こんにちは、かのあゆです。Xiaomiのサブブランドである「POCO」はインドなど一部地域で展開しており、初代モデル「Pocophone F1」のころより性能が高い割に安価な端末を投入しています。今回実機レビューを行う「POCO X3 NFC」は9月に投入されたばかりの新モデルで、Qualcommの新CPU「Snapdragon 732G」を一足先に搭載するだけでなく、安価なゲーミングスマートフォンとしてディスプレイ性能にも力を入れています。
Redmiなどとは異なりPOCOブランドのスマートフォンが日本国内で正規導入される可能性は少ないですが、「これで十分」と思えるほど満足度の高い端末です。今回のPOCO X3 NFCはBanggoodより提供していただきました。Banggoodにはこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございます。
1.スペック
POCO X3 NFC | |
OS | MIUI 12(Android 10ベース) |
CPU | Qualcomm Snapdragon 732G |
RAM | 6GB |
ストレージ | 64GB/128GB |
ディスプレイ | 6.67インチ(2,400 x 1,080) |
LTEバンド |
TDD-LTE:B1/2/3/5/7/8/20 FDD-LTE:B38/40/41 WCDMA:B1/2/4/5/8 |
SIM | nanoSIM x 2 |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 5.1 |
入出力 | USB Type-C、MicroSDカード、3.5mmイヤホンジャック |
カメラ | イン20MP/アウト64MP + 13MP + 2MP + 2MP |
バッテリー | 5,160 mAh |
サイズ | 165.3 x 76.8 x 9.4 mm |
重量 | 215 g |
POCO X3 NFCはAndroid 10ベースのXiaomiカスタムOS「MIUI 12 for POCO」を搭載しています。ランチャーが「POCO Launcher v2」に変わっているものの基本的には日本国内で正規展開しているXiaomi端末にも搭載されているMIUI 12そのもので、日本語へのローカライズも完全に行われています。
搭載CPUはPOCO X3 NFCが初搭載となるQualcomm Snapdragon 732Gです。その名称通り「Snapdragon Elite Gaming」に準拠するミッドハイゲーミングスマートフォン向けのCPUで、Xiaomi Redmi Note 9SやGoogle Pixel 4sに搭載されているSnapdragon 730Gのマイナーアップデート版です。従来のSnapdragon 730Gと比較するとCPUのクロック数が2.2Ghzから2.3Ghzに若干向上しているほか、内蔵されているGPU「Adreno 618」の性能も15%向上しています。 RAMは6GBで、ストレージは64GB/128GBです。Xiaomi端末の一部ハイエンドモデルではストレージ拡張に対応していない機種もありますが、POCO X3 NFCではMicroSDXCカードによるストレージ拡張に対応しています。
ディスプレイは6.67インチサイズで解像度はFHD+(2,400 x 1,080)です。有機ELではなくIPSパネルを採用していますが、ゲーミングスマートフォンらしくリフレッシュレート120Hz表示に対応しており、タッチ感度(タッチサンプリングレート)も240Hzと高くなっています。
カメラはイン20MP、アウト64MP(メイン) + 13MP(超広角) + 2MP(マクロ) + 2MP(深度測定)という構成で、AIによるシーン識別や暗所でも明るい写真を撮影できる「ナイトモード」も搭載されています。作例に関しては後述しますが、かなりきれいに撮影でき、良い意味で期待を裏切ってくれました。日本国内で正規販売済みとなっているMi Note 10シリーズやRedmi Note 9Sのカメラ性能も評価は高くなっていますが、その理由も納得できます。
低価格モデルでありながらスピーカーはハイレゾ音源をサポートするデュアルステレオスピーカーが搭載されています。バッテリー容量は5,120 mAhで、ワイヤレス充電は非対応ですが付属する33W出力のACアダプターを利用することにより30分の充電で60%、65分で100%まで充電可能です。また「NFC」という名称がついている通り、NFC Type A/Bに対応しているため、海外ではGoogle Payなどの対応決済サービスを利用することも可能です。
2.筐体
付属品はUSB-Cケーブル、ACアダプター(海外仕様、33W急速充電対応)、SIMピン、純正TPUケース、マニュアルなどのペーパー類です。ACアダプターに関しては海外プラグとなっているため、そのままの状態では利用できませんが、Banggoodで購入する場合、Banggoodが日本で使える変換ブラグを同梱してくれます。また、POCO X3 NFCではUSB PDによる急速充電にも対応しているので、この点に関しては困ることはないでしょう。
純正TPUケースはUSB-Cコネクターも保護してくれるしっかりしたものとなっていますが、ポケットなどに入れているとカメラレンズ部に埃がたまる点が難点です。
前面です。前モデルに相当するPOCO X2(Redmi K30)から引き続き「パンチホールノッチ」を採用していますが、ノッチの位置が右上から上部中央に変更されています。既にフィルムが装着済みとなっていますが、PET製なので使っているうちに傷がつきそうです。ただその場合も既にPDA工房にて各種フィルムが販売中となっているので安心して貼り替えられます。 左側面にはSIMトレイが配置されています。SIMスロットはデュアルSIM仕様で、うち1スロットはMicroSDカードと排他利用となります。
右側面にはボリュームボタンと指紋認証センサーを兼ねる電源ボタンがあります。POCO X3 NFCの指紋認証センサーは画面埋め込み式ではなく従来のものが搭載されていますが、精度は高くなっておりストレスなくロック解除できます。
背面です。POCO X3 NFCでは筐体色として「シャドウ・グレー」と「コバルト・ブルー」が用意されています。今回のレビュー機は「コバルト・ブルー」で、素材はプラスチック製ですがXiaomiらしく高級感のある仕上がりで安っぽさは感じられません。
公式素材などでは「POCO」ロゴの主張が結構強い印象でしたが実機ではそこまででもない印象です。今年になって「スクウェアカメラバンプ」を採用する端末が増えてきているので中央にカメラレンズを配置したPOCO X3 NFCのデザインは個性的に感じられます。たたしカメラレンズ部が出っ張っているので人によっては気になるかもしれません。付属するケースを装着すればフラットになります。
前面にはマイクとIRセンサー。
下面には3.5 mmイヤホンジャックとUSB-Cポート、スピーカーが配置されています。近年ハイエンド端末ではイヤホンジャックを廃止する傾向にあるため、お気に入りの有線イヤホンをそのまま使えるという意味でも搭載はありがたい限りです。POCO X3 NFCではIPX5/3準拠の防塵・防水性能を持ち合わせているため、雨に濡れる程度であれば安心して使えます。
3.使用感
システム
POCO X3 NFCにプリインストールされているOSは「MIUI 12 for POCO」で、基本的にはほかのXiaomiブランドのスマートフォンと同じUIですが、標準ランチャー(POCO Launcher v2)がいわゆる「iOS」スタイルのホーム画面にアプリを直接置くタイプではなく、ドロワースタイルのものが採用されています。
工場出荷時にプリインストールされているアプリ一覧です。MIUIに含まれている独自アプリとGoogleアプリのほか、Microsoft Office互換ソフトの「WPS Office」(旧KINGSOFT Office)やいくつかゲームがプリインストールされており、他社SIMフリースマホと比較すると多めですが、ほとんどのアプリはアンインストール可能です。
MIUIはAndroidベースですが、独自機能が多数あります。例えばGoogleアカウントやインストールされているアプリ環境も含めメイン環境とは別の環境を構築できる「セカンド・スペース」が独自に搭載されています。
もともと素のAndroidでもマルチユーザー機能は搭載されていますが、MIUIに実装されている「デュアルアプリ」機能を組み合わせることで、例えばLINEアカウントを一台の端末に4つ登録することも可能です。1台で2台分のデータを管理するぶん容量も消費しますし、スマートフォンを複数のユーザーで使い回すということはあまりないので、どちらかといえばタブレット端末向けの機能のような気もしますが、一時的に貸し出す際などに便利かもしれません。
またゲーミングスマートフォンと名乗っていることもあり、POCO X3 NFCには「ゲームターボ」機能も実装されています。ゲームプレイ中の通知抑制、パフォーマンス調整、スクリーンレコード、fps表示機能、サブウィンドウでのWEBブラウザ表示機能など便利な機能が利用可能です。 リフレッシュレートの切り替え機能も搭載されています。工場出荷時の設定は「120Hz」に設定されており、このままの設定でもアプリに応じて自動的に最適なリフレッシュレートに調整してくれるのですが、よりバッテリーを長持ちさせたいのであれば「60Hz」に固定することも可能です。 工場出荷時点で搭載されているAndroid OSのバージョンは「10」、MIUIのバージョンは「12.0.2 Global」で、Androidセキュリティパッチは「2020年8月1日」のものが適用されています。既にPOCO X3 NFC向けの最新セキュリティアップデートもリリースされており、ほかのXiaomi端末同様Android 11へのOSアップデートも期待できそうです。 工場出荷状態でのストレージ情報です。MIUI 12ではストレージ管理画面も素のAndroidよりも見やすくなっています。プリインストールアプリもそのままの状態ですが今回レビューしている64GBモデルでも約44GBと余裕のある空き容量です。前述の通りMicroSDカードによるストレージ拡張にも対応しているため、写真や音楽データなどは外部ストレージに保存するようにすれば64GBモデルでも十分快適に使えます。
ディスプレイ
ディスプレイは6.67インチサイズで、解像度はFHD+(2,400 x 1,080)です。MI Note 10シリーズやMi 10 Liteでは有機EL(AMOLED)を採用していますが、POCO X3 NFCではコストを抑えるためかRedmi Note 9Sと同じくIPSパネルを採用しています。ただし表示はかなりきれいで、写真や画像なども美しい画質で表示してくれます。また「テュフ・ラインランド」のアイコンフォート認証を取得しており、目に有害なブルーライトもカットされています。
リフレッシュレート120Hz対応に関しては手持ちの別端末と比較するとドロワーメニューなどのスクロールがヌルヌル動作するなど確かに一度体験すると60Hz対応機に戻れなくなりそうではあるのですが、肝心のゲームに関してはまだ120Hz対応タイトルがそれほど多くはなく、今回レビューでプレイした「Call Of Duty Mobile」に関してはサポートしているものの、利用するにはSnapdragon 865を搭載するXperia 5 IIなどのハイエンド端末が必要になるなど、現状ではまだ本来の性能を生かし切れていない印象です。
スピーカー
ミッドレンジスマートフォンの場合スピーカーはモノラルという機種も多いのですが、POCO X3 NFCではデュアルステレオスピーカーが搭載されています。特に「Dolby Atmos」や「DTS Premium Sound」などのサラウンド機能に対応しているわけではありませんが、音質はクリアでゲームプレイ中も迫力のあるサウンドを楽しむことができました。2万円台のスマートフォンに搭載されているスピーカーとしては満足できる音質で良い意味で期待を裏切ってくれました。
カメラ
カメラアプリはMIUI 12標準のものが搭載されており、設定を細かく調整できる「プロ」モードや夜景を明るく撮影できる「ナイト」モードなど必要な機能はほとんど網羅されています。
メインカメラは64MPのソニー製イメージセンサー「IMX682」が採用されています。画素数が高いからといって必ずしもきれいな写真が撮影できるわけではありませんが、チューニング周りにも定評があるXiaomiらしくAIモードをオンにした状態で風景などを撮影したところクオリティの高い写真を撮影することができました。食事もかなりおいしそうな色合いで撮れるので飯テロ画像投稿も捗りそうですね! 暗所での撮影はナイトモードをオンにすることで光が少ない場所でも明るい写真を撮影することが可能ですが、こちらに関してはハイエンド端末と比較するとノイズがかなり目立つ印象です。ただミッドレンジクラスの製品であることを考えると健闘していると思います。
4.性能テスト
ベンチマークは今回もAntutu Benchmark v8.4.3で実施しています。
参考:
nubia RedMagic 5G(Snapdragon 865): 610,070
ASUS Zenfone 7(Snapdragon 865):601,169
nubia RedMagic 3S(Snapfragon 855+): 497,776
ASUS Rog Phone 2(Snapdragon 855+) : 487,784
Xiaomi Mi9(Snapdragon 855): 414,693
Samsung Galaxy S10e SM-G9700(Snapdragon 855) : :10,899
Sony Xperia XZ2 Compact SO-05K:(Snapdragon 845) : 289,484
Sony Xperi: XZ1 Compact SO-02K(Snapdragon 835):257,717
Samsung Galaxy S8 SC-02J(Snapdragon 835)):237,841
Huawei Mate 10 Pro(Kirin 970) : 210,485
Blackview BV9800(Helio P70):188,265
Sumsung Galaxy A51(Samsung Exynos 9611) :184,566
UMIDIGI S3 Pro(Helio P70):179,103
CUBOT X20 Pro(Helio P60) :170,560
Smartisan U3 Pro(Snapdragon 660) : 167,968
Teclast M30(Helio X27) : 116,771
UMIDIGI Z2(Helio P23): 107,355
Ulefone Armor X5(Helio P23) :102,062
Rakuten Mini(Snapdragon 439):94,364
Dragon Touch NotePad 102(UNISOC SC9368A):93,806
Xiaomi Redmi 6(Helio P22) : 83,181
OUKITEL WP5(Helio A22):75,720
CUBOT King Ko)g Mini(Helio A22) :74,165
KYOCERA Android One S4(Snapdragon 430): 68,802
Qualcomm Snapdragon 700番台を搭載する端末はウインタブでは初レビューです。9月に行われた発表イベントでは「前世代となるSnapdragon 730Gの271,473点を上回る301,581点を計測した」とされていましたが、実機でのベンチマークではSnapdragon 730Gとほぼ同じ276,570点にとどまっています。ただそれでも総合スコアはSnapdragon 845とSnapdragon 835の中間程度という優れた性能です。Xperia XZ1 Compact(Snapdragon 835)と比較するとGPU性能はやや低めで、逆にCPU性能が高くなっています。メモリの読み書き速度や実際の操作感をテストするUX性能はほぼどちらも同等です。 実際のゲームプレイは「Call of Duty Mobile」でテストしました。Call of Duty Mobileは「グラフィック設定高、フレームレート最大」まで設定可能です。このタイトルは120Hz表示をサポートしていますが、これを利用するにはフレームレート設定を「ウルトラ」に設定する必要があり、現状ではXperia 5 IIなどSnapdragon 865を搭載する端末でしか利用できないようです。 MIUI 12 for POCOに搭載された「ターボモード」を利用するとゲームプレイ中に画面上をスワイプすることでメニューを出すことができ、簡易ブラウザ起動やスクリーンショット撮影、ビデオ撮影などの機能を呼び出すことが可能です。また実際のゲームプレイ中のフレームレートも表示されます。 実際に「グラフィック設定高、フレームレート設定最大」でプレイしてみた様子が上記動画です。比較的負荷がかかる設定ですが実際のゲームプレイでは60fpsで安定しており目立つ処理落ちもありませんでした。2万円台で販売されているスマートフォンでここまで快適にプレイすることができるとは予想外でした。
5.まとめ
Xiaomi POGO X3 NFCは中国の通販サイト「Banggood」で販売中で、10月29日現在の価格は64GB版が249ドル(26,567円)、128GB版が289ドル(30,834円)となっていますが、64GB版はクーポンコード「BGJPPOCO10291」を使えば229ドル(24,432円)で購入できます(30台限定)。
POCOというスマホは「ハイエンドCPUを搭載して安価な価格帯に抑えているものの、カメラ性能などはそれなり」というイメージを持っていたのですが、今回のPOCO X3 NFCは全体的な完成度が高く、良い意味でPOCOブランドの印象が変わりました。 日本国内で正規販売されている「Redmi Note 9S」の上位版ともいっていい機種で、普段使いでもストレスなく使えるのはもちろんのこと、重量級3Dゲームも十分快適にプレイできる性能を備え合わせています。ただしせっかくのリフレッシュレート120Hz対応を生かせるゲームタイトルが少ない点が難点ではあります。
前述のとおりRedmiブランドとは異なり日本国内で正規販売される可能性は少ないPOCO X3 NFCですが、OSは完全に日本語ローカライズされており、始めて海外スマホを購入する方にも安心しておすすめできる1台です。
6.関連リンク
POCO X3 64GB:Banggood
POCO X3 128GB:Banggood
コメント
IMX682ですね。
215gですね。
>>T_Kさま、ほげさま
ご指摘ありがとうございます。ただいま修正いたしました。センサーの方はIMX686表記のサイトもあったのですが実際にはIMX682が搭載されているようですね。これからもよろしくお願いいたします!