Intel CPUはCore i5-1260PとかCore Ultra 7 155Hといった数字とアルファベットで型番が構成されています。型番を見ると「世代」あるいは「シリーズ」がわかり、「新しいのか古いのか」「性能が高いのか低いのか」ということもある程度わかります。また、型番には現れない「コードネーム」というのもあります。
この記事ではIntel CPUの「世代」「コードネーム」そして「ネーミングルール」についてご説明します。
別記事にてIntel CPUの型番一覧表も作成していますので、こちらもあわせてご覧ください。
ノートPC用CPU一覧 - Core Ultraシリーズ1、Core Ultraシリーズ2
ノートPC用CPU一覧 - 第13世代、第14世代Coreシリーズ、Coreシリーズ1、Coreシリーズ2
ノートPC用CPU一覧 - 第12世代Coreシリーズ(Alder Lake)、Alder Lake-N
目次
1.世代とコードネーム
Intel CPU(主にCoreプロセッサー)の「世代」は発売時期や製品ラインの区切りを示すマーケティング上の分類です。「第○世代」という形で新しい製品群が整理され、CESやIntelの発表会で「○○世代のCPU」として一斉に発表されることが一般的でした。ただし「世代」は単なる発売年次の区切りではなく、技術的な進化を反映しています。例えば、第12世代では10nmプロセス(Intel 7)と新しいハイブリッド構造(高性能コアと高効率コアの組み合わせ)が導入されました。 とはいえ、必ずしも世代ごとに単一の製造プロセスやアーキテクチャが使われるわけではありません。第10世代の「Comet Lake」と「Ice Lake」では製造プロセスや設計コンセプトが異なりますが、どちらも第10世代に分類されます。「世代」については2024年の「第14世代」を最後に使用されなくなりました。
一方、「コードネーム」は開発単位を象徴するものと言えます。各コードネームには特定の目標やターゲット市場に応じた設計思想や技術的特徴があります。Intelは同時期に複数の開発プロジェクトを並行して進めるため、ターゲット市場や設計目標の違いに応じて異なるコードネームが与えられます。「コードネーム」は技術の異なる開発ラインを区別するために使用されるものであり、同じ世代でも異なるアーキテクチャや製造プロセスを持つ製品が存在する理由がこれです。 Intel CPU(ノートPC向け)の「世代」と「コードネームは下記のとおりです。
コードネーム | プロセス | 世代 | リリース時期 | 主なブランド(ノート向け) | 主なシリーズ |
Kaby Lake Refresh | 14nm+ | 第8世代 | 2017 | Core i3/i5/i7, Pentium Gold, Celeron | Uシリーズ(15W) |
Amber Lake-Y | 14nm+ | 第8世代 | 2018 | Core i3/i5/i7 | Yシリーズ(超低電力、5W~7W) |
Coffee Lake | 14nm++ | 第8世代 | 2018 | Core i3/i5/i7/i9 | Hシリーズ(45W) |
Whiskey Lake | 14nm++ | 第8世代 | 2018 | Core i3/i5/i7, Pentium Gold, Celeron | Uシリーズ(15W) |
Cannon Lake | 10nm | 第8世代 | 2018 | Core i3 | 限定リリース(Core i3-8121U) |
Coffee Lake Refresh | 14nm++ | 第9世代 | 2019 | Core i3/i5/i7/i9 | H/HF/HKシリーズ(45W) |
Comet Lake | 14nm++ | 第10世代 | 2019 | Core i3/i5/i7/i9, Pentium Gold, Celeron | U/H/HKシリーズ(15W~45W) |
Ice Lake | 10nm | 第10世代 | 2019 | Core i3/i5/i7、Pentium | Uシリーズ(15W, Gen11 GPU) |
Comet Lake-Y | 14nm++ | 第10世代 | 2019 | Core i3/i5/i7 | Yシリーズ(9W~12W)(注) |
Tiger Lake | 10nm SuperFin | 第11世代 | 2020 | Core i3/i5/i7/i9、Pentium Gold、Celeron | U/Hシリーズ、UP3/UP4(Gen12 GPU) |
Alder Lake | Intel 7(10nm) | 第12世代 | 2022 | Core i3/i5/i7/i9、Pentium Gold、Celeron | Uシリーズ(15W~28W)、P/H/HXシリーズ(28W~55W) |
Alder Lake-N | Intel 7(10nm) | (第12世代) | 2023 | Core i3 Intel Nシリーズ |
エントリー向け、Eコアのみ構成 |
Raptor Lake | Intel 7(10nm) | 第13世代 | 2023 | Core i3/i5/i7/i9 | U/P/H/HXシリーズ |
Raptor Lake Refresh | Intel 7(10nm) | 第14世代、Core シリーズ1, 2 | 2024 | Core i5/i7/i9、Core 3/5/7/9 | U/H/HXシリーズ |
Meteor Lake | Intel 4 | Core Ultraシリーズ1 | 2024 | Core Ultra 5/7/9 | AI対応NPU搭載、次世代GPU |
Arrow Lake | Intel 20A | Core Ultraシリーズ2 | 2025 | Core Ultra 5/7/9 | AI対応NPU搭載、高性能設計 |
Lunar Lake | Intel 18A | Core Ultraシリーズ2 | 2025 | Core Ultra 5/7/9 | Copilot+ PC対応NPU搭載、低消費電力設計 |
注1)Intel公式サイトでは「Comet Lake-Y」とされる型番(例:Core i7-10510Yなど)をAmber Lake-Yとして扱っています
注2)Intel公式サイトでは「Coffee Lake Refresh」および「Raptor Lake Refresh」という区分を使用しておらず、公式サイトではそれぞれRefreshなしのものと同じ扱いになっています 。
続いて「世代」表記のないエントリーPC向けCPUのコードネームです。
コードネーム | プロセス | 世代 | リリース時期 | 主なブランド(ノート向け) | 主なシリーズ |
Gemini Lake | 14nm | — | 2017 | Celeron、Pentium Silver | Nシリーズ(6W~10W) |
Gemini Lake Refresh | 14nm | — | 2019 | Celeron、Pentium Silver | Nシリーズ(6W~10W) |
Jasper Lake | 10nm | — | 2021 | Celeron、Pentium Silver | Nシリーズ(6W~10W) |
Twin Lake | Intel 7(10nm) | – | 2024 | Core 3、Intel Nシリーズ | Nシリーズ(6W~15W) |
注)Alder Lake-Nについてもこれら世代表記のないグループに入りうるのですが、第12世代Alder Lakeの共通点が多く、第12世代とグルーピングされることが多いため、一つ上の表に掲載しています。また、Twin LakeはAlder Lake-Nのリフレッシュ版なので、Alder Lake-NとTwin Lakeを別の表で掲載するのは不適切かもしれません。
2.ネーミングルール
Core Ultraシリーズ1、シリーズ2
ルール
例
Core Ultra 5 125U
・ブランド:Core Ultra
・ブランドレベル:5
・シリーズ:1
・SKU:25
・サフィックス:U
Core Ultra 9 285HX
・ブランド:Core Ultra
・ブランドレベル:9
・シリーズ:2
・SKU:85
・サフィックス:HX
解説
Core Ultraシリーズ1、シリーズ2のブランドレベルは「5/7/9」の3種類で、数字が大きくなるほどブランドレベルが上がります。「ブランドレベル」は「ランク(階級)」と理解して良いと思います。つまり、ブランドレベルが上がると「性能と価格が上がり」ます。 シリーズを識別するのは3桁の数字の「100の位」となります。また、下にIntel公式のサフィックス一覧表を掲載していますが、サフィックスはシリーズ1(Meteor Lake)で「UとH」、シリーズ2で「V(Lunar Lake)」「U/H/HX(Arrow Lake)」が使われています。
Coreシリーズ
ルール
例
Core 5 120U
・ブランド:Core
・ブランドレベル:5
・シリーズ:1
・SKU:20
・サフィックス:U
Core 7 250H
・ブランド:Core
・ブランドレベル:7
・シリーズ:2
・SKU:50
・サフィックス:H
解説
Core シリーズ1、シリーズ2(Raptor Lake Refresh)のブランドレベルはシリーズ1が「3/5/7」、シリーズ2が「5/7/9」の3種類で、数字が大きくなるほどブランドレベルが上がります。シリーズを識別するのは3桁の数字の「100の位」となります。また、サフィックスはシリーズ1で「U」、シリーズ2で「U/H」が使われています。
Core iシリーズ
ルール
例
Core i5 1260P
・ブランド:Core
・ブランドモディファイア:i5
・ジェネレーション(世代):12
・SKU:60
・サフィックス:P
Core i7 14700HX
・ブランド:Core
・ブランドモディファイア:i7
・ジェネレーション(世代):14
・SKU:700
・サフィックス:HX
解説
第14世代まで存在した「Core i」シリーズのネーミングルールは「おなじみ」だと思います。「ブランドモディファイア」という表現が使われていますが、Core UltraおよびCoreシリーズで言う「ブランドレベル」とほぼ同義です。ジェネレーションが数字4桁あるいは5桁の上2桁で表されるという点も「おなじみ」のはず。 サフィックスについては、第10世代のIce Lakeと第11世代のTiger Lakeでのみ「G1-G7」が使われているのと、「V」が使われていない以外はすべてのものが使われています。
Intel Nシリーズ
ルール
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解説
エントリークラスの「Nシリーズ」ではCore、Pentium、Celeronといったブランドネームが廃止され、シンプルな名称に変わりました。プレフィックス(接頭辞)の「N」について、Intel公式の説明はありませんが、「省電力やエントリー向け」と解釈されることが多く、実際そのように理解していいでしょう。 ただし、「Core i3」もしくは「Core 3」というブランドモディファイアが使われている型番があります。この型番はNシリーズの中でも性能が高く、「Core i」を使用することによってユーザーに高性能であるというイメージを与え、より高い価値を持たせる狙いがあるものと思われます。
Pentiumシリーズ
ルール
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解説
Pentiumはブランド初期(1990年代)は「ハイエンドの象徴」的な位置づけでしたが、Intel Coreシリーズの登場によりミドルクラス、エントリークラスへと位置づけを変え、現在はエントリークラスという印象が強くなっています。「Pentium Silver」と「Pentium Gold」の2つのラインがあり、Intelの公式説明によればGoldはパフォーマンス優先、Silverはコスト優先とされます。 プレフィックスには「G」「N」「なし」があり、「G」はデスクトップPC向けのPentium Gold、「なし」はノートPC向けのPentium Gold、「N」はノートPC向けのPentium Silverに使われます。
Celeronシリーズ
ルール
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解説
Celeronには「Nプレフィックスつき」のものと「プレフィックスなし」のものがあります。よく見るのはNつきのほうで、開発コードネームとしてはGemini Lake、Gemini Lake Refresh、Jasper Lakeのものが該当します。つまりエントリークラスで省電力性が高いのがNつきです。プレフィクスのないものに「Celeron 7000シリーズ(Alder Lake)」および「Celeron 3000シリーズ(Kaby Lake)」がありますが、エントリーCPUが「Intel Nシリーズ」という名称に置き換わっているため、CeleronやPentiumという名称は姿を消しつつあります。
サフィックスについて
サフィックス | 最適化 / 意図された用途 |
HX | 最高のパフォーマンス、全 SKU オーバークロック対応 |
HK | 最高のパフォーマンス、全 SKU オーバークロック対応 |
H | 最高のパフォーマンス |
P | 薄型軽量ノートブック PC 向けに最適化されたパフォーマンス |
U | 優れた電力効率 |
V | 高い電力効率と優れたグラフィックス性能 ※Lunar Lakeに使用されるサフィックス。「V」についてIntelは公式説明していない |
Y | 非常に低い消費電力効率 |
G1-G7 | グラフィックス・レベル (新しい統合グラフィックス・テクノロジー搭載のプロセッサー) |
Intel公式サイトの説明を転記していますが、「V」のみは公式サイトのリストに記載がなかったため、ウインタブが作成しました。
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