ASUSのハンドヘルド・ゲーミングPC「ROG Ally」の実機レビューその2です。今回の主役はROG Allyというよりは、外付けGPUモジュール「ROG XG Mobile」です。この記事ではROG XG Mobileのスペックや特徴をご説明し、ROG Allyに接続した際の使用感とパフォーマンスについてご説明します。
なお、ROG Ally単体のレビュー記事は掲載済みです。ROG Allyのスペックや筐体、機能などについてはこちらのレビュー記事をご参照ください。
ASUS ROG Ally レビュー - ASUSが5年かけて開発したWindowsゲーミングハンドヘルドPC!このジャンルで世界征服しそう?
・ROG Allyに接続すれば一気にハイエンドクラスのゲーミングPCに
・豊富な入出力ポートと給電機能でROG Allyの弱点を克服
・ROG Allyとセットで購入しても同等性能のゲーミングノートと大差ない価格
ここがイマイチ
・PC接続ケーブルが短く、設置場所に制約
・レビュー機「GC32L」にはUSB Type-Cポートなし
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目次
1.ROG XG Mobile スペック
スペック表
ROG XG Mobile GC32L | |
GPU | AMD Radeon RX 6850M XT |
インターフェース | Display Port、HDMI、USB 3.2 Gen1 Type-A × 4、SDカードリーダー、LAN(RJ45) |
電源 | 330W(バッテリーは非搭載) |
サイズ | 217 × 165 × 32.6 mm |
重量 | 1.26 kg |
コメント
ROG XG Mobileは外付けのGPUモジュールです。パソコンではありません。そのためOSとかRAM、SSD、ディスプレイは搭載していません。
今回のレビュー機は「GC32L」という型番でGPUにはAMD Radeon RX6850M XTが搭載されています。また、2023年モデルのROG XG Mobileには「GC33Y」という、GeForce RTX4090 Laptop GPUを搭載するモデルもありますが、この記事では取り上げません。
ROG XG Mobileは豊富な入出力ポートを備えており、接続するPCへの給電や有線LAN接続、USBメモリー等の接続も可能です。ただし、接続端子が「ROG XG Mobileインターフェース」という専用端子なので、接続できるPCはASUS ROG FlowシリーズやROG Allyなど、一部のASUS製品に限られます。
では、外観から見ていきます。
2.ROG XG Mobile 外観
同梱物です。セットアップガイドと保証書、電源ケーブルが入っていました。
前面(立てかけて置いた際に正面から見えるほう)です。右上に通気口があり、電源が入るとこの部分が赤く光ります(のちほど画像を掲載します)。
背面です。模様は入っていますが、外観について特にコメントするようなことはないです。
PCとの接続ケーブルが写っていますが、このケーブルは取り外しができません(電源ケーブルは着脱できます)。それと、「ケーブルの短さ」にも注意が必要です。つまり、PCとの接続をした際、このケーブルの短さにより、設置場所が制約を受けます。例えば、PC本体をデスクに、ROG XG Mobileをデスク下に、といった使い方はできません。
また、この面には折りたたみ式のスタンドがあります。
右側面です。入出力ポートはこちらです。画像左から電源コネクター、有線LAN、DisplayPort(上)、HDMI(下)、USB Type-A × 4です。ポート構成に特に不満はありませんが、できればUSB Type-Cポートがひとつ欲しかったところ(上位モデルのGC33YはUSB Type-Aポート1つがUSB Type-Cポートに置き換わっています)。
左側面です。こちらにはポート類はなく、通気口とケーブル(PC接続用)があります。
これが接続端子です。「USB Type-C + ROG XG Mobileインターフェース」で、対応PCとはPCIe 3.0 ×8接続(ASUSによればThunderbolt 3よりも1.5倍高速とのこと)となり、繰り返しになりますがGPUだけでなく、各種周辺機器接続、有線LANやPCへの給電が可能です。
上面です。通気口とその下にSDカードリーダーがあります。
下面には何もありません。各種認証マークやシリアルナンバーなどが書かれたシールが貼られているのみです。
ROG AllyとROG XG Mobileを接続したところです。このように、接続してもコンパクトではあるのですが、ROG XG Mobileインターフェースのケーブルが短いために配置の自由度が小さく、またROG XG Mobileがバッテリーを内蔵せず、常に給電が必要で重さも1.2 kgオーバーのため、気軽に外に持ち出して使う、という感じではありません。なので、「外ではROG Ally単体で、自宅に戻ったらROG XG Mobileを繋いで…」という使い方に限定されると思います。
3.ROG XG Mobile 使用感
電源が入るとROG XG Mobileの前面LEDが赤く点灯します。実際のところ、ROG Ally + ROG XG Mobileの組み合わせだとこんな使い方になると思います。なお、この画像ではROG Allyの画面が消灯していますが、ROG Allyのディスプレイと外部モニターを同時に使うこともできます。
ROG Ally – XG Mobile – モニター、有線LAN、電源
ですね。キーボードとマウス、ゲームコントローラーなどは接続方式がBluetoothの場合はROG Allyと直接、有線あるいはUSB無線接続の場合はROG XG Mobileに接続することになります。ROG AllyはROG XG Mobileと接続してしまうと、もはや空きポートはありません。
ROG Ally + ROG XG Mobileだと、ウインタブでよくご紹介しているミニPCよりもサイズが大きい(場所をとる)ですが、使い勝手としては普通にミニPC(あるいはデスクトップPC)です。それも超高性能な…。
なので、モニターは大きくて高リフレッシュレートなものにしたいとか、キーボードはメカニカルにしたいとか、周辺機器にお金を遣いたくなって危険、という気もしますねw
4.ROG XG Mobile 性能テスト
ベンチマークテスト
ROG Ally側のモードを「Turbo(30W)」にして外部モニターは接続せず、ROG XG Mobileのみを接続してベンチマークテストを実施しました。もちろん電源には接続された状態です(ROG XG Mobileは電源接続が必須のデバイスです)。
グラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。ゲーミングPCでは最も重要になるテストですね。
参考(ハイエンドな外部GPU搭載ノート):
MSI Titan GT77 HX 13V(i9-13980HX、RTX4090):22,052、38,273、15,196
ASUS ROG Strix SCAR 17 G733ZX(i9-12900H、RTX3080Ti):12,849、28,768、7,999
HP OMEN 17(i7-12800HX、RTX3070Ti):11,878、25,785、7,132
MSI GP66 Leopard 11U(i7-11800H、RTX3080):11,730、24,606、7,513
ASUS ROG Strix G15 G513RW(Ryzen 9 6900HX、RTX3070Ti):11,088、26,107、6,904
MSI Creator Z16P B12U(i9-12900H、RTX3080Ti)10,614、23,960、6,520
ウインタブでRadeon RX 6850M XTというGPU搭載機をテストするのはこれが初めてです。Webで情報収集すると「GeForce RTX3080と同等」とか「RTX3080を粉砕する!」などという評価になっていましたが、3D Markのスコアを見る限りあながち言い過ぎでもないような結果になりました。参考データは搭載CPUがまちまちで、CPU性能が3D Markのスコア形成に全く無関係なはずもなく、よって決めつけはできませんが、Time SpyとFire Strikeについては確かにRTX3080と同等かそれ以上のスコアになっていると思います。
一方でリアルタイムレイトレーシング性能を測定するPort Royalではスコアが伸びませんでした。5,700点台だとRTX3070よりも若干悪いくらいでしょうか(あくまでウインタブの経験上の評価です)。
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。どちらかというとビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。また、このテストではCPU性能の影響が大きいとされますが、テスト内容にグラフィック系のシミュレーションも含むため、外部GPUの性能も少なからず影響します。
参考(過去データから一部抜粋):
MSI Titan GT77 HX 13V(i9-13980HX、RTX4090):9,187
ASUS Vivobook Pro 15 OLED K6502VV(i9-13900H、RTX4060):8,033
MSI Katana 15 B13V(i7-13620H、RTX4050):7,955
MSI Creator Z16P B12U(i9-12900H、RTX3080Ti)7,943
ASUS ROG Flow X13 GV302(Ryzen 9 7940HS、RTX4060)7,793
ASUS ROG Strix SCAR 17 G733ZX(i9-12900H、RTX3080Ti):7,773
ASUS ROG Zephyrus M16(i9-12900H、RTX3070Ti):7,720
DELL G15(i7-12700H、RTX3060):7,685
ASUS ROG Flow X16 GV601(Ryzen 7 6800HS、RTX3070Ti):6,881
GIGABYTE A7(Ryzen 9 5900HX、RTX3070):6,827
ASUS TUF Gaming A17 FA706QR(Ryzen 7 5800H、RTX3070):6,744
MSI Stealth 15M B12U(i7-1280P、RTX3060):6,675
ASUS ROG Ally単体(Ryzen Z1 Extreme):6,654
MSI Bravo 15 C7V(Ryzen 7 7735HS、RTX4050):6,436
HP Pavilion 15-eh(Ryzen 7 5825U)5,954
VAIO SX12(2022)(i7-1260P):5,761
dynabook RZ/HV(i7-1260P):5,564
PC Markのスコアも堂々の7,000点オーバーとなりました。ただ、このテストは3D Markと異なり、CPU性能の方も重視されますので、いかなRyzen Z1 Extremeといえども最新世代のCore i9とかRyzen 9と比べてしまうと少々分が悪い、ということだと思います。
次に個別ゲーム「ファイナルファンタジー15」のベンチマーク結果です。上から「FHD」「2.5K」解像度のスコアです。
参考(ハイスペックゲーミングノート、FHD解像度のもの):
MSI Titan GT77 HX 13V(i9-13980HX、RTX4090)19,307
ASUS ROG Strix SCAR 17 G733ZX(Core i9-12900H、RTX3080Ti):11,839
MSI GP66 Leopard 11U(Core i7-11800H、RTX3080):11,658
Lenovo Legion 760(Ryzen 9 5900HX、RTX3080):10,966
HP OMEN 17(i7-12800HX、RTX3070Ti):10,922
MSI Creator Z16P B12U(Core i9-12900H、RTX3080Ti):10,605
ここでも(CPUの型番の相違はありますが)GPUの型番だけで見ればRTX3080といい勝負、くらいの結果となりました。
発熱とファン音
ROG Ally、ROG XG Mobileとも冷却ファンを内蔵しています。ROG Allyについては先のレビュー記事でも記載したとおり、ファン音は小さく、耳障りなものではありません。一方でROG XG Mobileはそれなりにファン音は大きいです。ゲームプレイ中だと60dB弱くらいの音量になります。また、繰り返しのご説明となりますが、ROG XG MobileはPC接続ケーブルが短いため、ROG Allyに接続する場合、デスク上に設置せざるを得ません。なので、人によっては耳障りと感じられると思います。ただし、高性能なゲーミングノートでもROG XG Mobileと同じような騒音レベルになるものが少なくありませんので、ここは仕方ないとも思います。
発熱はあります。ありますが、もともと高性能なGPUの性能をフルに引き出すのがミッションの製品なので、発熱による性能低下などは気にしなくていいでしょう。ゲームプレイ時の前面表面の温度は50℃に満たないくらいで、左側面の排気口からやや熱い風が出ますが、ゲームプレイに支障が出る、という感じではありませんでした。
5.ROG XG Mobile レビューまとめ
ASUS ROG XG MobileはASUS Storeで販売中で、レビュー機「GC32L (GC32L-021)」の価格は税込み124,800円(5月31日まではセールで119,800円)、GeForce RTX4090 Laptop GPUを搭載する上位モデル「GC33Y (GC33Y-021)」はこの記事執筆時点では在庫切れとなっており、価格は税込み399,800円です。もちろん上位モデルのほうがさらに高性能のはずですが、さすがに価格差が大きい…。
記事中でも触れましたが、ROG AllyとROG XG Mobileをセットで使う場合、ROG XG Mobileは外付けGPUモジュールとしてだけでなく、「便利なドッキングステーション」という位置づけにもなります。ROG AllyはWindows PCとしても非常に高性能ですが、その小さな筐体ゆえに入出力ポートが少なく、バッテリー駆動時間も短いです。ゲーム機としてではなくノートパソコンとして見る場合、これは重大な欠点と言えるでしょう。この2点をしっかり補ってくれるのがROG XG Mobileです。
パフォーマンスについては上に掲載したベンチマークスコアを見ていただければ一目瞭然、ROG Ally + ROG XG Mobileの組み合わせでハイエンドクラスの実力があります。
ROG XG Mobileの価格だけを見ると「いやあ、周辺機器に10万以上払うのかあ…」となってしまいます(私もそうでした)が、ROG Allyが予想以上に安価で購入できることもあり、「両方で約21万円~23万円」なのであれば、同等クラスの性能のゲーミングノートよりもむしろ安いです。もちろんモニターなど、別途用意しなくてはならない周辺機器もありますので、一通り新調したら23万円じゃ収まりませんけど、それでもゲーミングノートと比較検討する余地は大きいです。
ROG XG MobileはROG Ally専用の機器ではなく、ASUS ROG Flowシリーズにも接続ができます。ROG Flowシリーズは13.4インチとか16インチのディスプレイとキーボードを備えたノートパソコンで本体に外部GPUも搭載しています(非搭載のモデルもあります)。また、価格も基本的には20万円以上します。そうなると、あえてROG XG Mobileをセット購入する意味は薄い、と感じられる人も多いと思いますが、ROG Allyはゲームに特化した製品と言え、ゲーム用のボタンやレバー、スティックを備えているかわりにビジネスなどゲーム以外の用途に必要なパーツを切り捨てている(切り捨てざるを得ない)ところも多いです。そこをうまく補ってくれるのがXG Mobileです。
外出先ではROG Ally単体で楽しみ、自宅に戻ったらROG XG Mobileを接続して数段高性能な環境でゲームの続きをしたり仕事に使ったりと、一気に使い道を広げてくれるデバイスです。ちょっと値は張りますが、「これがあるからROG Allyがさらに活きる」とも言えるんじゃないでしょうか。
6.関連リンク
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ASUS ROG Ally レビュー - ASUSが5年かけて開発したWindowsゲーミングハンドヘルドPC!このジャンルで世界征服しそう?