こんにちは、オジルです。GMKtecのミニPC、「NucBox M5 Plus」の実機レビューをお届けします。ミニPCでは旧世代のCPUを使用しているケースが見られますが、本製品も2022年に発売されたRyzen7 5825Uを搭載しています。ただし、2年前といえどRyzen7、重い処理やゲームを主な目的としないのであれば十分な性能を有したコスパの良いモデルです。
・約4万円で購入できるRyzen 7搭載ミニPC
・正規ライセンスのWindows 11 Pro
・2つのファンを筐体上下に搭載、冷却性能も高い
・ポート構成は必要十分、USB Type-Cポートは映像出力も可能
・Quietモードなら無音に近い超絶静音
ここはイマイチ
・筐体内部アクセス時に若干手間がかかる
・パフォーマンスの設定変更がBIOSからなのはちょっと面倒
・Performanceモード時のファン音が大きめ
販売サイトはこちらです
GMKtec NucBox M5 Plus:GMK公式ストア
GMKtec NucBox M5 Plus:Amazon
GMKtec NucBox M5 Plus(32GB/1TB):Amazon
GMKtec NucBox M5 Plus:楽天
※楽天のリンク(セール品)は12月4日から販売開始となります
1.概要
スペック表
GMKtec NucBox M5 Plus | |
OS | Windows 11 Pro |
CPU | AMD Ryzen 7 5825U |
GPU | なし |
RAM | 16GB/32GB(DDR4 3200) |
ストレージ | 512GB/1TB SSD(PCIe 3.0, M.2 2280) ※M.2 2280空きスロット1 |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | なし |
ネットワーク | Wi-Fi6E、Bluetooth 5.2 |
入出力 | USB3.2 Gen2 Type-C(映像出力/PD対応)、USB3.2 Gen2 Type-A × 2、USB2.0 Type-A × 2、HDMI2.0、DisplayPort1.4、LAN(RJ45)× 2、オーディオジャック |
カメラ | なし |
バッテリー | なし |
サイズ | 128 x 127 x 47 mm |
重量 | 528 g |
※このスペック表はベアボーンモデルを考慮していません
バリエーションモデル
・ベアボーン(OS/RAM/SSDなし)
・16GB/512GB
・32GB/1TB
・32GB/2TB
※左からRAM/SSD
※32GB/2TBはAmazonのみの取り扱い
コメント
※以下、レビュー製品である512GBモデルの内容です。
OSはWindows 11 Proです。念のためOSライセンスについて触れておきましょうか。一部のミニPCではOSがVL(ボリュームライセンス)となっている場合があり、詳しい説明は割愛しますが「個人購入のPCでは本来使ってはいけないもの」なので念のため確認しました。結果としては「OEM」表記でしたので問題ありません。GMKtecはウインタブでの実機レビュー上でVLだったことはなく、OSライセンスにおいて信頼して大丈夫なメーカーだと思います。これ、ミニPC選びでは重要なポイントです。
冒頭にてお伝えした通り、CPUはRyzen7 5825Uを搭載しています。2年前、かつノートPC向けの型番ですね。しかしながらPASSMARKスコアは18,355で、エントリー向けCPUのド定番であるIntelのN100(PASSMARKスコアは5,500)と比べると圧倒的に高性能。NucBox M5 Plusは外部GPUを搭載していないため重いゲームを高解像度で楽しんだり、4K動画の編集をガッツリやったりといったことには不向きですが、オフィスソフトやウェブサイト閲覧、SNSなどの日常的な使い方をするのなら超快適と言ってもいいくらいにストレスなくこなせるでしょう。RAM16GB、ストレージ512GBもその範疇であれば十分です。
2.外観
まずは本体と同梱品から。ACアダプター+ケーブル、HDMIケーブル、VESAマウント用ブラケット+ネジ、取り扱い説明書、保証書です。説明書は表紙だけ見ると中国語ですが、各国語対応になっていて日本語の説明もちゃんとあります。
本体を上から見たところ、天面です。ロゴのみのシンプルなデザインで、個人的にはそこまでシンプルならもう少しロゴの主張が控えめでもいいかなと思ったり。筐体は全体を通してプラスティッキーな感がアリアリなので、人によってはチープな印象を受けるかもしれません。でも、大切なのは中身ですから。後述しますが、筐体内部へのアクセスは本体上部から行います。
底面です。ゴム足と通気口があり、画像では分かりづらいですが、通気口の奥には冷却ファンが見えます。画像上部のシールには各種認証の記載。技適番号もこちらに書かれています。
前面です。左から順に電源ボタン、オーディオジャック、USB3.2 Gen2 Type-C、USB3.2 Gen2 Type-A×2です。Type-Cポートは映像出力にも対応します。
背面です。左からUSB2.0 Type-A×2、DisplayPort(上段)、HDMI(下段)、有線LAN×2、電源ジャックです。そして下部にセキュリティロックスロットと排気口となっています。有線LANは2つもいるのかな…?と思いましたが、多い分には困ることはないでしょうから気にしないことにします。
説明書にポート類がまとめて掲載されていたため参考までに載せておきます。数は必要十分で、配置も変なクセがなく良好ではないでしょうか。
側面は左右ともに通気口のみとなっています。
3.内部
筐体内部へのアクセスは、まず天板を外すところからスタートです。ご覧のようにネジではなくツメで装着されており、外す際には少し力を入れる必要があります。ぐっと力を込める際にツメが折れてしまうんじゃないかと若干心配しながらでしたが、意外と問題なく素手で取り外すことができました。
さらにその下、筐体上部四隅のネジを外し、またいくつかあるツメを外せば開口できます。この2段階のツメ、頑丈ではあるものの少し面倒ですね…。上部カバーに冷却ファンが設置されていて、下部にケーブルが接続されているため勢いよく開口しないよう注意。
先ほど外観のところで底面部分に冷却ファンがあると書きましたが、上部にもファンがあるということは、基盤の上下にファンがある構成になっているんですよね。放熱性能に期待できるのはもちろんですけど、これって結構「手厚い」んじゃないかなと思いました。GMKtecさん、すごい。
内部は画像手前にメモリスロットがふたつ、すでに8GB×2が装着されている状態になっています。空きはないので増設はできませんが、最大64GBまでの換装は可能。
画像奥には2280サイズのSSDが装着されていて、手前にひとつ空きスロットがあるため増設可能です。
メモリを抜いてみたところ、Lexar製のものでした。メモリスロットのところは最初どうやって取り外すのかよく分かりませんでしたが、よくよく見たら左右にツメが付いていることに気付いてからはスムーズでした。
SSDはヒートシンクがしっかりと貼り付けられ、さらにゴムで留めてありました。ネジを外すとバネ(?)で軽く浮くため付け外しは容易です。
4.性能テスト
GMKtec製品はBIOSからパフォーマンスの調整ができるようになっていて、Quietが10W、Balancedが15W、Performanceが35Wと3つの中から選択できます。なお、デフォルトではBalancedに設定されていました。余談ですが、この切り替えをBIOSからしかいじれないのは(私も含めて)「BIOSなんて普段触らないからちょっと怖い」と感じる人が一定数いると思っていて、ユーザーフレンドリーの観点からすると少し残念です。実際、切り替えだけなら簡単にできるんですけどね。
ベンチマークスコア
さて、本題の性能テストです。まずはビデオチャットやオフィスソフトの利用、ブラウジング、画像加工などといった「一般的なパソコンの使い方」での性能を測定するPCMARKから。3つのモード全てで計測してみました。上から順にQuiet、Balanced、Performanceの結果です。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 185H:8,099
Ryzen AI 9 HX 370:7,511
Ryzen 7 8845HS:7,446
Ryzen 7 8840U:6,949
Core Ultra 7 155H:6,849
Ryzen 5 8645HS:6,708
Core i9-13900H:6,542
Core Ultra 5 135H:6,485
Core Ultra 7 155U:6,392
Core Ultra 5 125U:6,376
Ryzen 5 7535U:6,021
Ryzen 7 5825U:5,954
Core i7-1360P:5,929
Ryzen 7 7730U:5,915
Core i5-1340P:5,677
Core i7-1355U:5,553
Ryzen 3 5425U:5,538
Core i7-1260P:5,503
Core i5-1335U:5,419
Core i7-1195G7:5,278
Core i7-1165G7:5,205
Ryzen 5 5500U:5,076
Ryzen 5 5625U:5,031
Core i5-1240P:4,980
Core i7-1255U:4,902
Core i5-1135G7:4,066
Paformanceでのスコアは5,992と、搭載するCPUのRyzen 7 5825Uとして妥当なスコアとなりました。Balanced、Quietは当然ながら目減りしているものの、それでも少し前のノートPC向けCore i5やi7相当のパフォーマンスを発揮してくれるため、普段使いなら困ることはなさそうです。静音性重視ならあえてこれらのモードを選択してもいいかもしれません。
続いて、CPU性能に特化して性能を測定するCINEBENCH 2024です。同じく3つのモード全てテストしました。左から順にPerformance、Balanced、Quietの結果です。
参考(過去データから一部抜粋):
Core i7-14700:122、1,177
Core i9-13900H:117、687
Core i9-13900H:112、705
Ryzen AI 9 HX 370:110、942
Snapdragon X Elite:108、1,038
Ryzen 9 8945HS:108、958
Snapdragon X Elite:107、962
Ryzen 7 8845HS:106、956
Ryzen 9 7940HS:106、914
Core Ultra 7 155H: 105、964
Core Ultra 7 155U:101、533
Ryzen 5 8645HS:98、585
Core Ultra 5 125U:95,533
Core Ultra 5 125H:95、516
Core Ultra 5 135U:94、573
Ryzen 3 5425U:78、365
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
Paformanceモードでのスコアはシングルコア85、マルチコア590でした。新しい世代のCPUと比べるとシングルコアでは及びませんが、マルチコアではRyzen 5 8645HS超え。一方、Quietモード時のマルチコアでは228とN100より少し上くらいに留まっています。N100でも軽い作業では十分なんですけどね、PCMARKと併せて考えると、Balancedがその名の通りバランスがよさそうです。
グラフィック性能を測定するPC Markのスコアです。こちらはBalancedモードにて測定しました。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 185H:4,143、8,223、31,710
Core Ultra 7 155H:3,924、8,338、24,476
Ryzen AI 9 HX 370:3,800、8,026、31,138
Core Ultra 5 135H:3,454、7,235、24,791
Core Ultra 5 125H:3,392、7,301、23,168
Ryzen 9 7940HS:3,362、7,776、29,076
Ryzen 7 8845HS:3,330、7,908、29,873
Ryzen 7 8840U:2,943、7,206、27,471
Ryzen 5 8645HS:2,437、6,253、24,401
Core Ultra 7 155U:2,319、5,162、19,024
Core Ultra 5 125U:2,081、4,826、19,421
Core i9-13900H:1,956、5,440、19,477
Core i7-1360P:1,786、4,991、16,779
Core i7-1355U:1,760、4,859、16,891
Ryzen 5 7530U:1,281、3,137、13,730
Ryzen 3 5425U:1,122、2,848、11,949
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
結果としては、7000番台のノートPC向けRyzen 5(7530U)と似たようなスコアになりました。外部GPU非搭載機ですので妥当な結果だと思いますし、画像加工や簡単な動画編集であれば問題なくこなせると思います。ゲームは解像度を下げてカジュアルに遊ぶくらいなら可能でしょう。
SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。爆速とまではいきませんが十分高速で、よほど大きいデータを扱わなければ体感上のストレスはほとんどないと思います。
発熱とファン音
発熱に関しては、消費電力が抑えられているQuietはもちろんのこと、Performanceモードでベンチマークソフトの動作中でも本体が熱くなるどころか、ほんのり温かくなる程度でした。きっと上下に設置されている冷却ファンがだいぶいい仕事をしてくれているんだと思います。これまで触れてきたノートPC、ミニPCと比較しても最上位クラスで、ちょっと驚いてしまったくらいでした。
ファン音は、どのモードをチョイスするかで大幅に変化します。Quietモードはほぼ無音、というより回転してるのか分からないレベル。Balancedモードはベンチマークソフト実行時に「一般的なノートPC」のファン音より少し小さいくらいで、私は全く気になりませんでした。PerformanceはデスクトップPCくらいで、煩わしく感じるかどうかは人それぞれだと思いますけど、間違いなく気にはなるくらいのボリュームです。
設定変更もしなくて済み、性能と静音のバランスがよいのはBalanced。ファン音なんか気にしない!性能重視!という方はPerformance。Quietを選択する人はあまりいないような気がしますけど、とにかく雑音を排除したい!という方にはおすすめです。
参考:スト6ベンチ
外部GPUなしですから、格ゲーなんてとてもとても…と分かっているとはいえ、もしかしたら?という淡い期待と共にストリートファイター6のベンチマークソフトを走らせてみました。Parformanceモードでの実施です。
ウインタブ注:
ストリートファイター6の推奨スペックは「Core i7-8700 or Ryzen 5 3600/16GB RAM/RTX2070 or Radeon RX 5700XT」で最低スペックでもGPU:GTX1060が要求されます。要するに快適にプレイするには比較的新しく(できれば)中位クラス以上のゲーミングPCが望ましいということです。
重ねて言いますが分かってはいましたよ、ええ。ノーマルでも動作困難、常時スローモーションの映像が流れ続けていました。実際にプレイしたらきっと、いわゆる「水中戦」状態になっているでしょう。というか、対戦相手に迷惑。
モードをLOWに変更してみると、「問題無くプレイできます」との表示。しかし、鵜呑みにしてはいけません。最上段、つまり対戦画面のスコアが-73でノーマルと変わりません。問題ないどころか、ありまくりです。
最後にLOWEST設定です。ここでやっとフルスコアの「快適にプレイできます」表示。対戦中の動きを見ている限りカクつきは感じられず、ある程度思い通りに動かせると思います。ただし小さいウインドウで表示されるうえ解像度が低く、だいぶジャギーが気になります。
きっと他のゲームでも、要求スペックがそれなりのタイトルであれば「解像度を下げればなんとか…」もしくは「重すぎて全く動かせない」になるでしょうね。「見た感じショボい」のを容認できて、ガチプレイじゃなくて構わないなら遊ぶことは可能です(そこまでしてやる人がいるのかって話ですけど)。
5.レビューまとめ
GMKtec NucBox M5 PlusはGMK公式ストア、Amazon、楽天で販売中で、11月29日現在の価格はRAM16GB/SSD512GBの場合GMK公式ストアで42,511円、Amazonでは37,045円(製品ページにある5%OFFクーポンを使用)、楽天は52,820円ですが12月4日から38,999円になることが予告されています。
個人的には日常利用であればN100搭載機で事足りると考えているのですが、やはり「エントリーモデルよりもちょっといいものを」という欲は誰でもあるじゃないですか。ミニPCの性質上モニターやキーボード、マウスといった周辺機器の予算が必要になってきますけど、約4万円で2年前のハイエンドノートと同じ性能が得られるのは単純にすごいなと。
ミニPCユーザーは口を揃えて言うでしょうけど、(高性能モデルもありますが)最新世代CPUにこだわらないのであれば抜群のコストパフォーマンスで省スペース、これは病みつきになるんですよね。現に私も自宅のメインマシンがミニPCで、次に買い替えるのもきっとミニPCだろうなと思っています。GMKtecならOSライセンスも安心ですし、おすすめです。
関連リンク
GMKtec NucBox M5 Plus:GMK公式ストア
GMKtec NucBox M5 Plus:Amazon
GMKtec NucBox M5 Plus(32GB/1TB):Amazon
GMKtec NucBox M5 Plus:楽天