昨年くらいから「Wi-Fi 7対応」のWindows PC新製品を見かけるようになりました。Wi-Fi 7は確かに超高性能な規格ではあるのですが、使用環境を選ぶ、といいますか、その真価を発揮できる「利用環境」は限定的です。また、私も含め「Wi-Fi 7がどうすごいのかがわからない。そもそもWi-Fi 5とかWi-Fi 6についてもよく知らん」という人も少なくないのではないでしょうか?
この記事では、専門用語を極力使わずに「Wi-Fiの世代の違い」と「利用環境に合わせた選び方」を簡潔に解説します。
※MIMOやWPA3などの細かい技術用語の解説は別記事で扱います。
目次
1. Wi-Fiの「世代」
Wi-Fiは規格ごとに世代番号(Wi-Fi 4 / 5 / 6 / 6E / 7)が付けられています。「数字が大きいほど新しく、高速・多機能になる」と考えていただいて結構です。
規格名 | 世代名 | 最大理論速度 | 主な特徴 |
---|---|---|---|
IEEE 802.11n | Wi-Fi 4 | 約600Mbps | 2.4GHz / 5GHz両対応(※製品による) |
IEEE 802.11ac | Wi-Fi 5 | 約6.9Gbps | 5GHz帯に対応 |
IEEE 802.11ax | Wi-Fi 6 | 約9.6Gbps | 混雑に強い、2.4GHzも対応 |
IEEE 802.11ax(6GHz拡張) | Wi-Fi 6E | Wi-Fi 6相当 | 6GHz帯を使用可能 |
IEEE 802.11be | Wi-Fi 7 | 最大46Gbps超 | 超高速+低遅延 |
※これらはあくまで「理論値」です。実際の通信速度は環境によって大きく変わります。
※Wi-Fi 4以前にも「802.11a / b / g」といった規格が存在し、これらは現在の機器でも下位互換(古い機器との互換性確保)として使われますが、Wi-Fi Allianceによる世代番号は付与されていません。そのため、この記事ではWi-Fi 4以降を中心に解説しています。
2.4GHz帯のWi-Fiは「古い規格で遅い」と思われがちですが、現在も多くの端末はWi-Fi 4(802.11n)で接続しています。私の環境ではルーターが2.4GHz帯専用で、スマホ(Google Pixel 8)で接続状況を確認すると「Wi-Fi 4」と表示されます。…しかし、通信速度は10〜30Mbps程度で、快適とは言えません。
私の場合「Wi-Fiの規格が古いから遅い」のではなく「おおもとの光回線の速度」がボトルネックになっています。
2. Wi-Fiの速度=ネットの速度、とは限らない
ボトルネックは「利用環境」
参考までに私の環境を紹介します。私はマンションに住んでおり、自分の意思でインターネット回線を選ぶことができません。現在の回線は、有線でも100Mbpsに満たない速度しか出ず、Wi-Fi経由ではさらに低下します。そのため、長ーいLANケーブルを作業場所まで伸ばし、有線接続しています。
「そもそも、おおもとの光回線が遅い」「建物の構造でWi-Fiが届きにくい」というケースは都市部では珍しくありません(特にアパートやマンションに住んでいる場合)。これらはWi-Fiの規格を選ぶ以前の問題で、実際にこうした制約を受けている人のほうがむしろ多いんじゃないでしょうか?
Wi-Fiの世代が上がれば速度は確かに向上します。しかし、これまで書いてきた通り、Wi-Fiの世代を上げたからといって、自宅のインターネット体験が劇的に変わるとは限りません。
ポイントは「インターネット回線そのものの速度」と「接続機器の性能」。たとえば、自宅の回線が最大1Gbpsなら、Wi-Fi 7の46Gbpsの恩恵は受けられません。スマホやPCがWi-Fi 5までしか対応していなければ、ルーターがWi-Fi 6とか7に対応していても意味はありません。
Wi-Fi 6とWi-Fi 5の「体感差」
上の表を見ると、Wi-Fi 6とWi-Fi 5の差は「そこまで劇的」でもありません。もちろんWi-Fi 6のほうが速いのは間違いないのですが、それよりもWi-Fi 6は「複数端末の同時接続」に強く、家族など複数人で同時に動画視聴やリモート会議をするようなシーンで特に力を発揮します。
なので、一人暮らしや接続台数が少ない環境では違いを感じにくいでしょう。単純に「1台でWeb閲覧や動画を観る」だけならWi-Fi 5でも十分でしょうね。
3.「とりあえず最新」は落とし穴?対応機器にも注意

Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9はWi-Fi 7対応
当たり前ですが、Wi-Fi接続にはルーターと端末が必要です。そしてこれも当たり前ですが、新世代・高規格なWi-Fiを使うためにはルーターも端末もその規格に対応していなければなりません。ウインタブでよく紹介しているWindows PCの場合、ほとんどがWi-Fi 6には対応していますが、Wi-Fi 7に対応するPCはゲーミング系やSnapdragon X搭載機を中心とした一部の製品のみです。また、中国タブレットに関しては「Wi-Fi 6に対応している方が珍しい」状況です。
なので、私のように「2023年モデルのモバイルノート(これはWi-Fi 6E対応)とスマホ(これもWi-Fi 6E対応)、そして中国タブレット(Wi-Fi 5まで対応)」を愛用している人間がWi-Fi 7のルーターを購入しても意味はありません。というか、それ以前に自宅の光回線が100 Mbps弱なのであれば、Wi-Fi 5のルーターすら不要です。
また、Wi-Fi 6Eの6GHz帯やWi-Fi 7の高速通信を活かすには、障害物の少ない環境も必要とされますので、ルーターの設置場所や端末を使う場所にも気を配らなくてはなりません。
ということで、最新のWi-Fi規格の速さを享受するのはなかなかハードルが高いです。
4. まとめ
ではウインタブが考えるおすすめの規格を。あくまで「端末がその規格に対応している」「おおもとのインターネット回線がその規格を活かせる程度に高速」という前提ですが…
- 一人暮らし・端末が少ない → Wi-Fi 5でもOK
- 家族で同時利用が多い → Wi-Fi 6がコスパ良
- 将来性・最新ガジェットが好き → Wi-Fi 7検討もアリ
- 6Eや7の性能を活かすには→ 対応機器のチェック必須
個人的には「Wi-Fi 5を活かせるだけでも羨ましい」ような環境にありますし、ウインタブのライターさんも私と大差ない環境でPCやスマホを使っているようです。まあ、利用環境に恵まれている人であっても、「性能を活かすことができないのに高価なWi-Fi機器を購入する」ようなことがないようにしましょう。
5. 関連リンク
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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