HPのノートPC「EliteBook 635 Aero G11」の実機レビューです。この6月から「HPのEliteBook」を3台レビューしています(レビュー記事のリンクは下記。以下、便宜的にこれら3機種を「EliteBook 800シリーズ」と書きます)。EliteBook 800シリーズはHPの法人向けPCのハイエンドモデルという位置づけで、この635 Aeroもまたハイエンドモデルではあるのですが、EliteBook 800シリーズとはちょっと製品特性が異なっており、HP法人モデル独自の強力なセキュリティ機能をほとんど搭載していないかわりに「超軽量」です。個人向けっぽい印象のモバイルノートですね。なお、HPの法人向けPCは個人ユーザーも普通に購入ができます。
EliteBook 800シリーズのレビュー記事はこちらです
HP EliteBook 830 G11 レビュー - ビジネスに最適な13.3インチモバイルノート、めっちゃ使いやすい上に強力なセキュリティ機能も搭載!
HP EliteBook 840 G11 レビュー - Core Ultra搭載でセキュリティ機能も強力、とにかく「上質」なビジネスノートPC
HP EliteBook 860 G11 レビュー - ビジネスに最適!Core Ultra 7 155H搭載でセキュリティ機能も強力、Webカメラやマイクも高機能
なお、このレビューは日本HPより機材の貸し出しを受けて実施しています。
・OSにWindows 11 Proを搭載
・CPUは最新・NPU内蔵のRyzen 5 8640U/Ryzen 7 8840U
・再生素材を活用した筐体はMIL規格に準拠し、重量1キロ切り
・Polyの技術による機能豊富なWebカメラ、マイク、スピーカーはWeb会議の強い味方
ここはイマイチ
・独自のセキュリティ機能はなく、個人向けPCと変わらない
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目次
1.概要
スペック表
EliteBook 635 Aero G11 | |
OS | Windows 11 Pro |
CPU | AMD Ryzen 5 8640U/Ryzen 7 8840U |
外部GPU | なし |
RAM | 16GB(LPDDR5、オンボード) |
ストレージ | 512GB SSD(M.2, PCIe NVMe) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 13.3インチ(1,920 × 1,200) |
ネットワーク | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3 |
入出力 | USB3.2 Gen2 Type-C(映像出力、PD対応)× 2、USB Type-A(5Gbps)× 2、HDMI2.1、オーディオジャック |
カメラ | Webカメラ(5MP)顔認証対応 |
バッテリー | 43 Wh |
サイズ | 297.3 x 211.2 x 15.1(後部) mm |
重量 | 0.99 kg |
バリエーションモデル
・Ryzen 5/16GB/512GB
・Ryzen 7/16GB/512GB(レビュー機の構成)
※左からCPU/ストレージ
法人向けPCなのでOSはPro版のみです。逆に言えばスペック表の上でこれだけが法人向けPCっぽい、と言えます。CPUは最新型番のRyzen 5 8640U/Ryzen 7 8840Uで、いずれもAI処理チップのNPUを搭載する高性能な型番です。しかし、より高いセキュリティ性や組織での管理性を高めたRyzen PROシリーズの設定はありません。
RAMとストレージは16GB/512GBのみで、RAMはオンボードメモリなので購入後の増設や換装はできません。先にレビューしたEliteBook 800シリーズでは下位モデルに256GB SSDという設定がありましたが、EliteBook 635 Aero G11にはそれがなく、「個人利用を意識した仕様」と感じられます。ディスプレイは13.3インチで解像度は1,920 × 1,200で、実機を確認したところ視野角の広いIPS相当の液晶が使われています。また、発色は100%sRGBと高品質です。
EliteBook 800シリーズが謳う「世界一安全なビジネスPC」という文言はEliteBook 635 Aero G11の製品ページにはなく、HP Wolf Security for BusinessやHP Sure Click Secure BrowserといったHP独自のセキュリティソフトウェアの搭載もありません。ただし、Web会議系の機能(カメラ、マイク、スピーカー)についてはPolyの技術を軸に高い水準になっています。
それと、製品名に「Aero」とあるように、筐体重量は0.99 kgと「1キロ切りの超軽量」です。法人向けか個人向けかにかかわらず、「重量はモバイルノート選びで最重要のチェックポイント」と言え、EliteBook 635 Aero G11の大きなセールスポイントですね。また、この筐体は軽いだけでなくリサイクル素材を多用して作られており、MIL規格(MIL-STD-810H)の堅牢性を備えています。
では外観から見ていきます。
2.外観
同梱物
同梱物です。保証書、セットアップガイド(日本語と英語の2つ)、ACアダプター、電源ケーブル、ウォールマウントプラグ(画像中央上の鳥の頭のような形のもの)が入っていました。ウォールマウントプラグはACアダプターに直付けして使います。PCをコンセントに近い場所に配置する場合、ウォールマウントプラグがあれば電源ケーブルが不要になり、なにかと便利です(ケーブルが邪魔にならずスッキリする、モバイル利用の際に手荷物が減るなど)。
なお、ACアダプターは出力65Wのもの、実測重量は「ACアダプター+電源ケーブル」が347 g、「ACアダプター+ウォールマウントプラグ」が276 g、「ACアダプター+電源ケーブル+ウォールマウントプラグ」が388 gでした。
天板と底面
天板です。筐体素材は「マグネシウムの軽さ、アルミニウムの美しさと強さ」という説明になっています。
天板中央にはHPのプレミアムPC用のロゴが入り、筐体色は濃いめのシルバー(あるいはグレー)です。先にレビューをしたEliteBook 800シリーズよりも「ちょっと黒っぽい」色ですね。
底面です。中央に通気口が、左右にスピーカーがあります。
側面
前面と背面です。これらの面には特にポート類やボタン類はありません。
右側面です。画像左からUSB Type-C × 2、HDMI、USB Type-A。
左側面です。画像左からUSB Type-A、イヤホンジャック。EliteBook 635 Aero G11には合計で4つのUSBポートにHDMIポートがあり、超軽量ノートPCとしては充実した構成だと思います。
しかし、法人向けPCなのにセキュリティロックスロットなしですか?と思ってみたり…。このあたり、個人向けっぽさがありますよね。
キーボード
キーボードです。「日本語:防滴機能付き、JIS標準準拠・OADG準拠配列、バックライト機能付き」と開示されています。キーピッチは手採寸で約19 mmと一般的・標準的なもので狭苦しさは感じません。バックライトは明るさを2段階に調整でき、筐体色がやや暗いこともあって薄暗い場所ではかなりありがたいです。
タイピングのしやすさ、快適さは一般的なモバイルノートの水準を満たしていると思いますが、キーボード面がやや柔らかい印象で、ガッチリした筐体のEliteBook 800シリーズほどの気持ちよさはありません。ただし、EliteBook 635 Aero G11は1キロを切る超軽量筐体なので、それを踏まえると文句なしの品質ではあります。
ディスプレイ
ディスプレイは13.3インチで解像度は1,920 × 1,200(アスペクト比16:10)、ノングレア(非光沢)タイプです。また、メーカー製品ページに100%sRGBという記載がありました。
手持ちのPCモニター(27インチIPS液晶、FHD解像度、100%sRGBのもの)と目視で発色を比較してみました。当たり前ですがほぼ同等の発色で、とても高品質だと思われました。また、視野角も広いですし、輝度もメーカー開示の400nitにふさわしく、明るいものでした。
ただし、このディスプレイはEliteBook 800シリーズのディスプレイとは特性が異なります。文章にすると「明るくて視野角も広いんなら、それでいいじゃん」となりますけど、「スペックの割にやや暗く、視野角も狭く感じた」EliteBook 800シリーズのディスプレイよりも目に優しくない感じがしました。
EliteBook 635 Aero G11のディスプレイは他社製も含めた個人向けノートPCと同じ特性と思われ、これはこれで悪くないというか期待通りの品質なんですけど、個人的には長時間の利用でも目が疲れにくいEliteBook 800シリーズのディスプレイのほうが上質、と感じました。あくまで個人的な感想なので、人によってお好みはわかれると思います。
その他
ヒンジ
ヒンジを最大開口してみました。「意外に体が硬い」って言いますか、実用上はなんの問題もないのですが、開口角度は小さめで180度開口はしません。また、この筐体はリフトアップヒンジ構造(ヒンジ開口時に天板の後部が接地し、キーボード面に適度な角度がつく構造)です。
スピーカー
Polyチューニングのスピーカー、低音から高音までクリアな音質です。Polyは「会議用」というイメージが強いですが、このスピーカーなら音楽用としても悪くはなく、仕事をしながらBGMを流すような使い方をすると気持ちいいです。
音質調整は設定アプリMyHPで行います。イコライザーもついていますので細かく音質調整ができますが、「ポップス」とか「クラシック」といったプリセットはありません。
3.性能テスト
ベンチマークテスト
ベンチマークテストの実施にあたり、本体を電源に接続し、設定アプリ「MyHP」のシステム制御を「パフォーマンス」モードに、Windowsの電源設定を「最適なパフォーマンス」にして測定しました。
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。どちらかというとビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。このテストではCPU性能の影響が大きいとされますが、テスト内容にグラフィック系のシミュレーションも含むため、外部GPUの性能も少なからず影響します。
参考(過去データから一部抜粋):
MSI Titan GT77 HX 13V(i9-13980HX、RTX4090):9,187
HP Victus 16(i7-13700HX、RTX4070):8,057
ASUS ROG Zephyrus G14 GA403(Ryzen 7 8845HS、RTX4060):7,946
GEEKOM NUC AE7(Ryzen 9 7940HS):7,521
Beelink SER8(Ryzen 7 8845HS):7,446
MSI Prestige 16 AI Studio B1V(Ultra 7 155H、RTX4060):7,298
HP EliteBook 860 G11(Ultra 7 155H):6,849
Lenovo Legion Go(Ryzen Z1 Extreme):6,691
ASUS ROG Ally(Ryzen Z1 Extreme):6,654
GEEKOM XT13 Pro(Core i9-13900H):6,542
MSI Claw A1M(Ultra 5 135H):6,485
HP EliteBook 830 G11(Ultra 7 155U):6,392
ASUS Zenbook S 13 OLED UX5304MA(Ultra 7 155U) :6,163
Lenovo Yoga 7 Gen 8(Ryzen 5 7535U):6,021
HP Pavilion 15-eh(Ryzen 7 5825U):5,954
DELL Inspiron 14 5430(Core i7-1360P):5,929
DELL Inspiron 14 5435(Ryzen 7 7730U):5,915
HP Dragonfly G4(Core i7-1355U):5,774
HP EliteBook 840 G11(Ultra 5 125U):5,741
DELL Inspiron 13 5330(Core i5-1340P):5,677
VAIO F14(Core i7-1355U):5,553
MSI Prestige 13 Evo A12M(Core i7-1280P):5,500
レビュー機の搭載CPUはRyzen 7 8840Uです。スコアのほう、Core Ultra 7 155Hと同等くらいですね。外部GPUを搭載しないノートPCとしてはトップレベル、と言っていいでしょう。Ryzen 7の「HS型番」と比較するとやや見劣りしますが、ビジネス用のモバイルノートとしては素晴らしい結果になったと思います。
グラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。ゲーミングPCでは最も重要になるテストと言えますが、レビュー機は外部GPUを搭載しておらず、スコアは低めになります。
参考1(Core Ultra搭載機)
MSI Prestige 16 AI Studio B1V(Ultra 7 155H):3,959、8,363、29,843
HP Spectre x360 14-eu(Ultra 7 155H):3,924、8,338、24,476
MSI Claw A1M(Ultra 5 135H):3,454、7,235、24,791
HP EliteBook 860 G11(Ultra 7 155H):3,388、6,785、23,662
HP EliteBook 830 G11(Core Ultra 7 155U):2,319、5,162、19,024
ASUS Zenbook S 13 OLED UX5304MA(Ultra 7 155U):2,280、5,121、19,020
HP EliteBook 840 G11(Ultra 5 125U):2,081、4,826、19,421
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
※Prestige 16は外部GPUを動作させずに測定したもの
参考2(外部GPU非搭載のノートPC・ミニPC)
GEEKOM NUC AE7(Ryzen 9 7940HS):3,362、7,776、29,076
Beelink SER8(Ryzen 7 8845HS):3,330、7,908、29,873
GEEKOM Mini IT13(Core i9-13900H):1,947、5,428、19,991
GEEKOM XT13 Pro(Core i9-13900H):1,946、5,440、19,477
dynabook GZ/HW(Core i7-1360P):1,786、4,991、16,779
HP Dragonfly G4(Core i7-1355U):1,760、4,859、16,891
Lenovo ThinkPad X13 Gen 4(Core i7-1355U):1,658、4,709、14,122
Lenovo ThinkBook 15 Gen 5 (AMD) (Ryzen 5 7530U)1,281、3,137、13,730
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
3D Markのスコアは1世代前のCore i7よりもずっと高く、しかしCore Ultra 7 155Hよりも少々劣る、という感じですね。外部GPU非搭載のモバイルノートとしてはグラフィック性能が非常に高く(これ法人向けのビジネスノートなんですけど)PCゲームのプレイも十分可能かと思います。
SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。PCIe4.0 ×4接続の数値としては普通くらいですが、ビジネス用途であれば文句なしの速度だと思います。
バッテリー駆動時間
Windowsの電源モードを「トップクラスの電源効率」に、MyHPのパフォーマンスコントロールを「省電力機能」に、ディスプレイ輝度を70%に、音量を30%に、キーボードバックライトをオン(2段階あるうちの暗いほう)にして下記の作業をしてみました。
画像加工ソフトGIMPで簡単な画像加工を約25分
Webでの調べ物を約15分
ブラウザー上でYouTubeを開き、動画視聴を約15分
テキストライティングを約15分
トータルで約70分使用し、バッテリー消費は14%でした。単純計算で1時間あたり12%のバッテリー消費、駆動時間は8時間~8時間半くらいとなります。超軽量のモバイルノートにしてはかなり長持ちですね。モバイルノート市場全体で見ても高い(長い)水準だと思います。
発熱とファン音
文書作成や画像加工など、普通に仕事に使っているぶんにはほぼ無音で発熱も気になりませんでした。ベンチマークテストなどPC負荷の高い場面ではファン音が聞こえ、キーボード面上部が多少熱を持つ程度には発熱しますが使用感を損なうようなことはありません。他のノートPCとの比較でも静かで発熱も小さいほうだと思います。
4.レビューまとめ
HP EliteBook 635 Aero G11はHPオンラインストアで販売中で、7月21日現在の価格はRyzen 5モデルが148,280円、Ryzen 7モデルが164,780円です(今回のレビュー機はRyzen 7モデルです)。法人向けPCの場合、この価格に送料3,300円が加算されますが、ウインタブ読者クーポンにより4%の上乗せ割引が受けられますので、送料分を考慮してもそれ以上に安く購入することができます。
記事中で適宜より上位・高価格なEliteBook 800シリーズと比較しましたが、「記事でご説明した以上に大きく異なる」印象でした。頑丈な手触り(実際に頑丈)で独自のセキュリティソフト・セキュリティ機能が万全なEliteBook 800シリーズに対し、超軽量でMIL規格の頑丈さを備えてはいるがキーボード面などで若干柔らかさを感じ、HP法人モデル独自のセキュリティ機能がほとんど搭載されていないEliteBook 635 Aeroは「個人向けのノートPCと変わらない」と感じました。
EliteBook 635 Aero G11は製品特性において個人向けPCのPavilion Aero 13-bgと大差ないです。筐体色がちょっと華やかなPavilion Aero 13に対しEliteBook 635 Aero G11はビジネス向きの落ち着いた色になっている、というのとOSのバージョンが異なるくらいでしょうか。なので、むしろ「個人向けPC」ですね、これ。もちろんそれが悪いわけではなく、どちらがいいかは人それぞれのご判断です。
5.関連リンク
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HP EliteBook 635 Aero G11 製品詳細
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※確認したところPCのブラウザーでChromeを使うとうまくクーポンが反映されない場合がありました。その場合はブラウザーをEdgeなどに変更してお試しください