ABXY Tech(エービーエックスワイ・テック)ハンドヘルドゲーム機「abxylute(アブソルート、と読みます)」の実機レビューです。Android OS搭載で、GeForce NOWやXBOX Cloud GamingなどのクラウドゲーミングやSteam Linkなどを利用したリモートプレイに特化した製品特性になっています。そのため、CPU性能が高いとは言えず、RAMやストレージ容量もGoogle Playのゲームもプレイするには小さい容量になっています(Google Playのゲームをインストールしてプレイすること自体は可能です)。
・クラウドゲーミング、リモートプレイに特化した潔さ
・ハンドヘルドゲーム機としてレバー、ボタン類の操作性は良好
・薄型で軽量
・バッテリーが長持ち
・他のハンドヘルドゲーム機と比較して安価
ここがイマイチ
・さすがに質感は少々安っぽい
・スピーカー品質は低い
公式サイトはこちら
abxylute
目次
1.abxylute スペック
スペック表
abxylute | |
OS | Android 12 |
CPU | MediaTek MT8365 |
RAM | 4GB(LPDDR4) |
ストレージ | 32GB/64GB |
ディスプレイ | 7インチ(1,920 × 1,080)60Hz, タッチ |
バンド | なし |
SIM | — |
ネットワーク | 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth |
入出力 | USB Type-C、オーディオジャック、microSDカードリーダー |
カメラ | なし |
バッテリー | 5,200 mAh(8時間以上) |
サイズ | 250 x 115 x 30 mm |
重量 | 431 g(実測値) |
バリエーションモデル
・ストレージ32GB
・ストレージ64GB
レビュー機はストレージ64GBバージョンでした。
レビュー機のコンディション
レビュー機は量産バージョンではなく、試作機で「DVT2」というバージョンです。この試作機の前にDVT1というバージョンがあり、レビュー機はDVT1よりも量産バージョンに近いコンディションですが、下記の点が量産バージョンとは異なります。
●外装の一部:量産バージョンにはすべり止めのテクスチャーが施される予定ですが、レビュー機にはそれがありません
●ボタン感度:量産バージョンに近い感度になっていますが、量産バージョンではさらに感度が改善される可能性があります
●バーチャルキー:量産バージョンで実装される予定のタッチスクリーン用のバーチャルキー(バーチャルボタン。ゲーム用です)は搭載されていません
●ハプティックフィードバック:レビュー機にもリニアモーターが搭載されていますが、現状だと主流のクラウドゲーミングプラットフォームには振動信号がサポートされていません
●ジャイロスコープ:レビュー機にも6軸のジャイロスコープが搭載されていますが、まだマッピングされていません。量産バージョンでは右のジョイスティックにジャイロスコープ信号がマッピングされる予定です
●キーライト:レビュー機ではバックライト色の変更ができますが、量産バージョンではネットワーク速度の状態を色で示せるようになります
2.abxylute 外観
同梱物です。ケースとUSB Type-C – Type-Aのケーブルのみが付属していました。上でご説明した通り、レビュー機は試作機だったので、量産バージョンとは同梱物が異なっている可能性があります。特に取扱説明書に関しては量産バージョンには必ず付属すると思います。
前面です。よくあるハンドヘルドゲーム機、という感じで、最近増えているWindowsのゲーミングUMPCにも似ています。ただし、この製品を単品として見る場合の質感は(価格も安いですし)そんなに悪いとは思いませんが、さすがにWindowsのゲーミングUMPCと比較してしまうと少々チープさを感じます。まあ、ゲーミングUMPCとは見た目は少し似ていても価格帯が全然違いますので、ある意味当然ではありますね。
背面です。ここにはボタン類はなく、スピーカーや通気などの穴もありません。なお、ここは量産バージョンとはデザインが異なります。量産バージョンには滑り止めのテクスチャが施されていますが、レビュー機にはそれがありませんでした。ただ、表面はツルツルではなく、少しざらついた感触なので、使っていて特に滑りやすいという感じはありませんでした。
上面には画像左から電源ボタンと音量ボタン。また両サイドには「L1, L2」「R1, R2」のショルダーボタンがあります
下面です。こちらには画像左からUSB Type-Cポート、イヤホンジャック、microSDカードリーダーがあります。
ちょっとわかりにくいので拡大して明るさとコントラストを調整したものを掲載します。microSDカードリーダーはカバーなどはなく、そのまま差し込む形式です。また、レビュー機では手持ちのUSB Type-C – USB Type-Cケーブルは使えませんでした(メーカーに問い合わせたところ、通常のUSB Type-C充電プロトコルとは異なる形式であるとのことでした)。そのため、付属していたUSB Type-C – USB Type-Aケーブルを使用して充電しました。また、付属のケーブルに関しては他のデバイスとのデータ伝送にも対応していました。
左右の側面です。側面にはポート類やボタン類はありません。また、グリップ部分がラウンドしていて持ちやすかったです。ただし、WindowsゲーミングUMPCほどの「立体感」はなく、スリムな印象でした。
左右のショルダーボタンはストロークが結構深く、押しごたえがあるというか、ゲームプレイ時に確実な操作感が得られます。
3.abxylute システム
abxyluteを起動すると、最初にごく簡単なガイド画面が表示されます。ただ、この画面を見れば全ての操作方法がすぐに理解できる、というほどの親切さはなく、例えば「abxyボタンの色(バックライト色)は任意に変更できるよ」などのごく簡単な説明がなされるのみです。
これがデフォルト画面です。あらかじめいくつかのアプリが登録されており、あとからインストールしたアプリもこの画面に追加されます。操作性は非常によく、この製品の特性上、よく使うアプリは限られるはずなので、必要にして十分な表示方式だと思います。
一応、このようにAndroid OS標準の表示方法にも対応します。まあ、この製品の場合、あまりこの画面の必要性は感じないですけどね…。
プリインストールアプリ一覧です。なお、この画像に写っているReal Racing 3、Antutu、Antutu 3Dについては私がテストのためにインストールしたもので、初期状態では入っていません。クラウドゲーミング用アプリの他はブラウザーのChrome、Filesとファイル、音楽サブスクのSpotify、そしてGoogle Playストアが入っていました。
これが利用できるクラウドゲーミングプラットフォームおよびリモートプレイ用アプリです。日本で使えないものもありますが「GeForce NOW、XBOX Cloud Gaming、XBOX GamePass、Steam Link、Amazon Luna、PS Play」がプリインストールされており、「XBOX、Moonlight、Shadow PC、Boosteroid」のダウンロードリンクがありました。
設定画面は独自のものです。画面の明るさやネットワーク・Bluetooth設定など、基本的な項目は網羅されていますが、Android OS標準の設定項目よりも省略されている項目が多いです。
Android OSの設定画面も呼び出せます。ただし、ここでも一般的なAndroidスマホよりも設定項目は少なく、例えば「画面の回転」ができません(つまりこの製品は横向きの表示にしか対応しません)。
なお、この製品は有線LAN接続も可能です。
4.abxylute Android機としての性能
Antutuベンチマークスコアです。はっきり言ってエントリークラスの性能ですね。なので、クラウドゲーミングやPCやゲーム機からのリモートプレイはともかく、Google Playにあるゲームアプリで遊ぶのにはあまり向きません。
一応、私としては遊び慣れている「Real Racing 3」をインストールしてみました。おそらくグラフィックは多少省略されてしまっていると思いますが、プレイそのものは普通に楽しめました。私なら「明日もこれで遊ぼう」と思えるレベルではあります。
一方で「原神」が遊べるか、という点については確認する意味がないと思います(高画質でのプレイは到底無理なはずです)。
また、この製品はストレージ容量が32GB/64GBと小さく、そもそも本体ストレージにたくさんゲームアプリをインストールすることはできません。
5.abxylute クラウドゲーミングとリモートプレイ
上にも書きましたが、クラウドゲーミングにせよリモートプレイにせよ、「回線が遅いと話にならない」です。GeFoece NOWなどのクラウドゲーミングの場合は遅くてもある程度楽しくプレイできますが、Steam Linkなどのリモートプレイでは「Wi-Fiが10Mbpsとか15Mbpsでは無理」です。
参考までに私がテストした際の回線速度を掲載しておきます。これはスマホからテザリングしたときのもので、自宅の「光回線-Wi-Fiルーター」での速度はせいぜい15Mbps程度しか出ません。読者の皆さんで、すでにPCとのリモート接続でゲームをされている人はabxyluteでもリモートプレイが楽しめると思います。しかし、PCとリモート接続してゲームをしたことがない人は要注意ですね。
以前ライターさん数名に聞いてみたことがあるのですが、少なからぬ人が私と同様に低速な回線に甘んじているとのことでした。高速な回線に切り替えられない理由は主に「マンション住まい、賃貸住まい」というのが大きいです。私もマンション住まいなのですが、おおもとの光回線の速度が100Mbpsに届かないレベルで、これに不満でもマンションの場合は自分で勝手に高速回線を敷くことができません(できる、というマンションもあるかもしれません)。また、この光回線にWi-Fiルーターを接続すると、「確実に劣化します」。つまり、さらに遅くなるということです。そんなわけで「わかっちゃいるが、高速化はできない」人も相当数おられることでしょう。
また、クラウドゲーミングにせよ、スマホからのテザリングでPCリモート接続をするにせよ、「通信量がめっちゃ大きい」です。なので、「5Gでテザリングの使用容量無制限」という契約(楽天モバイルやドコモの5Gギガホなど)の人はテザリングを活用すべきとは思います。まあ、私の家だとまだ楽天モバイルの5Gは使えませんけどね…。
今回はGeForce NOW(クラウドゲーミング)とSteam Link(PCリモート)を試してみました。GeForce NOWについてはカジュアルにゲームを楽しむぶんには問題なく楽しめます。回線速度も速いに越したことはありませんが、15Mbps程度でも特に大きな問題はありませんでした。
ただし、レビュー機の性能云々ではなく「そもそもクラウドゲーミングで納得できるか」という層の人もおられるでしょう。FPSで高リフレッシュレートを要求するガチな人はどんな端末であろうとクラウドゲーミングは無理、と考えるかもしれません。なので、ここではあえて「カジュアルに楽しむぶんには」と書きました。ウインタブでは以前、ローエンドスペックのChromebookでGeForce NOWをテストしたことがあり、その際には「ごく快適。全く問題なし」と評価しました。それはabxyluteでも変わりません。ですが、GeForce NOWの場合は現状リフレッシュレートが60 Hzに抑えられていますし、非常に微細な遅延が気になってしまう人には向きません。そのような人はabxyluteに過度の期待をしないほうがいいかと思います。
一方でSteam Linkでのリモートプレイは15Mbpsでは到底無理でした。なので、自宅を出て高速回線が使えるところで試しました。
以下、実際にプレイしてみた感想です。
GeFoeceNOWではカジュアルなゲーム「Brawlhalla」とFPSゲームの「CS:GO」を起動し、少しプレイしてみました。
Steam Linkではレースゲームの「Wreckfest」とカジュアルなFPSゲーム「Gunfire Reborn」を起動し、プレイしました。
いずれも操作感は良好だと思います。回線がある程度高速である、という前提になりますが、ゲームの動作そのものはごく快適、というかクラウドゲーミングの範疇では全く問題がないと思います。
操作性も悪くありません。ボタン操作はしやすく、トリガー系のボタン(ショルダーボタン)もストロークが十分に取られており、気持ちよく操作ができました。ただし、私個人はFPSゲームをゲームコントローラー(ゲームパッド)でプレイすることはほとんどなく、abxyluteの右レバー操作(視線移動・エイム)がまともにできず、キーボードとマウスを接続してしまいましたけど…。
一方で、さすがにWindowsのゲーミングUMPCと比較してしまうと、筐体の質感は落ちます(ただし、ゲームがしにくい、ということではありません)。操作性に関連するとしたら、両サイドのグリップ部分がやや薄めになっているので、しっかりと握りたい、という人には少し不満が出るかもしれません(私は全く気になりませんでした)。あとは、試作機のため、バイブレーション機能がなく、バイブ機能の効果については試せませんでした。
6.スピーカー品質・バッテリー駆動時間など
abxyluteのスピーカーは前面下部左右にあります。ステレオスピーカーに見えますが、少なくともレビュー機(試作機)ではモノラルでした。音質も冴えない、という感じで、小さな筐体のエントリー機、という感じです。ただし、イヤホンを接続するとステレオになりますし、音質も接続するイヤホンの品質次第なところはありますが、ゲームプレイをする上では不満のないものになります。
発熱はほぼありません。また、ファンを搭載していませんし、レビュー機はバイブレーション機能も使えなかったので、動作音は一切ありません。
バッテリー持ちも非常に優秀で、公称値の「8時間以上」というのは当たらずとも遠からず、という感じですね。実際に8時間連続してバッテリー駆動させてはいませんが、感触としては「そのくらいは行きそう」でした。
クラウドゲーミングに特化した製品特性、というのも発熱とかバッテリー持ちには寄与していると思います。要するに自分自身でCPU負荷の高いことをしていないわけですから…。
7.abxylute レビューまとめ
この製品を楽しむためにはパソコン(できればゲーミングPC)もしくはPS4、PS5といったゲーム機が必要です。GeForce NOWなどのクラウドゲーミングの場合でも、Steam側(PC側)でゲームを購入する、無料ゲームの場合はPC側でライブラリに入れる、といったことが必要になりますので、パソコンやゲーム機を一切関わらせずにクラウドゲーミングを楽しむのは難しいでしょう。また、リモートプレイの場合は絶対にPCもしくはゲーム機が必要です、当たり前ですけど。
Google Playのゲームアプリをインストールしてプレイすることは可能ですが、Android端末としての性能は低いので、Androidゲーム用ならミッドレンジクラス以上のスマホでも買うほうがいいでしょうね。
それと、おそらくこの点が最重要になりますが、ネット回線がある程度以上の品質であることも必須です(できれば50Mbpsくらいは欲しいところです)。ご自宅のネット回線が遅い、という人は何らかの手当が必要になります。
と、いうハードルはありますが、これらを満たせる人であればこの製品はおすすめできます。筐体の質感などに不満はあるにせよ、ゲーム機としての操作性は悪くなく、それでいて3万円以下という安さになっていますので、とりあえず買ってしまってもそれほど後悔することはないでしょう。
コメント
steam link等のリモートプレイは
母艦pc-ルーター-子規のゲーム
の間で通信するだけだったはずなので、この記事のような速度チェックは関係ないと思います(このような速度チェックはサーバとの間がボトルネックになる)
ルーターの電波強度などの性能には左右されると思いますが