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パソコン選び:コア数はいくつ いるのか

パソコン選び:コア数はいくつ いるのか
パソコンを選ぶ際、CPUのコア数を気にする方は多いと思います。実際に何コアあれば充分なのでしょうか。特に最近はPコアとEコアなど種類の異なるコアがあるので迷うかもしれません。

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今回はそれについて検証しますが、先に結論を書いてしまうと、最新モデルで「Core(Ultra)」や「Ryzen」を冠するCPUであれば、比較的安価な「i3」であっても十分コア数が増えたので、「ネットとオフィス」をする分ならどれを買っても足りるでしょう。極端な安物や、あるいは映像編集などをするなら別ですが、大半のケースではコア数に着目する意味は薄れています。

コア数を増やして意味がある用途

コア数が増えると、たくさんのコアで同時に計算する並列計算の能力が高まります。たくさんの作業員がいれば作業が捗って早く終わるという要領でコア数が増えれば速くなります。

ただし計算には並列化できるものとそうでないものがあります。例えば (a+b+c+d) という計算であれば、前から1つずつやる必要はなく、(a+b)と(c+d)を別の人が計算し、最後に2つの結果をさらに足しても同じです。つまり(a+b)と(c+d)は並列化できます。一方、(a+b+c) という計算では、うまく並列計算できるように分配できません。つまり処理の種類によってコア数増が効くものと効きにくいものがあるわけです。

並列化しやすい処理

並列化しやすい処理の典型は映像編集で、エンコードやフィルタなど、多くの処理は時間ごとに区切って別のコアで同時計算し、最後にまとめれば済みます。映像編集用途では基本的にコアはあればあるだけ使って高速化でき、その場合最終的にはメモリやディスクのほうがボトルネックになります。

並列化に向いている処理は、映像編集では時間ごと、ウェブサーバでは利用者ごと、気象シミュレーションなど科学演算では場所ごとなど、タスクの分割の仕方も理解しやすいものが多くなります。こういった並列化向きの用途はコア数を盛れば高速化が期待できるため、ワークステーションやスパコンなど特殊な方法でコアを山盛りにする設計が取られます。

3Dグラフィックスや動画のエンコード・デコードなど、広範に使われかつ並列化向きの用途では、汎用性を捨てて並列化を追求した専用回路――GPU等で性能や効率が追求されます。

パソコン選び:コア数はいくつ いるのか

映像編集での多コア分配の概念図。時間ごとに各コアに振り分けることができる。

並列化しにくい処理

並列化しにくい処理の典型は文字のレイアウトです。例えば原稿を400字詰め原稿用紙に手書きするのに必要枚数を計算するとして、単に文字数を400で割ればいいというものではありません。改行の位置や行末に句読点がかかるかどうかなど連鎖的に後ろに影響が出てくるため、結局全文を最初から一文字ずつ埋めていかなければ確定させることができません(影響連鎖の厄介さはWordで図入りの原稿を扱った人なら誰でも体験したことがあるでしょう)。このため、多人数で同時作業するためにあなたは1枚目担当、あなたは2枚目担当……決めることは困難です。

文字のレイアウトも、例えば改ページなど切れ目があれば複数人での並列作業もできるでしょうし、ある程度は並列化は可能でしょうが、やはり本質的には並列化に限界があります。

そして、文字レイアウトをする代表的なアプリがブラウザとワード、いわゆる「ネットとオフィス」です。「ネットとオフィスにパワーは要らない」とよく言われますが、むしろ、「ネットとオフィスはコア数増が効きづらい」というほうが実態に近いでしょう。

処理の種類とコア数の関係

処理の種類とコア数の関係を速度ベンチマークで確認してみましょう(データは全てnotebookcheckデータベースより)。並列化しやすい処理の代表例として動画エンコードのベンチマークを、しにくい処理の代表例としてブラウザ速度ベンチマークを使い、汎用ベンチマークの「シングル性能」「マルチ性能」と比較した図が下記になります。

ブラウザ速度ベンチマークはシングル性能とよく比例し、動画ベンチのスコアはいわゆるマルチ性能とよく比例しています。一方で、ブラウザの速度はコア数が増えたほどには速くなりませんし、動画編集速度はシングル性能の低い旧世代であってもコア数の多さが効いてきます。

並列化には限界があり、いつかコアを増やしても性能が伸びなくなること、その限界コア数が処理により異なることは、昔からアムダールの法則として知られています。昔はたいていのことがその限界以下のコア数で、コアが多ければたいていの処理が早くなっていましたが、最新世代のコア数は、「ネットとオフィス」用途についてはその限界を超えつつあると言っていいでしょう。

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横軸がCinebench R23のシングルまたはマルチ性能、縦軸はブラウザベンチまたは動画エンコードベンチの2×2の散布図

「ネットとオフィス」に必要なコア数

PCユーザの最大多数派の「ネットとオフィス」に必要なコア数を検証していきます。自分が実際にどの程度のコア数を使っているかは、HWiNFOなどのモニターアプリで記録することができます。今回は、私自身が「ネットとオフィス」を1時間使った際の記録を見てみます。

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Intel Core 4P+8E

まず、第12世代以降のノートで一般的な4P+8Eの構成を試すため、12500H機を使って「ネットとオフィス」、これにに加え、わざと負荷を増やすためにyoutubeを流しっぱなしにし、バックグラウンドでバーチャルマシンでLinuxを立ち上げその上で軽い数値演算を行った結果が下の図です。自分では負荷を増し増しにしたつもりでしたが、それでも全くコアは使い切れませんでした。待たされる時もありましたが、基本的にネットやディスクの速度に起因するものでした。

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Core i5-12500Hで「ネットとオフィス」に常時負荷を少し追加したときの、各コアの1時間分の使用率を横長の帯状に示したもの。それぞれの帯が各コアを示しており、Pコアはハイパースレッディングのため2つの帯がある。

Ryzen 8コア

次に、協力者にRyzenの8コアPC (Ryzen 7 5825U)を貸して「普通にメールとWord、Excelを使って」と依頼して使用状況をモニターした結果が下の図です。積極的に負荷を増やしてもらわなかったこともあって、ほぼ2コアだけで処理が進んでいることが分かります。

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Ryzen 7 5825Uの「ネットとオフィス」時のCPUコア別使用率の1時間分のプロット

Intel 旧式の2コア

Ryzenでの検証ではほとんど2コアあれば足りていましたが、本当に2コアで足りるかを検証するため、第10世代の2コアCPUを引っ張り出してみました。この場合は、さすがにCPUがいっぱいいっぱいで待たされることが増えました。とはいえ、時々待つにしても完全に止まることはなく、わざと重い処理をしなければ「ネットとオフィス」は一応使えるといったところでしょう。現に、Alder lake-NのN100などは今回例に挙げたCPUとほぼ同等性能ですが、「廉価品なのに使える」と持て囃されている状況です。

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Core i3-1005G1の「ネットとオフィス」時のCPUコア別使用率の1時間分のプロット

Windows Updateで重くなる

「ネットとオフィス」的な使い方の場合、2コアでも時たま待たされることを除けばそこそこ使えましたが、それはほかにアプリが動いてない場合です。Windows Updateなど誰のパソコンでも勝手に走っている更新作業でも2コアくらいは普通に使いますので、2コアCPUはこれらのアップデート中は極端に重くなります。

それを踏まえたうえで、コア数ごとに「ネットとオフィス」の快適さを私の主観でまとめてみました。基本的には16スレッド(6コアまたは2P8E)以上あると快適に使えます。そして、昨年から新製品として売っているパソコンの大半はこの条件を満たしています。つまり、最新パソコンを買う限り、ネットとオフィスでコア数が足りなくなる心配はもはやしなくてよい、というのが現状でしょう。

気を付けるとすれば、一番安いエントリークラスの製品は、4コアのRyzen 7320Uや、4コア相当のCore i3-N305、2コア相当のN200やN100を使っていることがあります。すでに書いた通りそれでもまあまあ実用圏内ですが、時たま重くなったりすることはあるでしょ
う。

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事務用途と最上位モデル

では、もう事務仕事をしている人は8コアを超えるような最上位モデルは不要でしょうか。一般的には、上位モデルのほうがシングル性能が高いものが多く拡張機能にも優れているため、巨大Excelなどを扱うために上位を選ぶ価値はあるでしょう。またノートPCの場合、それ自体が高解像度モニタであったり、外部に4kモニタをつなぐことも多いので、内蔵GPU性能が高い上位のほうが安心できます。

とはいえ、デスクトップ用のCore i9やRyzen 9は、消費電力も高く、事務用としては持て余す可能性が高いのも事実です。実際、コア数を増やし性能競争しているRaptor lakeやZen4の上位セグメントは、大半の人にとって生かしきれないくらい過剰なコア数になっており、値段が上がったこともあって世界的に売れ行きが芳しくないと伝えられています。

ネットとオフィス用途に絞った性能を見るならば、それに向いたベンチマークを使うのも一つの手です。この用途では、実際のアプリを立ち上げたりして計測するPCMarkが有名ですが、手軽に使うならBAPCo CrossmarkがMicrosoft Storeから手軽に入手でき、結果が一覧として公開されているためお勧めです。

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コメント

  1. 匿名 より:

    CPUだけじゃなくてGPUとかもあるし自分の業務に最適なスペックは机上計算ではムズい。
    安いミニPC買うと自分の業務で何がスペック不足でイライラするかわかるからそこから適切なPC買うのがなんだかんだ安く済むかな。
    個人的にはセールで15~18万ぐらいのゲーミングノートPC買えば90%ぐらいの人はスペックとしては満足なんじゃないかなと。

  2. 匿名 より:

    ゲーム専用ならともかく、第11世代より前のCPUではdownfallの緩和策は必須なのでそれについて触れるべきかと