ASUSのゲーミングノートPC「ROG Strix G16 (2025) G615 G615LP-U9R5070G」の実機レビューです。5月16日にプレスリリースが出たばかりの最新モデルで、CPUにCore Ultraシリーズ2(Arrow Lake)のCore Ultra 9 275HXを、GPUにはGeForce RTX5070を搭載する高性能マシンです。ウインタブではRTX50シリーズを搭載するノートPCをレビューするのは今回が初となります。
なお、このレビューはASUSより機材をお借りして実施しています。
・最新の高性能CPU、Core Ultra 9 275HXを搭載
・GPUも最新、GeForce RTX 5070 Laptop GPU
・ASUSのROGらしい、個性的で元気なデザイン
・発色のいい2.5Kディスプレイ、リフレッシュレートも240Hz
・筐体内部へのアクセスが容易なQ-latch構造
ここはイマイチ
・特になし、339,800円出せるなら買い
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ROG Strix G16 G615LP (G615LP-U9R5070G)
1.製品概要
スペック表
ROG Strix G16 G615 G615LP-U9R5070G | |
OS | Windows 11 Home |
CPU | Intel Core Ultra 9 275HX |
外部GPU | NVIDIA GeForce RTX5070 Laptop GPU |
RAM | 32GB(DDR5-5600, 最大64GB) |
ストレージ | 1TB SSD(PCIe4.0 NVMe M.2) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 16インチ (2,560×1,600) 240Hz |
ネットワーク | Wi-Fi 7(be)、Bluetooth 5.4 |
入出力 | USB4 Type-C (Thunderbolt 4) USB3.2 Gen2 Type-C (映像/PD対応) USB3.2 Gen2 Type-A×3 HDMI、オーディオジャック LAN(RJ45) |
カメラ | Webカメラ(207万画素)顔認証対応 |
バッテリー | 90Whr |
サイズ | 354 x 268 x 22.8-30.8 mm |
重量 | 2.65 kg |
コメント
搭載CPUのCore Ultra 9 275HXは2025年1月にリリースされたコードネーム「Arrow Lake」の上位型番です。24コア(Pコア8、Eコア16)24スレッドでプロセッサー・ベースパワーは55W、最大ターボパワーは160W、オーバークロックにも対応します(このレビューではオーバークロックは試しておりません)。また、AI処理チップNPUも内蔵していますが、同じCore Ultraシリーズ2のコードネーム「Lunar Lake(Core Ultra 7 258Vなど)」とは異なり、NPU性能は低め(最大13TOPS)のため、Copilot+ PCの要件は満たしません。ゲーミングPCのCPUとして「とにかくCPU性能に準特化した」型番と言えます。
次にGPUです。この製品が搭載するGeForce RTX 5070 Laptop GPUは、2025年4月にリリースされた最新のミドルクラスGPUで、現行のRTX 50シリーズでは中位に位置付けられます(従来の型番体系で考えると上位とも言えますが…)。前世代(RTX 40シリーズ)と比べてパフォーマンスが向上し、GDDR7メモリやDLSS 3の対応など、今後のゲームやクリエイティブ用途にも十分な将来性を備えています。
ディスプレイは16インチで解像度は2.5K(2,560 × 1,600)と高く、リフレッシュレートも240Hzと高速です。
また、ROG Strix G16 G615は「Q-Latchシステム」を搭載しており、工具なしで底面を開口でき、RAMやSSDのメンテナンス・増設が可能です。また、ファンのクリーニングも簡単にできます(のちほど製品画像に基づいて説明します)
2.外観
同梱物
同梱物です。ACアダプター、充電ケーブル。取扱説明書などのペーパー類が入っていました。取扱説明書には上で触れたQ-Latchシステムや設定アプリArmoury Crateについての説明もありますので、目を通しておくほうがいいですね。
ACアダプターは「さすがに大型」です。出力は280W、電源ケーブル込みの実測重量は790 gでした。なお、PCとの接続は独自規格のプラグを使います。
天板と底面
天板です。筐体は金属製で、一般的な16インチノートよりもずっと大きく、厚いです。画像下部に「REPUBLIC OF GAMERS」と印字されています。
底面です。ROG Strix G16 G615はQ-Latchシステムを搭載しており、簡単に底面を開口することができます。…しかし、その前にこの独特なデザインが気になりますよね!
周囲を取り囲むように白い線のようなものが見えますが、これはLEDライトです。詳しくは後ほど。それと、注意して見ると、画像下部中央にレバーのようなものが見えます。
これはROG Strix G16 G615の目玉機能のひとつであるQ-Latchのレバーです。このようにレバーを(この画像では)左に動かして、底板を下に引くと簡単に開口することができます。
開口してみました。右側にある青枠で囲んだところがSSD用のM.2スロット、左側の赤枠で囲んだところがM.2の空きスロットです。中央右の黄枠で囲んだところがRAMスロット。
この画像を見ると冷却ファンが3つ搭載されているのがわかります。また、中央上部にあるプレートを外すとCPUやGPU、ヒートパイプなども見えると思いますが、今回は開口しません(ノートPCのCPUやGPUは一般人だと交換したりはできません)。
一つ上の画像の黄枠の部分です。このようにRAMスロットが2つあり、空きスロットはありませんが、簡単に換装できる構造になっています。
なお、ROG Strix G16 (2025) G615は「このような構造」なので、ユーザーが筐体を開口しても直ちに保証が切れるというわけではありませんが、メーカーのプレスリリースにこのような注意書きがありました。
※他メーカ製部材へ交換/増設した際の動作を保証するものではありません。増設の際は、各部材の提供元メーカにご確認の上、お客様自身の責任において実施いただけますようお願いします。交換/増設に伴う破損に対しても
ASUS のあんしん保証 (日本国内保証・要登録) がご利用いただけます。
側面
前面です。厚みがありますよね。こちらにはポート類やボタン類はありません。
背面です。ゲーミングノートPCらしい、大きな通気口(排気口)があります。
左側面です。画像左からDC-INジャック(ASUSの規格です)、有線LAN、HDMI、USB3.2 Gen2 Type-A、USB Type-C(Thunderbolt 4)、USB3.2 Gen2 Type-C、イヤホンジャックがあります。
それと、画像右の下の方にスリット(細長い溝)が見えますが、これがスピーカーです。この製品は左右の側面に1つずつ、ステレオスピーカーを搭載しています。
スピーカーの音質は「いい」です。筐体が大型なこともあり、ノートPCの内蔵スピーカーとは思えないくらいに低音が効きます。
右側面です。こちらにはUSB3.2 Gen2 Type-Aポートが2つあるのみ。もちろん画像左下にスピーカーもありますね。
キーボード
キーボードは「92キー日本語キーボード (4ゾーン RGB イルミネートキーボード) (JIS配列)」と開示されています。16インチサイズの製品ですがテンキーはありません。また、上部に5つの独立したキーがありますが、これらのキーは初期状態では音量調整やマイクのミュート、ファン風量の変更、Armoury Crateアプリの起動が割り当てられていますが、ユーザーが任意の操作を割り当てられる「ホットキー」です。また、Armoury Crateからキーボードマクロの登録も可能です。
キーピッチは手採寸で約19mm、キーストロークは約2mmと開示されており、ノートPC用としては深めです。
RGBバックライトを点灯させたところです。点灯のパターンは設定アプリArmoury Crateでお好みに合わせて変更できます。なお、ROG Strix G16 G615にはGPUにGeForce RTX5070Tiを搭載するモデル(G615LR-U9R5070TI)とGeForce RTX5080を搭載するモデル(G615LW-U9R5080)もあり、これらのモデルはキーボードバックライトがオールキーRGB(Per-Key RGB、個々のキーのバックライト色を自由に変更できる)ですが、RTX5070を搭載する、このレビュー機(G615LP-U9R5070G)はオールキーRGBではなく「4ゾーンRGB」となります。
ディスプレイ
ディスプレイは16インチで解像度は2.5K(2,560 × 1,600)、リフレッシュレートは240Hzと非常に高速で、100% DCI-P3の発色品質を備えています。
目視で発色を確認しましたが、100%DCI-P3と開示されているだけあり、とても高水準です。
Armoury Crateに「Game Visual」という機能も入っていて、普段使いはもちろん、プレイするゲームのジャンルに合わせて発色の傾向を変えることができます。
その他
ご覧の通りヒンジがやや前方に取り付けられていますが、ヒンジ(の金具)のデザインが独特で、後部が「出っ張った」格好にはなりません。開口角度はちょっと小さめですね。ただし、ゲームプレイやその他の作業に支障をきたすようなものではありません。
ここでもう一度トップ画像を。側面のRGBライティングが雰囲気抜群です(消灯することもできます)。ASUSのROGシリーズはパフォーマンスだけでなく、ゲーマーに「持つ喜び」を与えてくれる製品だと思います。
3.性能テスト
ベンチマークスコア
ASUSのゲーミングPCには設定アプリ「Armoury Crate」が入っています。このアプリでパフォーマンスの調整やモニタリング、キーボードマクロやライティングの設定などができます。
このレビューでは「オペレーティング・モード」を「Turbo(最高性能)」に、「GPUパフォーマンス」を「Ultimate(最高性能)」に設定し、ベンチマークテストを実施しました。なお、オペレーティング・モードには「手動設定」もでき、CPUに関してはPL1とPL2の電力、GPUに関してはベースクロックとメモリクロックのオフセット(オーバークロック)などができますが、このレビューでは手動設定は使っていません。
まず、グラフィック性能を測定する3D Markのスコアから(画像はクリックで拡大します)。
参考(ハイスペックなゲーミングノート):
Core i9-13980HX/RTX4090:22,052、38,273、15,196
Core i9-13980HX/RTX4080:19,011、35,262、12,345
—レビュー機のおおよそのポジション—
Core i9-12900H/RTX3080Ti:12,849、28,768、7,999
Core i7-13700HX/RTX4070:12,677、27,892、7,528
Ryzen 9 6900HX/RTX3070Ti:11,088、26,107、6,904
Ryzen 7 8845HS/RTX4060:10,138、22,587、5,644
Ryzen 7 6800H/RTX3060:9,359、21,320、5,363
Core i7-13620H/RTX4050:9,087、20,397、4,999
Core i9-13900H/RTX4060:9,013、20,391、4,833
※左からTime Spy、Fire Strike、Port Royalのスコア
ウインタブの過去データから言えることとして、第13世代のCore i9(HX型番)/ RTX4090 or RTX4080搭載機よりもスコアは明確に劣り、RTX3080TiやRTX4070搭載機よりは明確に勝っている、ということですね。
次に人気タイトル(にしてクソ重い)モンスターハンターワイルズのベンチマークスコアです。グラフィックプリセットとディスプレイ解像度を変えて3パターン測定しました。また「フレーム生成あり」でテストしています(画像はクリックで拡大します)。
2.5K解像度・グラフィック「高」(画像左)でも平均で100fpsをオーバーしています。また、WUXGA(1,920×1,200)解像度・グラフィック「高」(画像中央)だと平均で138fps、WUXGA解像度・グラフィック「中」(画像右)なら平均154fpsとなりました。個人的には平均で100fpsオーバーなら快適にプレイできるものと思いますが、あとは読者のご判断かと思います。
なお、2.5K解像度・グラフィック「ウルトラ」では「まともに動かなかった(プレイするのは絶対に無理)」です。RTX5070をもってしてもウルトラ画質ではプレイできないとか…、モンハンワイルズ恐るべし。
続いて表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。どちらかというとビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。このテストではCPU性能の影響が大きいとされますが、テスト内容にグラフィック系のシミュレーションも含むため、外部GPUの性能も少なからず影響します。
参考(過去データから一部抜粋):
Core i9-13980HX/RTX4090:9,187
Core i9-13980HX/RTX4080:8,981
Core i7-13700HX/RTX4070:8,057
はい、「ほぼ過去最高」のスコアです。特にコメントすべきこともありませんが、PC Markが想定するビジネスシーンではROG Strix G16 G615はもはやオーバースペックという感じ。
続いてはCPU性能のみを測定するCINEBENCH 2024のスコアです。このテストではGPU(GeForceなど)の搭載有無は影響を受けないとされています。
参考(過去データから一部抜粋):
Core i7-14700:122、1,177
Core Ultra 7 258V:121、676
Core i9-13900H:117、687
Ryzen AI 9 HX 375:114、1,144
Core Ultra 9 185H:111、910
Ryzen AI 9 HX 370:110、942
Ryzen AI 9 365:109、1,008
Snapdragon X Elite:108、1,038
Ryzen 9 8945HS:108、958
Snapdragon X Plus X1P-42-100:108、754
Ryzen 7 8845HS:106、956
Ryzen 9 7940HS:106、914
Core Ultra 7 155H:105、964
Core Ultra 7 155U:101、533
Ryzen 5 8645HS:98、585
Core Ultra 5 125U:95,533
Core Ultra 5 125H:95、516
Ryzen 9 PRO 6950H:93、774
Ryzen 7 PRO 6850H:91、765
Ryzen 7 5825U:85、590
Ryzen 3 5425U:78、365
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
CINEBENCH 2024は比較的新しいベンチマークソフトのため、3D MarkとPC Markで非常に高いスコアをマークしたCore i9-13980HXのデータはありません。
ここでは「異様に高いスコア」となりました。ちなみに過去データにある「Core i7-14700」というのはデスクトップPC用のCPUです…。Arrow Lake-HXの性能は凄まじいものがあります。今回は(貸出機のため)テストできませんが、オーバークロックをしたらどうなっちゃうんでしょう。
ラストはSSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。
上位クラスのGen4 SSDと同等といえ、十分に高速です。実用上は全く問題がない速度ですが、PCIe 5.0搭載機がちらほら現れていますので、さすがにそれらよりは遅いです。
発熱・ファン音
モンスターハンターワイルズのベンチマークテスト(2.5K解像度・グラフィック「高」・フレーム生成あり)をしながら、発熱量を測定しました。CPUは一時的に98℃まで上昇し、電力制限(PL2)によるスロットリングが発生していますが、温度によるスロットリングは確認されず、全体的に安定動作しています。GPUは最大で75℃台にとどまり、使用率100%を維持しながら設計TGP近くまでしっかり使い切っており、冷却性能と出力バランスの完成度は高いと評価できます。
数年前のゲーミングノートでは「ファン風量を最大」にすると爆音になりましたが、ROG Strix G16 G615のファン音は決して爆音にはならず、一般的なノートPCよりは騒々しいものの、十分許容できるレベルです(手元の騒音計で56dB程度でした)。
4.レビューまとめ
ASUS ROG Strix G16 (2025) G615 G615LP-U9R5070GはASUS Storeで販売中で、価格は339,800円です。現状、RTX5070を搭載するゲーミングノートは市場にあまり出回っておらず、競合製品と比較して高いか安いか、というコメントは難しいです。
ただ、ASUSの「ROGブランド」のゲーミングPCはコスパ最優先という位置づけではありません。これまで見てきたように、ASUSらしい個性的な筐体デザインや質感、配慮されたキーボードの構成、簡単に筐体内部にアクセスできるQ-Latchシステムなど「使いやすさと持つ喜び」を与えてくれる製品です。それを考慮すると「Core Ultra 9 275HXとRTX5070搭載で339,800円は安い」です。
5.関連リンク
ROG Strix G16 G615LP (G615LP-U9R5070G):ASUS Store
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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