こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。今回は「イヤホン型翻訳機」の実機レビューです。「Timekettle M2」という製品で、昨年発売された「Timekettle WT2 Plus」の後継モデルとなります。私、2020年は1月のCES出張を皮切りに、5月には台湾のCOMUTEX TAIPEI出張と、海外展示会(COMPUTEXの場合はプラス夜市食べ歩き)に出向くのを楽しみにしていましたが、コロナの影響で軒並み中止。国内でも東京ゲームショウがオンライン開催になってしまったり、メーカーさんの発表会や展示会もほぼ100%オンライン開催と、正直ちょっと残念な状況です。現状は海外渡航もままなりませんが、「来年こそは!」海外に出られるのを楽しみにしています(CES2021はオンライン開催が決まっちゃいましたね…)。
さて、前置きが長くなりましたが、今回レビューする「Timekettle M2」はとっても便利です。本来の機能である「翻訳機」としてだけでなく、「普段はイヤホンとして使える」というのが大きなメリットになっていると思います。なお、レビュー機はメーカーであるTimekettleにサンプル品をご提供いただきました。この場にて御礼申し上げます。ありがとうございました。
1.スペック
前身機のWT2 Plusとの比較も交えたスペック表です。これだけ見てもよくわからないと思いますので、おいおいご説明しますが、まず目を引くのが「音楽にも使える(つまり、イヤホンとして使える)」「IPX4の防滴性能」「サイズが小型化」「バッテリー稼働時間の伸び」ですね。冒頭に書いたとおり、特に大きなメリットと言えるのが「普段はイヤホンとして使える」という点でしょう。
私がそうなのですが、日常的に翻訳機を必要とする人は必ずしも多くないと思います。また、もし「毎日英語を使う」ような人なら、翻訳機なしで普通に英語を喋れそうですもんね。なので、翻訳機のお世話になるのは「未知の取引先(取引候補先)との商談」とか「海外出張」「海外旅行」などの場面になるんだろうと思います。まあ、たまに歌舞伎町とか秋葉原で中国語で道を尋ねられたりもしますけどね。
なので、「翻訳機があらゆる場面で必要」という人はむしろ少なくて、そうなるとせっかく購入しても使用頻度が非常に低い、ということにもなりかねませんが、イヤホンとして使えるのなら話は別です。あとは音質がどうか、ということでしょう。
各種モードやサイズ感については後述します。この製品いわゆる「うどんタイプ」の外観なのですが、WT2よりもずいぶんコンパクトになり、「伊勢うどんから稲庭うどんに」くらいの感じです。イヤホンとして普段使いするのならこの点も重要ですよね!
まあ、スペック表を全部見るよりも、この画像の説明で十分わかりやすいかな、と思います。
肝心の翻訳機能ですが、対応言語はご覧の通り多岐にわたります。私なんかだと「中国語と英語」くらいでOKなのですが、フィリピン語を必要とするおじさんもいるかも知れませんしねー。まあ、ほとんどの人が必要とする言語はカバーされていると思います。
2.筐体
レビュー機は市販品と同じパッケージではなく、本体とケース以外の同梱物はUSB Type-A(オス)- USB Type-C(オス)の充電ケーブルのみでした。取扱説明書はPDFファイルで提供していただきましたが、しっかり日本語化されていましたし、もちろん市販品には付属します。
まずケースから。この製品、外観だけだと「完全ワイヤレスイヤホン」にしか見えないのですが、ケースに関しても同様で、よくある完全ワイヤレスイヤホンのバッテリー内蔵ケース、という感じです。丸みが強く、ちょっと愛らしいデザインですね。この面(前面といいます)にはロゴマークと充電インジケーターがあります。
表面にある凹凸はこれ、側面に充電用のUSB Type-Cポートだけです。
底面は「真っ白」で何もありません。市販品には各種認証マーク等が印字されるのかもしれません。
ここからがよくある完全ワイヤレスイヤホンのケースとはちょっと違うところです。このケース、真ん中からパカッと開口します。開口部はマグネットですね。開口するとこのようにイヤホン(翻訳機)本体が顔を出します。
それと、凝っているのが「左右にバッテリーが搭載されていて、分離したままでも充電ができる」という点です。
本体です。上のほうで「うどんが細くなった」と書きましたが、それでも一般的な完全ワイヤレスイヤホンと比較すると太いですね。また、イヤーパッドがなく、耳の大きさに応じた調整ができないというのもイヤホンとしてはマイナスポイントです。
イヤホンとして使う場合は左右両方のユニットを両耳に装着しますが、翻訳機として使う場合は一方を自分が、もう一方を話し相手が装着するケースもあります。なので、「L」「R」はひと目でわかるようになっていますし、形状からして左右を間違えることはまずありません。
装着してみたところです。モデルはうちの子(妹のほう)です。体の小さい子ですが、それにしてもデカイですね。電車の中で使うと悪目立ちする、というほどではありませんが、一般的な完全ワイヤレスイヤホンよりも一回りか二回り「太い」という感じ。また、装着感ですが、私は「ちょうどいい」くらいで、うちの子は「ちょっと大きすぎかな。うまく装着できないというほどでもないけど」ということでした。
3.使い方
アプリ
Google Play(Android)とApp Store(iOS)にそのまんま「Timekettle」という名称のアプリがあります。M2はこのアプリを使って翻訳機能を実現します。というか、このアプリがないと翻訳ができません。
M2とスマホをBluetoothで接続したり、翻訳のモードをこのアプリで選ぶことができます。
これ、「タッチモード」での言語選択画面なのですが、ここにこの製品の特徴がよく現れています。この画像だと、左側のユニットを私(日本語話者)が装着し、右側のユニットを繁体字中国語話者が装着することによってコミュニケーションできる、ということですね。それぞれのユニットの言語設定もここで行います。
次にモード別の使い方をご説明します。
タッチモード
一応スクリーンショットを載せていますが、このモードは基本的にスマホ画面なしでOKです。このスクリーンショットの利用シーンは、
・私が左側のユニットを、相手が右側のユニットを装着する
・私が左側のユニットの「うどんの背」を一回タップする
・「秋葉原への道順を教えて下さい」と話す
・画像のように日本語が表示され、ワンテンポおいて繁体字中国語の訳文が表示される
・訳文の表示と同じタイミングでイヤホンに中国語の音声訳が流れる
・それを受け、相手が右側のユニットの「うどんの背」を一回タップする
・中国語を話す
・以下、日本語の場合と同様
という感じです。より円滑に翻訳ができ、相手にわかりやすく、という意図でスマホを目の前に置くのは悪くない考えですが、基本的に音声だけですべてを完結できます。ちなみに、この画像で青くなっているのが「話すほう」で黒くなっているのが「翻訳を受けるほう」です。ユニットの「うどんの背」にタッチすることで青と黒が切り替わります。
このモードはオフィスなどでじっくりマンツーマンのコミュニケーションを取る際に有効です。このような利用シーンであれば相手にM2を装着してもらえるように頼むのも容易ですからね。
スピーカーモード
次にスピーカーモードです。このモードの意図は「自分が本体を装着して話し、相手がスマホのスピーカーで翻訳内容を確認する」というものです。なので、自分の耳にM2を装着(装着しなくても自分の声を拾ってくれれば大丈夫)して話せば、スマホに翻訳文が表示され、スマホのスピーカーから翻訳後の音声が出ます。
このモードは海外でタクシーに乗ったり、飲食店でオーダーをする際などに便利です。相手にM2を装着してもらう必要もありませんし、相手がスマホに向かって話せば翻訳文がスマホに表示され、自分の耳に装着したM2に翻訳文が流れます。
リッスンモード
続いてリッスンモード。このモードは会話を目的としているのではなく、「翻訳するだけ」です。画像を見ていただければわかると思いますが、他のモードでは「対面」を意識した画面レイアウトになっているのに対し、このモードだけ「原文と翻訳文が同じ向き」に表示されています。スマホのマイクが拾った内容を翻訳し、スマホの画面に翻訳文が表示されるとともに、自分の耳に装着したM2に翻訳文が流れます。
このモードは教室やセミナー会場など、「自分が話すことはなく、他の人が話している内容を翻訳するだけ」のときに便利ですね。
翻訳エンジン
TimeKettle M2には下記の翻訳エンジンが採用されています。
・Google
・Microsoft
・DeepL
・iFlytek(中国のAI翻訳機トップ企業)
・Timekettle社独自のもの
ただし、これらの翻訳エンジンがどのように組み合わされているのか、という点は開示されていません。まあ、この辺のロジックは開示しないでしょうね。
オフライン翻訳
TimeKettle M2は基本的に「オンライン翻訳」です。「原語をクラウドで翻訳して訳語を返してくる」方式ですね。なので、インターネット接続が必須となります。ただし、有料で「オフライン翻訳」にも対応するとのことです。2020年10月現在、オフライン翻訳に対応しているのは「日本語←→中国語、英語←→中国語、中国語←→ロシア語/スペイン語/フランス語」のみで、日本語←→英語など英語を起点としたオフライン対応言語の開発も進行中とのことです。
4.使ってみた
レビュー期間中、所用でMSIにお邪魔したのですが、「おお、チャンス!」ということで、Timekettle M2の翻訳テストに(無理やり)付き合っていただきました。テストに付き合ってくれたのは日頃大変お世話になっている繁体字中国語を母語とするスタッフの方です。ちなみにこの方は普段、流暢な日本語を話されますので、こちらとしては「これ以上ない」テスターでした。
テストは「タッチモード」で実施しましたが、動画中で、スマホの画面に直接タッチして原語を切り替えたりもしています。要するにM2の「うどんタッチ」でもいいしスマホの画面タッチでもOK、ということですね。
動画を見ていただくとわかると思いますが、翻訳には若干のタイムラグが発生します。なので「間のとり方」に慣れる必要がありますが、少なくとも日本語と繁体字中国語の翻訳精度はかなり高い、と感じました。また、動画では聞こえていませんが、この間、M2のユニットには音声も流れています。
ただし、難点もいくつかありました。
●あまりにもブロークンな話し方(多少ブロークンなのであれば問題ありません)、具体的には「人名など、あまり馴染みのない固有名詞」「大きく文法から逸脱した表現」などを使うと、「スマホの画面に途中まで表示されるが、M2的に無理だとわかると翻訳しない」です。「なかったことになる」んです。この場合、言い直しが必要になり、言い直せばいいんですけど、コミュニケーション上、ちょっと気まずい空気が流れます。
●タッチモードは本来「外部のノイズを拾わない」のが目的の1つと理解していますが、同席していた別のスタッフの方の発言を拾ってしまいます。また、中国語を話すスタッフの方が発言している最中に、腰を折るように割り込むと、割り込んだ私の日本語を無理やり繁体字中国語に翻訳しようとします(当然翻訳ができないので、「なし」になったり「おかしな中国語が表示」されたりします)。これがまたコミュニケーションを阻害する要因になってしまいます。この傾向はタッチモードだけでなく、スピーカーモードでも同様でした。
これらのケースは話し手が少し気を遣ってやれば、かなり解消できます。コミュニケーションする相手が「要領」を理解していれば、相当に円滑な対話が可能です。しかし、旅行中にレストランのスタッフの人と話したり、タクシーの運転手さんと話したりする場合は、コミュニケーションの雰囲気を阻害する可能性があると感じました。特に「騒々しい場所」での利用は気を遣うでしょう。
テストを終えてみて、「来年のCOMPUTEX TAIPEIにTimekettle M2を持ち込むか?」と聞かれれば「はい、持っていきます」と即答できるくらいの仕上がりだと思います。あとは、こちらが「間のとり方」とか「あまりブロークンな話し方をしない」とか、もう少し使い方に慣れる必要があると思っています。
それと、Google翻訳(スマホアプリ、無料)との比較もしてみました。翻訳精度はほぼ五分といったところですが、例えば「あしたテニス行かない?」という呼びかけをしてみると、M2ではちゃんと「Would you like to go tennis tomorrow?」と訳しましたが、Google翻訳では「I won’t go tennis tomorrow」と否定文になったりして、M2の優秀さが感じられる場面もありました。 あと、読み上げのレスポンスは明らかにM2のほうが速かったです。上の方で「間」について書きましたが、スマホの画面表示に頼る場合はともかく、スピーカーあるいはイヤホンでコミュニケーションする場合、Google翻訳は少なからぬ「間」があいてしまいますので、よりスムーズに音声翻訳をする場合はM2に軍配が上がります(あくまでウインタブの主観です)。
イヤホンとして
ニューモデル「M2」となって本当に便利になったのは、翻訳機としてだけでなく、普通にイヤホンとして使えるようになったことだと思います。実際私はレビュー期間内に翻訳性能を試すチャンスは多くはなく、イヤホンとして使っていた時間のほうが長いんですよね…。
で、音質のほうですが、「期待はずれ」ということもなく、かと言って「抜群!」という感じでもないです。最近ウインタブでは高級イヤホンのレビューなども(ライターが)していますが、それらの製品とは比べるべくもないでしょう。手持ちのイヤホン(有線、無線取り混ぜて数種類。いずれも2,000円とか5,000円とかのもの)と比較してみても、低音の再現力は少しばかり弱いです。
ただし、音質にそんなにこだわりのない、私のような人ならそんなに不満を感じないでしょう。電車の中などで使うなら特に気になりません。「ずっとこれを使っとけや」と言われても困らないレベル。上には上がありますので、こだわりだしたら不満が出てくるんでしょうが、普段使いなら十分です。
イヤホンとして使っているときはこのように「うどんの背」でタッチ操作が可能です。
また、「イヤホンと翻訳機の切り替え」ですが、これも非常に簡単で「Timekettleアプリを起動」すれば翻訳機となり、アプリを閉じたり、バックグラウンドに回してやればイヤホンになります。
5.まとめ
Timekettle M2は10月15日からMakuakeでクラウドファンディングが開始されました。早割価格(支援額、30%OFF)は11,750円となっています。コロナのせいで海外渡航もままなりませんが、来年はM2をバッグに入れて、あるいはイヤホンとして機内持ち込みをして、海外に出かけてみたいものです。それまではイヤホンとして頑張ってもらいましょう。
コメント
翻訳機能だけならTimekettle WT2 Plusの方が優秀じゃね?
(Timekettle WT2 Plusを持っているからという悔し紛れではない)