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Intel Core Ultraシリーズ2と言ってもいろいろあってね - Lunar Lake・Arrow Lake-U・Hの違いを「実機視点」で整理

オピニオン

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2025年に発売されたノートPCはCPUにIntelの「Core Ultraシリーズ2」を搭載するものが多いですよね?もちろんAMDのCPUを搭載するものや、Core Ultraシリーズ2よりも世代が古いIntel CPUを搭載するもの、またQualcommのSnapdragon Xシリーズを搭載するものもありますが、この記事では「Core Ultraシリーズ2」について解説します。

Intel CPUでAI処理チップ「NPU」を内蔵しているものに「Core Ultra」という名称がつけられており、Core Ultraシリーズ2は「現行モデル」です。またCore Ultraシリーズ2にはIntel Arkベースで2つのコードネーム「Lunar Lake」と「Arrow Lake」があります。「Arrow Lake」については、情報サイトなどで「Arrow Lake-U」「Arrow Lake-H」「Arrow Lake-HX」に細分化されていることが多いです。

私が日々WindowsノートPCの製品紹介記事や実機レビュー記事を書いていて、「いつかはきちんと解説記事を書きたいなあ」と思っているのがArrow Lakeについてです。UとH、HXではCPUの仕様や性能、用途が大きく異なります。しかし、CPUの型番にすると「Core Ultra 5 225UとCore Ultra 5 225H」のように、あんまり違っていないように見えるというか「どうでもいい違い」に見えてしまいます。

1. Lunar Lake(ILL)は「別枠」

Lunar Lakeは型番の末尾に「V」がつきます (例:Core Ultra 5 226V、Core Ultra 7 258V)。ちょっと特殊な構造になっており、CPUとRAMがパッケージ化 (一体化)され、高性能なNPUも内蔵しています。省電力性にも非常に優れ、2025年11月時点でCore Ultraシリーズ2の中で唯一、「Copilot+ PCに対応するCPU」です。

コア構成は4P+4Eでスレッド数は8、マルチスレッド性能は控えめですが、日常業務では不満を感じない実力がありますし、グラフィック性能も高いです。Intel CPU搭載のノートPCでは「Lunar Lake=Copilot+ PC」と理解すればよく、これまで書いてきた通り特徴がはっきりしているため、多くの人には比較的理解しやすい存在と言えます。

2. 問題はArrow Lake - U・H・HXは全くの別物

さて、冒頭に書いたArrow Lakeについてです。Arrow LakeはU・H・HXで用途も性能も大きく異なります。以下は「一般的な解説」です。

Arrow Lake-U(省電力・標準ノート向け)

  • 一般的な薄型ノートに搭載される標準的なCPU
  • 低消費電力で、バッテリー持ちも良好
  • Core Ultraの名に恥じないCPU性能で価格帯も手頃
  • 内蔵GPUはIntel Graphicsでやや控えめな性能

Arrow Lake-H(高性能ノート向け)

  • より高い性能を求める人に向く「高性能枠」のCPU
  • コア数/スレッド数が多く、マルチスレッド性能も高い
  • Intel Arcは内蔵GPUとしてはかなり強力
  • 中〜高価格帯のモデルが中心

Arrow Lake-HX(デスクトップ級の最上位)

  • 冷却性能の高いゲーミングノートやワークステーション向け
  • HよりさらにPBPが高く、「デスクトップCPUの代替」とも
  • 多コア構成で動画編集・3D処理など「重い作業」向き
  • 価格は高く、ビジネスノートに搭載されるケースは少ない

Arrow Lake-HXはU・Hとは明らかに用途が異なりますので、この記事では詳しく説明しません。私が気になっているのは「実際のノートPC市場において、Arrow Lake-UとHの位置づけが上の説明ほどはっきり区分されていない。よって私達ユーザーが誤解したり、戸惑ったりするケースがありうる」ということです。

ということで、実際にどのくらいの違いがあるのか、ベンチマークスコアを見てみましょう。

Core UltraシリーズのPassmarkスコア

これはPassmarkが公表しているベンチマークスコアです。左からLunar Lake (Core Ultra 7 258V)、Arrow Lake-U (Core Ultra 7 255U)、Arrow Lake-H (Core Ultra 7 255H)、Arrow Lake-HX (Core Ultra 7 255HX)です。スコアもさることながら「コア数/スレッド数」もかなり違っているのがわかります。

シングルスレッドのスコアは
Arrow Lake-U<Lunar Lake<Arrow Lake-H<Arrow Lake-HX

マルチスレッド (CPU Mark)のスコアは
Arrow Lake-U<Lunar Lake<<Arrow Lake-H<<Arrow Lake-HX

です。Office系のアプリで作業をするとか、Web会議をするといった一般的な事務仕事に使う場合はシングルスレッド性能が重視されるので、どれを選んでも著しい差はないと思いますが、それでもArrow Lake-UとArrow Lake-Hには結構な差がありますよね。

動画編集とかRAW現像、コンテンツクリエーションといった、いわゆる重い作業の場合はマルチスレッド性能が重要になるので、どの型番を選ぶかによって体感差はかなり大きくなると思います。Intel CPUを搭載するノートPCを使ったことがある人なら「UよりもHのほうが高性能」という認識はあると思いますが、個人的には「Hのほうは昔ほど『特別』なイメージがなくなり、普通のノートPCでも搭載機が増えている」と感じており、その懸念がこの記事を書き始めた理由になっています。

3. 性能と価格の実例

同じCore Ultraシリーズ2、同じArrow Lakeでも性能面では大きな違いがあることをご説明しました。次に「ビジネスPCで実際にArrow Lake-UとHをユーザーが選択できるケース」と「価格」について書きます。

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ThinkPad X13 Gen 6のカスタマイズ画面

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これはLenovo ThinkPad X13 Gen 6のカスタマイズ画面です。ごく少数ではありますが、ThinkPadシリーズのように「同じ製品でありながらカスタマイズ画面でCPUの型番を選べる」製品があります。

X13 Gen 6のカスタマイズ画面ではCore Ultra 5 225UとCore Ultra 5 225Hの価格差は9,900円と表示されていますが、ここから割引が適用されるので実際の価格差は8,580円です。また、この画像だとわかりにくいですが、Core Ultra 7 255UとCore Ultra 7 255Hの価格差は表示12,100円、割引適用後だと10,010円です (価格は11月16日現在のもの)。

上で説明した性能差を踏まえた上で、この価格差についてどう思われますか?私なら1万円前後を追加してArrow Lake-Hを選びます。

次にバッテリー駆動時間についてです。ウインタブではノートPCのレビューの際に、実際に動画視聴や簡単な画像加工、テキスト入力などを2時間程度行い、バッテリー駆動時間を計算しています。下記はその一例です。

Core Ultra 5 125U※:8時間弱
Core Ultra 7 155U※:8時間強
Core Ultra 5 225U:7時間弱
Core Ultra 7 255U:10時間弱
Core Ultra 7 258V:14時間弱
Core Ultra 5 226V:11時間30分
Core Ultra 5 125H※:9時間30分
Core Ultra 7 155H※:9時間15分
※印をつけたものはCore Ultraシリーズ1 (Meteor Lake-U/H)

残念ながらArrow Lake-Hの測定実績がないため、かわりに一世代前のMeteor Lake-H (Core Ultra 7 155H)の数値を記載しています。ウインタブでは「完成品のノートPC」でバッテリー駆動時間を測定しており、テストしたノートPCのバッテリー容量やディスプレイサイズなどがまちまちです。よって「目安程度」の話しかできませんが、明らかにバッテリーが長持ちすると感じているのがLunar Lakeです。一方でArrow Lake-Uは前世代のMeteor Lake-Uからそれほど大きく改善していないと感じます。また、Arrow Lake-Hに関しては外部GPU搭載機しかテストしたことがないため、測定実績はありませんが、おそらくMeteor Lake-Hと大差ないのではないか、と思います。

それと、完成品のビジネスノートPCで見た場合、メーカー側である程度バッテリー持ちを考慮した仕様 (バッテリー容量や省電力モードの実装など)に仕上げているので、「2時間でバッテリーがなくなる」ような製品はもはやなく、Arrow Lake-UだろうとHだろうと実用性を損なうようなバッテリー持ちの製品は見かけないですね。

これを踏まえてのウインタブの意見ですが、「Arrow Lake-UとArrow Lake-Hは事務作業など比較的ライトな用途に使う場合はバッテリー持ちに大きな差はない。PBP(プロセッサー・ベース・パワー)はArrow Lake-Hのほうが高いので、CPUや内蔵GPUがフル回転するような重い作業が続く場合はArrow Lake-Uよりもバッテリー持ちが悪くなる」と推測します。

4. まとめ - Intelの2025年ノートPCは「Lunar」「U」「H」で考える

ウインタブの意見は

・オンデバイスAI処理とバッテリー持ち重視ならLunar Lake
・CPUとGPUの性能重視ならArrow Lake-H
・Arrow Lake-UとArrow Lake-Hを選べるような製品ならArrow Lake-H

です。実際のところ、ビジネス用途や学習用途ならどれを選んでも体感差はごくわずかです。しかし、「これから買うならCopilot+ PCだ!」ということならLunar Lakeで決まりですし、上に例示したThinkPadのようにArrow Lake-UとArrow Lake-Hを選べる状況ならArrow Lake-Hがおすすめですね。

ノートPCの選定基準は人それぞれですし、CPUで使い勝手のすべてが決まる、というわけでもありません。ただし、だからといってCPUは何でもいい、ということもありませんので、これからノートPCの購入を検討されている人は、「Core Ultraシリーズ2にもいろいろなものがある」「Arrow Lake-UとHはCPU型番はよく似ているが、中身は別物」ということを念頭に入れていただければと思います。

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執筆者:ウインタブ
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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