『頭脳』)
- メモリー(作業スペースのような役割)
- ストレージ(SSDなど、データの保存場所)
- グラフィックス(特に、ゲームや動画・写真編集をする時等に使う)
- ノートパソコンの場合は画面の質
このように、基本的なスペックだけを挙げても既に項目数が多くなっており、しかもそれらの性能は単純な指標で表されているわけではありません。
メモリーの場合は、(メモリーの速度などの細かい話を一旦置いておくとすると)単純に容量が大きい方が基本的には高性能になります。8GBよりも16GB搭載のマシンの方が、メモリーに関してはより高性能だと言えます。しかし、データを保存するストレージは単に容量が大きい方が優秀かと言うと、必ずしもそうではありません。
例えば、ハードディスクは比較的容量が大きいがSSDよりも低速なストレージです。ハードディスクしか搭載されていない機種は、SSD搭載機種と比べて動作が『もっさり』して快適とは言い難い状態になってしまいます。SSD搭載のパソコンであったとしても、SSDの種類によって速度が大分異なっている場合もあります。
メモリーやSSDは容量の大きさという具体的な数値があるため、まだ分かりやすい部類ではあります。問題はCPUや画面の質、グラフィックスなどです。例えば画面の質はノートパソコンを買う上で重要になりますが、主要メーカーの高価な機種の場合は詳細なスペックが示されていることも多くなっています。しかし、普及価格帯のマシンなどは画面のサイズや表示の細かさ(解像度)は表記されていても、『どの程度正確な色を表現できるのか』といった点は触れられていないことが多々あります。
そして、特にCPUに関しては簡単に説明することがかなり難しく、また同じような名前や型番でも性能が似ても似つかないケースが本当によくあります。
2.シンプルな指標があればいいのに……
1つの例として、よく似た型番のCPUを取り上げます。画像で示した2つはAMDのRyzen 5というCPU(厳密にはAPU)ですが、一見すると7520Uと7540Uという型番の数字に差はあまり感じません。
しかし、実際にはコアの数(基本的に多いほど高性能)が異なり、内部設計の新しさ(基本的に新しいほど高性能)も異なっています。そのため、見かけの型番の違いから受ける印象よりも、大幅に性能差があります。上の表に書いてある内部設計(アーキテクチャの項目)のZen 4はZen 2と比較すると性能が大きく向上しています。
この例からも分かるように、CPUの違いを知るには単に型番や『Core Ultra』『Ryzen』というブランド名を見るだけではなく、もっと詳しい部分まで見ていく必要があります。しかし、それには当然長い時間が掛かります。そして細かい数値が何を意味しているのかを理解するのは難易度が高くなります。上の表でも様々な項目がありますが、これでもかなり省略しています。
「一目見て処理性能が理解できる、シンプルな指標があればいいのに……」と思う方も多いのではないでしょうか。
3.ベンチマークテストは万能な指標になるか?
この問題を緩和するために、ベンチマークテストという性能を数値化して表す指標が作られています。便利ではありますが、注意すべき点もあります。
まず、パソコンの頭脳であるCPUは、型番によって得意な処理が異なっています。画像はPassMarkという種類のベンチマークを掲載したサイトの一部ですが、このサイトでは2つのオレンジ色の数字が表示されています。上の数字が基本的にはそのCPUの性能をシンプルに表していますが、下の数字の方が重要になる処理も珍しくありません。
そして世界にはPassMark以外のベンチマークテストもあり、CinebenchやGeekbenchといった色々なCPUの指標があります。しかも、それぞれで重視している処理が異なるため、2つのCPUを比べても、テストによっては結果が逆転することは日常的にあります。
このような事情があるため、特にCPUに関してはなかなかシンプルな指標が作りにくくなっています。他の部分に関しても似たような問題があり、一目見てパソコンの性能が分かるような万能な数値を作ることが難しくなっています。
4.パソコンの性能を理解することは難しいが、不可能ではない
結局のところ、パソコンを選ぶ際には(ウインタブを含めた)レビューサイトで実際に評価した記事や動画を見て、それから判断するのが手っ取り早い方法かもしれません。紹介されている各種性能の数値の意味がよく分からないとしても、どのような用途なら快適に使えるか、また限界はどの当たりなのかを分かりやすく説明していることでしょう。
ですが、有名な機種以外や発売されたばかりの機種になるとそうした情報が無いことも珍しくありません。その場合、どうしたらいいのでしょうか?
やはり、『急がば回れ』という言葉の通り、まずは地道にそれぞれの細かいスペックや指標が何を意味しているのか、少しずつ理解していくのが結局のところ一番の近道だと筆者は考えています。そのための解説記事や動画を作成することも、これから行いたいと思っています。
とはいえ、とりあえずの簡単な判定基準が欲しいという方もおられることでしょう。先ほどはベンチマークテストの指標には注意すべき点があると指摘しましたが、まずは検討しているパソコンのCPUの型番を検索して、PassMark、もしくはCinebench 2024の数値を確認してみるのはいかがでしょうか。
ウインタブのパソコン紹介やレビュー記事でもそれらの数値を紹介していますので、比較することで参考にすることができるでしょう。多くの場合は、CPUの性能を知るにはこれで十分かもしれません。
ですが、今まで見てきたようにパソコンの性能や実力というのは単にCPUの性能だけで決まる訳ではありません。他にどんな点を検討すべきなのかは、また別の記事にてご説明したいと思います。
コメント
この辺はパソコンに触ってから20年近くが経つ身でも分からない点が多すぎる・・・RyzenはIntel以上によく分からない。
私もそうです。あと、こないだもかのあゆさんと話してたんですけど、Ryzenって性能(ベンチマークスコア)の割に価格も世の中の評価も低めなような気もしますねえ。